特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標「Japan/Sleeper」×「True/Sleeper」
1.出願番号 商願2016-147425
2.商 標「Japan/Sleeper」
3.商品区分 第20類、第24類
4.適用条文商標法第4条1項11号
5.拒絶理由 「Japan/Sleeper」は、
(1 登録第5237678号「True/Sleeper」…引用商標1、
(2 登録第5719850号「True/Sleeper」…引用商標2
と類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、1.登録第5237678号(商願2008-021503)の商標(以下、「引用商標1」という)及び、2.登録第5719850号(商願2014-055071)の商標(以下、「引用商標2」という)と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定されました。しかしながら、本出願人は、本願商標はあくまでも「Japan/Sleeper」全体で一連一体の商標であり、引用商標1及び2の「True/Sleeper」からなる引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2)本願商標と引用商標の構成
まず、本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標の記載からも明らかなように、やや小さめな「Japan」の英文字を横書きして上段中央に配置し、またその上段の英文字よりも大きく横書きした「Sleeper」の英文字を下段に配置し、かつ「Japan」と「Sleeper」の文字の間に「Sleeper」と同じくらいに横幅のある手書き風の横ラインを付けて、全体を紺色で統一し一体に「§Japan/Sleeper」と書した態様からなるもので、いわば「Sleeper」というベッドの上に、手書き風の横ラインであらわした「マットレス」を敷いて、その上に「Japan」を寝かせたイメージの商標であります。そして、指定商品を第20類「クッション,まくら,マットレス,家具,ベッド,ソファーベッド,ベッド用マットレス」(17C01 20A01)及び、第24類「敷布,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,布製身の回り品,布団」(17B01 17C01)とするものであります。これに対し、引用商標1は、やや小さく「True」と書した手書き風の英文字とその右横に配した水平線からの日の出風の図形部分とからなる上段部分と、その下に大きく「Sleeper」と横書きした英文字とからなる下段部分を有する二段構成の商標で、同じく指定商品を第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」(17C01)及び第24類「かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」(17C01)とするものであります。また、引用商標2は、やや小さく「True」と紺色で横書きした英文字を上段中央に配し、その下に大きく「Sleeper」と紺色で横書きした英文字を配して下段を構成し、かつその上下段の右端を囲うように形成されたオレンジ色の三日月図形を備えた態様からなるもので、同じく指定商品を第20類「家具,ベッド,ソファーベッド,ベッド用マットレス,揺りかご,スリーピングバッグ,クッション,座布団,まくら,マットレス,カーテン金具,ベンチ,屋内用ブラインド,装飾用ビーズカーテン,日よけ」(13C01 17C01 20A01 20C01 20D02 24A01 24C03)及び、第24類「カーテン,布製身の回り品,織物製テーブルナプキン,ふきん,テーブル掛け,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」(17B01 17C01 19A05 19A06 20C01 )を指定商品に含むものであります。
(3)本願商標と引用商標の対比
(3-1) まず、外観の点についてみると、本願商標と引用商標1,2とは、「Sleeper」の横書き英文字部分の存在に共通性はあるものの、本願商標の「Japan」の文字及びその下の横幅のある手書き風の横ラインの存在と、引用商標の「True」の文字や日の出図形・三日月図形の存在との違いにより、両者は外観上明瞭に識別できるものと考えます。
(3-2) また、観念の点についてみると、本願商標の「Japan/Sleeper」は、その上段の英文字部分「Japan」が「日本」を意味する単語であり、また下段の英文字部分「Sleeper」が「眠る人」や「幼児・子供の寝巻」「ソファーベッド」などの寝具類をあらわす既存の英単語でありますので、共に日本人に慣れ親しまれた用語であり、本願指定商品との関係にあって、全体として「日本向きの寝具類」「日本人向けの寝具類」などをイメージさせる商標であります。本出願人は、この本願商標の選定に際して、「日本人による日本人のための高密度形状記憶マットレスを提供したい。そしてより充実した眠りを届けたい。」とのコンセプトの下に、この「Japan/Sleeper」というネーミングを考え、本願商標の如き態様(「Sleeper」というベッドの上に、手書き風の横ラインであらわした「マットレス」を敷いて、その上に「Japan」を寝かせたイメージの態様)を考えたわけであります。これに対し、引用商標1,2は、「True」が「真実の、本当の」等を意味し、「Sleeper」が上述したように「幼児・子供の寝巻」「ソファーベッド」等の寝具類を意味する単語でありますので、全体として、「真の眠りを誘う寝具類」などをイメージさせるものと思います。よって、本願商標「§Japan/Sleeper」と引用商標1,2の「True/Sleeper」とは、観念上も紛れることのない、非類似の商標であると考えます。
(3-3)そこで、次に称呼の点につき検討しますと、本願商標「§Japan/Sleeper」は、二段構成ですが、全体が同じ書体で書され、かつ上述の如く全体として「日本向きの寝具類」、「日本人向けの寝具類」の如き漠然としてではあっても一つの意味合いをイメージさせるものでありますから、そのイメージに合わせて全体を一連に称呼するのが自然であると考えます。それ故、本願商標は常に「ジャパンスリーパー」とのみ称呼されるべきものと思います。この点、審査官殿は、本願商標中の「Japan」の部分は、指定商品との関係にあって商標の要部を構成せず、「Sleeper」の部分に識別力を認め、単に「Sleeper」と称呼される場合もあるとみて今般の拒絶理由通知を発してきたのではないかと推察しますが、そのような認定はおかしいと考えます。確かに「Sleeper」の文字は、やや大きく書されている関係で目立つ態様ではあります。しかし、この「Sleeper」の文字は特殊な造語でも、格別著名な商標でもありません。この「Sleeper」は、幼児・子供の寝巻、ソファーベッド等を意味する普通の単語で、いわゆる寝具類をイメージさせる言葉として従前より普通に用いられております。それ故、「Sleeper」の部分は指定商品との関係にあって識別力の弱い部分で、やや大きく書されてはいても、この部分を単独で抽出し、称呼・観念し取引することは無いものと思われます。寝具類を主体とする指定商品との関係で、寝具類をイメージさせる「Sleeper」の文字部分は単独で商標の要部、即ち単独で自他商品識別力を生じる部分とはなり得ないと考えます。これだけでは、何の「スリーパー」か分かりません。「ジャパンスリーパー」、「トゥルースリーパー」と一体一連に把握し、称呼・観念してこそ識別標識たる商標の役割を果たし得るものと思います。
ところで、テレビショッピング等においては、引用商標1,2の商標が頻繁に紹介され、その宣伝効果もあって、引用商標1,2は低反発マットレスのブランドとしてかなり有名になってきているのかも知れません。しかし、たとえそうだとしても、それはあくまでも「TrueSleeper」「トゥルースリーパー」として有名なのであって、決して「Sleeper」「スリーパー」単独で有名なわけではありません。Webページ上における引用商標の呼び名の表示を見ても「トゥルースリーパー」としており、呼び方も常に「トゥルースリーパー」として商品紹介をしております。単なる「スリーパー」ではありません。「Sleeper」「スリーパー」自体は、「マットレス等寝具類」をイメージさせる言葉であり、本願指定商品との関係にあってはむしろ識別力の弱い言葉であります。引用商標はあくまでも「TrueSleeper」「トゥルースリーパー」として、把握され称呼・観念されるブランドであります。単に「Sleeper」「スリーパー」と称呼・観念したのでは特徴がなく、何の「スリーパー」(寝具類)なのか、認識できないからです。
それ故、引用商標を称呼する取引者・需用者も単に「スリーパー」とは呼ばないはずです。引用商標1,2は、二段書きの商標ではあっても、あくまでも「TrueSleeper」「トゥルースリーパー」として把握され、称呼・観念されるものと思います。その様に一体に把握され、称呼・観念されるからこそ、商標としての識別機能を果たすのであります。これに対し、本願商標は前述のように、全体を「ジャパンスリーパー」と一連に称呼して、「日本向きの寝具類」、「日本人向けの寝具類」の如き一つの意味合いをイメージさせるものでありますので、そのイメージに合わせて全体を一連に「ジャパンスリーパー」と称呼するのが自然であり、単に「スリーパー」と称呼されることはないと考えます。したがって、本願商標の称呼「ジャパンスリーパー」と、引用商標の称呼「トゥルースリーパー」とは、前半に「ジャパン」と「トゥルー」という違いがあり、称呼上も十分に識別可能な非類似の商標であります。
(3-4) ところで、過去の商標登録例をみますと、類似群17C01の指定だけでも、「Sleeper」「SLEEPER」の文字を含む商標登録例は以下のように数多く見受けられます。
例えば、
1)登録4314221 CO-SLEEPER 米国法人
2)登録5140185 SIDE SLEEPER 英国法人
3)登録5217956 クラウンスリーパー ヤーマン(株)
4)登録5237678 True/Sleeper (株)オークローンマーケティング ←引用商標1
5)登録5286072 COOL SLEEPER 大宗(株)
6)登録5340028 COOL GEL SLEEPER/クールジェルスリーパー ユニー(株)
7)登録5672882 ULTRA SLEEPER (株)インターナル
8)登録5706359 Angel Sleeper (株)ファミリー・ライフ
9)登録5719850 True/Sleeper (株)オークローンマーケティング ←引用商標2
このうち、4)9)は、今般の引用商標ですが、「Sleeper」「SLEEPER」の文字は、引用商標1,2の出願以前からも寝具類等を指定した商標の中に用いられております。仮に、引用商標1,2の「Sleeper」の部分が著名であるとすれば、4)以後の出願に係る5)6)7)8)などの登録商標は存在しなかったはずですが、現実にはこのように多数の「Sleeper」「SLEEPER」を含む登録商標が存在しています。これは「Sleeper」自体が、著名な商標だというわけではないからでありましょう。これら登録商標の存在は、引用商標が仮に著名であったとしても、それは「TrueSleeper」「トゥルースリーパー」という一連の称呼・観念をしたときのことであり、決して「Sleeper」自体に格別の著名性があることを意味するものではありません。なお、この登録商標の中に、本出願人の登録商標8)「Angel Sleeper」が含まれていますが、今般の本願商標「Japan Sleeper」の出願は、この「Angel Sleeper」(天使のマットレス)に続く「Sleeper」シリーズの一貫として出願したもので、今後も販売寝具類の特徴を生かした「Sleeper」シリーズを市場に提供していく予定でおります。
(3-5)ところで、本出願人は、2016年(平成28年)1月より、カタログショッピングで、実際に本願商標を用いた形状記憶マットレスの販売を始め現在に至っております。「Japan/Sleeper」を掲載したカタログは過去に購入経験のある顧客リストに基づき毎月100万部ほど配布しております。今までのところ2016年1月号から2017年6月号までありますので、そのカタログの表紙及び該当ページを第1号証乃至第18号証として提出します。この通販カタログで受注を受けた「Japan/Sleeper」マットレスの数は、2016年1月から2017年5月末日までの1年半ほどで、5,200本以上に上っています(第19号証参照)。「Japan/Sleeper」マットレスは、またWebページ上でも2015年12月から販売を開始しておりますので、そのWebページアドレスを提示するとともに、そのWebページ「Web本館」の写しを第20号証として提出します。Webページアドレス:http://family-life.biz/fmdirect/7.1/03085このWebページ上からの受注数については集計しておりませんが、少なくともカタログショッピングの10分の1程度は受注しているものと思われます。
以上のように、本出願人は、2015年12月から「Japan Sleeper」の販売をカタログショッピングやWebページを通じて1年半以上に亘って継続しておりますので、本出願人の「Japan Sleeper」(ジャパンスリーパー)はもうかなりの知名度を得ているものと思います。これらのカタログやWebページの掲載からも分かるように、「日本人による日本人のための高密度形状記憶マットレス」というコンセプトで「Japan/Sleeper」を売り出しており、前述したように、そのカタログも毎月約100万部ほどを配布しておりますので、売り出しから1年半ではありますが、もうかなりの顧客層に知られているものと思います。そして、このように、それなりの知名度を得て、カタログショッピングだけでも既に5,200本以上の売上を記録している状況にあるわけですが、引用商標を取り扱う会社や取引者から商標が紛らわしいというような苦情を受けたり、「Japan/Sleeper」の購入者からトゥルースリーパーだと思って購入したら違っていたというような苦情を受けたりしたことは一度もありません。つまり、実際の商取引市場においては、本願商標「Japan/Sleeper」(ジャパンスリーパー)と引用商標1,2「TrueSleeper」(トゥルースリーパー)との間で具体的な出所の混同はおきておりません。これは本願商標と引用商標とが類似しないことの何よりの証左であります。
(3-6)まとめ
本願商標は、以上のように、(a)二段書きした商標ではあっても、同一書体で横ラインを含め全体が一体のものとして把握できますし、一連に「ジャパンスリーパー」と称呼して決して冗長にならず、称呼しやすい商標です。また、漠然とではありますが、(b)全体として「日本向きの寝具類」、「日本人向けの寝具類」というような意味合いを観念させるもので、上下を分断して一方を取り出し発音すべき理由はありません。例えば、上段の「Japan」を無視して下段「Sleeper」のみを取り出して本願商標を把握したのでは、「日本人による日本人のための寝具類」という出願人が思いを込めた観念・イメージは生じません。指定商品「マットレス」との関係にあって「日本人向けのマットレス等寝具類」「ジャパンスリーパー」をイメージさせることもできません。また、(c)「Japan(ジャパン)の部分も「Sleeper」(スリーパー)の部分も同一書体で紺色に統一され比較的バランスを保って配置されており、「Japan」の文字がやや小さいものの「ジャパンスリーパー」と一気に称呼できます。特に、(d)「Japan」(ジャパン)の部分は上段部分にあり、称呼上重要な位置を占め、全体で一つの概念を感じさせることから、この「Japan」の部分を省略して発声することは通常ありません。省略したのでは何の「スリーパー」(寝具類)かよく分からなくなります。そして、(e)全体として一連に称呼して語呂がよく称呼しやすいため、取引者・需要者は一連に「ジャパンスリーパー」と称呼するのが自然であると考えられます。(f)本願商標は2015年12月よりWeb上で、又2016年1月よりカタログショッピングで、販売を開始し、既に1年半を経過しておりますが、この間、引用商標との間で混同を生じたという形跡は勿論ありません。それ故、本願商標「Japan Sleeper」(ジャパンスリーパー)と引用商標1,2「True Sleeper」(トゥルースリーパー)とは、外観・称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えます。
(4)むすび
以上のように、本願商標と引用商標1,2とは、外観及び観念上類似しないことは勿論、称呼上も、本願商標「ジャパンスリ-パー」と引用商標「トゥルースリーパー」とでは前半の称呼の差異によって、語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料します。