特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標:「フルーツパーク」
1.出願番号 商願2000-20811
2.商 標 「フルーツパーク」
3.商品区分 第30類:菓子及びパン
4.適用条文 商標法第3条第1項第6号
5.拒絶理由 識別力がない。
拒絶理由通知 意見書における反論
(1)拒絶理由通知書において、審査官殿は、「本願商標は『フルーツパーク』の文字を書してなるものであるが、この文字は、『観光用に作られた果樹園』を指称する語として、広く使用されていることからすると、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需用者は、前述の理解に止まり、何人かの業務に係る商品であると認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する」と、認定されました。
しかしながら、本出願人は、本願商標の「フルーツパーク」は十分に自他商品識別標識として機能する商標であると思料しますので、上記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2)本願商標の「フルーツパーク」は、その字義からすると、成る程、審査官殿ご指摘の通り「観光用に作られた果樹園」を指称させるものかも知れません。
しかしながら、その言葉の意味が、単に、「観光用に作られた果樹園」だからといって、「フルーツパーク」が「菓子」や「パン」の識別標識として機能しないとするのは、如何にも短絡的に過ぎると思料します。
本願の指定商品「菓子及びパン」は、一般的に、果樹園で栽培されるわけでも、また果樹園で製造されるわけでもないことから、本願の「フルーツパーク」の文字が、上記本願の指定商品である「菓子及びパン」と直接に結びついて、その製造場所を指称するようなことはないはずであります。つまり、本願商標の「フルーツパーク」を、店舗等で販売する「菓子」や「パン」に付して使用した場合には、観光果樹園製の菓子・パンと理解されるはずもなく、十分に識別標識としての機能を発揮するはずであります。
(3)商標の観念は、商標自体が客観的に有する意味を言うのではなく、商標を見又は称呼することにより、その商標を付した商品の需用者又は取引者が思い浮かべるであろうその商標の意味を言う(昭和49年11月14日/東京高裁/第6民事部/判決/昭和48年(行ケ)第61号)ものと理解しますが、「菓子」や「パン」に付された「フルーツパーク」の文字を見て、取引者・需用者は、このパンや菓子を観光用の果樹園で作られたものであると連想するはずはないものと考えます。
なぜならば、通常の果樹園は、たとえ観光用のものであっても、そこで栽培したブドウや梨、あるいはリンゴやミカン等の味覚を観光客に自らもぎ取って楽しんでもらうというスタイルが通例であって、その果樹園でパンを売ったり、菓子を売ったりするようなことはほとんどないからであります。
したがって、「菓子及びパン」に「フルーツパーク」という商標を付した場合、観光果樹園で製造の菓子やパンであると一般的に理解されるようなことはなく、あくまでも「フルーツパーク」という商標の「菓子及びパン」であると理解するものと思料します。その意味で本願商標「フルーツパーク」は、十分に出所表示機能を果たし得る商標であると考えます。
(4)そして、このように「フルーツパーク」が十分に自他商品識別力を発揮する商標であることは、過去の登録例(昭和62年や平成3年の他に、最近では、平成9年や平成10年の登録例あり)からも言い得ることであります。
つまり、本願指定商品の「菓子及びパン」の分野と同じ食品の分野においても、あるいは飲料等の分野においても、「フルーツパーク」の商標は、以下の通り、自他商品識別力を有するものとして登録されております。
a.第1983486号(S62/09/21登録)「フルーツパーク」…第32類「果実、加工果実」…積水化成品工業(株)
b.第2334871号(H03/09/30登録)「フルーツパーク」…第31類「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」…森永乳業(株)
c.第3360102号(H09/11/21登録)「FRUITS PARK/フルーツパーク/フルーツ公園」…第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」…(有)万葉の森
d.第4119703号(H10/03/06登録)「フルーツパーク」…第32類「果汁入り清涼飲料,果実飲料」…全国農協直販(株)
このうち特に、a.の第1983486号(S62/09/21登録)「フルーツパーク」などは、果樹園と直接結びつく第32類の「果実、加工果実」を指定商品とするものであります。また、d.の第4119703号(H10/03/06登録)「フルーツパーク」 などは、本出願人の登録に係る商標でありますが、これなども、「フルーツパーク」の字義からすれば、本願の指定商品である「菓子及びパン」よりも、むしろ結び付きが近いように思われる第32類の「果汁入り清涼飲料,果実飲料」に係る商標であります。
然るに、このような商標が登録できて、本願商標が拒絶されるいわれはありません。