種苗法と商標法の関係🌱 重複を回避する2つのルール

種苗法と商標法

種苗法と商標法はそれぞれ登録制度を有しており、種苗法では人為的変異又は自然的変異に係る特性を固定し又は検定した品種について品種登録が可能とされ、これに対して商標法では、種子類、苗、野菜、果物、農産物の輸送 苗の仕立てなどの商品、役務について商標登録が可能です。法律上、権利の内容(客体)が異なるものの、名称部分で互いに他方の登録との重複した登録をさせないようになっています。

商標法上、品種名称との重複を回避するルール

種苗法による品種登録を受けた品種名称と同一又は類似の商標をその品種登録を受けた種苗と同一又は類似の商品や役務に使用する商標は登録できないことになっており(商標法4条1項14号)、異議申立理由(商標法43条の2)でもあり、5年の除斥期間の無効理由(商標法46条)となります。特に“他人の”とは規定されていないことから、商標登録の出願人と育成者権者が同一でも品種登録を理由に拒絶されることがあります。

種苗法上、登録商標との重複を回避するルール

種苗法では、出願にかかる品種名称について、出願品種の種苗に係る登録商標又は当該種苗と類似の商品やその種苗に係る役務に係る登録商標と同一又は類似のものである場合は、品種登録を受けることが出来ないものとされており(種苗法4条1項2号、3号)、農林水産大臣は、出願品種の名称が登録商標と同一又は類似とされるときは、出願者に対し、相当の期間を指定して、出願品種の名称を登録商標に類似しない名称に変更すべきことを命ずることができます(種苗法16条)。この名称変更は出願公表後でもその命令を受けることがあります。詳しくは、農林水産省の種苗登録ホームページをご覧ください。出願公表、品種登録については、官報に告示されますが、出願公表後の名称変更についても官報に告示されます。

種苗法と商標法

種苗法と関連する主な商品及び役務

出願前にクロスサーチが望ましいとされる商品、役務を挙げます。
第29類 豆
第31類 種子類、木、草、芝、苗、苗木、花、牧草、果実、野菜、海そう類、もみ米、麦、そば
第39類 農産物の輸送
第44類 苗の仕立て

特に商標出願が品種登録を理由に拒絶を受けることが多いとされる類似群は、33C01種子類、33D01木、草、芝、苗、苗木、花、牧草、盆栽 とされている。

種苗法の品種登録と商標法の商標登録

私共は、特許事務所ですので商標登録をお勧めしたいところですが、育成者にとって重要なのは、単なる名称の独占ではなく、育てた品種を他人に邪魔されずに流通させることと思いますので、種苗法の品種登録を進めることが重要です。一般に、品種登録には、DUS審査などの約30か月の審査がかかるとされていますので、準備をして品種登録の出願をしましょう。なお、品種登録を出願する際には、出願後に商標登録されていたという事態を未然に防止するために、商標調査をすることをお勧め致します。

種苗登録には、約30が月の時間がかかることから、種苗法の品種登録を例えば会社名+NN号というような登録とし、名前は別個に商標登録をすることも可能です。商標は出願から通常7,8ヶ月程度で登録になることから、先にその品種の植物に対して登録しておいて、ストックしておくことができます。使用せずにストックしておいてもその期間が3年未満であれば不使用取消審判の対象とはなりません。

登録品種の保護 (種苗登録のサイトより抜粋)

品種登録された育成者権の育成者権者は登録品種を独占的に業として利用(種苗の生産・販売等することができます。育成者権者以外の者が許諾を得ないで業として登録品種の種苗や収穫物等を利用した場合は、育成者権の侵害となり育成者権者はその利用の差止めや損害賠償を請求することができます。育成者権の存続期間は、登録日から25年(木本性植物は30年)です。

登録品種の利用行為は、具体的な内容は以下の通りです。
(1)種苗に係る行為
a.生産:種苗を生産すること
b.調整:きょう雑物の除去、精選、種子の洗浄、乾燥、薬品処理、コーティング等
c.譲渡の申出:カタログを需要者に配布し、注文を受けられるようにすることや店頭に品種名及び価格等を提示すること
d.譲渡:種苗の販売、植物園での入場者への配布等
e.輸出:種苗を外国に向け送り出すこと
f.輸入:外国にある種苗を国内に搬入すること
g.保管:a~fのための保管
(2)収穫物に係る行為
 種苗の段階で権利行使する適当な機会がなかった場合には、収穫物に関し(1)と同様の行為並びに「貸渡しの申出」及び「貸渡し」にも権利が及びます。ただし、「調整」は収穫物では考えられないため除かれます。
 貸渡しの例:植木、観賞用植物等のリース
(3)加工品に係る行為
種苗及び収穫物段階で権利行使する適当な機会がなかった場合には,収穫物から生産された加工品のうち政令で指定するものに関する(2)と同様の行為に権利が及びます。
政令で指定されている加工品(平成26 年4 月1日現在)
a.小豆の加工品:豆を水煮したもの(砂糖を加えたものを含む。)及びあん
b.いぐさの加工品:ござ
c.稲の加工品:米飯
d.茶の加工品:葉又は茎を製茶したもの

商標法第4条第1項第14号(種苗法で登録された品種の名称)
種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
種苗法第十八条及び第二十二条
第十八条 農林水産大臣は、品種登録出願につき前条第一項の規定により拒絶する場合を除き、品種登録をしなければならない。
2 品種登録は、品種登録簿に次に掲げる事項を記載してするものとする。
一 品種登録の番号及び年月日
二 品種の属する農林水産植物の種類
三 品種の名称
四 品種の特性
五 育成者権の存続期間
六 品種登録を受ける者の氏名又は名称及び住所又は居所
七 前各号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める事項
3 農林水産大臣は、第一項の規定による品種登録をしたときは、当該品種登録を受けた者に対しその旨を通知するとともに、農林水産省令で定める事項を公示しなければならない。
第二十二条 登録品種(登録品種であった品種を含む。以下この条において同じ。)の種苗を業として譲渡の申出をし、又は譲渡する場合には、当該登録品種の名称(第四十八条第二項の規定により名称が変更された場合にあっては、その変更後の名称)を使用しなければならない。
2 登録品種が属する農林水産植物の種類又はこれと類似の農林水産植物の種類として農林水産省令で定めるものに属する当該登録品種以外の品種の種苗を業として譲渡の申出をし、又は譲渡する場合には、当該登録品種の名称を使用してはならない。

種苗法 (平成10年法律第83号)
種苗法の改正について

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