特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイト から転載しております。
本願商標「「Club Access24/クラブ・アクセス24」×引用商標「ACCESS/アクセス」
1.異議番号 異議2001-90201(商標登録第4441150号)
2.商 標 「Club Access24/クラブ・アクセス24」
3.商品区分 第28類:ゴルフクラブ 他
4.適用条文 商標法第4条第1項第15号
5.異議理由 「Club Access24/クラブ・アクセス24」は
異議申立人の「ACCESS/アクセス」と出所混同を来す。
商標登録第4441150号
引例商標・商標登録第1961916-2号
拒絶理由通知 意見書における反論
(1)取消理由通知書の中で、審判官殿は、本件の指定商品中、第28類の「キャディーバッグ・ゴルフクラブ・ゴルフクラブ用カバー・グリーンマーカー・ティー・ゴルフ手袋・ゴルフボール・その他のゴルフ用具,その他の運動用具」について、本件商標の登録を取り消すべきものとの認定をしております。
そして、その理由として、
(a)異議申立人であるブリジストンスポーツ株式会社の商標「ACCESS」「アクセス」(以下「引用商標」という)の周知・著名性を認め、一方で、
(b)本件商標「Club Access24/クラブ・アクセス24」の「Club/クラブ」の部分をゴルフクラブをあらわすものとし、また「24」の数字を品番やサイズ等をあらわすに過ぎないものとして、「Access/アクセス」の部分が注目されて取引されると認定し、本件商標は、異議申立人の「ACCESS/アクセス」と出所の混同を来すと結論付け、商標法第4条第1項第15号に該当するとしております。しかしながら、このような判断は誤った周知・著名性の認定に基づくもので、しかも本件商標の構成を良く理解せずに行ったものであって、到底納得することは出来ません。以下に意見を申し述べます。
(2)商標法第4条第1項第15号の判断時点について
今回審判官殿が拒絶の根拠として挙げた商標法第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれのある出願商標を排除する規定でありますが、この15号の規定は、査定時にこれに該当していることを前提とし、且つ商標登録出願時点においても該当していた場合に適用される規定であります。換言すれば、査定時に15号に該当しても、出願時に該当していなければ適用されない規定であります(商標法第4条第3項)。
(3)「ACCESS」「アクセス」の周知・著名性の有無について
取消理由通知書の中で、審判官殿は、『申立人の提出した証拠によれば、申立人は、主に商品「ゴルフクラブ、ゴルフボール、キャディバック」について「アクセス」及び「ACCESS」の文字からなる商標(引用商標)を使用しており、これらの商品については、雑誌、テレビを通じて広告、宣伝をし、北海道、東京、石川など広範な地域において販売をした結果、引用商標は、本件商標の登録出願の時には我が国の取引者、需要者の間で周知、著名に至っていたものと認められ、その事実は本件商標の査定時においても継続していたものと推認することができる。』としております。
しかしながら、テレビを通じて宣伝広告がなされたのは、甲第8号証及び甲第9号証によれば、2000年(H12)4月1日から5月31日までの2カ月間であり、これは本件商標出願日の1999年(H11)10月19日よりも半年も後のことであります。従って、出願時点における周知・著名性を立証する材料として、甲第8号証及び甲第9号証のテレビCMは証拠能力を欠くものであります(前記した商標法第4条第3項)。査定時の周知・著名性の立証であれば兎も角、出願時の周知・著名性の立証にテレビ広告の事実を証拠とすることは出来ません。テレビでの宣伝広告をも証拠として本件出願時点における引用商標の周知著名性を認定している審判官殿の判断は明らかに誤解であります。そして、このような時期的な点に注意して提出された証拠を見てみますと、出願時点の周知著名性を立証するための証拠として証拠能力を有すると思われるものは、甲第12号証の雑誌「パーゴルフ」の一部(同号証の1~9,11~13)と、甲第13号証の雑誌「ゴルフダイジェスト」の一部(同号証の1~19)のみであります。他の証拠は上記テレビ放送を含め、全て本件商標の出願時点(1999年10月19日)よりも後に発行された雑誌等の証拠であり、査定時ならば兎も角、少なくとも出願時点における周知著名性の証拠としては証拠能力がありません。
即ち、甲第4号証の「ゴルフ用品カタログ」は2001年1月頃発行、甲第5号証の雑誌「ALBA」は2001年3月8日発行、甲第6号証の雑誌「ゴルフダイジェスト」は2001年3月20日発行、甲第7号証の雑誌「Golf Classic」は2001年4月号であり、また、甲第8号証の電通発行に基づくテレビコマーシャルは2000年4月16日~同5月14日であり、甲第9号証の株式会社アイアンドエス・ビービーディーオー発行の証明に基づくテレビコマーシャルは2000年4月1日~同5月31日であります。また、甲第10号証の日経産業新聞は2000年7月27日発行であり、この中の『スイングが遅いゴルファー対象の「アクセスブランド」でも、アイアンの「HD635」が好調だった。』との記載は、これをもって周知著名性を立証するような性質のものではなく、これは単にアクセスブランドの中でアイアン「HD635」の売れ行きが99年は好調だったということを端的にあらわしているに過ぎないもので、それ以上のものではないと考えます。むしろ、この記事の中には、「上級者向けブランドのツアーステージV3000が業界のトップ級に育った」との記載があり、こちらこそが有名なのではなかろうかと考えます。なお、甲第11号証には取扱店リストなるものがありますが、いつの時点のものかが不明であります(これは、ごく最近のものではないかと思われます)。しかも、「ACCESS取扱店リスト」とありますが、「ACCESS」の何の商品を取り扱っている店舗なのか全く不明であります。さらに、甲第14号証の雑誌「Golf Classic」は2000年4月1日発行、甲第15号証の雑誌「Choice」は2000年5月号、甲第16号証の雑誌「Forbes」は2000年6月号のものであります。
このように見てくると、提出された証拠のうち、本件商標の出願時点における引用商標の周知・著名性を立証する証拠能力ある証拠は、甲第12号証の雑誌「パーゴルフ」の一部(同号証の1~9,11~13)と甲第13号証の雑誌「ゴルフダイジェスト」の一部(同号証の1~19)のみであり、他の証拠は全て本件商標出願以降のものであります。特に、宣伝広告能力の優れたテレビCM(甲第8,9号証)なども、出願時点における周知著名の証拠にはなり得ません。しかも、前記甲第12,13号証で掲げているのは、圧倒的に「ゴルフクラブ」の宣伝であり、偶に「ゴルフボール」が載せられておりますが、ご指摘の「キャディーバック」についての広告は全くありません。「キャディーバック」の掲載は、本件商標の出願日より1年以上も後の2001年1月頃発行の「ゴルフ用品カタログ」(甲第4号証)だけであります。
以上の次第でありますので、取消理由通知書の中で、『申立人の提出した証拠によれば、申立人は、主に商品「ゴルフクラブ、ゴルフボール、キャディバック」について「アクセス」及び「ACCESS」の文字からなる商標(引用商標)を使用しており、該商品については、雑誌、テレビを通じて広告、宣伝をし、北海道、東京、石川など広範な地域において販売をした結果、引用商標は、本件商標の登録出願の時には我が国の取引者、需要者の間で周知、著名に至っていたものと認められ』るとした認定は、明らかに誤りであります(特に、テレビでの宣伝広告によって、引用商標は、既に本件商標出願時点において周知・著名になっていたというのは全くの間違いです)。
ところで、本件出願日以前の証拠である甲第12号証の雑誌「パーゴルフ」の一部(同号証の1~9,11~13)と甲第13号証の雑誌「ゴルフダイジェスト」の一部(同号証の1~19)を証拠として採用したとしても、周知著名の立証として十分であるか甚だ疑問であります。この雑誌による宣伝広告の開始は本件商標出願の僅か1年前に当たる1997年11月25日からのことであり、商品「ゴルフクラブ」に限ってみても、本件出願日までの僅か1年間の雑誌による広告のみで、商標法第4条第1項第15号を適用して他人の出願商標(全体としては非類似の商標)を拒絶する程の周知・著名性を獲得したとは、到底思えません。まして、ゴルフクラブ以外のゴルフボールとか、キャディーバッグとか、更にはそれ以外のゴルフ用具やその他の運動具に至るまで、誤認混同を起こさせるほどの周知著名性を引用商標が獲得していたとは、到底思われません。
1999年暮れの時点では、まだ十分に取引者・需用者に「ACCESS」が浸透していなかったからこそ、異議申立人は、その翌年である2000年の春になって、今までにないような多額の予算を費やしてテレビによるコマーシャルをおこない、更にはゴルフ雑誌以外の一般雑誌への広告掲載に踏み切ったのではないかと推察されます。
(4)本件商標の構成態様について
本件商標の構成は、前述のように、二段に「Club Access24/クラブ・アクセス24」と表記してなるものでありますが、審判官殿は、本件商標のこの態様に対し、「Club/クラブ」はゴルフクラブの略称を表し、数字の「24」は品番・サイズ等を表すものであるから、取引者・需用者は本件商標の「ACCESS」及び「アクセス」の文字に注目して取り引きし、引用商標「ACCESS」「アクセス」と出所の混同を起こすおそれがあると判断しております。
しかしながら、この判断は、分断すべきでない商標を予見をもって短絡的に分断した結果起こった誤解であります。
本件商標は、ゴルフクラブの「クラブ」や、品番・サイズ等の「24」から成るものではなく、同じ目的の人たちが作った団体を指称する「クラブ」と、そのクラブへの「アクセス」が「24」時間可能であることを意味する「アクセス24」の文字から成るものです。そして、本件商標は、この態様より、「クラブへのアクセスが24時間可能」(「クラブアクセス24時間」)とか、「24時間アクセス可能なクラブ」とか、「いつでもアクセス可能なクラブ」とかを端的にイメージさせようとしたものであります。
そして、取引者・需要者も本件商標の構成態様「Club Access24/クラブ・アクセス24」を見て、「クラブへのアクセスが24時間可能」(「クラブアクセス24時間」)とかを観念し、素直に「クラブアクセスニジュウヨン」と一連に称呼するものと思われます。全体として特定の観念をイメージさせる商標は、全体を一体のものとして把握するのが自然であり、本件商標は一連一体に把握してこそ特定の観念を生じさせるものでありますので、各単語を分断するような不自然な把握の仕方はなされるはずはありません。
そして、本願商標は、上段の「Club」と「Access」の単語間にやや間隙を開け、下段の「クラブ」と「アクセス」の間に中黒「・」を介した構成ではありますが、このような態様を有することを理由に、両者を分断して別々に把握するような捉え方や、「Club/クラブ」や「24」に商標の要部を認めず「Access/アクセス」の部分のみを抽出するような捉え方をすべきではありません。このような態様の商標でも、全体が軽重の差なくバランス良く配置されており、しかも全体として特定のイメージを観念させるようなものは、一体不可分の商標と捉えるのが自然であります。なお、例えば、左右の文字間に間隔を開けて配されたものでも一体の商標として把握されている商標は、例示するまでもなく枚挙にいとまがありません。
本件商標は、全体として一個不可分の観念を生じさせる1つの商標であり、全体としてとらえて十分に自他商品等識別力を発揮するものでありますし、全体を称呼して決して冗長でなく、むしろ一気に称呼して語呂良く一連に「クラブアクセスニジュウヨン」(クラブアクセス24時間)と称呼・観念できる態様のものでありますので、あくまでも一連一体の商標と把握すべきです。
審判官殿は、このように1つの本件商標から、無理矢理に「Access/アクセス」の部分を抽出して要部と把握し、一方で、引用商標の「ACCESS」「アクセス」は周知著名であると把握して(この認定は前述したとおり大いに疑問です)、出所の混同が生じるという認定をしておりますが、そもそも「ACCESS」「アクセス」の言葉は、コンピュータ等にアクセスするというような意味で普通一般に使われている言葉であり、異議申立人が初めて作ったような造語ではありません。
本件商標は、その普通一般に存在する既成語である「Access/アクセス」の文字を用い、他の既成語である「Club/クラブ」及び「24」の文字と組み合わせて、一つの商標を構成したものであります(その意味で、本件商標は違和感なく全体を1つの商標と把握できるはずです)。例えば、「SONY/ソニー」とか、「Panasonic/パナソニック」とか、あるいは「DoCoMo/ドコモ」とかのように、元々が造語であればまだしも、この「ACCESS」「アクセス」の言葉は、日本でも広く使用されて馴染みのある既成語なのでありますから、譬え引用商標が周知著名であったとしても、本件商標「Club Access24/クラブ・アクセス24」を見た取引者・需用者は、その中から「Access」「アクセス」のみを抽出するような見方をするはずもなく、本件商標は引用商標の単なる「ACCESS」ないし「アクセス」と出所の誤認混同を来すようなことはあり得ないことであります。
(5)結語
以上の通り、商標法第4条第1項第15号は、①本件商標査定時に該当していても、出願時に該当していなければ適用されない規定であり(商標法第4条第3項)、②また、引用商標の「ACCESS」「アクセス」は、本件商標査定時は兎も角としても、出願時において周知著名性があったというのは甚だ疑問であり(出願時点における周知著名性の判断資料は甲第8,9号証の一部のみである)、③更に、本件商標は、同じ目的の人たちが作った団体を指称する「クラブ」と、そのクラブへの「アクセス」が「24」時間可能であることを意味する「アクセス24」の文字から成るものであって、常に「クラブアクセスニジュウヨン」と一連に称呼され、且つ「クラブへのアクセスが24時間可能」(「クラブアクセス24時間」)と観念されるものでありますので、これらを総合的に勘案すれば、本件商標は引用商標と出所の混同を起こすおそれはないと思料します。
そして、仮に、引用商標の「ACCESS」「アクセス」がゴルフクラブについて本件出願時点で周知著名だったとしても、既成語でしかない「Access」「アクセス」を含む本件商標は、あくまでも全体として1つの観念をイメージさせ一連に称呼されるとみるのが自然でありますので、本件商標は常に一体不可分の商標として称呼・観念され、「Access/アクセス」の文字のみが注目されて把握されるようなことはないと考えます。
従って、本件商標「Club Access24/クラブ・アクセス24」は、異議申立人の所有する単なる「ACCESS/アクセス」の商標と本件出願時点において誤認混同を起こすようなことはなく、査定時の他に、出願時における周知・著名性を要求する商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものではないと考えます。よって、再度御審理いただき、本件の異議申立は理由がないとの決定を賜りますようお願い申し上げます。
※結局、本件からは「クラブアクセスニジュウヨン」或いは「クラブアクセス」の称呼のみが生じ、単なる「アクセス」の称呼は生じないと認定された。また、「ACCESS/アクセス」の著名性も否定。
商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次
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