商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#16

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイト意見書 拒絶理由通知から転載しております。

本願商標:「足心ラビング」×引用商標1,2:「ラビング」

1.出願番号  平成7年商標登録願第131657号(拒絶査定に対する審判事件/審判9-7903)
2.商  標  「足心ラビング」
3.商品区分  第3類:せっけん類,香料類,化粧品
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  「足心ラビング」は「ラビング」に類似する。

出願商標
拒絶理由通知 tm16-1
引例商標1 登録第434183号 引例商標2 登録第1607647号
tm16-2 tm16-3

審判における反論(請求の理由)意見書 拒絶理由通知

(1)手続の経緯
出願 平成 7年12月21日
拒絶理由の通知 平成 9年 1月24日(起案:平成8年12月20日)
意見書   平成 9年2月7日
拒絶査定 平成 9年3月14日
同謄本送達   平成 9年4月11日

(2)拒絶査定の理由の要点
原査定の拒絶理由は、「本願は、平成8年12月20日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認める。追って、出願人は意見書において種々述べているが、本願商標は、漢字と片仮名で構成されてやや冗長でなるところ、構成中「足心」の部分は、身体中の部位(「足の裏」)を指称し、指定商品の品質,効能,用途を表すものとして認識され、且つ簡易迅速を旨とする商取引の社会においては、その構成中品質,効能等を表す部分を捨象し、顕著な自他商品識別力を有する「ラビング」の文字部分のみを捉えて取引に供される場合もあるというを相当とし、該文字部分より「ラビング」の称呼、観念(愛情のある)をも生じるものと認められる。他方、引用両商標はその構成に照応して、ラビング」の称呼、観念(愛情のある)を共通にする、彼此相紛らわしい、称呼上、若しくは観念上においても類似の商標と認められる。それ故、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第15条の規定に基づき、拒絶をすべきものと認める。」というものである。

(3)本願商標が登録されるべき理由
然るに、本出願人は、意見書において、本願商標の構成や指定商品に関わる取引者・需要者層の実情等についても説明し、本願商標は拒絶理由には該当しないことを主張したにも拘わらず、かかる認定をされたことに対しては承服できない。従ってここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第である。

(3-1)本願商標の構成
 本願商標は、願書に添付した商標見本からも明らかなように、漢字とカタカナ文字とで一連に「足心ラビング」と書した態様からなるものである。

 このうち、本願商標前段の「足心」は、第二の心臓と言われる足をみて内蔵の状態を知り、もみほぐすことによって心身を健康にする、いわゆる「足心道」の足心であり、漢方で「足のうら」を意味する。即ち、「足心道」は漢方の健康法であり、誰でもが持っている自然治癒力を強化する健康法であるが、健康法といっても、身体ばかりでなく、心も安らかでなければならないという、「健体健心法」を意味する。身体に病気があれば、気分もいらだち、心の安らかさは得られない。身体が健やかなら、何でもできるという自信が満ちてくる。「健康な身体と心」をつくることが、足心道における健康法であり、本願商標は、かかる意味合いを込めて、「足心」の文字を前段に使用したものである。また、本願商標後段の「ラビング」は、英文字の「loving」に通じ「愛情のある、愛のこもった、愛情を表した」等の意味を有する。そして、本願商標は、これらの文字を結合し「足心ラビング」と一連に表すことによって、全体として「足のうらを愛情を持って優しくもみほぐし、心身を健康にする」,「足のうらへの愛情」といった意味合いを生ぜしめる(或いは暗示する)造語である。

(3-2)引用商標1及び2の構成
 引用商標1(登録第434183号(商公昭28-9909号、更05)の商標)は、「ラビング」のカタカナ文字を縦書き(指定商品:香料及び他類に属しない化粧品)したものであり、また、引用商標2(登録第1607647号(商公昭56-22403号、更05)の商標)は「ラビング」のカタカナ文字を横書き(指定商品:せっけん類、歯みがき)したものであって、両者は共に、単に「愛情のある、愛のこもった」等の意味を有する英文字の「loving」に通じる言葉でしかなく、本願商標の如く「足のうらを愛情を持ってもみほぐし、心身を健康にする」,「足のうらへの愛情」といった意味合いを観念させるものではない。

(3-3)審査官の認定に対する反論
審査官の認定によれば、本願商標は、漢字と片仮名で構成されてやや冗長でなるところ、構成中「足心」の部分は、身体中の部位(「足の裏」)を指称し、指定商品の品質,効能,用途を表すものとして認識され、且つ簡易迅速を旨とする商取引の社会においては、その構成中品質,効能等を表す部分を捨象し、顕著な自他商品識別力を有する「ラビング」の文字部分のみを捉えて取引に供される場合もあるというを相当とし、該文字部分より「ラビング」の称呼、観念(愛情のある)をも生じるものと認められる、としている。

 しかしながら、審査官の本願商標に対するこの認定は妥当でなく、従って結論も不当である。

本願商標は、前述したとおり、「足心」の文字と「ラビング」の文字とからなるものであるが、これらの文字を結合して一連一体に「足心ラビング」と書すことによって、全体として「足のうらを愛情を持って優しくもみほぐし、心身を健康にする」といった意味合いを生ぜしめる(或いは暗示させる)造語からなるものである。しかも、「足心」の文字部分は、漢方を学んだものであれば「足のうら」を意味するであろうことは見当がつくものの、広辞苑にも「足心」の項目がないように、審査官が指摘するほど指定商品の品質,効能,用途を表すものとして一般的に親しまれた言葉となっている訳ではない。従って、この「足心」を捨象し、「ラビング」のみに自他商品識別力がある如き審査官の見方は一般的ではない。不自然である。本願商標の前段「足心」と後段「ラビング」には軽重の差はないとみるべきであり、あくまで全体として捉えて一つの識別力のある商標とみるべきである。このことは、例え、簡易迅速を旨とする商取引の社会においてもそうである。商取引社会において、本願商標を捉えて、単に「ソクシン(足心)」と称呼・観念したり、或いは単に「ラビング(愛情のある)」と称呼・観念するといったようなことはあり得るであろうか。あり得ないとみるのが自然である。本願商標は、あくまでも一連に「ソクシンラビング」と称呼して語呂もよく、一体の言葉として称呼・観念されるものと思料する。

そして、多少重複するがまとめの意味もあるので述べると、本願商標は、意見書でも主張したように、
(a)漢字とカタカナ文字とから構成される態様ではあっても、前段と後段を分けることなくあくまで一連に書した態様であること、
(b)全体としてまとまった特定の意味合いを観念させるものであり、分断して発音すべき理由がないこと、
(c)「足心」の部分も「ラビング」と同じく4音に「ソクシン」と称呼され、軽重の差なく称呼できること、
(d)「足心」の部分は前段部分にあり、称呼上重要な位置を占め、この部分を省略して発音することはあり得ないと考えられること、
(e)全体として一連に称呼して語呂がよく称呼しやすいこと、それ故、一連に称呼するのが自然であると考えられること、
(f)石けんや化粧品等の指定商品との関係においては多少長めの称呼も市場に多数存在するが、取引者・需用者は一連に称呼するのが常であって省略して称呼するような実情にないこと、
(g)特に、化粧品などの需用者は、商標を注意深く観察し購買するのが常であって、商標部分は一連一体に把握するのが普通であること、
等の理由から、本願商標はあくまで「ソクシンラビング」とのみ称呼され、且つ「足のうらへの愛情」等の意味合いを生ぜしめる言葉として理解されるものと思料する。

よって、本願商標の称呼・観念である「ソクシンラビング」(足のうらへの愛情)と引用商標1及び2の称呼・観念である「ラビング」(愛情のある)とを対比して明らかなように、「ソクシン」の称呼・観念の有無によって、両者は音数及び語感語調並びに観念が全く異なり、明確に識別できる非類似の商標であると考える。

(4)むすび
以上のように、本願商標と引用商標とは、外観上は勿論、称呼及び観念上も紛れることのない非類似の商標である。

 よって、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定には該当せず、登録適格なものと思料しますので、請求の趣旨のとおりのご審決を賜りますようお願い申し上げます。

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