判決日 平成28年11月30日
事件番号 平成 28年 (ネ) 10073号 商標権侵害行為差止請求控訴事件
知的財産高等裁判所 ”よかせっけん”
結合商標の類比判断、称呼及び観念の共通部分は外観の相違を凌駕するものではないと判断された。
【判示事項】
類否の判断について 商標の類否は,対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に観察すべきであり,かつ,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁,最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)
複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対して商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものということができる(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)
被告標章1 |
原告登録商標3 第5381433号 |
上下二段に表記される商標からどのような称呼が生ずるかは,商標全体の構成,各段の構成等によって様々であり,各段から個別の称呼が生じると一般的にいうことはできない。
本件商標3と被告標章1は,外観において異なることは明らかである。称呼については,後半の「ヨカセッケン」が共通するものの,この共通部分は,指定商品である石けんに,形容詞「よい」を意味する九州地方の方言である「ヨカ」を付したのみであって,出所識別標識としては弱いものである。また,観念についても,九州地方に関連する良質な石けんに関するものであるという点において共通するものの,この共通部分も,指定商品である石けんを,その品質及び関連する地方と共に示すものにすぎず,出所識別力は弱いものである。そして,これらの称呼及び観念の共通部分は,前記の外観の相違をりょうがするものではなく,したがって,本件商標3と被告標章1は,類似しない。