米国連邦商標法における団体商標と証明標章
米国連邦商標法では、通常の商標の他に、団体商標(Collective Trademark)と証明標章(Certification mark)があります。日本の商標制度にも団体商標と地域団体商標の各制度がありますが、証明標章という制度自体はなく通常の商標登録とライセンシングを利用しています。証明標章はいくつかの国(ポーランド、スウェーデンなど)ではGuarantee Markとも呼ばれることがありますが、米国ではCertification markになります。
米国における団体商標(Collective Trademark)と証明標章(Certification mark)ってなに?
米国の商標制度では、団体商標は次の3つのカテゴリーに分類できます。それらはcollective trademark(団体(商品)商標)、collective service mark(団体役務商標)、collective membership mark (団体会員標章)になります。このうちcollective trademarkとcollective service markはまとめてcollective markと呼ばれることもあります。団体商標は団体組織の構成員が指定商品や指定役務を非構成員の商品や役務と区別するために使用される標章です。一方証明標章は、或る商品や役務の特徴や品質を証明するために使用される標章です。証明標章の目的は、購買者に特定の者の商品や役務が或る性質を有し、若しくは所定の品質や標準を備えていることを知らせます。これらの団体商標や証明標章は、複数人によって使用されますが、その複数の使用者は団体内の組織によって関連した者に限定されます。団体商標は、構成員(会員)の全員が使用することができ、団体組織が構成員の利益のために団体商標権を保持します。証明標章の所有者は、証明する者の標準を満たす者にその標章の使用を許可します。証明商標は許可された者により使用されますが、その許可された者同士は関連性はない場合が多いです。団体会員標章は、その標章の使用者が特定の組織の構成員であることを示す標章で、この団体会員標章は一般的な意味での商品商標でもなく役務商標でもありません。
証明標章は主に次の3つのタイプのものがあるとされています。1.Geographic origin (地理的な出所) 2.Standards met with respect to quality, materials, or mode of manufacture (品質、素材、製造モードについての標準に適合) 3.Work/labor performed by member or that worker meets certain standards (会員若しくはある基準を満たす作業者によりなされる作業若しくは労働) 証明標章は、団体商標と比べて2つの大きな違いがあります。1つは証明標章は、その所有者ではなく、許可された使用者によって使用されます。もう1つは、証明標章は、商業的な出所を示したり、ある人物の商品や役務を他人のものから区別したりするのではなく、許可された使用者の商品/役務の特定の側面について認定されたものであることを示します。指定商品・指定役務についても通常の商標とは異なり、第何類の代わりにA(商品)かB(役務)のどちらかを選択するような指定となります。
団体商標(Collective Trademark)の例
団体会員標章(Collective Membership Mark)の例
証明標章(Certification Mark)の例
出願に際して必要な書類は?
団体商標に対する書類
団体商標についての出願に含むべき情報は、通常の商標登録出願とほぼ同じとなりますが、出願の基礎として申し立てる情報が少し異なることになります。その1つは、団体メンバーによる商標の使用についての出願人の管理(Applicant’s control)の特質についての申立(statement)です。この申立には”Applicant controls the members’ use of the mark in the following manner: [specify, e.g., the applicant’s bylaws specify the manner of control]”という文言を用いることが慣用され、職権補正により加えることも可能です。もう1つは下記に示す宣誓書(DECLARATION)です。この宣誓書は、商標が商取引で使用され、出願人が商取引における標章の使用を正当に管理している。署名者の知る限りでは、商品上または商品に関連して使用された場合に、団体メンバー以外の人物は、同一の形式または類似している形で、商取引で商標を使用する権利を持たないことなどの事項を内容とします。また、商標使用の日付も団体メンバーの使用であったり、使用見本についても団体メンバーの使用を証するものである必要があります。
団体会員標章に対する書類
団体会員標章は、ビジネスや貿易で使用されておらず商品やサービスの出所を示すものではないので、団体会員標章は通常の意味での商標またはサービスマークではありません。団体会員標章についての出願に含むべき情報は、団体商標と同様に通常の商標登録出願とほぼ同じとなりますが、会員の種類、目的、活動分野などの会員組織の性質の説明(例えば、 “indicating membership in an organization of computer professionals” or “indicating membership in a motorcycle club”)が必要とされ、出願人の管理(Applicant’s control)の特質についての申立(statement)と、団体会員標章についての宣誓書(DECLARATION)も必要です。使用見本としては、名義欄を空けたり無効の印を付与した会員証や証明書などを最も一般的に使用でき、逆に一般的な会員募集の広告などでは使用見本とならない場合もあります。
証明標章に対する書類
証明標章を登録するためには、次の申立が必要です。1.出願人が商品や役務の何を証明しているか申立(Certification statement) 2.出願人が原則的に商品や役務の製造などに従事していない旨(statement) 3.下記に示すような宣誓書(DECLARATION:DECLARATION FORM for collective mark)です。この宣誓書では、出願人は商標の所有者であること、 商標が商取引で使用されていること、出願人が商取引における標章の使用を正当に管理していること、署名者の知る限りでは、許可された使用者以外の人物は、同一の形式で、またはそれに関連して使用される可能性が高いと思われる類似の形で、商取引で当該標章を使用する権利を持たないことを宣誓することになっています。何を証明しているかの説明であるCertification statementは公報記載になり、公表されます。
地理的証明標章(geographic certification mark)
地理的証明標章は、チーズを表すROQUEFORT、お茶を表すDARJEELING、コーヒーを表すCOLOMBIANの標章のように、関連する地理的領域の名称が商品や役務の出所を証する場合の標章です。この地理的証明標章では、地理的な名称がその出所を証するように機能する際には、単に地理的な記述であるとして拒絶することはできないとされています。しかし地理的な記述以外の部分では、権利不要求を求められることがあり、例えば、ウイスコンシンチーズのチーズはチーズの部分は一般名称として権利不要求が正当なものとなり得ます。出願人は、地理的証明標章を管理する権限を正当に有している(EXERCISE LEGITIMATE CONTROL)必要があり、通常地理的名称についての権限(AUTHORITY TO CONTROL THE GEOGRAPHIC TERM)から地方自治体またはこれに類する者が出願人となります。
地理的証明標章(Geographic Certification Mark)の例
出願後の補正は可能ですか?
証明標章として出願した後に、実は通常の商標であった場合や、その逆であった場合には、出願を補正して的確な形式の出願に直すことが可能です。証明標章や団体商標、団体会員標章はTEASplusでは出願できないため、もしTEASplusで出願した商標をこれらの商標・標章に補正する場合には、追加の手数料が必要となります。
団体商標、証明標章の審査はどのように行われますか?
基本的には、団体商標、証明標章であっても通常の商標の審査と同様な審査が行われますが、例えば宣誓書などの有無や使用者は誰かなどの団体商標、証明標章の登録要件についての審査も行われます。出願の基礎が44E(外国商標登録)であり、外国の登録証明書に商標を団体商標として指定する見出しがある場合、または外国の証明書の本文に登録が団体商標であることを示す言語が含まれている場合、これらの表示は外国の登録が団体商品商標、団体役務商標、または団体会員標章であることを示している可能性があります。
日本の団体商標や地域団体商標、地理的表示についても登録できますか?
答えはYESですが、良く考えて出願しないと何度も拒絶理由通知(Office Action)を受けたり、望む形式での登録ができなかったります。特に日本で登録された地域団体商標は、そのフォーマットが識別力のない地理的名称+普通名称であるため要注意です。
i)図形と組み合わせの地域団体商標
日本で登録された地域団体商標でも、図形と組み合わせの地域団体商標は、文字部分が地理的名称+普通名称であっても図形の部分からの顕著性がありますので、主登録が可能です。しかし、地理的名称と普通名称のそれぞれに権利不要求(disclaimer)を求められることがあり、そのとおりに権利不要求を付加した場合には、図形だけの商標と同じ効力になります。従いまして、地域団体商標であっても米国では地域証明標章(geographic certification mark)として権利化を図ることを考えるべきと思います。米国では団体商標は、自分の団体と他人の団体を区別するための商標ですから、単なる地理的名称は識別性がないものと判断されますが、補正などで地理的な証明標章のカテゴリーに持っていけば地理的名称の権利不要求の問題は解消されます。日本で団体商標だから”COLLECTIVE MARK”と単純に決めつけないことが良い結果をもたらすこともあります。
ii)文字だけの地域団体商標
日本で登録された地域団体商標が文字だけの場合には、さらにハードルが上がり、もし終始団体商標として登録しようとすると、識別性がない単なる地理的名称の拒絶理由を回避することができないことになりかねません。主登録を諦めて、必要な場合には使用の証拠を添付し、出願の基礎を1aに替えて補助登録だけで済ませることにもなりがちです。文字だけの地域団体商標は、ローマ字の地理的名称とローマ字の商品名の組み合わせも含まれます。特にマドリッド制度を利用した出願の場合には、最終的に補助登録にもっていくことができないため、日本の地域団体商標をそのまま団体商標で登録することは容易ではありません。1つの解決策としては、補正により団体商標ではなく地理的な証明標章のカテゴリーに持っていけば、地理的名称の権利不要求の問題は解消されることがあります。重ねてですが、日本で団体商標だからといって単純に”COLLECTIVE MARK”と決めつけないことが良い結果になる可能性があります。地理的な証明標章の場合には、EXERCISE LEGITIMATE CONTROLとAUTHORITY TO CONTROL THE GEOGRAPHIC TERMなどを証明するために、いくつかの宣誓書を提出する必要がありますが、この場合、地域団体商標を取得するための規約等を翻訳して対処することになります。
マドリッド制度を利用して登録可能ですか?
マドリッド制度を利用した国際出願でも米国での登録は可能です。この場合には、出願時に必要とされる宣誓書と、団体商標、証明標章に必要な宣誓書は異なっており、米国での審査の段階で審査官が出願人に必要な宣誓を求めるようになっています。出願したまま中間処理なしに登録になることはないと思われます。
団体商標、団体会員標章のSection 8 Affidavits or Declarationsの提出には次の宣誓書の提出も必要となります。
Certification mark applications