【書類名】 意見書
【提出日】 令和 3年 1月14日
【事件の表示】
【出願番号】 商願2020- 61572
【商標登録出願人】
【住所又は居所】 (省略)
【氏名又は名称】 ズーム ビデオ コミュニケーションズ インコーポレ
イテッド
【意見の内容】
本願商標は図案化及び色彩を施した「zoom」の文字からなるところ、令和
2年10月14日付(発送日)拒絶理由通知書において、以下の登録商標3件を引用
され、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定されております。
引用商標1 登録第4363622号「ZOOM」
引用商標2 登録第4940899号「ZOOM(図)」
引用商標3 登録第6255174号「ZOOm」
出願人は、引用各商標について以下のとおり対応する所存です。なお、本願第
42類指定役務は同日付手続補正書により削除(分割)いたしましたので、あわせ
て通知された引用商標4乃至8との抵触関係は解消されておりますことを申し添
えます。
1. まず引用商標1「ZOOM」については、登録名義人 株式会社トンボ鉛
筆が筆記具に「ZOOM」商標を使用していることは判明したものの、引用商標
1の指定商品のうち本願と同一又は類似する商品に使用しているか否かは確認で
きておりません。さらに調査をすすめ、その結果に応じて、引用商標1又はその
一部について(不使用による)取消審判を請求する、あるいは譲渡を受けるなど
、拒絶理由を解消するための手続を行う予定ですので、これらの手続が完了する
まで審査をご猶予いただきたくお願い申し上げます。
2. また引用商標3「ZOOm」については、登録名義人レイショナル イン
テレクチュアル ホールディングス リミテッド及び日本における商標の使用や
取引の実情について調査中であり、引用商標3にかかる拒絶理由についても必要
な手続を行ってまいりますので、あわせて審査のご猶予をお願い申し上げます。
3. 一方、引用商標2「ZOOM(図)」は、一見して、あるいは全体及び各
構成部分を観察しても、如何なる文字又は事物を表した図形かを容易に理解する
ことは困難です。ゆえに同商標は、特定の称呼や観念等ではなく、その特徴的な
図形態様(外観)によって認識、把握される商標であるため、本願商標は明らか
に識別可能であり、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのない非類似の
商標であると考えます。以下その理由を詳述します。
(1) 引用商標2は、商標公報及びJ-PlatPat特許情報プラットフォーム 商標出
願・登録情報において「検索用文字商標(参考情報)ZOOM」及び「商標(検
索用):§(特殊態様を表す記号)ZOOM」、さらに「称呼(参考情報)ズー
ム」と掲載されています。しかし、同商標の態様から前記欧文字を抽出し称呼す
ることは極めて難しく、かつ不自然です。
引用商標2の三つの構成部分のうち、最も目をひく中央には(無限大を表す)
「∞」記号又は横向きにした砂時計のような長方形状の図形が配置されています
が、これが直ちに(図形でなく)連続した欧文字「O」と看取されるとは思えま
せん。また仮に、右側部分を欧文字の「M」ではないかと推測した場合、その上
方の二つの鋭角が「凹(おう)」のように四角く表されているのに対し、左側部
分の角は曲線で表されているため(Mと同様に鋭角を有する)欧文字「Z」とは
認識され得ず、むしろ数字の「2」を想起させる態様といえます。
引用商標2は、たとえ「ZOOM」の文字から創案されたものであっても、看
者をして特定の文字を表したものと容易に理解することができない独特の図案化
がなされている、または抽象的な図形として認識される商標であって、前記(参
考情報)の文字や称呼によってではなく、その特徴的な図形態様(外観)によっ
て取引に資する商標というべきです。
(2) これに対し本願商標は、明るい青の色彩を施した「zoom」の文字から
なり、「z」は上下とも45度角としつつ、「z」や「m」の直線部分は先端の一
方の角に丸みをもたせ、「o」は正円に、「m」は二つの円弧・ドーム状に、す
べて同じ太さで表す統一的な態様で図案化された商標です。引用商標2とは外見
において顕著な相違があり、取引者・需要者には別異の印象を与えます。また前
述のとおり引用商標2から特定の文字を抽出することが困難であるため、称呼や
観念においては比較できず、これらを総合的に考察すれば、両商標は明らかに識
別可能であり、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのない非類似の商標
です。
なお、出願人ズーム ビデオ コミュニケーションズ インコーポレイテッド
は、本願商標と同一の商標につき第38類電気通信に関する商標登録(国際登録第
1365698号。登録日(国内)平成30(2018)年 5月 18日。甲1)の名義人です。We
b会議、テレビ・ビデオ会議用通信端末による通信サービスの提供を通じて、特
に新型コロナウィルスの影響でテレワークやオンライン授業などビジネス・教育
関係のユーザー増加にともなって、同商標は出願人とその会議通信サービスを指
称するものとして一般に知られるに至っております。本願商標をその指定商品に
使用した場合、取引者・需要者らはこれを出願人の提供にかかるものと容易に認
識することができ、したがって引用商標2とは商品の出所について誤認混同を生
じるおそれはないと思料します。
(3) 両商標が互いに非類似の商標であることは、貴庁の確定したご判断・登録
例からしても明らかです。
引用商標2「ZOOM(図)」は、J-PlatPat特許情報プラットフォーム 経
過情報によると、審査において拒絶理由通知を受けることなく登録査定(2006年
2月20日)がなされており、これは貴庁において、先登録商標である本件引用商
標1「ZOOM」とは類似しない(商標法第4条第1項第11号に該当しない)
との判断がなされたことを意味します。また引用商標3「ZOOm」に対する拒
絶理由通知(2019年9月6日。適用条文 第4条第1項第11号)においては本件
引用商標1「ZOOM」が類似商標として引用されたものの、引用商標2「ZO
OM(図)」は引用されておらず、したがって引用商標2は引用商標3「ZOO
m」とも類似しないと判断されています。
すなわち引用商標2は特定の文字(ZOOM)を表したものと認識されず、ゆ
えに称呼(ズーム)や観念は生じない、あるいは仮に共通の称呼(ズーム)や観
念が生じ得るとしてもそれ以外の要素(外観)において著しい差異がある等の実
情により、「同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混
同を生ずるおそれ」(「氷山印」事件 最判昭43・2・27)はなく引用商標
1「ZOOM」及び引用商標3「ZOOm」とは非類似の商標です。そういった
引用商標2が前述のとおり別異の構成態様からなる本願商標「zoom」と類似
するとの本件ご通知は矛盾するものと言わざるを得ません。
(4) さらに貴庁審判廷においても、レタリング、デザイン技法の発展に鑑み、
特定の文字列を表したものと認識されない態様の商標等について具体的な考察が
なされ、称呼及び観念は生じない、さらに外観の顕著な差異によって、それぞれ
対比する商標と類似しないとの判断が示されています。以下に例を挙げます。
「文字様のものが、横一連に表されてなるものであり、(構成中の1番目と5番
目を除く)その中間は一見していかなる文字を表示してなるのか、直ちに判読し
難いものであるから、特定の称呼及び観念は生じない」(不服2013-167
53。甲2)
「その態様は極めて図案化されたものであり、むしろ抽象化された図形であって
、欧文字の『bob』を表したものとは理解されない…。…特定の称呼及び観念
は生じない」(不服2017-10420。甲3)
「太い曲線と直線を組み合わせた図形からなるものであって、構成全体としては
特定の文字が認識されるものではない。…特定の称呼及び観念を生じない」(異
議2018-900181。甲4)
「左端の文字が欧文字の『D』をやや立体的に図案化して表したものとみること
ができるとしても、…5つの円からなる図形の下に配してなる部分については、
もはや特定の欧文字2字を表したと認識することができないほど図案化されてお
り、…全体として特定の称呼及び観念は生じない図形からなる」(不服2013
-22562。甲5)
「看者をして、容易に特定の文字列を表したものと理解、認識されるとはいい難
く、むしろその構成全体から特定の称呼及び観念を生ずることのない文字と図形
との組合せからなる一体的な標章として看取される」(不服2009-1223
0。甲6)
「欧文字6文字とおぼしき文字を表してなるところ、近時、文字のデザイン化が
進んでいるとはいえ、…各文字は、かなりデザイン化され、…5文字目は、前後
で認定した『A』との比較でその態様が異なることから、『A』と特定し難く、
…小文字の「n」と認定することも他の文字が大文字であることから不自然さが
残る…。…全体として特定の称呼及び観念が生じない」(不服2014-454
5。甲7)
「かかる外観の特徴が、(当該)商標に接する需要者に強く印象づけられ、記憶
に強く残るものといえる…。仮に、白色で表された図形部分中…矢印を除いた部
分は…『ii』の欧文字を図案化したものと想起される場合があるとしても、上
記のとおりの外観の特徴から離れて該部分を認識、把握するものとはいえない。
…(当該)商標は、その外観の特徴によって需要者等に認識され、取引に資され
るものというのが相当であるから、出所識別標識としての称呼、観念は生じない
」(不服2013-9777。甲8)
「たとえ、『O』、『S』及び『G』の欧文字をモチーフに図案化されたもので
あるとしても、その図案化の程度からすると、これより直ちに、特定の文字を表
したものと認識させるともいい難いから、特定の称呼及び観念は生じない」(不
服2015-19500。甲9)
「6つの構成要素を横一連に表したものを配してなる…、2つめ…4つ目の構成
要素…、いずれも直ちに特定の文字を表したものと看取し得るとはいい難い…。
右構成部分は,これに接する需要者等が,直ちに特定の意味を有する文字を表し
たものであると理解することができないものであり,特定の称呼及び観念は生じ
ない」(不服2016-2142。甲10)
「左から2番目…及び右端に位置するものは、それらの外形的特徴に加え、それ
らの構成態様及び配置を考慮してもなお、特定の意味合いを想起させる文字又は
図形を表したものと看取、把握されるとはいい難い。…視覚的にまとまりある一
体的なものとして認識されるものであり、…欧文字を含んでなるものの、その構
成全体から特定の意味合いを想起させることはない…、…特定の称呼及び観念を
生じない」(不服2017-650037。甲11)
(5) これらの審判において示された認定・判断の基準に照らして、引用商標2
は更に文字を抽出、判読することは難しく、特定の文字を表したものと理解する
ことはできません。ゆえに引用商標2は前記(参考情報)のような特定の称呼及
び観念は生じず、むしろその特徴的な外観によって需要者らに認識、記憶され、
取引に資される商標といえます。(2)項記載のとおり図案化及び色彩を施した「
zoom」の文字からなる本願商標は、引用商標2とは別異の外観を呈し、称呼
等において比較できず、総合的に考察すれば、同一又は類似の商品に使用された
としても、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれのない互いに非類似の商標
です。
本願商標は少なくとも引用商標2にかかる拒絶理由(商標法第4条第1項第1
1号)には該当せず登録を受け得るものと思料します。
[証拠方法]
(1) 甲第1号証 出願人を権利者とする国際登録第1365698号「zoom」 J-
PlatPat特許情報プラットフォーム 商標出願・登録情報
(2) 甲第2号証 不服2013-16753 審決写
(3) 甲第3号証 不服2017-10420 審決写
(4) 甲第4号証 異議2018-900181 決定写
(5) 甲第5号証 不服2013-22562 審決写
(6) 甲第6号証 不服2009-12230 審決写
(7) 甲第7号証 不服2014-4545 審決写
(8) 甲第8号証 不服2013-9777 審決写
(9) 甲第9号証 不服2015-19500 審決写
(10) 甲第10号証 不服2016-2142 審決写
(11) 甲第11号証 不服2017-650037 審決写
上記証拠資料は手続補足書として別途提出いたします。
以上
(Zoom 商標紛争)