特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイト から転載しております。
本願商標:「山麓の味わい」
1.出願番号 商願2000-74446
2.商 標 「山麓の味わい」
3.商品区分 第29類:乳製品
4.適用条文 商標法第3条第1項第6号
5.拒絶理由 単に商品の品質を暗示させる、販売促進用のキャッチフレーズの一類型であるから、自他商品力がない。
拒絶理由通知 意見書における反論
(1)拒絶理由通知書において、審査官殿は、「本願商標は、『山麓の味わい』の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、近時、本願指定商品との関係の深い食品業界において、商品の品質の多様化の一として、『自然に育まれた原材料を活かした食感の食品』であることをその特徴とする商品の製品化が図られている実情がみられることよりすれば、全体として『自然に育まれた原材料を活かした食感』の意味合いを端的に表したと看取させるにすぎないものであるから、このようなものを出願人が本願指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質を暗示させる、販売促進用のキャッチフレーズの一類型であると理解するに止まり、何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認めるから、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する」と、認定されました。
しかしながら、本出願人は、本願商標の「山麓の味わい」は充分に自他商品識別標識として機能する商標であると思料しますので、上記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2)本願商標の「山麓の味わい」は、審査官殿のご指摘によれば、全体として「自然に育まれた原材料を活かした食感」の意味合いを端的に表したと看取させるにすぎないとのことでありますが、仮にそのような意味合いを端的に表すとしたら、「自然の味わい」とか「自然の食感」とでも表現するのが普通でありましょう。「山麓の味わい」は、言い換えれば、「山のふもとの味わい」、「山すその味わい」と言うことであって、その意味合いを具体的に考えてみても、一体どのような味わいを指すものなのか、端的に言い得ないものと思料します。ましてや、「自然に育まれた原材料を活かした食感」の意味合いと直接に結びつくものではないと考えます。「山麓の味わい」は、もっと漠然としたものであって“一体どのような味わいが山麓の味わいなのか”明確に言うことはできないはずであります。それが何故に、「自然に育まれた原材料を活かした食感」の意味を表すに過ぎないと言いきれるのか甚だ疑問であります。つまり、「山麓の味わい」は一定の品質を端的に表示するような言葉ではないはずであります。
ただ、審査官殿の言われるように、本出願人は、本願商標の選定に際し、取引者・需用者が自然の良いイメージを思い浮かべるようにネーミングしたことも事実であります。しかし、これはむしろ当然のことであります。飲食物に対して、人工的な体に悪いイメージを思い浮かべるようなネーミングを誰もするはずがありません。しかし、そのような自然の良いイメージを思い浮かべるからと言って、これが直ちに品質を端的に表すものだと言うことにはなりません。単に間接的に表示するに過ぎません(例えば、商標法第3条第1項第3号の商標審査基準では、「品質…を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする」としております)。
(3)審査官殿は、拒絶理由通知書の中で、本願商標を「単に商品の品質を暗示させる、販売促進用のキャッチフレーズの一類型であると理解するに止まる」というようなことを述べておられますが、新鮮な品質を暗示させ、良いイメージを需用者に植え付け、販売を促進できるような商標を選定することは、商品を製造し販売する者にとって、むしろ当然のことであります。そのような姿勢で商標を考えるのが普通であります。そのような良好なイメージを暗示させるとしたら、そのネーミングはむしろ成功であるにもかかわらず、そのことを以て、単にキャッチフレーズに過ぎないから拒絶するというのでは、如何にも短絡的に過ぎると考えます。本願商標は、一種の熟語を構成するものであって、人の注意を引くように工夫した宣伝文句(キャッチフレーズ)ではありません。キャッチフレーズであれば、もっと人目を引くような文句を考えるはずであります。
あくまでも本願商標「山麓の味わい」は、全体として一つの熟語を構成するもので、自他商品識別力を発揮する商標であります。例えば、牛乳のパッケージに大きく「山麓の味わい」と付して販売すれば、これを扱い購買する取引者・需用者は「山麓の味わいブランド」の牛乳と認識し、取り引きするものと思料します。単なるキャッチフレーズと認識するようなことはないと考えます。以上のように、本願商標「山麓の味わい」は、あくまでも自然のイメージを暗示する、即ち間接的に表示するだけであって、直接的にある一定の品質を表示するような性質のものではありません。まして、キャッチフレーズでもありません。したがって、本願商標は充分に自他商品識別力を発揮し得る商標であると思料します。
(4)ところで、過去の商標登録例を見ても、例えば、(A)登録第4273744号「自然な味わい」(平成11年5月21日登録:サッポロビール株式会社:第32類「ビール,果実飲料,乳清飲料他」、第3条第2項の適用無し)や、(B)登録第4365165号「さわやか高原の味」(平成12年3月3日登録:カゴメ株式会社:第29類「乳酸菌飲料,その他の乳製品他」、標準文字)などが、登録されています。審査官殿のような考え方に従えば、「自然な味わい」などは、正しく「自然に育まれた原材料を活かした食感」を表すもので、識別力がないと言うことになるのでありましょうが、実際には登録されております。また、「さわやか高原の味」なども、審査官殿のような考え方に従えば、正しく「さわやかな高原の自然に育まれた原材料を活かした味」を表すもので識別力がないと言うことになるのでありましょうが、これも登録されております。つまり、これらの商標は、「単に商品の品質を暗示させる、販売促進用のキャッチフレーズの一類型である」というような判断は下されていないわけであり、充分に識別力を備えた商標として登録されているのであります。然るに、このような商標「自然な味わい」や「さわやか高原の味」が登録できて、本願商標「山麓の味わい」が登録できないというのは、到底納得できないものであります。
商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次
The trademark pertaining to the trademark registration application falls under Article 3, Paragraph 1, Item 6 of the Trademark Law.”