特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標:「AdMail」
1.出願番号 商願2000-9611
2.商 標 「AdMail」
3.商品区分 第38類:電子メールによる通信
4.適用条文 商標法第3条第1項第3号(6条1項2項も含む)
5.拒絶理由 本願商標は「電子メールによる広告」の意味合いを認識させるにとどまる。
拒絶理由通知 意見書における反論
(1)発送番号073872の拒絶理由通知書の拒絶理由(1)において、本願商標は、「広告、宣伝、広告物」を意味する「Ad」(「advertisement」の略)の文字と、「コンピュータ等を利用した郵便物、電子メール」を意味する「Mail」の文字とを「AdMail」と書してなるので、これよりは「電子メールによる広告」の意味合いを認識させるにとどまり、これをその指定役務に使用しても、単に提供する役務の質(内容)を表示するにすぎず、商標法第3条第1項第3号に該当すると認定されました。
しかしながら、本願商標の「AdMail」は、特定の観念を生じない造語であって、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章ではなく、十分に識別力を有るものと思料しますので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べます。
(1-A)まず、本願商標の構成態様は、願書に明示したように、欧文字で「AdMail」と一連に書した態様から成るものでありますが、出願人の主観的な意図を申し上げれば、この前半部分の「Ad」の文字は、「あて先,住所」等を意味する「address」の語頭二文字と、「有利,好都合,便利,役立つ」等を意味する「advantage」の語頭二文字との、双方から採用したものであって、審査官殿の指摘するように、決して、広告を意味する「advertisement」の「ad」ではありません。
つまり、本出願人は、本願商標の「AdMail」を、「AddressMail」と、「AdvantageMail」の両方の意味合いを込めて作ったもので、「AdvertisementMail」を表示しようとしたものではありません。「AdMail」と表すことによって、あくまでも、「事前に登録された会員のアドレスにのみ送信する便利で役に立つ(アドバンテージな)電子メール通信」というような意味合いを込めて作ったものであります。
このようなことを申し上げると、欧文字だけからなる「AdMail」の態様から、その様な出願人の主観的意図が取引者・需用者に分かるわけはないではないかとの反論を受けそうですが、かといって、審査官殿の言うように、「広告」を意味する「advertisement」の略の「Ad」を語頭部分に用いているとも断言できないわけであります。つまり、本願商標の「Ad」は、「アドレス」の「ad」かも知れないし、「アドバンテージ」の「ad」かも知れないわけです。例えば、広辞苑で「アド」を引いてみても、「アドレスの略。」と言う説明と、「ad アメリカ(advertisementの略)広告。」という説明の2つがあります。
このように、出願人の主観的な意図を正確に本願商標に反映できなかったことは残念ですが、本願商標は結局のところ、客観的に見れば意味のはっきりしない「Ad」と、電子メール等を意味する「Mail」の文字が結合して成り立っているわけですから、全体として確立された特定の意味など生じないはずであります。ましてや、「電子メールによる広告」などという意味合いを生じさせるものではありません。
それ故、本願商標が特定の観念を生じさせ、しかもそれが役務の質を表示していると言う今回の判断は、誤った認識に基づくものと考えます。
(1-B)過去の登録例を見てみましても、例えば、第35類の広告関係を指定役務とする商標として、
a.登録商標第3043980号「アドネット」(H07.05.31:(株)明通)(第1号証)、
b.登録商標第3353064号「アドフォン」(H09.10.24:(株)スーパーステージ)(第2号証)、などが存在します。
しかし、審査官殿のような上記考え方を採れば、この商標は両方とも登録に成り得なかったはずであります。
つまり、審査官殿の考え方に従えば、第1号証の「アドネット」は、「広告、宣伝、広告物」を意味する「ad」(「advertisement」の略)の片仮名表記と、「情報通信ネットワーク」の略である「net」の片仮名表記とを「アドネット」と書してなるので、これよりは「情報通信ネットワークを用いた広告」の意味合いを認識させるにとどまり、これをその指定役務に使用しても、単に提供する役務の質(内容)を表示するにすぎないから、拒絶されるべきであるということになるのでありましょうし、また、第2号証の「アドフォン」は、同じく「広告、宣伝、広告物」を意味する「ad」(「advertisement」の略)の片仮名表記と、「テレフォン」を略して呼ぶときに使う「フォン」の文字から成るもので、これよりは「電話による広告」の意味合いを認識させるにとどまり、これをその指定役務に使用しても、単に提供する役務の質(内容)を表示するにすぎないと言うことになるのでありましょう。従って、審査官殿の考え方に従えば、これらは拒絶されてもおかしくないわけです。しかし、現実には双方とも登録されております。これは、「アドネット」も、「アドフォン」も、特定の観念を生じない造語商標と判断されたからだと思います。
然るに、「アドネット」や「アドフォン」が登録できて、本願商標の「AdMail」が登録できないというのは釈然としません。本願商標もやはり特定の観念を生じさせない造語商標なのですから、これら「アドネット」や「アドフォン」と同様に登録されてしかるべきと考えます。
(1-C)以上のように、本願商標は、あくまでも特定の観念を生じさせない造語商標であって、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章ではありませんので、十分に識別力を有し、商標法第3条第1項第3号の規定に該当するものではないと思料します。尚、本出願人は、上記出願人の主観的な意図をはっきりさせると共に(客観的には余り関係ありませんが)、指定役務の内容及び範囲を明確にするために、本日付けで手続補正書を提出し、指定役務を第35類の「広告」とは全く関係のない、第38類の「電子メールによる通信」に補正しました。
(2)次に、発送番号073875の拒絶理由通知書の拒絶理由(2)の指定役務が不明確であると指摘された点につきましては、上述したように、本日付け提出の手続補正書によって、指定役務を「第38類 電子メールによる通信」に補正しましたので、明確になったものと思料します。それ故、本出願は、商標法第6条第1項及び第2項の要件をも具備したものと思料します。