商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#101

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「Mailsave」9, 35, 42類…3条1項3号、4条1項16号

1.出願番号  商願2014-69008
2.商  標 「Mailsave」
3.商品区分  第9類、第35類、第42類
4.適用条文商標法4条1項11号、第3条1項3号、第4条第1項第16号
5.拒絶理由 (第4条1項11号の関係もあり、商品・役務を減縮した。)
6.意見書における反論

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5729085号
出願商標・商標登録第5729085号
引例商標1・商標登録第1745731号
引用商標2・商標登録第1759387号

拒絶理由通知 意見書における反論

(A) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、拒絶理由2において、本願商標は、下記の登録商標と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると指摘されています。
           記
1.登録第1745731号(商公昭59-040888)「メルセーブ」(第9類他書換後全8区分)
2.登録第1759387号(商公昭59-057068)「MELSAVE」(第9類他書換後全8区分)
しかしながら、本出願人は本日付けで手続補正書を提出し、両引用商標に係る指定商品又は指定役務と同一又は類似する指定商品である第9類の「電気通信機械器具,電子計算機,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品」(類似群11B01、11C01、11C02)を削除し、第9類の指定としては、両引用商標と同一又は類似することのない「インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」とする補正を行いました。
 また、本願は他に、第35類「電子計算機システム及び通信ネットワークシステムの運用による事業の管理及びそれに関するコンサルティング,電子計算機による電子データファイルの管理,電子計算機用データベースへの情報構築・情報編集,電子計算機又は電子計算機情報網の操作に関する運用管理」、並びに、第42類「電子計算機システムにおけるデータのバックアップ処理,電子計算機用データの回復,電子計算機用プログラムの変換及び電子計算機用データの変換,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機端末による通信におけるサーバーの記憶装置の記憶領域の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定しておりますが、これらの指定役務も、両引用商標に係る指定商品又は指定役務と同一又は類似することはありません。
 よって、本願商標と各引用商標とは、商標の類否を論じるまでもなく、指定商品又は指定役務が同一又は類似せず、商標法第4条第1項第11号に該当しないものと思料します。

(B) 次に、審査官殿は、拒絶理由1において、次のように認定しておられます。
「 本願商標「Mailsave」は、「Eメール」を意味する「Mail」の文字と、「保存する」を意味する「save」の文字を結合し「Mailsave」と書してなり、「Eメールを保存する」の意味合いを容易に認識させます。そして、「Mailsave」の語が、上記意味合いで使用されている実情があります(後記(1)を参照してください。)。
 してみれば、本願商標をその指定商品・役務中、例えば、後記(2)の商品・役務について使用するときは「Eメールを保存する機能のある電子計算機,Eメールを保存する機能のある電子計算機用プログラム,Eメールを保存する機能のある電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,Eメールを保存する機能のある電子計算機用プログラムの提供」等を内容とする商品・役務の品質、質、機能、内容を表示してなるにすぎないものと認めます。
 したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品・役務以外の商品・役務について使用するときは、商品・役務の品質・質の誤認を生じさせるおそれがありますから、商標法第4条第1項第16号に該当します、としております。

後記(1)
(1)「Vector」の見出しの下、「Mail Saver・・・AL-Mail32で選択した複数のメールをファイルに保存するプラグイン・・・ダウンロード・・・ソフト名:Mail Saver1.0・・・ファイル:mailsave.lzh / 17,312Bytes / 2001.6.17」との記載があります(ホームページアドレス http://www.vector.co.jp/soft/dl/win95/net/se197108.html)。
(2)「サイボウズOffice8マニュアル」の見出しの下、「メールデータを退避する・・・コマンドを実行する・・・メールデータの退避・・・年月日と対象ユーザーIDを指定し、指定した日より前に送受信されたメールデータをemlファイルに書き出します。・・・環境 Windowsサーバー・・・コマンド・・・ag.exe -x mailsave -path (保存フォルダの絶対パス) -date (yyyy/mm/dd) -uid (対象ユーザーID) -e (実行時間(秒))・・・補足・・・操作ログは、メールデータを退避させるフォルダのpathの指定に関わらず、(インストールディレクトリ)/mailsave.logに保存されます。」との記載があります(ホームページアドレス http://manual.cybozu.co.jp/office8/admin/mail/commandline.html)。

後記(2)
(1)第9類「電子計算機,電子計算機用プログラム」
(2)第35類「電子計算機システム及び通信ネットワークシステムの運用による事業の管理及びそれに関するコンサルティング,電子計算機による電子データファイルの管理,電子計算機用データベースへの情報構築・情報編集,電子計算機又は電子計算機情報網の操作に関する運用管理」
(3)第42類「電子計算機システムにおけるデータのバックアップ処理,電子計算機用データの回復,電子計算機用プログラムの変換及び電子計算機用データの変換,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機端末による通信におけるサーバーの記憶装置の記憶領域の貸与,電子計算機用プログラムの提供。 」

 しかしながら、後記(1)の使用例は、「Mail Saver1.0」というものであって、「Mail Save」でも一連の「MailSave」でもありません。あくまでもソフトウェアの使用例は「Mail Saver1.0」であり、Web上のURLにたまたま「mailsave.1zh/17.312Bytes/2001.6.17」としているだけであります。
 また、サイボウズのWebサイトにあって「サイボウズOffice8マニュアル」の見出しの下、「メールデータを退避する・・・コマンドを実行する・・・メールデータの退避・・・年月日と対象ユーザーIDを指定し、指定した日より前に送受信されたメールデータをemlファイルに書き出します。・・・環境 Windowsサーバー・・・コマンド・・・ag.exe -x mailsave -path (保存フォルダの絶対パス) -date (yyyy/mm/dd) -uid (対象ユーザーID) -e (実行時間(秒))・・・補足・・・操作ログは、メールデータを退避させるフォルダのpathの指定に関わらず、(インストールディレクトリ)/mailsave.logに保存されます。」との記載があるのかも知れませんが(ホームページアドレス http://manual.cybozu.co.jp/office8/admin/mail/commandline.html)、たまたまそのような記載がそのサイトの説明文にあったと言うだけのことであって、取引者・需用者間で普通に使用され、広く普及しているといった言葉ではありません。
 まして、「Mailsave」の言葉が、本願指定商品・役務との関係で、特定の品質、質、機能、内容を表示するものとして広く取引者・需用者に認識され、使用されているといった事実もありません。成る程、言葉の意味合いとしては、「Eメールを保存する」といった意味合いも出るのかも知れません。そのことを否定するものではありません。しかし、一般的には、「Mailsave」がそのような意味合いを表す言葉(熟語)として理解され、確立されている事実はありません。「Mailsave」が、ある一つの商品を表す言葉(熟語)としてコンピュータ・電子・通信等を扱う業界において確立され流通されていればまだしも、そのような事実がない以上、本願商標を以て、単に品質、機能、内容等表示だと言うことはできないものと思料します。
 審査官殿ご指摘のように、「Eメールを保存する」といった意味合いで、本願指定商品や役務に対して「Mailsave」を使用する時は、「Eメールを保存する機能のある電子計算機,Eメールを保存する機能のある電子計算機用プログラム,Eメールを保存する機能のある電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,Eメールを保存する機能のある電子計算機用プログラムの提供」等を内容とする商品・役務の品質等を、暗示させる場合があるのかも知れません。
 しかし、それはあくまでも間接的にそのような意味合いも表示する(暗示させる)場合があるかも知れないといった程度のものであり、「Mailsave」の言葉が、一義的に「Eメールを保存する」といった意味合いに取られるわけでもありません。「Mail」の言葉も「Eメール」の他に、「郵便物」「郵便制度」「(昔の)鎖かたびら」「〈動物の〉うろこ, 甲羅(ら)」等の意味合いがあります。また、「save」の言葉も、「セーブ, 救う, 助ける, 貯める, 浮く, 節する」等のいろいろな意味があって、一義的に品質・内容等を表示するものではありません。「セーブ」の意味合いも、「save=セーブ, 救う, 助ける, 貯める, 浮く, 節する」のほかに、「deliver=届ける, 引き渡す, 産む, 配る, 引渡す, セーブ」、「rescue=救う, 救い出す, 救出す, 助ける, セーブ」、「extricate=救出する, 助け出す, 掘り出す, セーブ」、「free=自由にする, 救い出す, 放つ, セーブ」、「liberate=自由にする, セーブ」、「emancipate=解放する, セーブ」、「ransom=贖う, セーブ」等、いろいろな意味があり、決して一義的ではありません。
 したがって、「Mailsave」が一義的に「Eメールを保存する」といった意味合いを表示し、商品・役務の特定の品質、質、機能、内容のみを取引者・需用者に与えるとは言い得ないと考えます。
 その意味で、本願商標が指定商品・役務との関係において、特定の品質、質、機能、内容を表示するものと言うことはできません。まして、特定の品質、質、内容等を表示すると言った事実も見いだせません。つまり、取引者・需用者に普通に品質・内容表示として使用され、取引されている事実は見いだせません。
 特定の品質、質、内容等表示用語として定着しているわけでなければ、本願商標は商標法第3条第1項第3号にも、商標法第4条第1項第16号にも該当することはなく、十分に自他商品・役務識別力を有し、登録適格性を持つはずであります。本願商標は、あくまでも、本願商標商品・役務に対する「Mailsave」という特定の観念を生じない造語からなる自他商品・役務識別標識であります。

(C) 以上の次第でありますので、抵触する商品削除後の本願商標は、引用商標1,2と指定商品・役務が類似せず、商標法第4条第1項第11号に該当することはないとともに、特定の品質、質、機能、内容を表示する用語として「mailsave」が定着しているわけではなく、本願商標は商標法第3条第1項第3号にも、商標法第4条第1項第16号にも該当しないものと思料します。

(筆者コメント)
商標審査基準改正第14版が平成31年1月に発行された。この改訂審査基準によれば、法第3条第1項第3号に以下のような記述がある。
「 商標が、その指定商品又は指定役務に使用されたときに、取引者又は需要者が商品又は役務の特徴等を表示するものと一般に認識する場合、商標法第3条第1項第3号に該当すると判断する。一般に認識する場合とは、商標が商品又は役務の特徴等を表示するものとして、現実に用いられていることを要するものではない。」
 ケース101の意見書(2014年12月提出)では、「取引者・需用者に普通に品質・内容表示として使用され、取引されている事実は見いだせない」から、3条1項3号には該当しない、という趣旨の主張をした。しかし、「現実に用いられていることを要しない」とする今の改訂審査基準からすれば、今後私のような主張は受け入れられないのかも知れない。しかし、条文上商標法第3条第1項第3号の規定は、あくまでも「商品の産地、販売地、品質その他の特徴等の表示(又は役務の提供場所、質その他の特徴等の表示)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、登録を受けることができないというものであり、それ故、現実に取引者・需用者間に品質表示用語として具体的に用いられていなければ、やはりそれは普通に品質を表示する用語とは言い難いのではないかと思う。現実に用いられているか否かはある程度3号該当性の評価に影響を及ぼすべきであり、現実に用いられていなければ、具体性に欠け、間接的な表示や暗示ともいう理解もできる。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録insideNews: 三菱重、ロゴマークも差し押さえ 韓国挺身隊訴訟(共同通信) – Yahoo!ニュース

【ソウル共同】韓国で元朝鮮女子勤労挺身隊員らが三菱重工業への勝訴を確定させた訴訟 – Yahoo!ニュース(共同通信)

情報源: 三菱重、ロゴマークも差し押さえ 韓国挺身隊訴訟(共同通信) – Yahoo!ニュース

商標登録insideNews: 三菱重 差し押さえ申請…元挺身隊側、商標権や特許権 : 国際 : 読売新聞オンライン

元徴用工ら訴訟 三菱重工の特許権など差し押さえ(19/03/25), 0:55

https://youtu.be/E_IfEGq6ryo

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中国知的財産関連news CGTN vol.7 商標_動画(embedded)

1.China’s national-level IP Court hears its first case, 2:29
最高人民法院の知的財産裁判所(知识产权法庭)が初めての事件を扱ったというニュースです。

2.How does China protect intellectual property rights?, 5:50

3.The Point: Judge explains how to protect IPR in China, 12:43

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商標登録insideNews: Intellectual Property and Sports: Tracing the Connections | WIPO

World IP Day 2019

WIPOからの、今年の世界知的財産権の日(2019年4月26日)のテーマは、「スポーツ」ですとの記事です。WIPOの創設記念日でもある世界知的財産権の日では、世界中の知財関連政府機関や企業などがイベントを開催したりして、知的財産権の普及や啓蒙を行っております。日本の特許庁は、発明の日(4月18日)が近いせいか、他の国の機関よりはテンションが低くなっています。

This year’s World Intellectual Property Day delves into the world of sports and takes a closer look at how intellectual property (IP) rights – patents, trademarks, designs, copyright and related rights, and even plant variety protection (think turf on sports pitches) – support the global sports ecosystem, a unique landscape the brings together multiple players with overlapping interests.

情報源: Intellectual Property and Sports: Tracing the ConnectionsWorld IP Day 2019

World Intellectual Property Day 2019 商標_動画(embedded)

4月18日は「発明の日」です | 経済産業省 特許庁

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改正民法(平成29年法律第44号)と商標制度

改正民法と商標法 明治時代の民法典の施行以来の122年ぶりの民法債権編の改正は、平成32年(2020年)4月1日を施行日としています。法改正の主な部分は債権法ですので、それを商標精度の枠組みで読み込む必要がありそうなとこ …

商標登録insideNews: Costa Rican Trademarks Added to the Global Brand Database | WIPO

Costa Rican Trademarks Added to the Global Brand Database March 22, 2019The Global Brand Database now includes the collection of Costa Rica with over 237,000 records.This brings to 46 the number of national/regional collections available in the Global Brand Database.

情報源: Costa Rican Trademarks Added to the Global Brand Database

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商標登録insideNews: 地理的表示に3品目追加、農水省 青森、山形、熊本の農産物 | 共同通信

地理的表示に3品目追加

農水省 青森、山形、熊本の農産物2019/3/20 地理的表示保護制度の対象に追加された青森県の「つるたスチューベン」(農水省提供) 農林水産省は20日、地域独自の農林水産物や食品のブランドを守る地理的表示(GI)保護制度の対象に、青森県のブドウ「つるたスチューベン」、山形県の山菜「小笹うるい」、熊本県の「菊池水田ごぼう」の3品目を追加したと発表した。

情報源: 地理的表示に3品目を追加、農水省 青森、山形、熊本の農産物 | 共同通信

スチューベン16 12 23, 6:48 

スチューベン16 12 23

特定農林水産物等の地理的表示(GI)保護制度 vol.1

The Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries announced on the 20th that it has added three new items: Aomori Prefecture’s “Tsuruta Steuben” grape, Yamagata Prefecture’s wild vegetable “Ozasa Urui”, and Kumamoto Prefecture’s “Kikuchi Mizuta Burdock” as targeted under the Geographical Indication (GI) protection system to protect unique regional agricultural, forestry and fishery products and food brands

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情報源: 国際特許出願、アジアが初の5割超、中国がけん引  :日本経済新聞

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情報源: 国際特許、アジアが初の過半数 18年出願 中国、首位の米に迫る – SankeiBiz(サンケイビズ)

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