商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#27

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイト から転載しております。

本願商標:「ShareWizard」

1.出願番号  商願2000-46174
2.商  標  「ShareWizard」
3.商品区分  第9類:電子機械器具及びその部品
4.適用条文 商標法 第4条第1項第11号、第4条1項16号
5.拒絶理由  I.本願商標は、その構成中に、「ある機能を使用するときに必要な設定作業を対話的に案内してくれる機能」を意味する「Wizard」の文字を有してなるものであるから、これを本願指定商品中、例えば「上記機能に関する電子計算機用プログラムを記憶させた記録媒体,当該記録媒体を搭載(内蔵)した機器」等、上記文字に照応する商品以外に使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある(4条1項16号)。II.本願商標は、第4368030号「SHARE」に類似する(4条1項11号)。

商標登録第4482233号 拒絶理由通知
出願商標 商標登録第4482233号
商標登録第4368030号
引例商標 登録第4368030号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書の理由①において、本願商標は、その構成中に、「ある機能を使用するときに必要な設定作業を対話的に案内してくれる機能」を意味する「Wizard」の文字を有してなるものであるから、これを本願指定商品中、例えば「上記機能に関する電子計算機用プログラムを記憶させた記録媒体,当該記録媒体を搭載(内蔵)した機器」等、上記文字に照応する商品以外に使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当すると認定された。
しかしながら、成る程「Wizard」の文字には、“対話形式によるソフトウェアのガイド機能”の如き意味合いがあるのかもしれないが、本願商標の如く、他のある文字と「Wizard」の文字とが連結された一連一体の商標の場合にあっては、「Wizard」の文字を商品の品質表示用語と見るべきではない。
本願商標にあって「Wizard」の文字は、「魔術師、手品師、名人、達人」等の意味を有する単語であるから、前段の「分け前、割り当て」等を意味する「Share」の文字と結びついて、全体として「割り当て名人」の如き特定の観念を生じさせるものである。このように本願商標は、全体を一体に把握して初めて一つの特定の観念を生じさせるものであって、前段と後段とを分断して把握したのでは意味がない。それ故、これに接する取引者・需用者は、本願商標を分断して称呼するようなことはないと思料する。
過去の登録例を見ても、現行第9類を指定商品とする登録商標のうち、「Wizard」の付く登録商標は多数存在するが、やはり、「Wizard」は審査官の言うような品質表示と扱われるようなことはなく、他の文字と一体となって一つの識別力ある商標を構成するものとして扱われている。
例えば、以下の例は、第9類において、「Wizard」の文字を含む商標であるが、これらの商標は全て、審査官の指摘するような限定を指定商品に付することなく登録されたものである。つまり「必要な設定作業を対話的に案内してくれる機能に関する電子計算機用プログラムを記憶させた記録媒体,当該記録媒体を搭載(内蔵)した機器」等の限定又はこれに類する限定は、これらの登録商標に係る指定商品には全く付されていない。
a.第3263684号(H09.02.24登録)「NetWizard」(第1号証)、
b.第3331092号(H09.07.11登録)「SuperWizard/スーパーウィザード」(第2号証)、
c.第4085055号(H09.11.21登録)「ViewWizard」(第3号証)、
d.第4142953号(H10.05.08登録)「CutWizard/カットウィザード」(第4号証)、
e.第4183373号(H10.09.04登録)「ScanWizard」(第5号証)、
f.第4243819号(H11.02.26登録)「PANORAMA WIZARD」(第6号証)、
g.第4365086号(H12.03.03登録)「ServerWizard」(第7号証)、
h.第4392087号(H12.06.16登録)「BusWizard」(第8号証)、
i.第4446430号(H13.01.19登録)「ReplicationWizard」(第9号証)。
もし、審査官が言うように、「Wizard」の文字が直ち対話形式のガイド機能を有するソフトウェア等の意味合いを起こさせ、商品の品質を表示するものに過ぎないとすれば、「Wizard」の文字を含む商標に係る指定商品は、「ある機能を使用するときに必要な設定作業を対話的に案内してくれる機能を備えた○○○○」とでも記載しなければ登録にならないということになるのであろうが、実際には、その様な限定を付さなくとも第1号証~第9号証のように数多く登録されている。しかも、これらの登録例は、何十年も前の話というのではなく、ごく最近(5年以内、最近では今年)の登録例であって、決して時代の変遷により意味合いが変更されてきたという理屈で片付けられるような時間的なずれはない。本願商標に係る指定商品にのみ、審査官の指摘するような限定を指定商品に付さなければならないという理由は全くないであろう。 よって、本願の指定商品は、この記載のままでも、今までの登録商標と同様に商品の品質について誤認のおそれはなく、商標法第4条第1項第16号に該当することはないものと思料する。
(2) 次に、拒絶理由通知書の理由②において、本願商標は、登録第4368030号商標「SHARE」(以下、引用商標という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると述べている。しかしながら、本願商標はあくまでも「ShareWizard」という一連一体の商標であって、「Share」のみを要部として把握できるようなものではないから、前記審査官の認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。まず、本願商標は、英語で「分け前、割り当て」等を意味する「Share」の文字と、同じく「魔術師、手品師、名人、達人」等を意味する「Wizard」の文字とを連結して一体一連に構成した態様であるから、「ShareWizard」全体で、「割り当て名人」とか「割り当ての魔術師」とかの特定の観念を生じさせるものである。それ故、本願商標は、この特定の観念をイメージさせるために常に一連一体に把握すべき商標であって、前段の「Share」と後段の「Wizard」とを分断して別々に把握すべきものではないと考える。別々に称呼・観念したのでは、「割り当て名人」という特定の観念が生じ得ず、従って、そのような分断の仕方は取引者・需用者がするはずはないし、出願人も予定してはいない。 しかも、本願商標は、前段の「Share」と後段の「Wizard」とが軽重の差なく、且つ間隔を開けることなく一連に配置されているので、一連に「シェアウィザード」と称呼するのが自然であって、わざわざ前段と後段を分断して称呼するようなことはない。このように、本願商標は、常に「ShareWizard」と一体に把握し、称呼観念すべき商標である。
これに対し、引用商標は、あくまでも英語の「SHARE」からなるものであって、単に「分け前、割り当て」等の観念を生じ、単に「シェア」の称呼を生じるものである。従って、本願商標の「ShareWizard」は、引用商標「SHARE」とは、外観、称呼及び観念において、紛れることのない非類似の商標であると考える。このことは、例えば、日本ビクター株式会社の登録商標第1727816号「PANORAMA/パノラマ」(昭和59年11月27日登録)(第10号証)が存在するにも拘わらず、その後の出願に係り且つ指定商品を同一又は類似とするキャノン株式会社の「PANORAMA WIZARD」(平成11年2月26日登録:前記第6号証)が登録されている事実からも伺い知ることができる。つまり、審査官のような見方をもし仮にしたならば、「PANORAMA WIZARD」は「PANORAMA/パノラマ」の存在によって拒絶されていなければならないはずなのに、現実には登録されているのである。これは、「PANORAMA WIZARD」の商標を一体の商標として把握したからに他ならない。本願商標とて同様であろう。常に、一体のものとして把握すべきものである。以上のような次第であるので、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料する。よって、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではないと考える。
(3)以上のように、本願商標は、商標法第4条第1項第16号の規定に該当するものでも、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものでもないと考えます。

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