最高裁 昭和53(行ツ)129号 ワイキキ事件
【判決日】昭和54年4月10日
争点
商標法三条一項三号に該当すると判断する際には、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章を商標に使用した場合に、その産地、販売地につき誤認を生じさせるおそれのある商標に限るものと解すべきか否か
判示事項
標法三条一項三号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であつて、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であつて、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。叙上のような商標を商品について使用すると、その商品の産地、販売地その他の特性について誤認を生じさせることが少なくないとしても、このことは、このような商標が商標法四条一項一六号に該当するかどうかの問題であつて、同法三条一項三号にかかわる問題ではない。
事実・概要
登録番号:第853858号
登録日:昭和45(1970)年 4月 21日
出願番号:商願昭39-33776
出願日:昭和39(1964)年 7月 21日
権利者:株式会社大塚製薬工場
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】: 第4類 せつけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類
上記商標登録に対して無効審判(昭和48年 審判第6582号)が請求されて、特許庁は請求棄却と判断しました。この審決を不服とした請求人が東京高裁に審決取消訴訟を提起し、東京高裁は審決を取り消すとの判決を出しています。この判決について上告した事件です。東京高裁は”商標法第3条第1項第3号の「商品の産地、販売地」というためには、必ずしも、その土地が当該商品の産地、販売地として広く知られていることや、その唯一の産地、販売地であることを要するものとは解されない”と判示しています。
判決文
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人吉原省三、同笹井保大、同馬橋隆紀、同和田正隆の上告理由一ないし三について
商標法三条一項三号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であつて、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であつて、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。叙上のような商標を商品について使用すると、その商品の産地、販売地その他の特性について誤認を生じさせることが少なくないとしても、このことは、このような商標が商標法四条一項一六号に該当するかどうかの問題であつて、同法三条一項三号にかかわる問題ではないといわなければならない。そうすると、右三号にいう「その商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」の意義を、所論のように、その商品の産地、販売地として広く知られたものを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであつて、これを商品に使用した場合その産地、販売地につき誤認を生じさせるおそれのある商標に限るもの、と解さなければならない理由はない。原審は、本件商標が、その指定商品との関係上、その商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、かつ、これをその指定商品について使用するとその商品の産地、販売地につき誤認を生ずるおそれのある商標であつて、商標法三条一項三号及び四条一項一六号に掲げる商標に該当する旨を認定判断しており、この認定判断は、原判決挙示の証拠関係及び説示に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
同四について
所論は、本件商標をその指定商品中香水を除くものに使用したときその商品の産地、販売地につき誤認を生ずるおそれがないことを前提に原判決を論難するものであるところ、本件商標を右指定商品に使用するときにもその商品の産地、販売地につき誤認を生じさせることは前示のとおり原判決が正当に認定判断するところであるから、所論は、その前提を欠き失当である。論旨は、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
キーワード
商標法3条1項3号、商標法第4条1項16号
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