社会通念上同一と認められる商標
平成8年改正商標法における不使用取消審判の改善では、登録商標の使用と認める範囲を社会通念上は同一と認められる商標まで広げています。どこまでが社会通念上同一という境界を探ることで、どの程度の幅を以て登録商標からの差異が容認されるのかを知ることができ、また不使用取消を請求する際に請求するか否かの判断の基準ともなります。
登録商標と使用商標の関係
社会通念上同一か否かは登録商標に係る指定商品 及び指定役務の属する産業分野における取引の実情を十分に考慮し、個々具体的 な事例に基づいて判断すべきとされています。審査基準には、次のような例が挙げれています。①書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、②平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであっ て同一の称呼及び観念を生ずる商標、③外観において同視される図形からなる商標は社会通念上同一と認められるという原則が挙げられています。以下の表で、“使用”は社会通念上同一と認められるという判断になります。
登録商標 | 使用商標 | 説明 | 使用/不使用 |
鳥獣の戯 | 鳥獣の戯 | fontを変更 | 使用 |
鳥獣の戯 | 鳥獣の戯 | 書体を変更 | 使用 |
鳥獣の戯 | 鳥獣の戯 | 筆記体の使用 | 使用 |
鳥獣の戯 | 鳥獸の戲 | 旧字体と新字体 | 使用 |
CHYOJYU-NO-GI | chyojyu-no-gi | 大文字と小文字 | 使用 |
ちょうじゅうのぎ | チョウジュウノギ | 平仮名と片仮名 | 使用 |
鳥獣の戯 | ちょうじゅうのぎ | 漢字と仮名 | 使用 |
バード or ばーど | Bird | 仮名と英字 | 使用 |
鳥 | 2段書きの1段 | 使用 | |
Bird | 2段書きの1段 | 使用 | |
縦書きと横書き | 使用 | ||
背景が異なるが外観がほぼ同一 | 使用 | ||
鳥 | Bird | 同一概念 | 不使用 |
蛙 | 文字と図形
(同一概念) |
不使用 | |
図形が相違
(同一概念) |
不使用 | ||
ロード | ROAD or LOAD | 多義語に対応 | 不使用 |
不使用は社会通念上同一とは認められないという判断になります。
社会通念上同一と認められる商標の規定削除
平成30年12月30日に「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」が施行されたことに伴い、法文の改正が行われ、「登録商標に社会通念上 同一と認められる商標を含む。」とする規定(商§50➀かっこ書き)は同条項から削除されたが、商§38➄(損害の額の推定等)において引き続き維持されることが明記されたため、実質的な内容の変更はない。(不使用取消 審判基準)
不使用取消審判(商標法第50条)の解説† -手続全般や証拠の挙げ方を説明
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