不使用取消審判とは
不使用取消審判とは、使用していないことを理由に、競合するような他人の商標登録を取り消す審判手続です。商標調査の結果や出願の審査段階で、欲しいと思う商標に競合する他人の商標があったときでは、不使用を理由とする取消審判を請求することで、その競合する他人の商標を取り除くことが可能です。
どのような場合に不使用取消審判を請求できますか?
典型的には次のような状況で不使用取消審判を請求します。
A.商標調査を行った結果、使用する予定の商品やサービスの範囲に、欲しいと思う商標と同一または類似の先に登録された他人の商標がある場合、その他人の商標を取り消すように求めるとき。
B.出願後、審査の段階で先に登録された他人の商標を理由に拒絶理由を通知された場合(すなわち商標法第4条第1項第11号を理由とする拒絶理由の場合)、意見書や補正書の提出と並行するように請求するとき。これは、通常、上申書により意見書の提出を審査官の方で不使用取消審判の決審まで待ってもらいます。交渉によるアサインバック(Assign Back)とは別の選択ともなりますが、アサインバックと不使用取消審判を同時進行させる方策もあります。
不使用取消審判を請求されましたが、対応せずに放置した場合はどうなりますか?
不使用取消審判を請求された場合、通常、出願時の代理人に審判についても代理するか否かの問合せが特許庁からなされ、代理人が選任されれば代理人宛てに審判請求書が送達されます。不使用取消審判の場合には、審判請求書には必ず不使用により取消を求める商品及び役務の範囲が記載されていますので、もしその取消を求められている範囲が事実として過去3年日本国内で不使用であってその不使用に正当な理由もない場合には、取消を免れることもないことになります。このような場合、通常、被請求人は何ら答弁書などの応答もせずにそのまま放置することが多く、統計的には全体の8割ぐらいはそのまま放置となります。被請求人が何ら対応しない場合には、取消を求められた範囲の指定商品及び指定役務が取消になります。取消審判の取消決定が確定した場合には、一部取消の場合には指定商品及び指定役務の範囲が削減され、全部取消の場合には取消の請求の日以降は権利がなくなることになります。
不使用により取消されるとどうなりますか?
取消が認められば、その商標権は消滅します。詳しくは不使用取消審判により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、不使用取消審判の請求の登録日まで遡及して取消審決の確定の効果を与えます(商標法第54条2項)。従いまして、自分の欲しいと思う商標との競合関係が解消され、拒絶理由の解消や自分の商標を登録することができるようになります。また、商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した時に取り消されますので、裁判所に審決取消を求めている状態では審決が確定していないので、まだ取り消されていないことになります。
取消されるべき不使用とはどのような状況でしょうか?
審判の請求の登録日を基準に考えて、その時点から過去3年間日本国内で登録にかかる商標が指定商品若しくは指定役務について使用されていない場合、取消対象となります。ただし、専用使用権者や通常使用権者が使用している場合や、まだ、登録から3年も経っていない場合は、不使用には該当しません。審判の請求前3月から請求の登録日までの間にされた使用について、その使用が審判の請求がされることを知った後であることを請求人が証明したときは、その使用について正当な理由がない限り、登録商標の使用をしたものとしては認めないこととしています。所謂駆け込み使用を防止するためで平成8年より導入されています。また、社会通念上同一と認められる商標については使用があるものと判断されます。審判の請求の登録日から遡った過去3年間を要証期間といいます。審判請求が受理された日から通常2週間程度で審判の予告登録がなされ、その予告登録の日が審判の請求の登録日です。商標権者に審判請求書の副本が送達される前に、出願時の代理人に審判事件の代理をするか否かの問い合わせが特許庁審判部より代理人にFAX送信されることが慣行されていまして、ずれ込むこともありますが特許庁審判部からのFAXの送信日が予告登録の日の1、2日後となるケースが多いものと思います。
誰が不使用取消審判を請求できますか?
法人、自然人を問わずだれでも不使用取消審判を請求できます。利害関係人には限定されておりません。実務上は、実際に取消で利益を受ける者以外のダミーでの審判請求も行われたりします。例えば取引先だけど権利を潰したいというような場合は、ダミーの審判請求人とすることがあります。ただし、不使用取消では、必ずその取消範囲に対する出願が存在しますので、そちらの出願もダミー名義で行う必要があります。
どのような資料や証拠が必要でしょうか?
不使用取消審判では、請求された商標権者が使っていることを証明をする必要があります。挙証責任が請求人側には当初ないことから、請求人側は実体的な証拠を出す必要がない場合が多いです。被請求人側である商標権者側は、登録商標の使用を証明するための証拠を出すことになりますが、登録商標の使用と認める範囲は「社会通念上同一と認められる商標を含む。」と明記されています。その例示として、i)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、ii)平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、iii)外観において同視される図形からなる商標が挙げられます。登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用は不使用取消審判では使用に該当します。
成功する不使用取消審判
不使用取消審判の成功率は一般に8割程度です。これは使用していないことについて、ある程度の確信を以て審判請求される場合が多いからと思われます。取消にかかる指定商品や指定役務は、通常、競合が生ずる範囲だけを限定しますので、その範囲を狭すぎず広すぎないようにすることが重要です。また、商標調査の結果で不使用取消を請求する場合、1つの競合する商標だけに着目して他の商標を見落とさないように、複数の重なるような権利状況になっているのかいないのかを確認する必要もあります。また、不使用取消審判が請求される場合、同じ審判請求人から取消対象の範囲で同一若しくは類似の商標が出願されることがほぼ間違いなく行われます。これは取消審判の結果を待って、審判請求人が競合する範囲の出願をした場合には、先に被請求人が出願をしてしまえば、先後願の関係で被請求人が優位に立ち、不使用取消を請求が無意味になるからです。
不使用取消審判では取消を求める指定商品・指定役務の範囲を請求の趣旨の欄に記載します。この請求時に記載した取消を求める指定商品・指定役務の範囲の範囲は、後から追加したり減縮したりすることはできず、請求の一部を取り下げることはできない規則になっています。従って、1度不使用取消審判を例えば第25類の指定商品「被服と運動用特殊靴」に対して請求した後、相手が「背広」について証拠を出してきたので「運動用特殊靴」だけに変更するというようなことはできず、もし「運動用特殊靴」に固執するならば「運動用特殊靴」だけ初めからやり直しで不使用取消審判で取消を求める必要があります。
不使用取消審判では、取消を求める指定商品・指定役務の範囲で1つでも使用する証拠を挙げられてしまえば不成功となります。従って、比較的に広い範囲の指定商品・指定役務に対して取消を求める場合、最も効果的な攻撃方法は”同時多発”となります。やや不謹慎な表現かもしれませんが、同時に多発即ち類似群コード別ぐらいの狭い範囲で取消を請求すれば、相手に証拠を準備できる範囲と証拠を準備できない範囲が生ずる確率が高くなり、且つ同時ですのでやり直しによる時間ロスなども防ぐことができます。但し、わざわざ狭い指定商品・指定役務の範囲で請求しますので、審判費用はそれなりに増えることにはなります。
不使用取消審判を請求する場合のリスク
不使用取消審判を請求することは、勝手に相手の権利を消滅させる手続きを開始することになるため、請求人はその商標がなくなることに何かのメリットがあることがほとんどです。仮に不使用取消が失敗した場合では、商標権は存続しつづけますので、その権利範囲の使用は侵害行為にあたる場合も多いと考えられます。従いまして、不使用取消審判の請求が不成立の場合、契約やライセンスで何とかするか或いはその商標をあきらめることを覚悟する必要があります。特に広い商品役務の範囲で取消をかける場合に、相手が取消請求の範囲内で1つでも使用していれば取消を免れることができ、請求と同時に同じ代理人から出願している場合が殆どと思いますので、取消をかけてきたのはダミーであってもそれが誰なのか判明することがあり、被請求人側では請求人をネットで検索すればおおよその狙いも分かることが多いです。もし不使用取消請求の狙いが外れて致命傷を与えられない場合は、侵害訴訟提起の反撃の可能性もありますから、請求人と出願人(登録時に移転)の双方をダミーとするやり方もありそうです。
不使用取消審判で被請求人が証する使用の証拠
被請求人の場合、取消を免れるには、審判請求の登録の日から3年前までの過去(要証期間と言います。)の証拠を提出する必要があります。一般には、納品書、領収書、カタログの頒布や広告の有る雑誌、新聞などへの掲載などの資料を挙げることになります。宣伝の事実などの場合には、パンフレット、カタログ等とそれを裏付ける陳述書などでも可能です。請求書、納品書などの取引書類も使用の証拠とすることができますが、日付を証明する必要があり、外国語の物であれば国内での頒布も証明する必要があります。商標が付与された商品の写真も証拠となりますが、日付に関する証拠が十分でないこともあり、その商品番号等と取引日付について記載のある取引書類を合わせて証拠とすることが立証を補完することになります。ウエブサイトも広告として機能させることができますが、要証期間にそのような掲載があったことを証明する必要があり、The Internet Archiveのwebsite(URL http://www.archive.org)に保存されているものがあれば、内容と日付やURLが誰にも明らかなため、それを証拠とすることも可能です。なお外国語のwebsiteの場合、外国語であるから直ちに国外という訳でもありませんが、国内という要件を満たすように証拠を挙げる必要があります。また証拠を提出するタイミングですが、通常訴訟経済から被請求人は所持している証拠を早めに出すものとはなりますが、審判の早期の証拠の提出機会である答弁書に添付せずに、それよりも後にタイミングで提出することもできます。審判段階では、証拠を提出せずに或いは弱めの証拠だけを提出し、取消の決定を受け、審決取消訴訟で新たな証拠を提出することもできます。証拠に基づく審決が絶対的でないのも、商標の不使用取消審判の1つの特徴とも言えます。また、使用を証拠づける場合に、商標法第2条第3項の第何号の使用なのかを明白する必要があり、特に口頭審理では、第何号に定義された商標の使用なのかを尋ねられることが頻繁にあります。
正当理由の主張
もし審判請求の登録の日から3年前までの過去で日本国内での使用がない場合でも、その不使用に正当な理由があれば取消を免れることができます。一般に、医薬品の製造許可申請や農薬登録申請などの作業は、申請が要証期間内であれば正当な理由として認められる傾向にあります。国内にいなかった、店舗の準備に時間がかかる、その製品の特許査定を待っているなどは正当理由として否定された事例があります。また、商標権を譲渡された場合でも、不使用にはかわりないとされた事例もあります。
一事不再理の適用は?
不使用取消審判が請求され、その請求が成り立たないとした審決が得られ確定したとしても、後日同じ指定商品指定役務の範囲で再度不使用取消審判を請求することもできます。これはそれぞれの不使用取消審判にかかる要証期間が異なっており、要証期間が異なれば一事不再理の適用はないと判断された審決例があります(取消2015-300125)。
審決に不服の場合は審決取消訴訟の提起
不使用取消審判について審決がなされた場合、審決書が当事者に送達されます。審決の内容について不服がある当事者は、東京の知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を30日以内に提起することができます。
審判請求、被請求の費用(弊所費用及び審判請求料)†
不使用取消審判を請求するには、特許庁に払う費用として、55,000円(1区分)かかり、区分が増加するごとに40,000円がかかります。当事務所に依頼の場合の請求人の代理手数料費用は、事件にもよりますが一般的に、121,000円(区分毎、審判請求、弁駁書を含む。)で、成功報酬(成功時のみ)も121,000円となります。不使用取消審判の被請求人の場合には、特許庁に審判請求に関して払う費用はありませんが、当事務所に依頼の場合の被請求人の代理手数料費用は、一般的に154,000円(区分毎、答弁書、審尋回答を含む)で、成功報酬(成功時のみ)は154,000円となります。通常、不使用取消審判を請求する場合には、請求する前に取消の成功可能性についての調査とコンサルティングを行いますが、インターネット調査(コンサルティング込み)は20,000円~、調査会社を入れる場合には50,000円~となります。また、往々にして口頭審理(準備書面の提出を含み99,000円(区分毎))となることがあり、もし口頭審理が東京以外の場所で開催される場合には、移動の交通費もお願いするところとなります。
使用の立証に関する判決例
社会通念上の同一の範囲
知財高裁平成28年(行ケ)10276号 (CREST事件)
【争点】被告の登録商標「Crest」は、被告が発行する書籍のシリーズに用いた使用商標B-1「新潮クレスト・ブックス」と社会通念上同一の商標であるか否か。
【判例】使用商標B-1のうち,商標の同一性を基礎づける中核的部分として把握される「クレスト」の片仮名部分を,本件商標と比較すると,両者は,片仮名と欧文字という文字種の違いからくる外観上の相違はあるものの,「クレスト」の称呼及び「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの観念をいずれも共通にするものであることからすると,使用商標B-1は,本件商標と社会通念上同一の商標であると認めるのが相当である。
立証された商品役務が取消請求の範囲か否か
最高裁平成21年(行ヒ)第217号(ARIKA事件)
【争点】自社ウエブサイトで関連する他社音楽CDの購入を案内する行為は第35類の「商品の販売に関する情報の提供」に該当するか否か。
【判例】第35類の「商品の販売に関する情報の提供」は、商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供する役務であり、例えば商品の販売実績や統計分析などの情報を提供することである。商品の最終需要者である消費者に対して商品を紹介することは「商品の販売に関する情報の提供」に該当しないというべきである。
東京高裁平成12年(行ケ)第109号(DALE CARNEGIE事件)
【争点】教育事業を行う通常使用権者が、その講座に登録商標を含む題する教材を提供していた場合に、指定商品「印刷物」について使用していることになるのか否か。
【判例】商標法50条の適用上、「商品」というためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならない。先の教材は、専ら本件講座の教材としてのみ用いられることを予定したものであり、本件講座を離れ独立して取引の対象とされているものではないというほかなく、したがって、これらを商標法上の商品ということはできない。
東京高裁平成12年(行ケ)第335号(HERTZ事件)
【争点】レンタカー事業を行う商標権者のカーレンタル業務の販促用品として文房具に登録商標を使用することは、指定商品「文房具類」についての使用に該当するか否か。
【判例】一般に、販促品に付された企業名は、専らその販促品とは別の当該企業が扱う商品、役務の宣伝広告のために付されるものであって、販促品を登録商標の指定商品とする限りについてみれば、これに接する取引者、需要者に対して、商標が一般に有する自他商品(役務)識別機能を有するものではなく、もとより、販促品の品質を保証し、その宣伝広告をするために付されるものではない。したがって、本件商標を指定商品につき使用したとの事実があったものとは認められない。
商標を付した商品の譲渡等の使用(商標法2条3項2号)
ここで譲渡等は所有権の移転を伴う販売などの行為を言いますので、見本を購入予定者に見せただけでは十分でないことになります。
知財高裁平成22年(行ケ)第10013号(エコルクス事件)
【争点】審判請求日前日に包装についての電子データを受信して、請求登録日における被告による発送行為は,広告の頒布行為或いは商品の包装に標章を付する行為と認められるか否か。
【判例】指定商品を現実に包装したものに標章を付し又は標章を付した包装用紙等で指定商品を現実に包装するなどの行為をいい,指定商品を包装していない単なる包装紙等に標章を付する行為又は単に標章の電子データを作成若しくは保持する行為は,商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」に当たらないものと解するのが相当である。
広告的使用(商標法2条3項8号)
広告、価格表若しくは取引書類に商標を付して展示・頒布する行為やインタネット回線で公開する行為は商標の使用となり得ます。取引書類には、注文書、納品書、送り状、出荷案内書、物品領収書、カタログ等が含まれます。また、広告には、新聞、雑誌、カタログ、パンフレット、ちらし、看板、街頭のネオンサイン、テレビCM、カレンダー、ウエブサイトのバナー広告等が含まれます。
知財高裁平成29年(行ケ)第10118号(PRTIMES事件)
【争点】登録商標(英字カナ2段書き)と社会通念上同一な商標を印刷したチラシ,その領収書及び納品書を以って特にポスティングに関する直接的な証拠がなくとも広告的使用を立証できるか否か。
【判例】本件チラシ,領収書及び納品書によって,本件チラシの頒布の事実が認定できるから,その他の取引に関する契約書,Eメールのやりとり,報告書等が証拠として提出されていないことは,本件チラシの頒布を認定することを妨げる事情とはならない。本件チラシの頒布時期は、本件商標の登録日から3年が経過する直前であり、また、本件チラシの頒布以外に本件商標使用の事実を証明する証拠は提出されていないが、そうであるからといって、直ちに本件チラシの頒布が本件商標の名目的形式的な使用行為にすぎないから、商標法50条の「使用」に該当しないということはできない。
知財高裁平成20年 (行ケ) 10224号(NEXTEX事件)
【争点】主な証拠として契約書等における契約が締結された事実、及び名刺及び封筒の存在を挙げて、それらから商標の使用を立証できるか否か。
【判例】名刺を使用して営業活動を行ったことを推認することができるほか、契約の相手方に対して関係書類を送付し,又は担当者等が持参して交付する際に、商号を記載した係る封筒を使用したことを推認することができる。名刺原稿に係る名刺及び封筒の存在を前提として、被告によるこれらの使用の事実を認定したことに誤りはない。
駆け込み使用か否か
知財高裁平成 28年 (行ケ) 10086号(LE MANS事件)
【争点】本件商標と同一の構成から成る別件商標についても、複数回にわたる不使用を理由とする商標登録の取消しを求める審判の請求や、無効審判の請求をしていることを以って、被告において本件不使用取消審判が請求さことが認識されていたか否か。
【判例】本件商標及び別件商標についての審判に係る経緯をもって、客観的にみて審判請求をされる蓋然性が高いものということはできず、被告らにおいて本件不使用取消審判が請求されることを認識していたということはできない。被告において本件不使用取消審判が請求されることを知った後のものであるとは認められないとして、商標法50条3項本文に該当しない旨を判断したことは,誤りといわざるを得ない。
取消訴訟における使用事実の新主張
最高裁昭和63年(行ツ)37号(CHEY TOI「シェトワ」)事件)
【争点】商標登録の不便用取消審判で審理の対象となるのは、その審判請求の登録前三年以内における登録商標の使用の事実の存否であるが、その審決取消訴訟においては、右事実の立証は事実審の口頭弁論終結時に至るまで許されるか否か。
【判例】審決取消訴訟においては、右事実の立証は事実審の口頭弁論終結時に至るまで許されるものと解するのが相当である。商標登録の不便用取消審判の請求があった場合において、被請求人である商標権者が登録商標の使用の事実を証明しなければ、商標登録は取消しを免れない旨規定しているが、これは、登録商標の使用の事実をもって商標登録の取消しを免れるための要件とし、その存否の判断資料の収集につき商標権者にも責任の一端を分担させ、もって右審判における審判官の職権による証拠調べの負担を軽減させたものであり、商標権者が審決時において右使用の事実を証明したことをもって、右取消しを免れるための要件としたものではないと解される。
大事な登録商標が取り消されないために(不使用取消審判を請求された方へ), 3:59