米国商標実務: Sec.15(法15条)の宣誓書

米国商標 §15の宣誓書とは

米国商標法では、§15の不可争性(incontestability)の宣誓書(declaration)を提出することができます。この§15の宣誓書を提出することで、商標登録の有効性を争うことができなくなり、例えばハウスマークなどの重要性の高い商標については、宣誓書により権利の安定化を図ることができます。

lincoln 米国商標 §15の宣誓書
Lincoln Statue

§15の宣誓書を提出できる要件

§15の宣誓書の提出には、次のような要件が必要です。1)商標の所有権や商標登録の権利を失効させる最終決定がだされていないこと、2)そのような手続が係属していないこと、3)登録の日の後、どこかの5年間継続的且つ連続的に使用し、その5年の期間から1年以内であること、4)商標が普通名称化していないことの4要件になります。使用ベースの出願の場合には、登録の際に使用宣誓書を提出することから、丁度、5年目6年目の§8の使用宣誓書の提出時に、使用が継続していれば自動的に3)の継続使用の要件が満たされることになります。§8の使用宣誓書は提出が必須ですが、§15の不可争性の宣誓書は任意ですので、提出することもでき、提出しなくても良い書類です。また、§15の宣誓書は主登録の商標に対して提出することができ、補助登録(Supplemental Register)の商標は対象とはなりません。

§15の宣誓書の提出期限、提出回数、必要書類

§15の宣誓書の提出には、3)の要件が満たされていれば、特に期限はありません。外国登録ベースや国際登録ベースの場合を除いてATU又はITU出願の登録時には使用の証拠を提出した上での話となり、3)の期間は5-6年目の使用証拠の提出時期と重なっていることから、Section 8の宣誓書と同時に提出することが慣行されています。また、§15の宣誓書は1回提出すれば登録が続く限り効果があり、使用宣誓書のように更新の度に提出が必要となるものではありません。また、§15の宣誓書に添付する証拠書類などはありません。

§15の宣誓書の効果

§15の宣誓書によって不可争性を獲得すれば何が何でも争えなくなというものでもなく、Lanham Act sec.33(b)に挙げらているように、無敵(invincible)というにはほど遠い感じですが、メリットもあります。 1)商標が記述的に過ぎない(descriptive or not-distinctive)という理由の無効審判と、2)商標が先に使用されていたことを理由とする取消審判に対しては、効果があります。例えば、先にアメリカで権利を取得していた場合に、類似の範囲の商標を第3者が出願し、その第3者に拒絶理由が打たれた場合には、同意(consent)を求めてくることもありますが、並行して先使用による取消(Petition for cancellation)もかけてくることがあり、その答弁書の提出だけでも数十万円ぐらいかかる場合があり、答弁しなければDefault Judgmentで取消となります。§15の宣誓書がでていれば、このような紛争に巻き込まれることはなくなります。商標が普通名称化した、使用していない或いは放棄している、公序良俗違反、他国の国旗などである、虚偽により登録を受けているなどの理由であれば、§15の宣誓書によって不可争性を獲得していても取消可能です。§14に規定するTTABの取消審判に対しては、5年の除斥期間の規定があり、§15の宣誓書はいらないようにも考えられますが、§14の除斥はTTAB(審判部)だけで連邦裁判所の手続には効果がないのですが、§15の宣誓書は連邦裁判所に対しても効力があります(Lanham Act sec.33(b))。

§15の宣誓書のデメリット

一般に、§15の宣誓書によって不可争性を獲得する場合には、全ての指定商品・指定役務に5年間継続的且つ連続的に使用していることを宣誓することになりますが、一部の商品について継続的な使用が虚偽だった場合には、虚偽に基づく手続で登録が取り消されるおそれもあります(Medinol, Mister Leonard)。なお、このようなリスクを避けるためには、商品の一部だけの§15の宣言も可能です。

§15の宣誓書の提出費用

§15の宣誓書のオフィシャルフィーは$200 per classになります。

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