特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標「トラジャブレンド ノワール」×引用商標「ノアール/noir」
1.出願番号 商願2018-130063
2.商 標「トラジャブレンド ノワール」
3.商品区分 第30類
4.適用条文商標法第4条1項11号
5.拒絶理由 「トラジャブレンド ノワール」は「ノアール/noir」と類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
【意見の内容】
(1) まず、拒絶理由通知書の理由1における「ただし書き」に従い、本願の指定商品を「インドネシアのスラウェシ島トラジャ県で栽培されたコーヒー豆を焙煎したコーヒー」と補正しました。よって、商標法第4条第1項第16号に該当するという拒絶の理由1は解消したものと思料します。
(2) 次に、拒絶理由通知書の理由2において、本願商標は、登録第5239125号の商標(以下、引用商標という)と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当すると認定されました。しかしながら、本出願人は、本願商標はあくまでも「トラジャブレンド ノワール」全体で一連一体の商標であり、単に「ノアール/noir」からなる引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2-1) 本願商標は、「トラジャブレンド ノワール」の標準文字からなるもので、指定商品を今般補正した通り、第30類「インドネシアのスラウェシ島トラジャ県で栽培されたコーヒー豆を焙煎したコーヒー」とするものであります。これに対し、引用商標の登録第5239125号商標は、株式会社トーホーの所有に係るもので、カタカナ文字の「ノアール」を上段に、ローマ字の「noir」を下段にして、「ノアール/noir」と上下二段に書してなるもので、指定商品を本願の類似商品を含む第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆」とするものであります。したがって、本願商標「トラジャブレンド ノワール」と引用商標「ノアール/noir」とは、外観上類似しないことは明らかであります。
(2-2) そこで、観念の点についてみると、まず、「ノワール」とは、「黒色を意味するフランス語。映画や小説などで犯罪者や闇社会を題材にした作風のこと。映画を特にフィルム・ノワールと呼ぶ。」ということのようであります(「https://dic.nicovideo.jp/a/ノワール」など)。然るに、ここでいう観念とは、商標自体が客観的に有する意味を言うのではなく、商標を見又は称呼することにより、その商標を付した商品の需用者又は取引者が思い浮かべる(イメージする)その商標の意味と考えられますが、本願商標は、「トラジャブレンド ノワール」という態様よりなるため、「トラジャブレンドのブラック」を強調したもので、「インドネシア・トラジャ産のブレンドコーヒーのダークなブラック」をイメージさせ、いわば「トラジャブラック」とでも言うべき、「ダークなトラジャ産のブレンドコーヒーブラック」を観念させる商標であります。これに対し、引用商標の「ノアール/noir」は単にフランス語の「noir」とその読みを表す「ノアール」からなるもので、字義どおり、単なる「ブラック(黒)」を観念させる商標であります。したがって、本願商標「トラジャコーヒーのダークなブラック」と引用商標の「単なるブラック」とでは、同じブラックではあっても、拠って立つ背景やブラックの意味合いが異なり、両者は観念上も類似することはないと思います。
(3)そこで、次に称呼の点につき検討します。
(3-1)本願商標は、カタカナで「トラジャブレンド ノワール」と書した態様より、「トラジャブレンドノワール」という称呼を生じるものと思います。これに対し、引用商標は、「ノアール/noir」と二段に書した態様より、単に「ノアール」の称呼を生じるものであります。本願商標は、「トラジャブレンド」と「ノワール」との間に、やや間隔を空けた態様でありますが、前述のように、本願商標は「トラジャブラック(トラジャブレンドのダークなブラックコーヒー)」という一つのイメージを起こさせる商標でありますので、本願商標は、全体を一体に把握し、この商標を呼ぶときは、「トラジャブレンドノワール」という一連の称呼のみ生じさせるものと思います。審査官殿は、本願商標から、単に「ノワール」の称呼も生じると見て、引用商標「ノアール/noir」を引用したのだと思いますが、「トラジャブラック(トラジャブレンドのブラック」という一つの観念を生じさせる本願商標からは、単に「ノワール」の称呼は生じないものと思います。単に「黒」では何の黒(ブラック=ノワール)なのかハッキリしません。「トラジャブレンドノワール(黒)」と全体を一連に称呼してこそ、ダークなトラジャブレンドの黒のイメージが生じます。「トラジャブレンドノワール」と一連に称呼してこそ、本願商標の意義があり、識別力を発揮するものと思います。「トラジャブレンド」単体でも、「ノワール」単体でも、このダークなトラジャブレンドのイメージを表現できるものではありません。本願商標は、「トラジャブレンド」と「ノワール」の間にやや間隔を空けた態様ではあっても、あくまでも全体を一体のものとして把握し称呼すべき商標で、一連に称呼して決して冗長にならず、無理なく一連に称呼・観念できるものであり、左右を分断して把握すべき性質のものでは無いと考えます。それ故、本願商標から単に「ノワール=黒(ブラック)」と称呼されることはないと思います。
(3-2) ところで、引用商標第5239125号「ノアール/noir」の存在にも拘わらず、その後願に係る「ノワール」や「ノワール/noir」や「noir」の文字を含む商標が、以下の通り、幾つか登録されています。
例えば、
(a)登録第5807818号「RINGOノワール」、
(b)登録第5955556号「明治ノワール/meiji noir」、
(c)登録第5984503号「小倉ノワール」などの商標登録例が存在します。
これらは、全体が一連一体の商標として把握され、「リンゴノワール」とか、「メイジノワール」とか、「オグラノワール」とか、一連に称呼され単に「ノアール/noir」と称呼・観念されることはないと判断されたからこそ、互いに類似しないものとして、併存しているのだと思います。これら(a)(b)(c)の商標が引用商標「ノワール/noir」の存在にも拘わらず登録できて、本願商標「トラジャブレンドノワール」が登録できないとされる謂われはありません。本願商標「トラジャブレンドノワール」も分離できない一体不可分の商標であり、引用商標「ノアール/noir」とは類似せず、登録されるべきものと思います。(a)登録第5807818号「RINGOノワール」、(b)登録第5955556号「明治ノワール/meiji noir」、(c)登録第5984503号「小倉ノワール」などが登録出来て、同じく後半に「ノワール」の文字を持つ本願商標「トラジャブレンド ノワール」が登録出来ないとされる謂われは全くありません。それでは如何にも不合理であります。全体としてまとまった一体の意味を有し一連に称呼できるものは、一連に称呼するのが自然であります。安易に分断して称呼される場合もあるなどと見るべきではありません。本願商標の称呼はあくまでも「トラジャブレンドノワール」であり、単なる「トラジャブレンド」でも、単なる「ノワール」でもありません。
(4) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も、「ノワール」を修飾する「トラジャブレンド」の有無という大きな差異があり、これらの差異が全体の称呼に及ぼす影響は大きく、これらを一連に称呼するときはその語感語調を著しく異にし、聴者をして明らかに引用商標と区別できるものと思います。よって、両商標は非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと考えます。