第1章 総論
1 意義
世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書1-C知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(平成6年12月28日条約第15号。以下「TRIPS協定」という。)を受け、日本国において酒類の地理的表示が酒類の表示の適正化を通じて保護されること、及び酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性が明確であり、かつ、その酒類の特性を維持するための管理が行われている酒類を地理的表示として指定することを定めることにより、日本国内において製造、輸入又は販売される酒類並びに輸出される酒類の地理的表示の適正化を図るものである。
2 用語の定義
この酒類の地理的表示に関するガイドライン(以下単に「ガイドライン」という。)において、次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号に掲げるところによるものとする。
なお、酒類の地理的表示に関する表示基準(平成27年10月国税庁告示第19号。以下「表示基準」という。)で定義されている用語については、当該定義されているところによる。
(1) 「酒類製造業者」又は「酒類販売業者」とは、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和28年法律第7号。以下「酒類業組合法」という。)第2条((定義))第2項又は第3項に規定する酒類製造業者又は酒類販売業者をいう。
(2) 「製造場」とは、酒税法(昭和28年法律第6号)第7条((酒類の製造免許))第1項の規定により酒類の製造免許を受けた場所及び同法第28条((未納税移出))第6項の規定により製造場とみなされた場所をいう。
(3) 「販売場」とは、酒税法第9条((酒類の販売業免許))第1項の規定により酒類の販売業免許を受けた場所をいう。
(4) 「指定した日」とは、表示基準第8項の規定により地理的表示の指定をしたことを官報に公告した日のことをいう。
表示基準第4項の取消し、表示基準第5項の変更又は表示基準第6項の確認の日についても、それぞれその旨を官報に公告した日のことをいう。
(5) 「登録商標」とは、商標法(昭和34年法律第127号)第2条((定義等))第5項に規定する登録商標をいう。
3 「容器」又は「包装」の取扱い
酒類の容器又は包装の取扱いは、「平成11年6月25日課酒1-36他4課共同 酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達の制定について(法令解釈通達)」の別冊第8編第1章第86条の6((酒類の表示の基準))の1 (1) ((表示の基準における「容器」又は「包装」の取り扱い等))の規定に関わらず、次のとおり取り扱う。
(1) 「容器」とは、酒類を収容し当該酒類とともに消費者(酒場、料理店等を含む。以下この第3項において同じ。)に引き渡されるびん、缶、たる等の器をいう。
(2) 「包装」とは、酒類を収容した容器とともに消費者に引き渡される化粧箱、包み紙その他これらに類するものをいう。
(注) 清酒のこもかぶり品のように、容器又は包装に直接表示することができない場合にさげ札等を用いて表示を行う場合は、当該さげ札等も酒類の「包装」に含まれるのであるから留意する。
(3) 「容器」又は「包装」には、運送、保管等のためだけに用いられるものも含むものとする。
4 地理的表示の指定
(1) 地理的表示の指定
表示基準第2項の規定による地理的表示の指定は、指定しようとする産地の酒類に係る生産基準、名称及び産地の範囲を確認し、酒類製造業者及び酒類販売業者(以下「酒類製造業者等」という。)の意見及び表示基準第7項の規定による意見を勘案した上で、その内容が第2章で規定する「地理的表示の指定に係る指針」に準拠していると認められた場合に行う。
(2) 商標権を侵害するおそれがある表示について
表示基準第3項第1号の規定に該当する表示は、地理的表示を指定した場合に、当該地理的表示の名称と同一又は類似の登録商標に係る商標権者又は専用使用権者(以下「商標権者等」という。)が、同法の規定による権利侵害として当該地理的表示による侵害の停止等を請求することができることとなる表示をいう。
ただし、当該地理的表示に対して侵害の停止等を請求されるおそれがない場合はこの限りではない。
(注) 例えば、「侵害の停止等を請求されるおそれがない場合」は、次の場合をいう。
1 当該登録商標の商標権者が、その産地の自主的な取組みにより酒類の特性を維持するための管理を行っている者と同一の場合(当該登録商標に係る商標権について専用使用権が設定されているときは、酒類製造業者等が当該登録商標を地理的表示として使用することについて、当該専用使用権の専用使用権者の承諾を得ている場合に限る。)
2 当該登録商標の専用使用権者が、その産地の自主的な取組みにより酒類の特性を維持するための管理を行っている者と同一の場合であって、酒類製造業者等が当該登録商標を地理的表示として使用することについて、当該登録商標の商標権者及び当該専用使用権者以外の当該専用使用権の専用使用権者の承諾を得ている場合
(3) 酒類の一般的な名称について
表示基準第3項第2号の規定における「酒類の一般的な名称」とは、その名称が日本国において特定の場所、地域又は国を産地とする酒類を指し示す名称ではなく、かつ、一定の原料若しくは製法により製造された酒類又は一定の性質を有する酒類を、日本国において日常の言語の中で用いられている用語として一般的に指し示す名称のことをいう。
酒類の一般的な名称の判断は、次の事項を総合的に勘案した上で行う。
イ 新聞、書籍及びウェブサイト等の情報
ロ 日本国におけるその名称を用いた酒類の製造、販売状況
(4) 保護することが適当でないと認められる表示について
次の表示は、表示基準第3項第4号における「保護することが適当でないと認められる表示」として取り扱う。
イ 不正競争防止法(平成5年法律第47号)第2条((定義))第1項第1号又は第2号に掲げる行為を組成する表示
(注) 例えば、次の表示をいう。なお、当該表示が登録商標であるか否かは問わない。
1 他人の商品、営業の表示として需要者の間に広く認識されている表示であって、その使用により、その他人の商品、営業と混同を生じさせる表示
2 他人の商品、営業の表示として著名な表示
ロ 指定しようとする表示の名称が、表示基準第2項の規定による地理的表示の指定又は表示基準第6項の規定による確認をした地理的表示の名称と同一の名称である場合。ただし、相互に区別することができる措置をした場合はこの限りでない。
5 日本国以外の世界貿易機関の加盟国において保護される地理的表示の確認
(1) 確認の意義
表示基準第6項の規定による確認は、表示基準第9項において保護の対象となる表示基準第1項第3号ロに掲げる地理的表示について、その生産基準、名称、産地の範囲及び酒類区分を把握するとともに、第1項第3号ロに掲げる地理的表示が第3項各号に該当しないことを確認した上で、表示基準第9項において使用が禁止される場合を明らかにすることにより、行政が不正な地理的表示の使用に対して酒類業組合法第86条の6第3項に基づく指示等の行政処分を確実に行えるようにする目的で行うものである。
(2) 世界貿易機関における地理的表示の登録情報について
表示基準第6項の規定における「世界貿易機関における地理的表示の登録情報」とは、TRIPS協定第23条第4項に規定する、ぶどう酒及び蒸留酒についての多数国間通報登録制度により登録された情報をいう。
(注) 多数国間通報登録制度が成立していないことから、表示基準第1項第3号ロに掲げる地理的表示については、現状では、加盟国との交渉を通じることによってのみ確認を行うことができる。
なお、ぶどう酒及び蒸留酒以外の酒類の地理的表示については、当該制度の対象となっていないため、当該制度の成立後も加盟国との交渉を通じることによってのみ確認を行うことができる。
6 地理的表示の取消し等
(1) 表示基準第3項第1号の規定に該当することとなった場合について
次に掲げる場合には、表示基準第4項第2号の規定における「指定した日以後に、表示基準第3項第1号の表示に該当することとなった場合」として取り扱う。
イ 地理的表示としての使用が登録商標に係る商標権を侵害するおそれがある表示ではないことを、当該登録商標の商標権者等の承諾を得ることにより担保している場合であって、その承諾が取消された場合
ロ 地理的表示の名称と同一又は類似の商標が登録されたことにより、当該地理的表示の使用が当該登録商標に係る商標権を侵害するおそれがあることとなった場合(指定した日前に地理的表示の名称と同一又は類似の商標に係る登録の出願が行われ、指定した日以後に登録商標となった場合も含まれる。)
(注) 知的財産権においては、一般的に出願の日により権利の抵触に関する先後関係を決めることとなるが、表示基準における地理的表示の指定は国税庁長官の職権により行われるため、「指定した日」を基準として先後関係を判断することとしたものである。
(2) 指定が適当でないと認められる場合について
次の場合には、表示基準第4項第4号における「指定が適当でないと認められる場合」として取り扱う。
イ 地理的表示の産地の範囲に当該地理的表示の酒類の品目に係る製造場を有する全ての酒類製造業者が、当該地理的表示の指定の取消しを求めている場合
ロ 酒類の特性を維持するための管理が適切に行われていないことが地理的表示の指定後に判明した場合
(3) 取消しを求める申立て
表示基準第2項の規定により指定した地理的表示について、当該地理的表示が表示基準第4項に該当すると考える者は、その理由を明らかにした上で、取消しを求める旨の申立てを国税庁長官に行うことができる。
(4) 保護しないことを求める申立て
表示基準第6項の規定により確認した地理的表示について、当該地理的表示が表示基準第10項第8号に該当すると考える者は、その理由を明らかにした上で、保護しないことを求める旨の申立てを国税庁長官に行うことができる。
7 指定した地理的表示の変更
表示基準第5項の規定による指定した地理的表示の変更については、その変更内容が第2章で規定する「地理的表示の指定に係る指針」に準拠していると認められた場合にのみ行う。
なお、生産基準のうち酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項の変更については、原則として行わない。
また、名称、産地の範囲、酒類区分又は生産基準のうち酒類の品目に関する事項の変更については、原則として法令改正又は他の地理的表示の指定に起因する変更についてのみ行う。
8 地理的表示の指定等に係る意見募集
意見募集については、表示基準第7項で規定する場合のほか、表示基準第4項の取消し又は表示基準第5項の変更をする場合においても、必要に応じて意見募集を行うものとする。
9 地理的表示の保護
(1) 複合名称の使用について
複数の語句からなる地理的表示の名称について、当該名称の個別の語句を使用する場合は地理的表示の名称の使用に該当しない。
(2) 地理的表示の名称の翻訳について
表示基準第9項の規定における「翻訳」には、音訳(例えば、漢字の地理的表示の名称の読みをカタカナやローマ字等に置き換えて使用する場合等)も含まれることに留意する。
また、「地理的表示の名称が翻訳された上で」には、地理的表示を使用する者が翻訳した上で使用する場合のほか、地理的表示の名称を使用する者以外が地理的表示の名称を翻訳したものを使用する場合も含まれることに留意する。
(3) 酒類業組合法第86条の6第3項による基準を遵守すべき旨の指示について
次に掲げる酒類に係る地理的表示の使用に対しては、表示基準第9項に基づく酒類業組合法第86条の6第3項による基準を遵守すべき旨の指示を行わない。
イ 表示基準第1項第3号ロに掲げる地理的表示のうち、表示基準第6項の規定による確認をしていない地理的表示の名称を使用している酒類
ロ 表示基準第2項による地理的表示の指定の日又は表示基準第6項の規定による確認の日前に、当該地理的表示の名称と同一又は類似の表示を使用して市場に流通していたことが明らかである酒類
(4) 地理的表示の保護の申立て
酒類製造業者等が地理的表示の名称(表示基準第1項第3号ロに掲げる地理的表示については、表示基準第6項の確認をしたものに限る。)を使用してはならない酒類に地理的表示の名称を使用していることによって営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれがある者は、当該酒類製造業者の製造場又は当該酒類販売業者の販売場の所在地を所轄する税務署長に適切な措置を行うべきことを申立てることができる。
10 適用除外
(1) 登録商標との調整規定について
地理的表示の名称と同一若しくは類似又は地理的表示の名称を含む商標について、当該地理的表示を指定した日前に登録商標(当該日前に商標登録出願しており、当該日以後に登録商標になったものを含む。)であったものの使用については、表示基準第10項第2号に基づき、表示基準第9項の適用が除外されることに留意する。
(注) 表示基準第10項第2号の規定は、地理的表示の名称と同一若しくは類似の表示又はこれらの表示を含む登録商標の使用権と、表示基準第9項で規定する地理的表示の使用の禁止に関する優劣関係の調整規定である。
商標権の行使に当たっては、一般的に公益目的のために定められる公法上の規制に服することとなるため、当該表示基準においても、酒類の取引の円滑な運行、消費者の利益という公益目的に沿って商標権者は当該表示基準の規定の範囲内で権利の行使が可能となる。一方で、TRIPS協定第24条第5項では、地理的表示と商標権について優劣関係を定めているため、表示基準第10項第2号において当該優劣関係を整理しているものである。
(2) 先使用されていた商標その他の表示の地理的表示の保護の適用除外について
表示基準第10項第3号で規定する「国税庁長官が第8項の規定による公告の際に、前項の規定を適用しないものとして公示した商標その他の表示」については、地理的表示を指定等した日前から使用していた登録商標ではない商標その他の表示が、地理的表示の指定に伴って使用できなくなることにより、地理的表示の指定、地理的表示の確認又は保護に関する行政執行に支障をきたすおそれがあると認められる場合に限り、必要最小限の範囲で認めることとする。
(注) 地理的表示の名称と同一若しくは類似の表示又はこれらの表示を含む登録商標に係る商標法第32条((先使用による商標の使用をする権利))及び第32条の2の規定により「先使用による商標の使用をする権利」を有している者の当該権利に係る商標について、表示基準第9項の適用を除外する場合については、当該規定に基づき公告の際に公示することが必要であることに留意する。
(3) 酒類の原料の産地として地理的表示の名称と同一又は類似の表示を使用する場合について
表示基準第10項第6号の規定における「酒類の原料の産地として地理的表示の名称と同一又は類似の表示を使用する場合」とは、例えば次のような表示の使用が考えられる。なお、この場合にあっても公衆が地理的表示の名称と誤認するような方法で使用する場合は除かれることに留意する。
(例) ぶどう酒の地理的表示「山梨」に関して、名称と同一である「山梨」という表示を、長野県を産地とするぶどう酒の原料ぶどうの産地として使用(例えば、「山梨産ぶどう使用」と容器に表示する場合等)する場合。
11 地理的表示であることを明らかにする表示
表示基準第12項の規定は、表示基準第1項第3号ロに掲げる地理的表示の名称を使用している酒類について、当該地理的表示が表示基準第6項の確認をしたものであるかを問わず適用されることに留意する。
なお、「GI」の文字の使用については、公衆が地理的表示と誤認するような方法で使用している場合に限り、この規定を適用することとして差し支えない。
第2章 地理的表示の指定に係る指針
第1節 指定の要件
表示基準第2項においては、地理的表示として指定する要件として、
1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性が明確であること、かつ、
2 その酒類の特性を維持するための管理が行われていること、
の2つを掲げている。
これら2要件の具体的内容は、以下のとおりである。
1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性が明確であること
「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性が明確である」と認めるためには、以下の要素を全て満たしている必要がある。
1 酒類の特性があり、それが確立していること
2 酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられること
3 酒類の原料・製法等が明確であること
(1) 酒類の特性があり、それが確立していること
「酒類の特性があり、それが確立していること」とは、次のとおりである。
イ 酒類の特性があること
酒類の特性については、表示基準第1項第3号における「酒類の特性」の定義(酒類に関し、その確立した品質、社会的評価又はその他の特性)に基づき、(イ)品質、(ロ)社会的評価のいずれかの特性(又はその他の特性)があることが必要である。
(イ) 品質について
品質について特性があるとは、他の地域で製造される同種の酒類と比べて、原料・製法や製品により区別できることをいう。例えば以下の場合が該当する。
原料の種類、品種、化学的成分等が独特である場合
独特の製法によって製造される場合
製品が、独特の官能的特徴や化学的成分等を有している場合
(ロ) 社会的評価について
社会的評価があるとは、広く社会的に評価及び認知されていることを言い、それが新聞、書籍、ウェブサイト等の情報により客観的に確認できることが必要である。
また、表彰歴や市場における取引条件などにおいて、他の地域で製造される同種の酒類と区別でき、それが広く知られていることが必要である。
上記特性は、次の要素により整合的に説明できる必要がある。
官能的要素(香味色たく、口あたり等)
物理的要素(外観、重量、密度、性状等)
化学的要素(化学成分濃度、添加物の有無等)
微生物学的要素(酵母等の製品への関与等)
社会学的要素(統計、意識調査等)
なお、上記の全ての要素を網羅的に説明できる必要はなく、その酒類の特性に必要な要素のみ説明できればよいが、官能的要素については必ず説明できることが必要である。
また、説明に当たっては、「おいしい」、「味が良い」、「良質」、「すばらしい」又は「美しい」等の抽象的な表現は使用しない。
各要素については、可能な範囲で計数や指標を使用することによって検証可能な形で説明し、他の地域で製造される同種の酒類との違いについても説明できることが望ましい。
ロ 酒類の特性が確立していること
酒類の特性が確立しているとは、酒類の特性を有した状態で一定期間製造されている実績があることをいう。
(注) 「一定期間」の長さについては個別に判断することとなるが、その産地で酒類の製造が開始されてからこれまでの期間で判断するのではなく、その産地で製造される酒類の品質が安定し、酒類の特性が形成された時点以降の期間で判断する。
なお、「酒類の特性が形成された時点」とは、単にその産地で酒類製造免許を取得した時点を指すのではなく、酒類の特性を有する酒類の製造が始まった時点を示す必要があり、酒類の製造記録、新聞、書籍やウェブサイト等の情報により確認できる必要がある。また、当該産地の範囲に当該酒類の品目の製造場を有する者が複数いる場合、酒類の特性が形成された時点では、その全ての酒類製造業者において酒類の特性を有した酒類が取り扱われている必要はない。
(2) 酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられること
イ 基本的な考え方
「酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられる」とは、酒類の特性とその産地の間に繋がり(因果関係)が認められることであって、その産地の自然的要因や人的要因によって酒類の特性が形成されていることをいう。
「自然的要因」とは、産地の風土のことであり、地形(標高、傾斜等)、地質、土壌、気候(気温、降水量、日照等)等が考えられる。
「人的要因」とは、産地で人により育まれ伝承されている製法等のノウハウのことであり、発明、技法、教育伝承方法、歴史等が考えられる。
すなわち、単に独自の原料・製法によって製造されているだけでは不十分であり、酒類の特性が産地と結びついていることが必要である。
(注) 酒類の「社会的評価が酒類の産地に主として帰せられる」と言えるためには、その地域に存在する個別の酒類製造業者の商品について評価及び認知されているだけでは不十分であり、その地域の酒類が全体としてその地域と繋がりがあるものとして社会的に評価及び認知されていることが必要であることに留意する。
ロ 酒類区分ごとの考え方
「酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられる」と言えるためには、酒類の区分ごとに、例えば、以下のような点が合理的に説明できることが必要である。
(イ) ぶどう酒
自然的要因としては、地形(標高、傾斜等)、地質、土壌、気候(気温、降水量、日照等)等がぶどうの品種、糖度、酸度、香味等にどのような影響を与えているかなど、人的要因としては、ぶどうの栽培方法の改良等がどのようにその産地のぶどう酒の特性を形成しているかなどについて、合理的に説明できることが必要である。
単にその産地内で収穫されるぶどうを原料としているだけでは、産地に主として帰せられる特性とは言えない。
(ロ) 清酒
自然的要因としては、当該産地の地質等が醸造用水の水質(硬度)にどのような影響を与えているか、気象条件がもろみの発酵温度にどのように影響を与えているかなど、人的要因としては、当該産地で開発された酵母の使用や、杜氏による伝承技術がどのように清酒の特性を形成しているかなどについて、合理的に説明できることが必要である。
単に他の地域から高品質な品種の米を購入して原料としているだけでは、産地に主として帰せられる特性とは言えない。
(ハ) 蒸留酒
自然的要因としては、当該産地の気候や地理的条件等に適した原料・製法が特性に与えている影響など、人的要因としては、他と区別される原料・製法(蒸留技術、貯蔵技術等)が伝承し、その原料を発酵させ蒸留した香味やその後の熟成により生み出された香味が、どのように蒸留酒の特性を形成しているかなどについて、合理的に説明できることが必要である。
単に他の地域とは異なる珍しい原料を使用しているだけでは、産地に主として帰せられる特性とは言えない。
ハ 産地の範囲について
上記の基本的な考え方に鑑みれば、産地の範囲は、酒類の特性に鑑み必要十分な範囲である必要があり、過大や過小であってはならない。
(注) 産地の範囲については、原則として行政区画(都道府県、市町村(地方自治法(昭和22年法律第67号)第281条に定める特別区を含む。以下同じ。))、郡、区、市町村内の町又は字等の区分によることとし、それらによる区分が困難な場合には、経緯度、道路や河川等により明確に線引きできる必要がある。
(3) 酒類の原料・製法等が明確であること
原料・製法等が明確であるとは、酒類区分ごとに示した次の項目について、明確に示すことができることをいう。
なお、次に掲げる項目以外の項目についても、酒類の特性を明確にする観点から産地が自主的に定めることができる。
イ ぶどう酒
(イ) 原料
産地内で収穫されたぶどうを85%以上使用していること
酒類の特性上、原料とするぶどうの品種を適切に特定し、品種ごとのぶどうの糖度の範囲を適切に設定すること
原料として水を使用していないこと
原則として、ブランデーやアルコール等を加えていないこと
(ロ) 製法
産地内で醸造が行われていること
酒類の特性上、製造工程において貯蔵が必要なものについては、産地内で貯蔵が行われていること
糖類及び香味料を加えること(補糖・甘味化)を認めること又は認めないことを示していること。認める場合については、加えることのできる糖類及び香味料の量を適切に設定すること
酸類を加えること(補酸)を認めること又は認めないことを示していること。認める場合については、加えることのできる酸の量を適切に設定すること
除酸することを認めること又は認めないことを示していること。認める場合については、減ずることのできる酸の量を適切に設定すること
総亜硫酸の重量を、ぶどう酒1キログラム当たり350ミリグラム以下の範囲で設定すること
(注) 補糖・甘味化、補酸、除酸及び総亜硫酸の値の設定に当たっては、地域の気候・風土やぶどう品種を勘案し、過大なものであってはならない。
(ハ) 製品
「果実酒等の製法品質表示基準」に規定する「日本ワイン」であること
アルコール分について適切に設定すること
総酸の値を適切に設定していること
揮発酸の値を適切に設定していること
ロ 清酒
(イ) 原料
原料の米及び米こうじとして、日本国で収穫された米を使用していること
産地内で採水した水を使用していること
米、米こうじ及び水以外の原料の使用を認める場合には、使用することのできる当該原料の重量の上限値を設定すること
(注) 一般的に、米、米こうじ及び水以外の原料の使用量は少ない方が酒類と産地との繋がりが明確になると考えられる。
(ロ) 製法
産地内で醸造が行われていること
酒類の特性上、製造工程において貯蔵が必要なものについては、産地内で貯蔵が行われていること
ハ 蒸留酒
(イ) 原料
酒類の特性上、必要な原料が明確であること
(ロ) 製法
産地内で原料の発酵及び蒸留が行われていること
酒類の特性上、製造工程において貯蔵が必要なものについては、産地内で貯蔵が行われていること
酒類の特性上、必要な製法が明確であること
(注) 蒸留酒においては、原料・製法がその酒類の特性を決定する特に重要な要素であり、明確に説明されていることが必要である。
ニ その他の酒類
(イ) 原料
酒類の特性上、必要な原料が明確であること
(ロ) 製法
産地内で主要な製造工程が行われていること
酒類の特性上、必要な製法が明確であること
2 その酒類の特性を維持するための管理が行われていること
地理的表示として指定するためには、その産地の自主的な取組みにより、酒類の特性を維持するための確実な管理が行われていることが必要である。
「酒類の特性を維持するための管理」が行われていると認めるためには、一定の基準を満たす管理機関が設置されており、地理的表示を使用する酒類が、
1 生産基準で示す酒類の特性を有していること
2 生産基準で示す原料・製法に準拠して製造されていること
について、管理機関により継続的に確認が行われていることをいう。
(注) 生産基準で示す原料・製法等が酒税法その他の法令の規定により明瞭であり、かつ、国税庁が行う検査等により酒類の特性が継続的に管理されている場合については、管理機関による継続的な確認と同様の管理が行われているものとして認めることができる。
(1) 管理機関の構成等
管理機関は、次に掲げる基準を満たしている団体である必要がある。
イ 主たる構成員が地域内の酒類製造業者であること
ロ 代表者又は管理人の定めがあること
ハ 構成員は任意に加入し、又は脱退することができること
ニ 管理機関が実施する業務について、構成員でない酒類製造業者も利用できること
ホ 管理機関の組織としての根拠法、法人格の有無は問わないが、特定の酒類製造業者が組織の意思決定に関する議決権の50%超を有していないこと
(2) 管理機関の業務
管理機関は、次に掲げる業務を実施している必要がある。
なお、管理機関は、業務実施要領を作成し、構成員に配付するとともに、主たる事務所に備えて置く必要がある。
イ 地理的表示を使用する酒類が、生産基準のうち酒類の特性に関する事項及び原料・製法に関する事項に適合していることの確認(以下「確認業務」という。)
ロ 消費者からの問い合わせ窓口
ハ 地理的表示の使用状況の把握、管理
ニ 国税当局からの求めに応じて、業務に関する資料及び情報を提供すること
ホ その他イからニまでに付随する業務
(3) 確認業務の実施方法等
イ 実施方法
確認業務は書類等の確認により行うほか、理化学分析及び官能検査により行うものであり、業務実施要領において、酒類の特性に関する事項及び原料・製法に関する事項ごとに、個々の酒類の特性に応じた確認方法、確認時期や頻度等を設定する必要がある。
(イ) 酒類の特性に関する事項の確認
酒類の特性に関する事項の確認は、理化学分析及び官能検査により行うものとする。
管理機関が直接実施する理化学分析等の他、酒類の製造業者に実施を義務付ける理化学分析等がある場合には、業務実施要領にその旨を規定する。
また、ぶどう酒及び清酒については、地理的表示を付した酒類の出荷前に、酒類の特性に関する事項について、管理機関が確認を行うことが必要である。
なお、理化学分析及び官能検査について管理機関が他の機関に委託して実施することとして差し支えない。
(注) 蒸留酒については、原料・製法がその酒類の特性の特に重要な要素であるため、管理機関が確認業務のうち酒類の特性に関する事項の確認を実施していない場合でも、管理が行われているとして取り扱う。
(ロ) 原料・製法に関する事項の確認
原料・製法に関する事項の確認は、書類等の確認及び理化学分析により行うものとする。
管理機関が書類等の確認を行うため、所定の記帳等を酒類の製造業者に義務付ける場合には、業務実施要領にその旨を規定する。
なお、書類等の確認による原料・製法に関する事項の確認については、最低でも年1回は実施する。
ロ 理化学分析
理化学分析については、あらかじめ定めた成分の基準に合致しているかを確認するために行い、公定法又は公定法に準ずる方法により製品ロットごとに行う。
ハ 官能検査
官能検査では、酒類の特性としてあらかじめ定めた官能的要素に合致していないような明らかな欠点が無いことを確認する。確認に当たっては、あらかじめ業務実施要領に審査基準を定めた上で実施する。
第2節 その他の指定に関する留意事項
1 酒類製造業者の同意について
地理的表示の指定に当たっては、原則として産地の範囲に当該酒類の品目の製造場を有する全ての酒類製造業者が、適切な情報や説明を受けた上で、地理的表示として指定することについて反対していないことが確認できた場合に行う。
2 産地の範囲の重複について
同一の酒類区分における産地の範囲の重複については、原則として、次に掲げる場合にのみ認めることとする。
(1) ある地理的表示の産地の範囲内に包含される狭い範囲の地理的表示を指定する場合には、その生産基準が広い範囲の地理的表示の生産基準をすべて満たした上で、その産地に主として帰せられる酒類の特性を明確にしていること。
(2) ある地理的表示の産地の範囲を包含する、より広い範囲の地理的表示を指定する場合には、狭い範囲の地理的表示の生産基準を踏まえた内容であること。
(注) 上記(1)、(2)によりがたい場合には、既存の地理的表示の産地の範囲から狭い産地の範囲を除くなど、地理的表示の範囲が重ならない形で指定することとする。
3 酒類の品目について
地理的表示を使用することとなる酒類の「酒類の品目」については、酒税法第3条((定義))第7号から第23号までに掲げる酒類の区分に従って定める必要があり、当該酒類が複数の酒類の区分に該当する場合には、その全てを定めることができる。
ただし、原則として酒類区分を異にする酒類の品目については定めることができない。
なお、当該定めた「酒類の品目」以外の酒類の品目に係る酒類に地理的表示を使用した場合は、生産基準を満たしていないとして違反表示となることに留意する。
4 地理的表示の名称について
(1) 保護すべき地理的表示の名称が複数存在する場合は、その全てを名称として指定することができる。
(2) 指定しようとする地理的表示が、既に指定されている地理的表示の名称と同一の名称である場合は、相互に区別することができる名称とする必要がある。
(3) 地理的表示の名称は、原則として地名(産地名)である必要がある。
地名(産地名)には行政区画(都道府県、市町村)、郡、区、市町村内の町又は字等の名称のほか、社会通念上、特定の地域を指す名称(例えば旧地名)として一般的に熟知されている名称が含まれる。
なお、その名称が日本国において特定の場所、地域又は国を産地とする酒類を指し示す名称であれば、地名(産地名)でなくとも地理的表示の名称とすることができる。
5 管理機関について
(1) 管理機関が第2章第1節第2項の(1)で規定する基準を満たしている団体であることについては、管理機関の定款その他の基本約款により確認できる必要があることに留意する。
(2) 管理機関が第2章第1節第2項の(2)で規定する業務を実施していることについては、業務実施要領により確認できる必要があることに留意する。
第3章 地理的表示に関する手続き
第1節 地理的表示の指定手続き
1 酒類の産地からの申立てについて
(1) 地理的表示の指定は、原則として、酒類の産地からの申立てに基づき行う。
(注) 産地からの申立てによらず地理的表示を指定する場合は、国税庁長官が生産基準、産地の範囲及び名称を第2章で規定する「地理的表示の指定に係る指針」に準じて定め、酒類製造業者等の意見及び表示基準第7項の意見を勘案した上で行う。
(2) 地理的表示の指定を希望する酒類製造業者及び酒類製造業者を主たる構成員とする団体は、その酒類に関する生産基準、名称及び産地の範囲について、当該産地の範囲に当該酒類区分に係る製造場を有する全ての酒類製造業者と協議した上で、当該産地の範囲を所管する国税局長(沖縄国税事務所長を含む。以下同じ。)を通じて国税庁長官に、「地理的表示の指定に係る申立書」(様式1)により地理的表示の指定に係る申立てを行うことができる。
(3) 産地の範囲が日本国以外の世界貿易機関の加盟国にある場合において、表示基準第1項第3号イに掲げる地理的表示として指定を希望する者は、その酒類に関する生産基準、名称及び産地の範囲を取りまとめ、「地理的表示の指定に係る申立書」(様式1)により日本語で国税庁長官に地理的表示の指定に係る申立てを行うことができる。
(4) 申立てに当たっては、第2章で規定する「地理的表示の指定に係る指針」を踏まえて、申立書に必要な情報を記載するものとする。
(注) 表示基準第2項の指定は、申立者に対して行政手続法第2条第1項第2号に規定する処分として行うものではないから、申立ては同法第2条第1項第3号に規定する申請ではないことに留意する。
2 申立て内容の確認について
申立てを受けた国税局長は、地理的表示の指定をすることについて当該産地の範囲(必要に応じて当該産地近隣)の酒類製造業者等からの意見聴取、現地調査等を行った上で、申立て内容が第2章で規定する「地理的表示の指定に係る指針」を踏まえた適切なものであるか否かを確認する。
申立て内容が適切であることが確認できた場合には、酒類区分、表示基準第3項に該当しないこと及び地理的表示の指定により使用できなくなる当該酒類の商標その他の表示のうち、引き続きその使用を認めるべき商標等の存在について確認し、申立て内容と合わせて国税庁長官に報告する。
(注1) 地理的表示の指定により、その産地の酒類のうち一定の要件を満たした酒類だけが独占的に産地名を名乗ることができることとなるため、要件を満たさない酒類を製造している酒類製造業者は、産地名が名乗れなくなることにより事業活動に影響が生じる可能性がある。
また、酒類販売業者が行う広告における表示や店頭での販売促進のための表示等においても、適切に地理的表示の名称を表示した酒類のみ当該名称を名乗って販売することができることとなるため、事業活動に影響が生じる可能性がある。
したがって、地理的表示の指定は、原則として産地の範囲に当該酒類の品目の製造場を有する全ての酒類製造業者が、適切な情報や説明を受けた上で、地理的表示の指定に反対していないことを確認できた場合に行うこととしており、また、当該産地の範囲の酒類販売業者からの意見聴取も必要としていることに留意する。
(注2) 地理的表示の指定により使用できなくなる当該酒類の商標その他の表示のうち、引き続きその使用を認めるべき商標等は、必要最小限の範囲で認めることとする。
なお、登録商標については、表示基準第10項第2号の規定により引き続き使用ができることに留意する。
(注3) 第1節第1項の(2)により申立てを受けた国税庁長官は、当該規定に準じて申立て内容の確認を行う。
3 生産基準等について
国税庁長官は、国税局長からの報告内容及び関係書類を精査した上で、次に掲げる事項を踏まえ、表示基準第2項で規定する生産基準、名称、産地の範囲及び酒類区分を定める。
(1) 生産基準等を定めるに当たっては、申立書の内容を含め、産地の事業者団体等の意見を十分に勘案する。
(2) 生産基準のうち「酒類の特性を維持するための管理に関する事項」においては、原則として、次の事項を定める必要があることに留意する。
イ 指定しようとする地理的表示に係る管理機関の名称及び主たる事務所の所在地
ロ 地理的表示の名称を使用するためには、当該使用する酒類の出荷前に管理機関による酒類の特性の確認を受ける必要があるとする場合にはその旨
(3) 指定しようとする地理的表示について、表示基準第11項で規定する「地理的表示であることを明らかにする表示」を適用しないこととする場合については、名称においてその旨を定める必要があることに留意する。
4 地理的表示の指定等に係る意見募集について
表示基準第7項による一般の意見募集を実施する。
一般の意見募集は、行政手続法第39条に基づく意見公募手続として実施し、少なくとも30日間行う。
なお、意見募集に当たっては、地理的表示の名称について、表示基準第9項に基づきその翻訳も保護の対象となる旨を併せて示す必要があることに留意する。
5 地理的表示の指定について
(1) 公告
国税庁長官は、一般の意見募集の結果を踏まえ、地理的表示として指定することが適当であると認める場合には、地理的表示の指定を行う。
地理的表示の指定に当たっては、表示基準第8項の規定に基づき、指定する地理的表示の名称、産地の範囲及び酒類区分について官報に公告する。この際、指定する地理的表示の生産基準については、国税庁ホームページに掲載する旨を併せて官報に公告する。
また、指定した地理的表示の生産基準及び表示基準第10項3号の規定により表示基準第9項の規定を適用しないものとする商標その他の表示を国税庁ホームページに掲載し、公衆の縦覧に供する。
(2) 地理的表示として指定することが適当でない場合について
国税庁長官は、一般の意見募集の結果を踏まえ、地理的表示として指定することが適当でないと認める場合については、地理的表示の指定を行わない。
なお、当該指定手続きが酒類の産地からの申立てに基づき開始されたものである場合については、当該申立てを行った者に対して、第1節第2項により報告を行った国税局長を通じて地理的表示として指定することが適当でない理由を伝達する。
(注) 当該伝達は、その時点において地理的表示の指定が困難であったことを示すものに過ぎないから、地理的表示として指定することが適当でない理由が解消された場合には、改めて地理的表示の指定の検討を行うことができることに留意する。
第2節 その他の手続き
1 地理的表示の変更手続き
(1) 地理的表示の変更は、法令改正又は他の地理的表示の指定に起因する変更の場合を除き、当該地理的表示の管理機関からの申立てに基づき行う。
(2) 地理的表示の変更を希望する当該地理的表示の管理機関は、当該産地の範囲を所管する国税局長を通じて国税庁長官(産地の範囲が日本国以外の世界貿易機関の加盟国にある場合においては、国税庁長官。)に、「地理的表示の指定の変更に係る申立書」(様式2)により地理的表示の変更に係る申立てを行うことができる。
(3) 地理的表示の変更に係る申立てを受けた国税局長は、第1節第2項の規定に準じて申立て内容の確認等を行い、その結果を国税庁長官に報告する。
(4) 国税庁長官は、国税局長からの報告内容を精査した上で、変更が適当であると認める場合には、表示基準第2項で規定する生産基準、名称、産地の範囲及び酒類区分の変更を行う。
(5) 地理的表示の変更に当たっては、表示基準第8項の規定に基づき、変更する地理的表示の名称、産地の範囲及び酒類区分について官報に公告する。この際、指定する地理的表示の生産基準については、国税庁ホームページに掲載する旨を併せて官報に公告する。
また、変更した地理的表示の生産基準を国税庁ホームページに掲載し、公衆の縦覧に供する。
(6) 地理的表示の変更が適当でないと認める場合であって、当該変更手続きが管理機関からの申立てに基づき開始されたものである場合については、(3)により報告を行った国税局長を通じて、地理的表示の変更が適当でない理由を伝達する。
2 地理的表示の指定の取消しを求める申立て手続き
(1) 第1章第6項の(3)の規定による申立ては、取消しを求める地理的表示の産地の範囲を所管する国税局長を通じて、国税庁長官に対して「地理的表示の指定の取消しに係る申立書」(様式3)により行うことができる。
(2) 申立てを受けた国税局長は、取消しを求める理由について、当該地理的表示の管理機関、当該産地の範囲(必要に応じて当該産地近隣)の酒類製造業者等からの意見を踏まえた上で事実関係の確認を行い、その結果を国税庁長官に報告する。
(3) 国税庁長官は、国税局長からの報告内容を精査した上で、当該理由が表示基準第4項で規定する事由に該当すると認めた場合には、地理的表示の指定を取り消す。
地理的表示の指定の取消しに当たっては、表示基準第8項の規定に基づき、取消した旨を官報に公告する。
(注) 地理的表示の指定の取消しを求める申立てによらず地理的表示の指定を取り消す場合は、国税庁長官が当該地理的表示の管理機関、当該産地の範囲(必要に応じて当該産地近隣)の酒類製造業者等からの意見を踏まえた上で、表示基準第4項で規定する事由に該当している場合に行うものとする。
3 地理的表示を保護しないことを求める申立て手続き
第1章第6項の(4)の規定による申立ては、国税庁長官に対して「地理的表示の保護をしないことを求める申立書」(様式4)により行うことができる。
申立てを受けた国税庁長官は、地理的表示を保護しないことを求める理由について、当該地理的表示の産地の範囲がある国等の関係者の意見を踏まえた上で精査を行い、当該理由が表示基準第10項第8号で規定する事由に該当すると認めた場合には、当該地理的表示を保護しないこととし、その旨を官報に公告する。
また、当該地理的表示を保護しないことを国税庁ホームページに掲載し、公衆の縦覧に供する。
4 地理的表示の保護の申立て手続き
第1章第9項の(4)の規定による申立ては、税務署長に対して「地理的表示の保護を求める申立書」(様式5)により行うことができる。
申立てを受けた税務署長は、当該申立て内容を国税局長を通じて国税庁長官に連絡した上で、酒類業組合法第91条(質問検査権)に基づく調査を実施する。
調査が終了した場合には、調査結果等を国税局長を通じて国税庁長官に連絡する。
(注) 調査結果等については、申立てを行った者に対して回答しないことに留意する。