商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#89

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「ラカントールゼロ」× 引用商標「ラカントール」

1.出願番号  商願2008-62705
2.商  標   「ラカントールゼロ」
3.商品区分  第30類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  商願2006-23988と類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録願2008-062705
出願商標・商標登録願2008-062705
引用商標・商標登録願2006-23988
引用商標・商標登録願2006-23988

拒絶理由通知 意見書における反論

【意見の内容】
(1) 拒絶理由通知書において、本願商標「ラカントールゼロ」は、商願2006-23988「ラカントール」(第30類 調味料、沖縄県糸満市字塩平804番地 株式会社ビレモ沖縄)の商標(以下「引用商標」という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものであるから、これが登録されたときには、商標法第4条第1項第11号に該当することになるとのご指摘を受けましたが、本出願人は、これに対し、意見を申し述べます。

(2) 引用商標を見ると、商標が「ラカントール」で、指定商品が第30類の調味料ですので、本願商標との関係においては、成る程、商標・商品ともに類似の範囲に属し、引用商標が登録された場合には、本願商標の登録は難しいであろうことは、容易に理解できます。
しかしながら、引用商標は、先願の地位を有する状態にあるとはいえ、この出願は既に1年以上も前の平成18年11月1日に登録査定がなされながら(同年11月11日に発送)、未だに商標登録料の納付がなされていない出願であり、本来であればとっくに出願却下処分が下されていてよい出願です。
 この引用商標については、もちろん小田審査官に責任があるわけではありませんが、この引用商標が先願の地位を有する状態となっているのは、御庁がいつまでもこの出願について却下処分を出さずに放置しているからであり、不作為の怠慢に起因するものであります。それ故、早々に引用商標の処分を確定していただいて、本願商標を速やかに登録査定いただくよう、強く要望いたします。

(3) 法律上は「登録査定の謄本の送達から30日以内に商標登録料を納付しなければならない」となっておりますが(商標法第41条1項)、一方で、出願人の請求により30日間は延長できることになっております(商標法第41条2項)。また、実務上は、登録査定の謄本の送達から30日を経過しても、職権により、さらに2ヵ月ほど納付の猶予を認めております。そして、このような猶予の期間が経過した後は、納付の催促をし、それでも納付しなければ、納付の意思無しとみて、その案件を直ちに「出願却下処分」にしてしまうのが通例であります。そして、このような取扱いの下においては、登録料の納付がない場合、登録査定から5ヵ月ほどで、出願却下処分がなされております。
 然るに、登録査定から1年以上も経つのに、この引用商標には未だに出願却下処分がなされておらず、これは、法律を誠実に執行すべき行政(特許庁)の怠慢ではないかと思います。法律上は、あくまでも、「登録査定の謄本の送達から30日以内に商標登録料を納付しなければならない」(商標法第41条1項)と規定されておりますので、登録査定から1年以上も経つ引用商標について、登録料未納にも拘わらず、いまだに出願却下処分がなされていないというのは、怠慢以外の何者でもないように思います。登録料未納の引用商標については早々に出願却下されるべきであり、そうでなければ、後願に係る出願人の権利を不当に制限することになり、また、国民の商標選択の余地を不当に狭めることになり、公平性の観点からも許されるべきものではありません。職権で延長するにしても、1年以上も延長というのは行き過ぎであり、そのような出願に基づいて本願商標を拒絶しようとするのは、著しく不条理であり、納得できません。
 何よりも、登録査定謄本発送後1年以上に亘る放置は、「登録査定の謄本送達後30日以内に登録料を納付しなければならない」とした法律の趣旨をないがしろにするものであり、許されるものではないと考えます。

(4) 以上の次第でありますので、本願商標は、引用商標を出願却下処分にした後、速やかに登録査定されるべきものであります。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#88

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「プロジーヌ/prosine」× 引用商標1)「プリゼーヌ」2)「Plaisir/プレジール」

1.出願番号  商願2008-40308
2.商  標   「プロジーヌ/prosine」
3.商品区分  第29類、第30類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  登録第4222606号ほかの商標と類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5203204号
出願商標・商標登録第5203204号
引用商標・商標登録第4222606号
引用商標・商標登録第4222606号
引用商標・商標登録第4509129号
引用商標・商標登録第4509129号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、「本願商標は、1.登録第4222606号(商願平 9-029469)、2.登録第4509129号(商願2000-120253)の登録商標と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」と認定されました。
 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標1,2とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似せず、取引者・需用者をして出所の混同を起こさせることはないと思料しますので、斯かる認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2) 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、「プロジーヌ」の片仮名文字と図形を絡めた「prosine」の英文字とを上下二段に配置し「プロジーヌ/prosine」と書してなるものでありますが、引用商標1は「プリゼーヌ」の片仮名文字からなり、また、引用商標2は英文字と片仮名文字で「Plaisir/プレジール」と二段書きしてなるものであり、それぞれ格別の意味を持たない造語商標であります。したがって、本願商標と引用商標1,2とは、外観上類似しないことは明らかであるとともに、観念上も類似することはありません。

(3) そこで、以下、称呼の点につき検討します。
 本願商標は、「プロジーヌ/prosine」と書した態様より、「プロジーヌ」の称呼を生じるものであります。
 これに対し、引用商標1は「プリゼーヌ」と書した態様より「プリゼーヌ」の称呼を生じ、引用商標2は「Plaisir/プレジール」と書した態様より「プレジール」の称呼を生じるものと思料します。
 (3-1) そこで、まず本願商標の称呼「プロジーヌ」と引用商標1の称呼「プリゼーヌ」を比較するに、両者は第2音部分において「ロ」と「リ」、第3音部分において「ジ」と「ゼ」の差異を有します。つまり、共に「ラ行」(2音目)と「サ行」(3音目)に属する音ではありますが、それぞれ「ロジ」と「リゼ」の二文字の違いがあり、特に第3音目の「ジ」と「ゼ」は長音(ー)を伴って、比較的強く発声される音であり、全体が僅か4音という短い音構成の中にあって、この「ロジ」と「リゼ」の2音の違いは称呼全体に及ぼす影響が非常に大きく、両者は称呼上明確に区別し得る商標であると考えます。
(3-2) また、本願商標の称呼「プロジーヌ」と引用商標2の称呼「プレジール」を比較するに、両者は第2音部分において「ロ」と「レ」、第4音部分において「ヌ」と「ル」の差異を有します。
 然るに、両商標は共に僅か4音という比較的短い音構成からなるもので、そのうちの半分である2音が相違し(「ロ」と「レ」、「ヌ」と「ル」)、しかも、2音目の「ロ」と「レ」は、子音「r」を共通にするラ行に属する音ではありますが、その母音「オ(o)」と母音「エ(e)」は比較的遠い音でありますので、この「ロ」と「レ」は識別しやすい音ということができます。また、4音目の「ヌ」と「ル」は母音が共に「ウ(u)」であり且つ語尾音ではありますが、長音のすぐ後に位置して比較的明瞭に強く発声される音であり、しかも「ヌ」は有声の通鼻音、「ル」は有声の弾音であって響きの強い音として聴取されるという差異があります。
 然るに、「ロ」と「レ」、「ヌ」と「ル」が聴別できないほど日本人の聴覚が劣っているとは思えず、本願商標と引用商標2とは、「ロ」「レ」の違いと相俟って、この「ヌ」と「ル」の違いによっても、比較的短い4音構成という商標においては全体の称呼に及ぼす影響が大きく、この2音の違いによって語感語調が全く異なったものになるものと思料します。つまり、4音構成からなる商標にあって、その半分にあたる上記2音が異なるということは非常に大きな意味を持つものであって、その2音の違いによって称呼上十分に識別できるものと思料します。
(3-3) 殊に、昨今のように、食品の産地偽装、製造日偽装、食品への薬品混入、違法添加物使用等が話題となり、マスコミ等にも大々的に取り上げられ、食料・食品の問題が国民的な関心事となっている状況下においては、飲食物を取引・購買するときの取引者・需要者の注意力は相当に高まってきているとみることができ、取引者・需要者は深い観察力のもとに食品の取引行動を行っていると思われます。また、昨今では健康志向の高まりから、飲食品の購入に際しては原材料やその産地、成分や保存料の有無等に至るまで大きな関心を寄せ、購入に当たっては注意深く表示を観察するようになってきております。
 然るに、そのような飲食物の取引者・需要者層は、その出所等をあらわす商標にも深い注意を払っているはずであり、豊富な商品、豊富なネーミングを日頃から見慣れている日本国民にとっては、購買する飲食品に付された本願商標「プロジーヌ/prosine」と引用商標1「プリゼーヌ」を誤認するとか、あるいは引用商標2「Plaisir/プレジール」と誤認するとかするはずもなく、更には、その称呼である「プロジーヌ」と「プリゼーヌ」、あるいは「プロジーヌ」と「プレジール」を聞き間違えるということもないと考えます。
 4音構成の商標における2音の相違は全体の半分の相違であり、全体の称呼に及ぼす影響は大きく、両者を識別するに十分なものが有ると考えます。現今のように、食品の購買時に注意深い観察を行う時代においては、尚更のことであります。
以上のように、本願商標と引用商標1,2とは、称呼上も十分に識別できるもので、類似することはないと考えます。

(4) ところで、本願及び引用商標1,2と同一又は類似の商品分野において、過去の商標登録例をながめてみると、全体が4音構成で引用商標と似たようなニュアンスの商標として、A.登録1665939「プリデール」(昭和59年3月22日登録、和光堂)、B.登録4370308「プリテール」(平成12年3月24日登録、出光興産)などの登録例があります。
 これらA,B同士は第3音目に濁音「デ」と清音「テ」の一音相違のみですが、互いに登録されており、非類似の扱いとなっています。
 また、このAの「プリデール」が存在していても、2音相違する引用商標1の「プリゼーヌ」や引用商標2の「プレジール」が登録されております。
 そうであるならば、2音相違する本願商標の「プロジーヌ」とて、引用商標1「プリゼーヌ」や、引用商標2「プレジール」の存在に拘わらず登録されて然るべきものと考えます。

(5) 以上のように、本願商標「プロジーヌ/prosine」と引用商標1「プリゼーヌ」や引用商標2「Plaisir/プレジール」とは、外観が全く異なっていて外観上類似しないことは勿論、互いに意味を持たない造語商標であって観念類似しないことは明かであり、称呼上も、4音という短い音構成にあって、それぞれ上記したような2音の違いがあることから、両者は語感語調を全く異にし、聴者をして明らかに区別し得るものと思料します。
 よって、本願商標と、引用商標1,2とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと考えますので、再度ご審査の上、本願を登録査定下さるようお願い申し上げます。

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#87

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「FX-DUO」×引用商標「デュオ/DUO」

1.出願番号  商願2007-58362
2.商  標   「FX-DUO」
3.商品区分  第9類:電子計算機用プログラムほか
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  登録第1193573号の11外の「デュオ/DUO」と類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5157540号
出願商標・商標登録第5157540号
引用商標1・商標登録第1193573号
引用商標・商標登録第1193573号
引用商標2・商標登録第1661199号
引用商標2・商標登録第1661199号
引用商標3・商標登録第4163263号
引用商標3・商標登録第4163263号
引用商標4・商標登録第4243725号
引用商標4・商標登録第4243725号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、以下の引用商標1~4と同一又は類似するものであって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当すると認定された。
 引用商標1:登録第1193573号の11(商公昭50-039932)「デュオ/DUO」       
(第20,22,25,28類、昭和51年4月5日登録、旭化成せんい株式会社)
 引用商標2:登録第1661199号(商公昭58-039889)「デュオ/DUO」
      (第16類、昭和59年2月23日登録、(株)アイシーピー)
 引用商標3:登録第4163263号(商願平 8-130616)「デュオ/DUO」
      (第9類、平成10年7月3日登録、キャノン株式会社)
 引用商標4:登録第4243725号(商願平 9-143533)「デュオ/DUO」
      (第9類、平成11年2月26日登録、キャノン株式会社)
 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2) 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、欧文字「FX」と「DUO」の間にハイフン「-」を介して一連に「FX-DUO」と横書きした態様からなるものでありますが、引用商標1~4はいずれも片仮名文字と欧文字で二段に「デュオ/DUO」と書した態様からなるものであります。
 したがって、本願商標と引用商標1~4は、外観上類似しないこと明らかであります。

(3) また、本願商標の「FX-DUO」は、欧文字の「FX」と「DUO」をハイフン「-」を介して連結したもので、英和辞典や国語辞典などによれば、「「FX」は 、[名]《映・テレビ》エフエックス:特殊効果(special effects). [effectsの略語風つづり]とか、航空自衛隊の次期主力戦闘機。」とかの意味を有し、また、「DUO」は「二重奏」「二重奏曲」等の意味を有するものでありますので、本願商標は全体として「エフエックス二重奏(曲)」「特殊効果二重奏(曲)」の如き観念を生じさせるものであります。
 これに対し、引用商標1~4はその態様より、単に「二重奏(曲)」の観念を生じさせるもので、どのような「二重奏(曲)」なのか判然としないものであります。
 したがって、本願商標と引用商標1~4とは、観念上も紛れることのない非類似の商標であります。

(4) そこで、次に、称呼の点につき検討します。
 本願商標の「FX-DUO」は、前述したように、欧文字の「FX」と「DUO」との間にハイフン「-」を介した態様ではありますが、全体が同書・同大で一連一体に書されており、しかも、全体として、例えば「エフエックス二重奏(曲)」「特殊効果二重奏(曲)」という一つのまとまった意味合いを生じさせるものであります。そのため、本願商標は全体を一連に称呼するのが自然であり、取引者・需用者は、常に「エフエックスデュオ」とのみ称呼するものと思料します。
 この点に関し、審査官殿は、本願商標の要部は「DUO」の部分にあり、単に「デュオ」と称呼される場合もあると判断して、上記の「デュオ/DUO」の文字からなる引用商標1~4を引用したのだと思料しますが、これは誤った見方であると考えます。
成る程、本願商標は、a)欧文字二字の「FX」と「DUO」からなり、且つ、b)前半の「FX」は、通常は単独で商標の要部とはなり得ない欧文字二字(記号・符号の類)であることは事実でありましょう。しかし、だからといって、本願商標の要部が後半部の「DUO」のみにあるとみるのは、短絡的にすぎます。
 本願商標は、あくまでも、「FX」と「DUO」とをハイフン(-)で連結して外観上まとまりよく一体とした商標「FX-DUO」であって、単なる「FX(エフエックス)」でもなければ、単なる「DUO(デュオ)」でもありません。 本願商標において両者間にハイフン(-)を介したのは、これら「FX」と「DUO」を分断するためではなく、むしろ結合して一体化するためのものであります。
 本願商標は、全体を一体に把握してこそ、「エフエックス二重奏(曲)」とか、「特殊効果二重奏(曲)」とかのまとまった意味合いを生じさせるのであって、全体として一つの固有名詞的な意味合いを観念させるものであります。全体として一つの意味合いを観念できるときに、わざわざ前後分断して、一方を捉えて称呼・観念するようなことを、通常の取引者・需要者が行うはずはありません。
 しかも、本願商標は、全体としてさほど冗長な商標ではなく、一気に「エフエックスデュオ」とよどみなく称呼できます。また、全体として語呂がよく、称呼しやすい商標であります。それ故、前後を分断して、例えば、後半の「DUO」のみを称呼するようなことは通常あり得ません。
 本願商標は、一連に称呼してこそ一つのまとまった意味合いを生じさせる商標であって、取引者・需要者が、本願商標を捉えて、あえて「デュオ」と称呼したり、単に「エフエックス」と称呼するようなことはあり得ません。ハイフンを介して結合した本願商標をわざわざ分断して称呼するのは不自然であります。また、分断したのでは本願商標独特の固有名詞的な意味合いを把握できませんし、本願商標としての自他商品識別力を正確に発揮することはできません。
一つの固有名詞的な意味合いを生じさせる本願商標は、全体として一つの自他商品識別機能を発揮するものであり、全体が冗長であり一気に称呼し難いとか、一気に称呼したのでは語呂が悪いとか、一部の文字が特に目を引く態様となっているとかの格別な事情がない限り、前後分断することなく一連に称呼するのが自然であります。
 よって、本願商標は全体をよどみなく「エフエックスデュオ」とのみ称呼すべきものであり、これに対して引用商標1~4は、それぞれ、単に「デュオ」と称呼されるものでありますので、両者は、「エフエックス」の称呼の有無の違いにより、称呼上も決して紛れることのない商標であると考えます。

(5) ところで、過去の商標登録例を見ると、本願と同一又は類似の指定商品分野(昭和34年法第11類及び国際分類第9類)において、「DUO」の文字を後半部に含む商標として、例えば、以下のような登録商標が発見できます。
 A.登録2162011「BY DUO」
 (第11類、平成1年8月31日登録、デイエックス貿易株式会社)
B.登録4599884「ディー・ブイ・デュオ/D-V DUO」
   (第9類、平成14年8月30日、船井電機株式会社)
C.登録4793117「ISB-Duo」
   (第9類、平成16年8月6日、三洋電機株式会社)
 このうち、特に、本願商標とハイフンの有無を除けば似たような態様(「欧文字2字」と「DUO」からなる構成態様)からなるAの登録第2162011号「BY DUO」などは、類似群11C01を指定商品に含むものでありますが、これよりもあとの出願及び登録に係る引用商標3,4の「デュオ/DUO」などは、これと類似とは判断されず、商標登録がなされております。
 これら「BY DUO」と「デュオ/DUO」とが非類似であるならば、本願商標の「FX-DUO」と「デュオ/DUO」(引用商標1~4)も互いに非類似なはずであります。

(6) 以上述べたように、本願商標は、引用商標1~4と、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であります。
よって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではなく、登録適格なものと考えます。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#86

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「グランドロースト/GRAND ROAST(審判)

1.出願番号  商願2006-23915(不服2007-2812)
2.商  標  「グランドロースト/GRAND ROAST」
3.商品区分  第30類 茶,コーヒー及びココア
4.適用条文 商標法第3条第1項第3号
5.拒絶理由  本願商標は、「グランドロースト」「GRAND ROAST」の文字を上下二段に書してなるところ、その構成中「GRAND」「グランド」の文字は、「見事な,一流の」ほどの意味を表す英語とその表音であると認められ、また、「ROAST」「ロースト」の文字は、「コーヒー豆などを煎ること」の意味を表す英語及びその表音で有ると認められるので、これを本願指定商品に使用しても、全体として「見事に煎られた商品」ほどを認識させるにすぎず、商品の品質の誇称表示と認められる。

拒絶理由通知
出願商標・商標登録第5096928号

不服審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

  【手続の経緯】
 出     願   平成18年 3月16日
 拒絶理由の通知   平成18年10月20日
  同 発送日   平成18年10月24日
意  見  書   平成18年11月15日
拒 絶 査 定   平成19年 1月11日
 同 謄本送達   平成19年 1月15日
  【拒絶査定の要点】
 拒絶査定の理由は、『この商標登録出願は、平成18年10月20日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。なお、出願人は意見書において、本願商標は、特定の意味合いを持たない一種の造語であり、品質の誇称表示として取り扱われている事実もない旨主張しています。しかしながら、本願商標は「グランドロ-スト」「GRANDROAST」の文字を上下2段に書してなるところ、その構成中「GRAND」「グランド」の文字は「見事な」ほどの意味合いを表す英語とその表音であり、品質等を誇称して表す際に一般的に使用されているものとして認められます。また、「ROAST」「ロースト」の文字は、「コーヒー豆などを煎ること」の意味を表す英語とその表音であると認められますので、これを本願指定商品に使用しても、全体としても「見事に煎られた商品」であるほどを認識させるにすぎないとみるのが相当です。したがって、さきの認定を覆すことはできません。なお、出願人は過去の登録例を挙げて本願商標は登録されるべきである旨主張していますが、いずれも本件と事案を異にしますので、その主張は採用できません(商標法第3条第1項第3号に該当)。』というものであります。
  【本願商標が登録されるべき理由】
然るに、本出願人は、先の意見書において、本願商標「グランドロ-スト/GRANDROAST」は、単に「見事に煎られた商品」であることを認識させるのではなく、十分に識別力を備え、識別標識として機能する商標である旨説明したにも拘わらず、今般拒絶査定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに審判を請求し再度の御審理を願う次第であります。
(a)本願商標の構成
本願商標は、「グランドロースト」及び「GRAND ROAST」の文字を上下二段に書してなり、第30類「茶,コーヒー及びココア」を指定商品とするものであります。
(b)審査官の認定に対する反論
(b-1)
 然るに、本願商標は、なるほど構成中の「GRAND」「グランド」の文字部分から「見事な、一流の」ほどの意味合いを、また「ROAST」「ロースト」の文字部分から「コーヒー豆などを煎ること」ほどの意味合いを、それぞれ生じさせるのかもしれません。そして、全体として「見事に煎られた商品」というような意味合いを暗示させるのかもしれません。
 しかしながら、「見事に煎られた商品」とは、具体的には、一体如何なる煎り具合(品質)の商品を指すのでしょうか。見事に煎られたと言われても、どう見事なのか不明であります。審査官は、「GRAND」「グランド」の文字は、品質等を誇称して表す際に一般的に使用されているとしておりますが、それによって、具体的には、「コーヒー」のどのような品質を表示すると言うのでしょうか。漠然としていて具体的に定まるものではありません。
 焙煎は、収穫した生豆を火力により焼き上げることであり、焙煎の種類には、煎り具合に応じて「ミディアムロースト」、「ハイロースト」、「シティロースト」、「フルシティロースト」、「フレンチロースト」、「イタリアンロースト」等あることは、先の意見書でも述べましたが、「焙煎は見事な煎り具合でお願いします」とか、「焙煎はグランドローストでお願いします」とか言われて、焙煎者はどう煎ってよいのか分かるものでしょうか。分かるはずはないと思います。だとすれば、「グランドロースト\GRAND ROAST」は特定の具体的品質内容を表示するものではありません。
(b-2)
 そして、本願の指定商品を取り扱う業界においても、「グランドロースト」及び「GRAND ROAST」の文字が、商品の品質を表すものとして取引上、普通に使用されている事実はありません。「グランドロースト\GRAND ROAST」という焙煎の種類もありません。
 このように、本願商標の「グランドロースト\GRAND ROAST」は、見事に煎られた商品ほどの意味合いを暗示するとしても、本願指定商品「コーヒー等」の品質を具体的に表示し得ないものであり、特定の意味合いを持たない一種の造語商標であります。そして、これが取引市場において品質の表示又は品質の誇称表示として取り扱われている事実もありませんので、十分に識別標識として機能するはずであります。
(b-3)
繰り返しますが、本出願人は、「グランドロ-スト/GRANDROAST」が「見事に煎られた商品」を間接的に表示する文字であることを否定するものではありません。しかし、そのことが直ちに、本願商標が、品質・内容表示にすぎない(即ち、品質を普通に用いられる方法で表示する標章にすぎない)と言うことにはならないと考えます。商標法第3条第1項第3号の商標審査基準にも、『指定商品の「品質」、「効能」、「用途」等又は指定役務の「質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする。』と明確にうたっています。この審査基準に照らし合わせてみても、今般の審査官の認定には承服することができません。
(b-4)
 ところで、過去の商標登録例をみますと、本願商標と似たような構成の仕方から成る(A)商標「グランドブレンド」がユーシーシー上島珈琲株式会社(UCC)により第1133962号として商標登録されております(指定商品:茶、コーヒー、ココア等、昭和50年7月17日登録)(第1号証)。
この点に関し、審査官は、本願に対する今般の拒絶査定の中で、「出願人は過去の登録例を挙げて本願商標は登録されるべきである旨主張していますが、いずれも本件と事案を異にしますので、その主張は採用できません。」というようなことを述べています。しかし、この審査官のような解釈をすれば、このUCCの「グランドブレンド」などは「見事にブレンドされた商品」を意味する品質表示と言うことで、拒絶されてしかるべきということになるはずですが、現実にはそうなっておりません。
 然るに、このUCCの「グランドブレンド」が登録できて、本願の「グランドロースト\GRAND ROAST」が登録できないとされる謂われは全くありません。「グランドブレンド」も「GRAND BLEND」の表音であることは明らかで「見事にブレンドされた商品」を暗示させますが、識別力があるとして商標登録されております。事案を異にするということで、画一的に片付けられる問題ではありません。過去の審査に束縛されることはないとしても、それなりの審査を経て登録されて来ているわけですので、「グランドブレンド」が登録されている事実を全く無視するのも如何かと思います。この「見事にブレンドされた商品」を暗示させる「グランドブレンド」が登録できるのであれば、本願の「見事に煎られた商品」を暗示させる「グランドロースト\GRAND ROAST」が登録できて何の不思議もないはずです。
(b-5)
 また、過去の商標登録例をみると、(B)明治製菓株式会社の商標「トラディショナルロースト」が登録第4880779号として商標登録されている事実が発見できます(指定商品:茶,コーヒー及びココア等、平成16年9月16日出願、平成17年7月15日登録)(第2号証)。そして、この商標が存在するにも拘わらず、その後願に係る(C)サントリー株式会社の商標「Traditional/トラディショナル」が登録第4972168号として商標登録されております(指定商品:茶,コーヒー及びココア等、平成17年12月7日出願、平成18年7月21日登録)(第3号証)。
 この(B)(C)の併存関係から言えることは、
(i)伝統的な方法で焙煎した商品を暗示する(B)の「トラディショナルロースト」も、伝統的な商品を暗示する(C)の「Traditional/トラディショナル」も、品質表示ではないと理解されており、また、
(ii)双方とも、全体として一定の識別力を有すると理解されており、更には(iii)「トラディショナルロースト」は本願と同じく二語を連結した商標でありますが、前後分離できない一連一体の造語商標であると理解されている、ということであります。
 然るに、本願の「グランドロースト\GRAND ROAST」(「見事に煎られた商品」を暗示)とて、この「トラディショナルロースト」(「伝統的な方法で煎られた商品」を暗示)と同様のことであります。前後分離することのできない一連一体の造語商標であり、全体を一つのものとして把握し、称呼すべき性質の自他商品識別標識であります。決して審査官の言うような品質表示ではありません。
  【むすび】
 以上の次第でありますので、本願商標は商品の品質を普通に用いられる方法で表示する商標ではなく、自他商品識別力を有していて登録適格性を備えたものであり、商標法第3条第1項第3号には該当するものではないと考えます。
 よって、原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものであるとの審決を求める次第であります。

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(参考)ケース86の「審決」
   商願2006- 23915拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

 結 論
   原査定を取り消す。
   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由
  1 本願商標
   本願商標は、「グランドロースト」及び「GRAND ROAST」の文字を二段書きしてなり、第30類「茶,コーヒー及びココア」を指定商品として、平成18年3月16日に登録出願されたものである。
   
  2 原査定の拒絶の理由                       
   原査定は、「本願商標は、「グランドロースト」「GRAND ROAST」の文字を上下二段に書してなるところ、その構成中「GRAND」「グランド」の文字は、「見事な,一流の」ほどの意味を表す英語とその表音であると認められ、また、「ROAST」「ロースト」の文字は、「コーヒー豆などを煎ること」の意味を表す英語及びその表音で有ると認められるので、これを本願指定商品に使用しても、全体として「見事に煎られた商品」ほどを認識させるにすぎず、商品の品質の誇称表示と認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し本願を拒絶したものである。
   
  3 当審の判断
   本願商標は、前記のとおり「グランドロースト」及び「GRAND ROAST」の文字を書してなるところ、全体の文字より、原審説示の意味合いを認識するものとはいい難いものである。そして、本願商標の指定商品を取り扱うこの種業界において、本願商標を構成する前記文字が原審説示のような商品の品質又は品質の誇称を表示するものとして、取引上普通一般に使用されている事実を発見することもできない。そうしてみると、本願商標は、その指定商品の具体的な品質を表示するものとはいえないものである。
   したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものとはいえず、取消しを免れない。その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。よって、結論のとおり審決する。

 平成19年11月14日

                 審判長  特許庁審判官 山口 烈
                      特許庁審判官 寺光 幸子
                      特許庁審判官 小田 明
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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#85

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「ご褒美コーヒー」× 引用商標「ごほうびスイート」

1.出願番号  商願2006-111184
2.商  標   「ご褒美コーヒー」
3.商品区分  第30類:コーヒー(同時提出の補正書により、茶,ココアを削除)
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  登録第4779944号商標「ごほうびスイート」と類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5085104号
出願商標・商標登録第5085104号
引用商標・商標登録第4779944号

拒絶理由通知 意見書における反論

Ⅰ.拒絶理由通知書の理由1は、本願の商標中に「コーヒー」の文字を含んでいるので、それ以外の商品に使用すると、商品の品質に誤認を生じるというものですが(商標法第4条第1項第16号)、これに関しては、本日付け提出の手続補正書において、本願の指定商品を「コーヒー」に限定する補正をおこないましたので、拒絶の理由は解消したものと思料します。
Ⅱ.次に、拒絶理由通知書の理由2において、審査官殿は、本願の「ご褒美コーヒー」は、登録第4779944号商標の「ごほうびスイート」(引用商標)と類似するとしておりますが(商標法第4条第1項第11号)、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると思料しますので、かかる認定には承服できず、以下に、意見を申し述べます。
(1)本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、ひらがな、漢字及びカタカナを交えて「ご褒美コーヒー」と書してなるものでありますが、引用商標はひらがなとカタカナで「ごほうびスイート」と書してなるものであります。したがって、両商標は、外観上類似しないこと明らかであります。
 また、本願商標「ご褒美コーヒー」は、「ご褒美のコーヒー」という意味合いを生じさせるものでありますが、引用商標「ごほうびスイート」は、「ご褒美の甘味」「ご褒美の甘味食品」等の意味合いを生じさせるものでありますので、両商標は観念上も類似しないこと明かであります。
(2)そこで、次に称呼の点につき、検討します。
 まず、本願商標は、上記態様「ご褒美コーヒー」より、通常は「ゴホウビコーヒー」又は「ゴホービコーヒー」と称呼されるものと思料しますが、指定商品「コーヒー」との関係で、単に「ゴホウビ」(又は「ゴホービ」以下同じ)と称呼される場合があるかも知れません。
 本願商標を構成する「コーヒー」の言葉が、商品「コーヒー」との関係で品質内容表示と理解され、「ご褒美」の部分を捉えて、単に「ゴホウビ」と称呼される場合もあると考えるからです。
 これに対し、引用商標「ごほうびスイート」は、指定商品がスイートな商品(甘美な商品)に限定されているわけではなく、「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,調味料,香辛料,コーヒー豆,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」の中には、およそ「スイート(甘美)」とは無関係な商品も含まれております。
 したがって、ここで言う「スイート」は、指定商品との関係において品質表示用語ではなく、「ごほうび」の言葉と共に、自他商品識別力を有する言葉(識別標識)として機能しております。また、商標全体で「ご褒美の甘味」の如き一つの意味合いを生じることから、引用商標「ごほうびスイート」は、前後を分断して把握されることはなく、常に一つの商標として把握されるべきものと考えます。一つの意味合いを生じるような言葉をわざわざ分断して把握するようなことは通常あり得ないからです。一連に称呼するには冗長であって、語呂も悪く、称呼しにくいといった特別な事情でもあれば別ですが、引用商標「ごほうびスイート」は、一連に称呼して、冗長でなく、語呂も良く、一連に称呼しやすい商標であります。常に、一連に「ゴホウビスイート」と称呼される商標であると考えます。単に「ゴホウビ」とか、「スイート」とかの称呼は生じないものと思います。
 以上のように、本願商標の称呼が「ゴホウビコーヒー」又は「ゴホウビ」であるのに対し、引用商標は常に「ゴホウビスイート」であります。然るに、「ゴホウビコーヒー」と「ゴホウビスイート」は称呼上明確に識別できると共に、本願商標が単に「ゴホウビ」と称呼されたとしても、引用商標の「ゴホウビスイート」とは、「スイート」の有無に大きな違いがあり、両者は称呼上も十分に識別できる非類似の商標であると考えます。
(3)ところで、過去の登録例を見ると、
(A-1)登録第4711889号商標「ごほうび/Gohoubi!」(宝ホールディングス株式会社)が存在するにもかかわらず、
(A-2)登録第4832987号商標「ごほうびレシピ」(日本たばこ産業株式会社)が登録されております。
 なお、これらは、指定商品として類似群32D01、32E01、32F01を共通にしております。
 また、
(B-1)上記登録第4832987号商標「ごほうびレシピ」(日本たばこ産業株式会社)が存在するにもかかわらず、
(B-2)登録第4830654号商標「ごほうびぷりん」(興真乳業株式会社)が登録されております。
 これらは、指定商品として類似群30A01を共通にしております。
 この登録関係を見ますと、登録第4832987号商標「ごほうびレシピ」は、全体として一つの商標、即ち、前後を分断して把握することのできない一体不可分の商標と理解されていると、考えざるを得ません。
今回の引用商標「ごほうびスイート」とて同様です。「ごほうびレシピ」と同じく分離できない一つの商標と捉えるべきものであります。
 然るに、これらA-1とA-2、B-1とB-2が併存できて、本願商標と引用商標とが併存出来ないとされる謂われは全くありません。
(4) 以上のように、本願商標は、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であり、十分に登録適格性を有するものと思料します。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#84

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「ケータイ OTP」 (審判)

1.出願番号  商願2006-29206(不服2006-28569)
2.商  標  「ケータイ OTP」
3.商品区分  第9類 電子計算機用プログラム ほか
4.適用条文 商標法第3条第1項第3号、同第4条第1項第16号
5.拒絶理由  本願商標は全体として「携帯電話機用使い捨てパスポート」程度の意味合いを認識させるから、単に商品の品質を表示するに過ぎない。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5078625号
出願商標・商標登録第5078625号

6.不服審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

 【手続の経緯】
 出     願   平成18年 3月31日
 拒絶理由の通知   平成18年10月25日
  同 発送日   平成18年10月26日
意  見  書   平成18年11月20日
拒 絶 査 定   平成18年12月13日
 同 謄本送達   平成18年12月14日
  【拒絶査定の要点】
拒絶査定の理由は、“この商標登録出願は、平成18年10月25日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。なお、出願人は、意見書において種々述べていますが、前の拒絶の理由で開示したように、本願商標は、「ケータイ」の文字部分は、「携帯電話機」に通じる語を、「OTP」の文字部分は、「発行してもらってから1回だけしか利用できないパスワードのこと(使い捨てパスワードともいう。)」(秀和システム編集部著者「通信・ネットワーク用語事典 2003~2004」株式会社秀和システム、2003年5月5日初版第1版発行、405頁)の意味合いのある英語「Onetime Password」の略語を連綴したものと認められ、指定商品との関係において、これよりは、「携帯電話機用使い捨てパスワード」程度の意味合いを理解、認識させるものでありますから、これを本願の指定商品中、「前記に照応する商品」に使用されたときは、単に、商品の品質を表示するにすぎないものと認めます。出願人は、登録例を挙げて、本願商標も登録されるべきである旨主張していますが、本願商標とは同一の事案とは認められず、これを本願商標に採用することは適切ではなく、本願商標については、前示のとおり判断するのを相当とします。したがって、さきの認定を覆すことはできません。”というものであります(商標法第3条第1項第3号、同第4条第1項第16号)。
  【本願商標が登録されるべき理由】
 しかしながら、本出願人は、本願商標の「ケータイOTP」は、商品の品質を表示する言葉ではなく、十分に自他商品識別標識として機能する商標であると考えますので、上記認定には承服できず、ここに審判を請求し、再度の御審理を願う次第であります。
(a)本願商標の構成
 本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、片仮名文字と英文字で「ケータイOTP」と一連に横書きした態様から成るもので、第9類「自動販売機,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」を指定商品とするものであります。
(b)審査官の認定に対する反論
(b-1)
審査官は、本願商標の「ケータイ」の文字部分は「携帯電話機」に通じる語を、「OTP」の文字部分は「発行してもらってから1回だけしか利用できないパスワードのこと(使い捨てパスワード)」の意味合いのある英語「Onetime Password」の略語を連綴したものと認められ、指定商品との関係において、これよりは「携帯電話機用使い捨てパスワード」程度の意味合いを理解、認識させるものであり、単に商品の品質を表示するにすぎないと指摘しております。
 しかしながら、本願商標は、先の意見書でも述べたように、前段の「ケータイ」の文字からは「携帯電話機」に通じる語を連想させるかも知れないものの、後段の「OTP」の文字部分からは、本願の指定商品との関係において「Onetime Password」の略語を、取引者・需要者に直ちに認識させるものではないと思料します。
 成る程、「One Time Password」を略すときには、これらの頭文字を並べて「OTP」と表記するのかも知れません。しかし、そうだからと言って、その逆もまた真なりとは限りません。「OTP」の三文字から「Onetime Password」の言葉を直ちに連想させるものではないと思います。なぜなら、「OTP」の文字は、「Onetime Password」の略語であると、この指定商品の分野における取引者・需要者間に浸透している訳ではないからです。審査官は、「通信・ネットワーク用語事典 2003~2004」に、「OTP」について「発行してもらってから1回だけしか利用できないパスワードのこと(使い捨てパスワードともいう。)」と説明があることから、本願商標後段の「OTP」は「Onetime Password」の略語であると主張しています。しかし、例えば、「OTP ROM」の「OTP」は「One Time Programable」を表すものであり、また、Linuxとオープンソースを中核としたオープンなシステム、アーキテクチャ、テクノロジーを表す「OTP」は「Open Teck Press」の略語であり、決して「Onetime Password」の略語ではありません。つまり、本願指定商品の分野において、「OTP」が全ての場合において「Onetime Password」の略語であるとは限りません。
 そして、仮に「OTP」が「Onetime Password」の略語だとしても、取引者・需要者間においては、「OTP」を表現するのに、普通一般に「Onetime Password」(ワンタイムパスワード)なる表現を用いてはおりません。それ故、取引者・需要者は、「OTP」の文字から「Onetime Password」を連想することはありません。「OTP」の文字から連想し称呼するのは、単なるアルファベットの「OTP」と「オーティーピー」の称呼だけであります。この文字をみて「ワンタイムパスワード」と称呼したり、全体を一連に「ケータイワンタイムパスワード」と称呼するとは到底思えません。「携帯電話機用使い捨てパスワード」を観念するとも思えません。
本願商標は、カタカナの「ケータイ」とアルファベットの「OTP」を横書きしてなる商標であり、両書体は異なるものの、左右軽重差なくバランス良く配置され、全体を「ケータイオーティーピー」と称呼して決して冗長にならず、語呂もよく、また、観念的にも全体として格別の具体的意味を持たない造語商標であります。それ故、本願商標は、単に商品の品質内容を表示する言葉ではなく、全体として十分に自他商品識別力を有する商標であると考えます。
(b-2)
 ところで、先の意見書でも触れましたが、過去の商標登録例をみますと、第9類の電子計算機(11C01)等を指定し、「OTP」の文字を含む商標として、例えば「スーパーOTPマイコン」なる登録商標の存在が確認できます(第3145361号 、平成8年4月30日登録、ローム株式会社)(第1号証)。これなどは、指定商品との関係において、「スーパー」も「マイコン」も品質内容表示に過ぎないと思われますので、この商標の要部は「OTP」の文字にあるか、或いは全体の組み合わせにあるということで登録されたものであるとみざるを得ません。
 そして、この場合、仮に「OTP」が審査官殿の言われるように品質内容表示であるとすれば、この商標は、個々の単語「スーパー」「OTP」「マイコン」自体には識別力がない商標だが、それらを組み合わせることによって、つまり「スーパーOTPマイコン」と一連一体に把握することによって、全体として識別力を認め登録されたものと考えざるを得ません。本出願人は、「OTP」は品質内容表示ではないと考えますが、一歩譲って、たとえ品質内容表示であったとしても、本願商標「ケータイOTP」は、全体として識別力を有する商標と見るべきであり、この点は上記「スーパーOTPマイコン」と同様であります。この「スーパーOTPマイコン」が登録できて、本願商標の「ケータイOTP」が登録できないとされる謂われは全くありません。
 この点に関して、審査官は拒絶査定書において、“この登録例は、本願商標と同一の事案とは認められず、これを本願商標に採用することは適切ではない”と指摘しております。しかしながら、指定商品との関係において、凡そ、識別力がないと思われる「スーパー」と「マイコン」の文字との間に「OTP」の文字が配置されて登録になった事実がある以上、「OTP」が品質表示であるとするならば、この商標は、全体として識別力を有する商標と判断されて登録されたと見ざるを得ません。そうであるとすれば、本願商標とて、全体として識別力を有する商標であるとして登録することに何ら違和感はないはずです。
 この既登録例の存在が本願商標を審査する上で全く参考にならない訳がありません。同一事案とは認められないといっても似たような事案であり、全く無視する様なことを言ったのでは、何のための商標審査か分かりません。今までの審査実務に束縛されることはないにしても、それなりの理由があって、これらの既登録例が存在しているわけですから、この事実を全く参考にならないとして無視するのはどうかと思います。過去の登録例を全く考慮することがないとしたら、それは商標の審査を自ら否定するようなものであります。
(b-3)
 繰り返しますが、本出願人は、「ケータイ」が「携帯電話機」に通じる語を、また「OTP」が「発行してもらってから1回だけしか利用できないパスワードのこと(使い捨てパスワード)」の意味合いのある英語「One Time Password」の略語を、それぞれ暗示させあるいは間接的に想起させることのある文字であることを否定するものではありません。しかし、「OTP」は「One Time Programable」や「Open Teck Press」など、他の略語を想起することもまた事実であります。
 然るに、「OTP」が「使い捨てパスワード」を暗示することがあったとしても、そのことが直ちに、本願商標全体が「携帯電話機用使い捨てパスワード」という特定の意味を具体的に表す品質表示にすぎない、即ち、品質を普通に用いられる方法で表示する標章にすぎない、ということを意味するものではありません。他の観念を暗示または間接的に想起することもあります。
 なお、商標法第3条第1項第3号の商標審査基準には、“指定商品の「品質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする”と明確にうたっています。この審査基準に照らし合わせてみても、今般の審査官の認定には承服しかねます。
  【むすび】
 以上の次第でありますので、本願商標は商品の品質を普通に用いられる方法で表示する商標ではなく、自他商品識別力を有し、充分登録適格性を備えたものと思料します。
 よって、原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものであるとの審決を求める次第であります。

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(参考)ケース84の「審決」
   商願2006- 29206拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

 結 論
   原査定を取り消す。
   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由
1 本願商標
 本願商標は、「ケータイ OTP」の文字を書してなり、第9類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成18年3月31日に登録出願されたものである。
   
2 原査定の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『携帯電話機』に通じる『ケータイ』の文字と、『発行してもらってから1回だけしか利用できないパスポートのこと(使い捨てパスポートともいう。)』の意味合いのある『One Time Password』の略語を連綴した『OTP』の文字とを、『ケータイ OTP』と書してなるところ、全体として『携帯電話機用使い捨てパスポート』程度の意味合いを理解、認識させるから、これを本願指定商品中、『前記に照応する商品』に使用するときは、単に商品の品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
   
3 当審の判断
 本願商標は、前記1のとおり、「ケータイ OTP」の文字を書してなるところ、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさ及び同じ間隔で、外観上もまとまりよく一体的に表された構成よりなるものである。そして、当審において調査するも、本願商標を構成する「ケータイ OTP」の文字が、直ちに原審説示の如くの意味合いを表示するものとして一般に理解され、特定の商品の品質等を直接、かつ、具体的に表示したものとはいい難く、取引者、需要者間において、取引上普通に使用されている事実も見出せない。してみれば、本願商標は、構成文字全体で一種の造語を表したものとみるのが相当であるから、これをその指定商品に使用しても、その商品の品質を表示したものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を十分に発揮し得るものであり、かつ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれもないものとみるのが相当である。
 したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものでなく、取消しを免れない。その他、政令で定める期間内に拒絶の理由を発見しない。よって、結論のとおり審決する。

 平成19年 8月30日

                 審判長  特許庁審判官 小林 和男
                      特許庁審判官 津金 純子
                      特許庁審判官 日向野 浩志

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#83

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「Jバンク」× 引用商標「BANK、P・BANK、M・BANKほか」

1.出願番号  商願2006-10718
2.商  標   「Jバンク」×「BANK、P.BANKほか」
3.商品区分  第9類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5044077号
出願商標・商標登録第5044077号
引用商標・商標登録第3370486号
引用商標1・商標登録第3370486号
引用商標2・商標登録第4005462号
引用商標2・商標登録第4005462号
引用商標3・商標登録第4374905号
引用商標3・商標登録第4374905号
引用商標4・商標登録第4555615号
引用商標4・商標登録第4555615号
引用商標5・商標登録第4757121号
引用商標5・商標登録第4757121号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、以下の引用商標1~5と同一又は類似するものであって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当すると認定された。
 引用商標1:登録第3370486号(商公平 9-003045)「BANK」
 引用商標2:登録第4005462号(商願平 6-003700)「P・BANK」
 引用商標3:登録第4374905号(商願平11-003588)「M・BANK」
 引用商標4:登録第4555615号(商願2001-019655)「AV BANK」
 引用商標5:登録第4757121号(商願2003-077523)「FX-BANK」
 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、欧文字と片仮名文字で一連に「Jバンク」と横書きした態様からなるものでありますが、引用商標1は欧文字で「BANK」と、引用商標2は欧文字で「P・BANK」と、引用商標3は欧文字で「M・BANK」と、引用商標4は欧文字で「AV BANK」と、また引用商標5は欧文字で「FX-BANK」と、それぞれ横書きしたものであります。
 したがって、本願商標と引用商標1~5は、外観上類似しないこと明らかであります。
(3) また、本願商標の「Jバンク」は、欧文字の「J」と「bank」の表音であるカタカナの「バンク」から成るもので、全体として「ジェイバンク」「ジェイ銀行」の如き固有名詞的な観念を生じさせる商標であります。
 これに対し、引用商標1は「BANK」の文字より単に「バンク」とか、「銀行」の観念を、また、引用商標2~5はそれぞれの態様より「ピー・バンク」「ピー銀行」、「エムバンク」「エム銀行」、「エーブイバンク」「エーブイ銀行」、「エフエックスバンク」「エフエックス銀行」の如き観念を生じさせるものであります。
 したがって、本願商標と引用商標1~5は、観念上も紛れることのない非類似の商標であります。
(4) そこで、次に称呼の点につき検討します。
 本願商標の「Jバンク」は、前述したように、欧文字の「J」とカタカナの「バンク」とからなるものでありますが、全体が同書・同大・同間隔で一連一体に書されており、しかも、全体として、例えば「ジェイバンク」「ジェイ銀行」の如きまとまった一つの意味合いを生じさせるものでありますので、本願商標は全体を一連に称呼するのが自然であり、取引者・需用者は常に「ジェイバンク」と称呼するものと思料します。
 この点に関し、審査官殿は、本願商標の要部は「バンク」の部分にあり、単に「バンク」と称呼される場合もあると判断して、上記の「BANK」の文字を含む引用商標1~5を引いてきたのだと思料しますが、これは誤った見方であると考えます。
成る程、本願商標は、a)アルファベット「J」とカタカナの「バンク」からなり、且つ、b)前半の「J」は、通常は単独で商標の要部とはなり得ない欧文字一文字(記号・符号の類)であることは事実であります。しかし、だからといって、本願商標の要部が後半部の「バンク」のみにあるとみるのは、短絡的にすぎます。
本願商標は、あくまでも、「J」と「バンク」とが組合わさって外観上まとまりよく一体となった商標「Jバンク」であって、単なる「J(ジェイ)」でもなければ、単なる「バンク」でもありません。本願商標において文字の種類を変えたのは、これら「J」と「バンク」を分断するためのものではありません。両者を分断して、一方のみに商標の要部があるかのような把握、例えば、要部は「バンク」のみと把握したのでは、「一体どんなバンク、銀行」なのかを理解することは出来ません。本願商標は、全体を一体に把握してこそ「Jバンク」「ジェイバンク」「ジェイ銀行」というような一つの固有名詞的な意味合いを生じさせるのであって、全体として一つの固有名詞的な意味合いを観念させるところに特徴があります。全体として一つの意味合いを把握できる場合に、わざわざ前後分断してその商標を2つに分けて把握するような仕方は、取引者・需要者が通常行うことはないと考えます。
 本願商標は、全体としてさほど冗長な商標ではありませんので、一気に「ジェイバンク」とよどみなく称呼できますし、全体として語呂がよく、称呼しやすい商標であります。それ故、前後を分断して例えば、後半の「バンク」のみを称呼すると言うことはあり得ないと考えます。本願商標は、一連に称呼してこそ一つのまとまった意味合いを生じさせる商標でありますので、取引者・需要者が、本願商標を捉えて、あえて「バンク」とのみ称呼したり、単に「ジェイ」と称呼するようなことはあり得ないことであります。だいいち分断して称呼するのは不自然であります。それでは本願商標独特の固有名詞的な意味合いは把握できませんし、本願商標としての自他商品識別力を正確に発揮することもできません。
一つの固有名詞的な意味合いを生じさせる本願商標は、全体として一つの自他商品識別機能を発揮するものであり、全体が冗長であり一気に称呼し難いとか、一気に称呼したのでは語呂が悪く称呼し難いとか、一部の文字が特に目を引く態様となっているとかの格別な事情がない限り、前後分断することなく一連に称呼するのが自然であります。
 然るに、本願商標は、全体を一連に称呼して決して冗長な印象を与える商標ではなく、格別に「バンク」の文字が目立つような特殊な態様からなる商標でもありません。むしろ全体として語呂もよく一連に「ジェイバンク」と称呼し易いもので、その様に称呼してこそ、一つの意味合いを持つ識別力ある商標となると考えます。
 よって、本願商標は全体をよどみなく一連に「ジェイバンク」とのみ称呼されるものであり、これに対して引用商標1~5は、それぞれ「バンク」「ピーバンク」「エムバンク」「エーブイバンク」「エフエックスバンク」と称呼されるものでありますので、両者は、「ジェイ」の称呼の有無が大きく異なり、称呼上決して紛れるものではありません。
(5) ところで、引用商標1と引用商標2~5の関係をみて分かるように、これらは「BANK」の文字を共通にする商標同士でありますが、引用商標1の「BANK」の存在にも拘わらず、他の2~5の引用商標「P・BANK」「M・BANK」「AV BANK」「FX-BANK」が登録されております。
 そして、このことから言えることは、これら2~5の引用商標は、「BANK」の部分を商標の要部と把握されたのではなく、全体として分離できない一体の商標と把握されたということであります。なぜなら、引用商標2~5より、「BANK」の部分が要部と把握されていたならば、これら引用商標2~5は、引用商標1「BANK」の存在によって、登録されることはなかったはずだからであります。それが登録されたと言うことは、これら2~5の引用商標は全体として分離することのできない一つの商標と把握されたと考えざるを得ません。
 本願商標とて同様であります。本願商標は「Jバンク」(ジェイバンク)」と一連一体に把握されるべき商標で、「J」と「バンク」を分離すべき商標ではありません。常に「Jバンク」(ジェイバンク)であり、引用商標1の「BANK」(バンク)とは類似することはありません。ましてや、本願商標「Jバンク」(ジェイバンク)は一連に把握される引用商標2以下、即ち、「P・BANK」(ピーバンク)、「M・BANK」(エムバンク)、「AV BANK」(エーブイバンク)、「FX-BANK」(エフエックスバンク)の各商標と称呼上類似することはありません。
(6) 以上述べたように、本願商標は、引用商標1~5と、外観、観念のみならず、称呼上も紛れることのない非類似の商標であります。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#82

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「トラッドブルー/TRAD BLUE」× 引用商標「TRAD」

1.出願番号  商願2006-52083
2.商  標   「トラッドブルー/TRAD BLUE」×「TRAD」
3.商品区分  第30類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5043894号
出願商標・商標登録第5043894号
引例商標1・商標登録第2412689号
引例商標1・商標登録第2412689号
引例商標2・商標登録第2435059号
引例商標2・商標登録第2435059号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書(発送番号011510)において、審査官殿は、
 1.登録第2412689号の商標「TRAD」(茶)…(引用商標1)および、
 2.登録第2435059号の商標「TRAD」(コーヒー)…(引用商標2)を引用し、本願商標は、これらの登録商標と類似するため商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録を受けることができないと認定された。
 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標1,2とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似することのない非類似の商標であると思料するので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べる。
(2) まず、本願商標は、上段の 片仮名と下段の欧文字で「トラッドブルー/TRAD BLUE」と二段併記して成るものであるのに対し、引用商標は、上述のとおり、何れも、単に欧文字の「TRAD」から成るものである。したがって、本願商標と引用商標1,2とは、外観上類似することはない。
(3) 次に、観念の点についてみると、本願商標「トラッドブルー/TRAD BLUE」のうち、前段の「トラッド/TRAD」の部分は、国語辞典などを紐解くと、“[名・形動]《traditionalの略》1 伝統的であるさま。また、そのもの。特に、流行にとらわれないデザインの服装。「―なアイビールック」 2 ディキシーランドジャズのこと。”等と説明されており、また、「ブルー/BLUE」の部分は「青(ブルー)」を意味していることから、一般的な取引者・需要者であれば、この本願商標全体から「伝統的な青(ブルー)」を観念すると思われる。これに対して、引用商標1,2は単に「伝統的であるさま。」等を意味するに過ぎず、「青(ブルー)」の観念はないから、両者は観念上も類似することはない。
(4) そこで、以下、称呼の点につき検討する。
 (4-a) 本願商標は、上述のように、下段の欧文字部分「TRAD BLUE」が、「TRAD」と「BLUE」の間にやや間隔をあけた態様ではあるが、その上段の片仮名部分は読みを表すべく、一連に「トラッドブルー」と書されているので、これを見た取引者・需要者は、一連に「トラッドブルー」とのみ称呼するものと思われる。この点に関し、審査官殿は、本願商標の後段である「ブルー/BLUE」の文字部分を品質表示的にとらえ、前段である「トラッド/TRAD」の部分に商標の要部があるとみてこれを抽出し、単に「トラッド」と称呼される場合もあると判断し、「TRAD」を引用してきたものと思料する。しかし、このように、本願商標の「トラッドブルー/TRAD BLUE」から、その「トラッド/TRAD」の部分のみを抽出し称呼するのは、如何にも不自然である。本願商標「TRAD BLUE」は、「TRAD」と「BLUE」の間にやや間隔をあけた態様ではあるが、左右軽重差なく同書・同大・同間隔にバランスよく配されている。また、全体として「伝統的な青(ブルー)」という一つのまとまった意味合いを生じさせており、その読みを表すべく上段の片仮名部分も「トラッドブルー」と一連に書している。したがって、本願商標の前段部分「TRAD」と後段部分「BLUE」とに軽重差を設けて、前段部分「TRAD」のみを抽出して称呼するようなことはすべきでない。本願商標は、その様なことのないように左右バランスよく配したもので、一連の読みを表すべく片仮名部分で一連に表記している。しかも、本願商標は全体が6音構成という短い音構成からなるもので、全体を一連に称呼して語呂がよく、一連に称呼し易い商標である。しかも、前述したように全体として「伝統的な青(ブルー)」という一つのまとまった意味合いを有している。まとまった意味合いを生ずるのに、あえて「TRAD」と「BLUE」とを分断し、一方の「TRAD」のみを抽出して「トラッド」と単独で称呼すべき場合があるなどと考えるべきではない。本願商標の称呼は、あくまでも一連の「トラッドブルー」のみである。
 これに対し、引用商標1,2は、いずれもその態様より「トラッド」とのみ称呼されるものであるから、両者は「ブルー」の称呼の有無により、明らかに聴別でき、称呼上も決して類似することはないと思料する。
(4-b) ところで、過去の商標登録例を見ると、同一又は類似の指定商品群において、本願商標の「BLUE」のように「色」を表す文字を含む商標と含まない商標は、色以外の文字を共通にしながらも、別法人において、以下のように多数並存登録されている。例えば、
(a)第4463673号「ラブラブ/LOVE LOVE」(株)ハセガワ(第1号証)と、
(b)第4866458号「ラブラブグリーン」(株)市川製茶工場(第2号証)。
(c)第 536655号「ファミリー/FAMILY」(株)アートコーヒー(第3号証)と、
(d)第2552154号「ファミリーグリーン」エンチーム(株)(第4号証)。
(e)第2011780号「モーション」(株)エルビー(第5号証)と、
(f)第4598044号「Motion Blue」伊藤忠商事(株)(第6号証)。
 この場合、仮に「グリーン」や「Blue」が、商標の要部ではないと判断されていたならば、要部は共通文字部分ということになり、後願に係る商標上記(b)(d)(f)は拒絶されていたはずであるが、現実には登録されている。これは「グリーン」や「Blue」などの色を表す言葉も品質表示などではなく、他の文字と共に商標の要部を構成すると判断されたからに他ならない。つまり、これらの商標が存在しているのは、「グリーン」や「Blue」の文字にも商標の識別性の要素を十分に認め、あくまでもこの「グリーン」「Blue」の文字を含めた全体として1つの不可分一体の商標を構成すると判断し、審査したからに他ならない。本願商標と引用商標の関係も、これら(a)と(b)、(c)と(d)、(e)と(f)の各商標の関係と軌を一にするものであって、本願商標の「TRAD」の部分のみをとらえて、称呼され、観念されるようなことはない。本願商標は、あくまでも、片仮名で読みを振ったように「トラッドブルー」とのみ一連に称呼されるべきものであり、それ故に引用商標の称呼である単なる「トラッド」とは、類似することはない。
(5) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も「ブルー」の称呼の有無によって語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料する。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#81

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「クイックEx-Flu「生研」」×引用商標「クイック/QUICK」

1.出願番号  商願2006-32596
2.商  標   「クイックEx-Flu「生研」」×「クイック/QUICK」
3.商品区分  第5類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5025790号
出願商標・商標登録第5025790号
引用商標・商標登録第2031991号
引用商標・商標登録第2031991号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、“本願商標は、登録第2031991号(商公平61-093063)の商標(以下、引用商標という)と類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する”と認定されました。
しかしながら、本出願人は、本願商標「クイックEx-Flu「生研」」は、引用商標「クイック/QUICK」とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、上記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) まず、本願商標は、カタカナと欧文字と漢字とで「クイックEx-Flu「生研」」と横書きした態様からなるものでありますが、引用商標は、カタカナと欧文字で二段に「クイック/QUICK」と書した態様から成るものであります。したがって、両者は外観上類似しないこと、明らかであります。
(3) また、観念の点についてみると、本願商標の「クイックEx-Flu「生研」」は、速いさまを表す「クイック」(「quick-」に通じる)が、そのあとに続く「Ex-Flu「生研」」を形容して、指定商品第5類「薬剤」等との関係にあって、全体として「効き目の速いEx-Flu「生研」(薬剤)」とか、「分析が速くできるEx-Flu「生研」(試薬)」とかの意味を表すものであります。
 したがって、この本願商標の「クイック」は、薬剤などの「効き目の速い」こと、あるいは、試薬などの「分析の速い」ことを意味する形容詞の「クイック」であって、指定商品との関係では、「Ex-Flu「生研」」を形容する品質内容表示でしかありません。したがって、この部分は自他商品識別力を持たない部分であります。それ故、本願商標の要部(自他商品識別力を生じる部分)は、あくまでも「Ex-Flu「生研」」にあります。
 これに対し、引用商標の「クイック/QUICK」は、「動作や時間などが速いさま」の意味の他に、「理解が早いさま」、「資産などが直ぐに現金化できること」、「カーブが急なさま」等々、様々な観念を生じさせる言葉であります。したがって、引用商標は、その指定商品「薬剤」との関係で、その特定の品質内容を表示する言葉ではないと言う理解の下に、商標登録されたものと考えられます。したがって、本願商標と引用商標とは、観念上も類似することはありません。
(4) そこで、次に、称呼の点について検討します。
 称呼の点に関して審査官殿は、本願商標のカタカナ部分から単に「クイック」の称呼も生じるとして、引用商標「クイック/QUICK」を引用して、その対比を行ったのだと思います。
 しかしながら、上述のように本願商標の「クイック」の部分は、そのあとに続く「Ex-Flu「生研」」を形容する品質内容表示であって、商標の要部を構成する言葉ではありません。
 そのため、「クイック」の部分のみを抽出して、引用商標と比較する今般の手法は妥当なものではないと考えます。識別力のない部分からも称呼が生じることを否定するものではありませんが、識別力のない部分はあくまでも識別の対象とならない部分であって、そこの部分を単独で比較の対象とすべきではありません。本願商標は、「クイックEx-Flu「生研」」と書した態様より「クイックイーエックスフルセイケン」、あるいは「クイックイーエックスフル」、あるいは「イーエックスフルセイケン」、「イーエックスフル」などの称呼を生じるものでありましょうが、単独で「クイック」の称呼を生じることはありません。識別力のない品質表示部分からは単独で識別を図るための称呼は生じません(それ故、単独で比較の対象とはなりません)。
 これに対し、引用商標は、単に「クイック/QUICK」と書された態様より(これが品質表示でなく識別力を有するとするならば)、「クイック」の称呼が生じます。
 それ故、本願商標と引用商標とは、「クイックイーエックスフルセイケン」と「クイック」、「クイックイーエックス」と「クイック」、「イーエックスフル」と「クイック」などの称呼上の違いがあり、少なくとも「イーエックスフルセイケン」や「イーエックスフル」を有する本願商標と、単なる「クイック」以外には他に何の音も存在しない引用商標とでは、称呼上明瞭に識別できるものであります。それ故、両者は称呼上も紛れることのない非類似の商標であります。
(5) 以上のように、本願商標と引用各商標とは、外観・観念のみならず、称呼上も紛れることのない非類似の商標であります。
 よって、本願商標は商標法第4条1項第11号の規定に該当するものではなく、十分に登録適格性を有するものと思料します。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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