特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標「DoMobile」×引用商標「ドゥ-/Do」
1.出願番号 商願2002-21771
2.商 標 「DoMobile」
3.商品区分 第9類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 登録第2091939号商標「ドゥ-/Do」、同第4186882号「Do」と類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
(1)拒絶理由通知書において、本願商標は、A.登録第2091939号(商公昭63-027115)の商標(S63.11.30登録)(引用商標1)、及びB.登録第4186882号(商願平09-109269)の商標(H10.9.11登録)(引用商標2)と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定された。
しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えるので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。
(2)まず、本願商標は、欧文字の「Do」と「Mobile」を結合して、「DoMobile」と一連に書して成るものであるが、引用商標1は、上段に片仮名文字の「ドゥー」を配し、下段に欧文字の「Do」を配して、上下二段に「ドゥー/Do」と書したものである。また、引用商標2は欧文字で「Do」(oをやや図案化)と書したものである。
したがって、本願商標と引用商標1,2とは、外観上類似することはない。
(3)次に、観念の点についてみると、本願商標の「DoMobile」は、「Do」と「Mobile」の語を一体不可分のものとして結合した造語商標であって、特定の観念を生じることはない。即ち、本願商標は、あくまでも「せよ」とか、「する」とかの意味を有する「Do」の英文字と、「動きやすい」とか、「移動可能な」とかの意味合いを有する「Mobile」の英文字とを結合して一連に書した商標であって、それぞれの言葉に上記意味合いはあるものの、本願商標はあくまでもこれらが一体となり分離して認識することのできない結合商標(造語商標)であって、全体として特定の観念を生じさせるものではない。これに対し、引用両商標は、単なる「Do」であって、肯定命令文を強調したり、あるいは、「する」というような意味合いを表す文字でしかない。
したがって、本願商標と引用商標とは、観念上比較すべくもなく、当然ながら非類似の商標である。
(4)そこで、以下、称呼の点につき検討する。
(4-1)本願商標は、上述のように、英文字の「Do」と「Mobile」を結合して、「DoMobile」と一連に書して成るものであって、全体を称呼して語呂よく「ドゥモバイル」と一連に称呼できるものであり、あえて前後分断して称呼すべき格別の事情もないことから、本願商標は一連に「ドゥモバイル」とのみ称呼されるとみるのが自然である。単に「ドゥ」とか「モバイル」とかの称呼は生じないとみるべきである。この点に関し、審査官殿は、本願商標を前段と後段に分離し、後段の「Mobile」の部分は商標の要部ではなく、前段の「Do」の部分にこそ商標の要部があるとみてこれを抽出し、単に「ドゥ」と称呼される場合もあると判断し、引用商標1,2を引いてきたのではないかと思料するが、このように、本願商標の「DoMobile」から、その「Do」の部分のみを抽出して称呼するというのは妥当な見方ではない。本願商標後段の「Mobile」の部分も指定商品との関係で品質・用途等を表す言葉ではなく、商標の要部を構成する重要な要素であり、「Do」と切り離して考えることは出来ない。本願商標「DoMobile」は、あくまでも「Do」と「Mobile」とを結合して、その各文字を同書、同大、同間隔に軽重の差なく外観上まとまりよく一体的に表したもので、全体として特定の観念を生じない造語商標である。それ故、前段部分「Do」と後段部分「Mobile」とに軽重の差を設けて、前段部分「Do」のみを抽出して称呼するようなことはすべきではない。しかも、本願商標は5音構成からなるもので、全体として一連に称呼して冗長にならず、語呂もよく決して称呼しにくい商標ではない。よって、本願商標の称呼は、あくまでも一連の「ドゥモバイル」のみである。
これに対し、引用商標1,2はいずれも、その態様より「ドゥ」とのみ称呼されるものであることから、両者は「モバイル」の称呼の有無により、明瞭に聴別でき、称呼上も決して紛れることはないと思料する。
(4-2)ところで、過去の商標登録例を見ると、同一又は類似の指定商品群(特に類似群11C01)において、後段に「MOBILE」「Mobile」の文字を有するか否かの違いがあるだけで他の構成部分を共通にする商標同士は、以下の通り、別法人によって登録されているのが分かる。
例えば、以下の登録例がある。
1.第2611197号「JET」(H5.12.24登録)(キャノン株式会社)(第1号証)と、第4480739号「JET-MOBILE」(H13.6.8登録)(株式会社日本カードネットワーク)(第2号証)。
2.第3265457号「STAR」(H9.2.24登録)(スター精密株式会社)(第3号証)と、第4158206号「STARーMobile」(H10.6.19登録)(住友電気工業株式会社)(第4号証)。
これらのことからも分かるように、本願商標の後段に使われているのと同じ「Mobile」の文字は、今までの審査において、商標の要部を構成する文字の一部として扱われており、それが有るのと無いのとでは別商標の扱いがなされているのである。
つまり、この場合、仮に「MOBILE」「Mobile」が商標の要部ではないと判断されていたならば、上記商標のうち、後願に係る第2,4号証の商標は拒絶されていたはずであるのに、現実には登録されているのである。これは「Mobile」の文字も品質・用途表示などではなく商標の要部であると判断されたからに他ならず、他の文字と結び付いて全体として分離できない一体の結合商標を構成すると理解されたからに他ならない。本願商標の「DoMobile」とて、同様である(分離できない結合商標である)。
(4-3)そして又、過去の商標登録例においては、「Do」の文字を持つ商標として、以下のようなものが存在する。
(a)登録第2543170号「DoLINK」(H5.5.31登録)(株式会社大正堂)(第5号証)
(b)登録第2595894号「Do Talk」(H5.11.30登録)(日本電信電話株式会社)(第6号証)
(c)登録第3174388号「Do Arts」(H8.7.31登録)(ロゴジャパン株式会社)(第7号証)
(d)登録第4025910号「Do Scan」(H9.7.11登録)(オリンパス光学工業株式会社)(第8号証)
(e)登録第4203533号「DoARC/ドゥアーク」(H10.10.23登録)(株式会社ダイヘン)(第9号証)
(f)登録第4204399号「DoCard/ドゥーカード」(富士ゼロックス株式会社)(H10.10.23登録)(第10号証)
(g)登録第4318483号「DoMaster/ドゥマスター」(H11.9.24登録)(松下電送システム株式会社)(第11号証)
(h)登録第4368969号「DoCAM」(H12.3.17登録)(ティーディーケイ株式会社)(第12号証)
(i)登録第4368969号「Do map/ドゥマップ」(H14.3.8登録)(株式会社ゼンリンデータコム)(第13号証)
これらの商標は全て語頭部分に「Do」を含むものであるが、上記引用商標1,2の「Do」と並存しているわけである(特に、昭和63年登録の上記引用商標1「ドゥー/Do」の存在にも拘わらず、全て登録されている)。もしこれら(a)~(i)の商標が、一体不可分の商標ではなく、前段「Do」の部分を要部として抽出できる商標と判断されていたならば、これら(a)~(i)の商標と引用商標1,2とは、要部「Do」を共通にする類似の商標ということで、並存登録などあり得なかったであろう。これら(a)~(i)の商標は、全体が一体不可分の商標と判断されたからこそ、登録されたのである。本願商標「DoMobile」とて同様であろう。本願商標「DoMobile」も、「Do」の部分のみをとらえて、称呼され、観念されるようなことはないとみるべきである。本願商標はあくまでも、「ドゥモバイル」とのみ一連に称呼されるべきもので、引用商標1,2の称呼である「ドゥ」と類似することはない。
(5)以上のように、本願商標と引用商標1,2とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も「モバイル」の称呼の有無によって語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料する。