“標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書”
PROTOCOL RELATING TO THE MADRID AGREEMENT CONCERNING THE INTERNATIONAL REGISTRATION OF MARKS
標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書とは?

マドリッド協定議定書とマドリッド協定の関係は?
マドリッド協定の方が先に存在していましたが、より多くの国が加盟しやすいような規定を設けて改善された規定がマドリッド協定議定書です。議定書はプロトコルですので、通称マドプロとも呼ばれています。マドリッド協定議定書の方が圧倒的に締約国が多く、2015年10月31日、マドリッド制度のメンバーのうちでマドリッド協定のみに加盟する最後の加盟国であったアルジェリアでマドリッド議定書が発効され、マドリッド制度(Madrid System)は事実上単一条約体制となっています。
手続きの概要は?
日本の特許庁に出願又は登録されている商標を基礎(基礎出願又は基礎登録という)として、WIPO国際事務局に国際出願を行います。まず、MM2という様式の願書に保護を求める締約国を明示し、その願書を日本国特許庁に提出し、そこで方式審査が行われ問題がなければ、2ヶ月以内に日本の特許庁からWIPO国際事務局へ提出されます。そこで再度方式審査が行われ、問題がなければ国際登録されます。そして、WIPO国際事務局は願書に記載された指定国官庁に通報することとなります。MM2、その他のWIPOが定めた願書様式は日本国特許庁ホームページよりダウンロードが可能です。また、WIPO国際事務局のホームページでもダウンロード可能です。
指定できる国は?
マドリッド協定議定書の締約国のみです。アメリカは2003年に締約国に移行し、アメリカへの出願が2003年11月2日から可能となりました。また、北朝鮮は締約国ではありますが、日本は北朝鮮を加盟国と認めていないために出願はできません。日本が加盟国となった後、アンティグア・バーブーダ(Antigua and Barbuda) とイタリアが新しく加盟しました[イタリア:2000.3.17; アンティグア・バーブーダ:2000.4.17]。韓国は2003年4月10日から締約国となっています。マドプロを利用した欧州連合商標の出願は、2004年10月1日から可能です。なお、自国指定(すなわち日本を指定する)は認められていません。台湾は現時点(2019. Mar.)では締約国ではありませんが、カナダは2019年6月17日から締約国となります。
従来の手続き(外国への直接出願)との違いは?(議定書出願のメリット)

保護の対象となる出願はどういうものか?
日本の特許庁に出願中もしくは登録された商標を基礎とする国際登録出願です。(防護標章登録出願もしくは防護標章登録を基礎とするものも権利取得できます。)すなわち、日本特許庁へ出願中もしくは登録された商標でない限り、議定書に基づく国際商標出願は認められません。日本国特許庁に出願中もしくは登録された商標を基礎としているため、国際登録する商標は、これと同一のものである必要があります。例えば基礎登録がローマ字と漢字の二段書きであった場合、国際登録出願をローマ字だけにすることはできません。標準文字であった場合、国際登録出願には公報にある文字と同一にします(例えば公報に載っているものが明朝体であれば明朝体で商標を作成する)。基礎となる商標と、国際登録出願する商標は誰が観ても同一のものでなければ拒絶されます。また、商品・役務に関しては基礎出願又は基礎登録の商品・役務の範囲と実質的に同一又はその範囲内でなければなりません。願書(MM2)には8cm×8cmの範囲内で商標を書くようになっています。基礎出願又は基礎登録がカラーでなされていた場合は必ずカラーで行わなければいけません。しかし、WIPO国際事務局では、スキャナーで読みとったものを保存して、願書自体は破棄してしまうため、例えば金色・銀色などをつかった商標では、その部分は黒色としてしか残らないこととなります。何をもって原本とするかについてはっきりとされておらず、カラーを使った商標は注意が必要です。
誰が出願人となりうるか?
日本国民又は日本国内に住所または居所(法人にあっては営業所)を有する外国人です。2人以上の出願人がいる場合は、出願人全員がの条件を満たしていることが必要です。
国際登録出願の効果は?
日本国特許庁へ提出した日(日本国特許庁が受理した日)が国際登録日として認定されます。発信主義ではなく、到着主義がとられます。しかし、方式補正などで、日本国特許庁での手続きが2ヶ月を越えると、国際登録日は繰り下げられてしまいます。
事後指定とは?
国際登録の事後指定とは、国際登録出願後に指定国を足すことです。登録出願手続きと同様の手続きで行います[事後指定の様式MM4]。
国際登録の存続期間は?
国際登録日から10年にわたって効果を有します。ただし、本国官庁が受理した日から2ヶ月以内に国際事務局が受理しない場合には、国際事務局がその出願を受理した日が国際登録日として扱われます。事後指定日などは存続期間の計算に影響しません。
国際登録の更新手続は?
国際登録の存続期間は10 年づつ更新することができます(MM11/E-renewal)。国際登録日から 10 年後の満了日までに手続をする必要があります。ただし、更新期日から 6 月以内であれば割増手数料(基本手数料の 50%)の支払いを条件に、更新手続をすることができます。手数料の額が確定するのが満了日の 3 ヶ月前以降となりますので、手続は満了日の 3 ヶ月前から満了日までの間に済ませることが推奨されています。
セントラルアタックとは?

国際出願の手数料は?
(1)国際事務局へ納付する国際手数料
手数料の計算は各国の個別手数料が為替によって変わるために、複雑になっています。また、個別手数料のへの受領を宣言している締約国出願は、付加手数料及び追加手数料に代えてそれぞれの国が定める額(=個別手数料)を支払うため、さらに複雑です。従って、ベストな方法としては、WIPO国際事務局のホームページ(http://www.wipo.org/)のInternational Trademark Registration Fee Calculatorをクリックし料金を確認する方法です(MSエクセル(商品名)が必要)。支払いは、スイスフラン建てで行われます。支払方法としてはスイスの口座(クレジットスイスジュネーブ)に銀行振込する方法が安全です。その他の方法としては、現地支払い、銀行小切手支払い、国際郵便振替などがあります。
(2)日本国特許庁へ納付する手数料
国際登録出願する者は一件につき9000円を納付することとなります。事後指定する者、国際登録の存続期間の更新の申請者、国際登録の名義人の変更の記録の申請者は、それぞれ一件につき、4200円の手数料を納付することになります。なお、特許庁への手数料は特許印紙をもって納付されなければなりません。
議定書国際登録出願を作成できるのは?
弁理士法施行令の改正で、非弁理士の業務禁止の書類に「国際登録出願ノ願書」が追加され、国際登録出願の願書作成は弁理士が行うことになります。(弁施令38条1項7号)
各国の国内出願へ変更
国際登録日から5 年以内に基礎出願が拒絶・無効とされることなどによって国際登録が取り消されたとしても、国際登録日の利益を保持したまま各国の国内出願へ変更することができます。
