特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標:「CMBoard/シーエムボード」
1.出願番号 商願2003-78024
2.商 標 「CMBoard/シーエムボード」
3.商品区分 第9類:電子計算機用プログラム (←指定商品限定した)
4.適用条文 商標法第3条第1項第3号,同第4条第1項第16号
5.拒絶理由 本願商標は、全体として「コマーシャルに用いる板状の商品」程の意味合いを容易に認識させるので、その指定商品中「板状の商品」、例えば「電光掲示板」に使用するとしても、「コマーシャルに用いる電光掲示板」であることを理解させるに止まり、それ以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
拒絶理由通知 意見書における反論
(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、本願商標は“「コマーシャル。コマーシャルメッセージ」を意味する略語である「CM」の欧文字と、「板」の意味を有し、例えば「スコアボード」のように「掲示板」や「板状の商品」を意味する語としても広く使用されている「Board」の欧文字とを一連に書した「CMBoard」の文字と、その表音と認められる「シーエムボード」のカタカナ文字とを上下2段に書してなるものであり、「CM」、「シーエム」、「Board」、「ボード」の語のいずれもが、広く親しまれている語であることから、全体からは「コマーシャルに用いる板状の商品」程の意味合いを容易に認識させるものです。そうとすれば、本願商標は、その指定商品中「板状の商品」、例えば「電光掲示板」に使用するとしても、「コマーシャルに用いる電光掲示板」であることを理解させるに止まるものですから、単に商品の品質・用途を表示するにすぎないものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますので、商標法第4条第1項第16号に該当します。”と認定された。しかしながら、本出願人は、本願商標の「CMBoard/シーエムボード」を本願指定商品に付して使用しても、決して需用者・取引者をして、商品の品質、用途を表すにすぎないものではなく、充分に自他商品識別標識として機能するものと思料するので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。なお、本出願人は、本日付けで手続補正書を提出し、本願の指定商品を「掲示板」や「板状の商品」とは全く関係のない「電子計算機用プログラム」に変更した。
(2) 本願商標は、願書に表示した商標見本からも明らかなように、英文字と片仮名文字で「CMBoard/シエムボード」と二段併記した態様からなるもので、指定商品を第9類「電子計算機用プログラム」とするものである。然るに、本願商標は、審査官殿もご指摘のように、「CM」と「Board」の言葉の意味合いを考えれば、なるほど全体として「コマーシャルに用いる掲示板」程度の意味合いを有するのかも知れない。しかしながら、一般的には、今般限定した「電子計算機用プログラム」との関係において、そのような意味合いを表す言葉(熟語)として、「CMBoard/シエムボード」が理解され、確立されているという事実はない。「CMBoard/シエムボード」が、「電子計算機用プログラム」を表す言葉としてコンピュータ・電子・通信等を扱う業界において確立され流通されていればまだしも、そのような事実がない以上、本願商標を以て、単に品質・用途表示だと言うことはできない。そして仮に、本願商標を「コマーシャルに用いる掲示板」という意味に取ったとしても、それが如何なる商品を表すものなのか定かでないし、ましてや、指定商品「電子計算機用プログラム」との関係で、如何なるコンピュータプログラムを想定しているのか定かでない。それ故、取引者・需用者が、「電子計算機用プログラム」に使用した本願商標をみて、例えば、これは「コマーシャルに用いる電光掲示板」だとか、あるいは、「コマーシャルに用いる電光掲示板用のソフトウェア」だなどと、誰が理解するであろうか。本願の指定商品はあくまでも「電子計算機用プログラム」であり、この無形の電子計算機用プログラムにあっては、「Board/ボード」が「掲示板」ないし「板状の商品」を意味することはないと思料する。
(3) このことは、類似群11C01の商品分野において、「Board」「ボード」を用いた商標が、以下のように登録されている事実からも窺い知ることができる。
(A)登録2265121 「メガボード\MEGABOARD」
(B)登録3174832 「SMARTBOARD\スマートボード」
(C)登録4038849 「MusicBoard」
(D)登録4059464 「POWER BOARD」
(E)登録4153450 「Partitionbord\パーティションボード」
(F)登録4194389 「リモートボード\remoteboard」
(G)登録4200706 「Stationboard\ステーションボード」
(H)登録4206317 「Contactboard\コンタクトボード」
もし仮に、審査官殿の考え方に従うのであれば、(A)の「メガボード\MEGABOARD」は「大容量用の電光掲示板」程度の、(B)の「SMARTBOARD\スマートボード」は「細くすらりとした電光掲示板」程度の、(C)の「MusicBoard」は「音楽ボード盤ないし音楽電光掲示板」程度の、(D)の「POWER BOARD」は「出力ボード盤ないし出力電光掲示板」程度の、(E)の「Partitionbord\パーティションボード」は「仕切りボード盤」程度の、(F)の「リモートボード\remoteboard」は「遠隔操作用の電光掲示板」程度の、(G)の「Stationboard\ステーションボード」は「局となるボード盤ないし電光掲示板」程度の、(H)の「Contactboard\コンタクトボード」は「交信ボード盤ないし電光掲示板」程度の、それぞれ意味合いを生ずるということになるのであろう。そして、その意味合いからすれば、これらをその指定商品について使用するときは、審査官の考え方に従えば、これに接する取引者・需用者は、単に該商品の品質・用途を表示するにすぎないということになって拒絶と言うことになるのであろうが、実際には登録されているのである。このように、審査官殿のような見方をすれば、一見、品質・用途表示的な商標と思われるものであっても、実際には、本願商品分野において、拒絶されることなく登録されている例は多い。然るに、これらの商標が登録できて、本願商標の「CMBoard/シーエムボード」が、登録できないとされるいわれはない。これらの商標を構成する「MEGA」、「SMART」、「Music」、「POWER」、「Partition」、「remote」、「Station」及び「Contact」など語も、我々日本人には「CM」同様に広く親しまれている語である。本願商標は、あくまでも「CM」「シーエム」と「Board」「ボード」が結合して一体となった造語商標であり、一般的に「電子計算機用プログラム」の品質・用途表示として流通し機能しているわけではないのであるから、十分に自他商品識別力を有し、登録適格なものと思料する。
(4) 以上の次第であるので、本願商標の「CMBoard/シーエムボード」は、既存の前記登録商標などと同様に自他商品識別力を有し、充分に登録適格性を有するものと思料する。