特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標「販促ナビ」×「販促ナビゲーター」
「販促ナビゲーター/販促NAVIGATOR」、
「販促Navigator」
1.出願番号 商願2014-85284
2.商 標 「販促ナビ」
3.商品区分 第9類、第42類
4.適用条文商標法第4条1項11号
5.拒絶理由 「販促ナビ」は「販促ナビゲーター」「販促NAVIGATOR」と類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、以下1~3の登録商標(いずれも株式会社ネクスウェイ所有)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する、との認定を受けました。
引用商標1.登録第4318995(商願平10-030243)…販促ナビゲーター 9類
引用商標2.登録第4852229(商願2000-071713) …販促ナビゲーター/販促NAVIGATOR 35,38,42類
引用商標3.登録第5500935(商願2011-093581) …FNX/販促Navigator/出版ゴールドサービス 35,42類
しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標1~3とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似せず、取引者・需用者をして決して紛れることのない非類似の商標であると思料しますので、斯かる認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2)本願商標は、願書の商標の記載からも明らかなように、「販促」の漢字と「ナビ」の片仮名文字を前後に配して「販促ナビ」と一連に書してなるものであります。
これに対し、引用商標1は、漢字と片仮名文字で「販促ナビゲーター」と一連に書してなるものであり、引用商標2は、漢字と片仮名文字の「販促ナビゲーター」を上段に、漢字と欧文字の「販促NAVIGATOR」を下段にそれぞれ配して、「販促ナビゲーター/販促NAVIGATOR」と二段に構成してなるものであります。また、引用商標3は、「販促Navigator」の文字を中央に大きく書し、その左上に「FNX」の文字を小さく、また、右下に「出版ゴールドサービス」の文字を小さくそれぞれ配してなるものであります。
したがって、本願商標と引用商標1~3とは、外観上類似しないことは明らかであります。
(3)また、本願商標の「販促ナビ」は、「販売促進」の略語としての「販促」の文字と、「navigation」(航行、航法、航海(術)、運行指示などの意味を持つ英単語。目的地までの経路や道順、移動方法の案内のこと。)を略した「navi」、即ち片仮名表記では「ナビ」の文字を結合した態様からなるものであります。そして、この態様より「販促の案内」の如き意味合いを暗示させるものでありますが、本願の指定商品・指定役務との関係にあっては、具体的に特定の意味合いを生じさせるものではなく、その意味で、本願商標は特定の観念を生じさせない造語商標であります。
ところで、この「ナビ」は、何の略かと言えば、通常は「ナビゲーション」であって、「ナビゲーター」ではありません。IT用語辞典(e-word)によれば、位置情報システムの分野では、画面に地図を表示して現在地から目的地までの道順や所要時間などを案内することをナビゲーションといいますが、自動車向けのシステムを「カーナビゲーションシステム(カーナビ)」、歩行者向けに公共交通機関の乗り換え案内などを統合したシステムを「歩行者ナビゲーション(歩行者ナビ)」などというようであります。つまり、「ナビ」は、「カーナビ」、即ち「カーナビゲーションシステム」に代表されるように、「navigation」(ユーザーが目的へたどり着けるように手助けする機能のこと。サイト内の階層を表す「パンくずリスト」、関連情報への「リンク」、「サイトマップ」等がある。)の略語「navi」の片仮名表記「ナビ」であって、「navigator」「ナビゲーター」(1操縦士。航海士。2自動車ラリーなどで、運転者に速度や方向の指示を与える同乗者。)の略語ではありません。
これに対し、引用商標1~3の要部を構成する「販促ナビゲーター」「販促NAVIGATOR」「販促Navigator」は、「販促」と「navigator」「ナビゲーター」(1操縦士。航海士。2自動車ラリーなどで、運転者に速度や方向の指示を与える同乗者。)の結合された商標であって、全体として「販売促進のためのナビゲーター,販売促進のための操縦者,販売促進のための操縦士,販売促進のための航法士,販売促進のための航空士」等の意味合いを暗示させるものでありますが、本願の指定商品・指定役務との関係にあっては、やはり具体的に特定の明確な観念を生じさせることのない造語商標であります。「Navigator」(1操縦士。航海士。2自動車ラリーなどで、運転者に速度や方向の指示を与える同乗者。)と「navigation」(ユーザーが目的へたどり着けるように手助けする機能のこと。サイト内の階層を表す「パンくずリスト」、関連情報への「リンク」、「サイトマップ」等がある。)とは異なりますし、それらやその略語を「販促」の文字と結び付けて造語とした本願商標「販促ナビ」と引用商標1~3「販促ナビゲーター」「販促NAVIGATOR」等とは、観念上も紛れることのない非類似の商標であります。
(4)そこで、次に、称呼の点につき検討します。
(4-1) 本願商標は、前述のように、「販促」の漢字と「ナビ」の片仮名文字を前後に配して「販促ナビ」と一連かつ簡潔に書してなるものであるところ、このような本願商標の態様からは常に「ハンソクナビ」の称呼が生じるものと思料します。漢字と片仮名文字とから構成された商標ではありますが、両部分はバランスよく配され、また同書、同大、同間隔で一連一体に書されており、しかも一連に称呼して称呼しやすい商標であることから、常に一連に「ハンソクナビ」とのみ称呼されるものと思料します。
一方、引用商標1~3は「販促ナビゲーター」「販促NAVIGATOR」「販促Navigator」の態様よりなるところ、これより「ハンソクナビゲーター」の称呼が生じるものと思料します。審査官殿は、引用商標1~3の「販促ナビゲーター」「販促NAVIGATOR」「販促Navigator」がやや冗長であることから、これらを称呼する場合、短縮して単に「ハンソクナビ」と称呼される場合もあるのではないかと考え、本願の引用商標としてこの3件を今般引いてきたのではないかと思料しますが、各引用商標からは、単に「ハンソクナビ」の称呼を生じることはなく、一連一体の態様より、常に「ハンソクナビゲーター」と称呼されるものと思料しますので、決して称呼上も紛れることはないものと考えます。「販促ナビゲーター」「販促NAVIGATOR」の態様からは、素直に「ハンソクナビゲーター」と称呼できます。やや冗長な印象を受けますが、「ナビゲーター」「NAVIGATOR」の言葉自体は一つの意味合いを持つ単語ですので、一連に称呼するのが素直です。「ナビ」と「ゲーター」を区切って読むようなことはしません。「ナビゲーター」と一連に称呼して称呼しにくいものでもありません。
したがって、本願商標の称呼「ハンソクナビ」と各引用商標の称呼「ハンソクナビゲーター」とを対比すると、両者は後段の「ナビ」と「ナビゲーター」との違いがあり、これら両者を一連に称呼したときには、「ゲーター」の音の有無で別異の印象を受け、称呼上も明瞭に識別できるものと思料します。
(4-2) そして、このことは過去の商標登録例の存在からも言い得ることであります。
即ち、過去の商標登録例を見ると、例えば、審査官殿の引用された(A)「販促ナビゲーター」は、株式会社ネクスウェイの所有に係るものですが(類似群35B01ほか、引用商標2、登録4852229、平成12年6月27日出願、平成17年4月1日登録)(第1号証)、この先願商標の存在にも拘わらず、これと類似群35B01を共通にする株式会社ヒロモリの後願商標(B)「販促ナビ」(類似群35B01、登録4530578、平成12年9月12日出願、平成13年12月21日登録)(第2号証)が登録されております(先願A1が出願中に後願A2が登録されたケース)。
この登録例などは、まさに「販促ナビゲーター」と「販促ナビ」を非類似の商標と判断したケースであり、両者非類似と判断したからこそ、後願「販促ナビ」の登録が認めたられたものであります。
そして又、9類,35類,42類などの指定商品や指定役務を共通にする出願において、「ナビケーター」と「ナビ」の称呼上の差異が存在するということで、両商標非類似扱いとされ並存登録が認められたケースが多数あります。
(C)「セールスナビゲーター」(類似群42P02、登録4077149、平成7年8月15日出願、平成9年10月31日登録、株式会社マロネイト、株式会社ジェーエヌエル)(第3号証)と、
(D)「セールスナビ」(類似群42P02、登録4162808、平成8年10月2日出願、平成10年7月3日登録、タカヤモーター株式会社)(第4号証)。
(E)「エコナビ」(類似群42P02、42X11ほか、登録4792116、平成15年9月26日出願、平成16年8月6日登録、株式会社大林組)(第5号証)と、
(F)「ecoナビゲーター」(類似群42P02、42X11ほか、登録5118417、平成19年4月17日出願、平成20年3月14日登録、大和ハウス工業株式会社)(第6号証)。
(G)「サポートナビゲーター」(類似群42P02、登録4829129、平成16年1月26日出願、平成16年12月24日登録、NECパーソナルコンピュータ株式会社)(第7号証)と、
(H)「フォーバル・サポートナビ」(類似群42P02、登録5077757、平成17年12月9日出願、平成19年9月14日登録、株式会社フォーバル)(第8号証)。
(I)「e-NAVIGATOR」(類似群42P02、42X11、登録4580877、平成12年11月16日出願、平成14年6月28日登録、NECソリューションイノベータ株式会社)(第9号証)と、
(J)「e-navi」(類似群42P02、42X11、登録5664619、平成25年11月1日出願、平成26年4月18日登録、ミヤマ株式会社)(第10号証)。
(K)「K-Navi」(類似群11C01、42P02、42X11、登録5464057、平成23年8月3日出願、平成24年1月20日登録、株式会社エクスラント)(第11号証)と、
(L)「Kナビゲーター」(類似群11C01、42P02、42X11、登録5684920、平成26年2月21日出願、平成26年7月11日登録、株式会社K-engine)(第12号証)。
これらの並存登録例からも分かるように、「NAVIGATOR」「ナビゲーター」と「NAVI」「ナビ」とは、商標の類否判断において、非類似のものと判断されております。商標の類否判断は時代の変遷により変わり得るものですが、ここに挙げた例は(A-B)(C-D)を除き、精々ここ10年程度のものであり、昨年登録された例もいくつかありますので、このような登録例は踏襲されて然るべきものであります。
審査官殿のような考え方に従えば、これら(A)~(L)の商標のうち、後願に係る(B),(D),(F),(H),(J),(L)の商標は、指定商品・役務に同一又は類似のものを含んでいる関係上、それぞれ先願(A),(C),(E),(G),(I),(K)の存在により拒絶されていたはずであります。しかし、現実には登録されております。
これは、「NAVIGATOR」「ナビゲーター」の付く商標と、「NAVI」「ナビ」の付く商標とでは、他の部分が共通していても、その違いによって非類似の商標であると判断されたからにほかなりません。
然るに、これら(A)「販促ナビゲーター」と(B)「販促ナビ」、(C)「セールスナビゲーター」と(D)「セールスナビ」、(E)「エコナビ」と(F)「ecoナビゲーター」、(G)「サポートナビゲーター」と(H)「フォーバル・サポートナビ」、(I)「e-NAVIGATOR」と(J)「e-navi」、(K)「K-Navi」と(L)「Kナビゲーター」とがそれぞれ並存できて、本願商標「販促ナビ」と引用商標1~3「販促ナビゲーター」「販促NAVIGATOR」「販促Navigator」とが並存できないとされる謂われは全くありません。
これら(B),(D),(F),(H),(J),(L)の商標が登録できたのと同様に、本願商標は前後分断できない一体不可分の商標として、登録されて然るべきであります。
(5) 以上のように、本願商標は、あくまでも、「ハンソクナビ」とのみ一連に称呼されるべきものであり、それ故に各引用商標の称呼である「ハンソクナビゲーター」とは、類似することはありません。本願商標と各引用商標とは、外観及び観念上類似しないことは勿論、称呼上も「ナビ」と「ナビゲーター」の称呼の差異によって語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料します。
よって、本願商標と引用商標1~3とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、登録適格なものと考えます。
以上