®™℠ および登録商標の違い-何のために表示する?無くても良い?の疑問に答えます。

“®”と“™”と“℠”、“登録商標第~号”の違いについては、これらの表示の意味は?表示は必ず必要なの?表示がないのに権利行使できるの?未登録商標に表示したら?という様に非常に多くの質問を頂いております。

1.分かり易いルールは?

表示記号については下の表が簡単で分かり易いと思います。RマークやTMマーク、SMマークは概ね国際的に使用されています。「登録商標 第~号」は日本だけです。

表示例 表示記号の読み方 意味
〇〇〇〇® Registration Symbol 登録された商標(登録商標)に付けます。
〇〇〇〇™
〇〇〇〇℠
Trademark Symbol

Service Mark Symbol

未登録の商標に付けます。
〇〇〇〇
登録商標第xxxxxxx号
商標登録表示 登録商標の意味です。標章の近くで表示します。これは日本だけの表示方法です。

ちなみに©は著作権表示(copyright symbol:17 U.S. Code § 401)と呼ばれていますが、かつての万国著作権条約のもとで必要とされていましたが、現在ではほとんどの国が無方式のベルヌ条約に加盟しているため、この©表示がなくても著作権が発生します。また、℗は録音著作権記号(Sound recording copyright symbol)と呼ばれ、著作隣接権のうちのレコード製作者の権利である原盤権による保護を受けるための表示でしたが、こちらも現在は表示する必要はありません。℗はphonogram(録音)の頭文字のpで、特許(patent)のpではありません。

以下に商標の表示記号について少し詳しく説明します。

2.商標登録表示とは?

日本では商標登録された場合、特許庁 から必ず商標登録番号が付与されます。そして、登録された商標を使用する場合には、それが登録商標であることを示す表示をすることが望ましいとされていて(商標法第73条)、規則では“登録商標”の文字と登録番号(第○○○○○○○号)の組み合わせで 表示するのが正しい商標登録表示(即ち、“登録商標第○○○○○○○号”)とされています。

表示は必ず必要?

商標登録表示については必ず表示しないといけないのかと言うとそうではなく、そのように努めれば良いだけで、無くても特に罰則はありません。また、このような表示が無くとも、他人による商標権の侵害があった場合には権利行使が可能です。また、後述の®(Registration Symbol)や™(trademark symbol)についても、表示しなければいけないということはなく、表示がなくても登録されていれば侵害者を訴えることも可能です。

登録商標の文字 TM
登録商標の文字

3.登録されていないのに登録表示をすると?

登録されていないにも拘わらず、或るマーク(専門的には標章と言います。)に商標登録表示をすることは、虚偽表示になるとして禁止されています(商標法 第74条)。ここで虚偽表示になるものとして禁止されているものは、商標登録表示だけではなく、これと紛らわしい表示を付することも禁止されています。このような虚偽表示を行った場合、刑事罰の適用があり、3年以下の懲役又は300万円以下の 罰金に処されることになります。

以上が、日本の商標法でのルールであり、“™”と“℠”と“®” については実は日本の法律の枠内には特に規定がありません。では、どこに規定があるのでしょうか?

4.®について

®は正式にはレジストレーションシンボル(registration symbol/連邦登録記号) と呼ばれています(所謂”マルアール”は俗称となります。)。その1つの根拠が米国商標法15 U.S.C. Section 1111にあり、条文上“®”は“the letter R enclosed within a circle”と言う表現で、“Registered in U.S. Patent and Trademark Office”若しくは“Reg. U.S.Pat. & Tm. Off.”と同じ意味を持つことが示されています。即ち、“®”は米国特許商標庁(USPTO)で登録されたと言う意味を持つものとされています。このような表示を行う理由は、それを無断で使用する者を辞めさせる警告として機能することが挙げられていて、これらの“®”などの表示もなく単に登録されているという事実(Constructive Notice)だけでは損害賠償などの請求ができず、実際に相手が知ること(Actual Notice)をしなければ損害賠償の請求や逸失利益の賠償請求ができない旨、規定されています。“®”の表示がなければ米国では損害賠償請求できないと誤解している弁理士の方も多いのでもう少し説明すると、米国については“®”の表示がなければ、損害賠償請求に際して実際に警告して相手に登録を知らせる必要が生じ、実際に警告すれば“®”の表示がなくとも損害賠償請求等が可能です。侵害係争時には、こちらが登録していることを教える警告状を出せば良いのです。また、米国特許商標庁での登録前(すなわち出願中の段階で)にこれらの“®”などの表示を付することが不適切とされています。更に、アメリカで商標登録されれば“®”を表示する義務があるのかないのかについて説明すると、アメリカで商標登録されてもその表示義務はありません。日本で紹介されているいくつかの文献やWebsite(弁理士会のFAQを含む。)には、表示義務有りとする正しくない説明があり、注意が必要です。アメリカで売られている自動車のエンブレムや、facebookやTwitterのWebsiteの表示にいちいち“®”がついているのかを考えてみると明らかです。“®”について表示義務がないのは明らかです。

15 U.S.Code § 1111 (Section 29 of the Lanham Act)
Notwithstanding the provisions of section 1072 of this title, a registrant of a mark registered in the Patent and Trademark Office, may give notice that his mark is registered by displaying with the mark the words “Registered in U.S. Patent and Trademark Office” or “Reg. U.S. Pat. & Tm. Off.” or the letter R enclosed within a circle, thus ®; and in any suit for infringement under this chapter by such a registrant failing to give such notice of registration, no profits and no damages shall be recovered under the provisions of this chapter unless the defendant had actual notice of the registration.

®記号はどこに配置すればよいですか?

マークに対して「®」記号を配置する場所についての特定の要件はありませんが、ほとんどの企業はマークの右上隅にある記号を使用しています。「®」記号は、商標を米国特許商標庁に連邦登録したことを示します。それは商標権者のマークが登録されており、コモンローにより先使用から生じた他人の商標権を除いて、商標権者が登録商標に対して全米で権利を持っていることを一般に知らせます。

「®」記号の使用に制限はありますか?

米国法では、「®」記号の使用には、次の3つの重要な制限があります。(1)マークが登録された後にのみ使用できます(出願中に使用することはできません)。(2)連邦登録に記載されている商品および役務上で、またはそれに関連してのみ使用できます。(3)登録がまだ有効である間のみ使用できます(登録を維持しないか、有効期限が切れている場合は、使用を継続できません)。注:いくつかの外国では、マークがその国で登録されていることを示す目的で「®」を使用することとしているため、外国登録の所有者による記号の使用が不適切な場合があります。

登録する際に提出する使用の証拠に「®」記号が既に使用されていた場合

米国で商標を登録する際には、原則使用の証拠を提出することになっていますが、その証拠の写真に写っている標章にⓇが付与されている場合には、審査官からの忠告を受けることがあります。忠告については、応答する必要はありませんが、次のような文言になります。”The specimen shows use of the federal registration symbol Ⓡ with the applied for the mark. However, the USPTO records do not show that the mark is registered. Applicant may not use the federal registration symbol until its mark is registered in the USPTO. TMEP §§906, 906.03. After the registration, applicant may use the symbol in connection with the specific goods and/or services listed in the registration. Id. This information is advisory only. Applicant need not respond to this issue.”

米国でⓇを不適切に使用するとどうなりますか?

米国でⓇを不適切に使用すると取消対象となります。すなわち意図的に公衆若しくは米国特許商標庁を欺く或いは誤解させるように使用する場合は、欺瞞行為(fraud)を構成することになり、misuse of registration symbolとして取消対象(Cancellation)となります。Copelands’ Enterprises Inc. v. CNV Inc., 945 F.2d 1563, 20 USPQ2d 1295 (Fed. Cir.1991)(未登録商標にfederal registration symbol Ⓡを使用した上で侵害警告); Wells Fargo & Co. v. Lundeen & Associates, 20 USPQ2d 1156 (TTAB 1991).

5.™ ℠ について

“™”と“℠”は何を示すものでしょうか?米国特許商標庁が発行した“Basic Facts About Trademarks”と言う冊子によると、誰でも標章についてこれが商品についてのマークだと思う方は“™”(trademark)を付し、サービス (役務)についてのマークだと思う方は“℠”(service mark)を付して、一般の人にそのような主張(コモンロー商標である旨)を知らせることができるというように記載されています。また、これらの“™”と“℠”を使用するのに特に登録は必要ではなく、出願中である必要もありません。さらに、その主張は有効かも知れませんが無効かも知れません。要するに、特に規定はなく、自分で主観的にマークと思えば“™”や“℠”を付することができ、それ自体は特に何かに保証されるものでもないと言うことに なります。この“™”と“℠”については、米国での解説ですが、日本にも特に規定がないことから自分で主観的にマークと思えば使用できると思われます。米国特許商標庁の商標審査マニュアル(TMEP 904.03(i)(B)(1) Prominence of Mark)によれば、使用の証拠として添付したWebsiteのページで、出願した商標や使用を証明する標章にTMの添え字があるときは、商標としてみなされ易くするとしていますが、同時に他の要因から単なるマークに過ぎないものを商標にさせるものでもないとしています。

米国連邦法は、「TM」または「SM」の使用を規制していますか?

米国では、標章を使用する権利を主張する場合は、「TM」(商標)または「SM」(サービスマーク)の指定を使用して、使用にかかる州でのコモンローマークの主張を一般に警告することができます。「TM」または「SM」記号を使用するために登録は必要ありません。USPTOが商標の登録を拒否した場合でも、これらの記号を引き続き使用できます。コモンローが連邦登録と同じような権利と利益を使用者に与えるわけではありませんが、「TM」または「SM」記号は、その標章の使用者がコモンロー基づく標章の権利を主張していることを人々に知らせます。

6.米国以外で®を使用する国は?

米国商標審査基準TMEP 906.01に、米国以外でRegistration Symbol ®を使用して登録商標を表示する国についての説明があり、以下の国では ® symbol はその国で登録されたものを示すとされています。
Belgium, China (People’s Republic), Costa Rica, Denmark, Ecuador. Germany. Guatemala, Hungary, Luxembourg, Netherlands, Nicaragua, Poland, Sweden [2021.1.14現在] また、メキシコとフィリピンでは「登録商標」または® symbol がなければ権利行使できないとされています。メキシコでは、は ®以外の商標登録としてthe letters 「M.R. 」or the expression 「Marca Registrada (registered trademark)」が使用できます。フィリピンでは、権利行使の条件の1つが”Registered Mark”若しくはthe letter R within a circleの表示となっています。

Philippine, Republic Act No. 8293, Section 158
Section 158. Damages; Requirement of Notice. - In any suit for infringement, the owner of the registered mark shall not be entitled to recover profits or damages unless the acts have been committed with knowledge that such imitation is likely to cause confusion, or to cause mistake, or to deceive. Such knowledge is presumed if the registrant gives notice that his mark is registered by displaying with the mark the words '"Registered Mark" or the letter R within a circle or if the defendant had otherwise actual notice of the registration. (Sec. 21, R.A. No. 166a)
"Circle R" by Alan Levine,
“Circle R” by Alan Levine,/ CC BY 2.0, converted from .jpg to .png

7.日本で®マークを未登録の商標に使用したら?

日本で“®”のマークを登録していない商標に使用した 場合はどうなるのとのご質問も良くいただきますが、結論からは、Registration Symbolはアメリカ及びいくつかの外国での話なので直接日本の刑事罰の適用まではないものと思います。もし仮に虚偽表示成立とするならば、輸入業者はアメリカでは正式に登録されていても日本で商標登録のないRegistration Symbolの付いた商品を輸入することだ けで懲役や罰金刑に処されることになり、流通を阻害することにもなりかねません。®のマークを見た消費者は、どうやら登録はされているらしいけど、それは日本かも知れないしどこかの外国かもしれないと認識するのが一般的なと ころと思いますし、日本での登録があると多くの人が過って認識するほどの表示(商標法73、74条の“登録商標”は日本での登録を言っていて外国の登録については条文の適用外と解される。)ではないため、反対説(逆に多くの人が日本の登録があるものと誤認する場合は有力)もありますが、現状では商標法第 74条の紛らわしい表示には該当しないと解釈されると思います。しかしながら、商品やサービスの国際化が進む今日では、登録を以って®を付与するのが消費者を惑わせない適切な表示と思います。

8.外国で未登録商標に®マークを使用した場合

不適切であることは間違いないところですが、いくつかの国では処罰に対象となる可能性があります。そのような国の1つにオーストラリアがあり、オーストラリアでは登録していない商標に®マークを表示していた場合、罰金刑となる可能性があります。

Australia Trade Marks Act 1995, 151 False representations regarding trade marks
(5) For the purposes of this section, the use in Australia in relation to a trade mark:
(a) of the word registered; or
(b) of any other word or any symbol referring (either expressly or by implication) to registration;
is taken to be a representation that the trade mark is registered in Australia in respect of the goods or services in relation to which it is used except if the trade mark is registered in a country other than Australia in respect of those goods or services and:
(c) the word or symbol by itself indicates that the trade mark is registered in that other country or in a country outside Australia; or
(d) the word or symbol is used, together with other words or symbols of the same or a bigger size, to indicate that the trade mark is registered in that other country or in a country outside Australia; or
(e) the word or symbol is used in relation to goods that are to be exported to that country.
circle R
circle R

9.英語圏以外の登録商標

登録商標は、スペイン語圏では“Marca Registrada” 或いは “MR” とされ、また、フランス語圏では “Marque Déposée” “Marque de Commerce” 或いはその短縮形の “MD” and “MC”となっています。

以上のように、標章部分に付加されるシンボルや商標登録表示には、種々のものがあり、また、使用する国でもそのルールが異なります。商標権は国ごとに取得するものですから、商品の輸出や輸入を伴う場合には注意が必要となります。ちなみに、米国で“trademark”は1ワードですが、“service mark”は2ワードです。ところが英国の英語では、商標は通常“trade mark”の2ワードとなります。何と日本では“trademark”も“service mark”も併せて“商標”と言う括りでまとめられています。これは“service mark”の方が最近登録可能となり、商標法の条文の全面書き直しを避けて、まとめて“商標”として扱うことにしたためです。

10.種苗法の表示義務

令和3年4月1日から改正された種苗法の規則では、品種登録されている種苗若しくはその包装に品種登録されている旨の表示をすることが義務付けられています。表示をしなかった場合には10万円以下の過料が課せられることもあります。商標登録の表示は義務ではありませんので、種苗法は180度違うものになります。品種登録されている場合には、「登録品種」の文字、「品種登録」の文字及びその品種登録の番号、あるいはPVPマーク(下記画像)を表示する方法で表示する必要があります。登録品種への表示義務(pdf) – 農林水産省

PVPマーク

当サイト内の良く閲覧されているページ
商標・商標登録とは#1
商標・商標登録とは#2
商標用語集

®™℠などの表示 FAQs

®は何を意味しますか?

Ⓡはregistration symbol(レジストレーションシンボル)と呼ばれ、米国などのいくつかの国で登録された商標を示します。米国では特に連邦での登録を意味します(15 U.S.C. §1111)。米国でのルールとして、連邦で登録されてもⓇの表示を付与しなければならない訳ではなく、登録されていることを相手に知らせればⓇの表示が無くても権利行使をすることもできます。

™は何を意味しますか?

™はtrademark symbol(トレードマークシンボル)と呼ばれ、商品に付与される商標を意味します。自分で対象の語句や図形が他人の商品と区別するためのマークと思えば付与することができます。また、そのような表記をするために、商標登録や出願は必要ありません。米国では、特にコモンローでの商標を意味すると考えられており、米国特許商標庁での連邦登録とは無関係に使用できます。

℠は何を意味しますか?

℠はService mark symbol(サービスマークシンボル)と呼ばれ、サービスについて使用される役務商標を意味します。自分で対象の語句や図形が他人の役務と区別するためのマークと思えば付与することができます。また、そのような表記をするために、商標登録や出願は必要ありません。米国では、特にコモンローでの役務商標を意味すると考えられており、米国特許商標庁での連邦登録とは無関係に使用できます。

©は何を意味しますか?

©はcopyright symbol(コピーライトシンボル)或いは著作権表記と呼ばれ(17 U.S.C § 401)、かつて万国著作権条約(Universal Copyright Convention)の下、著作権を主張するために必要とされていましたが、現在では無方式のベルヌ条約(Berne Convention)がほとんどの国で加盟されていますので著作権を主張するためには必要ではありません。

℗は何を意味しますか?

℗は録音著作権記号(Sound recording copyright symbol若しくは Phonographic copyright symbol)と呼ばれ、メディアに記録された音声記録(フォノグラム)の著作権(原盤権)による保護を受けるための表示でしたが、こちらも現在は表示する必要はありません。Pは phonographic copyrightの頭文字を示しています。℗については許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約の第五条〔保護の方式〕に規定があります。

From Channel of Rock Your Brand®

88 / 100
Loading