米国商標データベースTESSを検索
米国特許商標庁(USPTO)が提供する商標データベースTESS(Trademark Electronic Search System)は、米国の連邦商標登録のデータベースで、現在登録を維持している商標だけではなく、出願中の商標や、既に放棄されたり、存続期間が終了した商標についても検索できます。文字商標については、漢字やカタカナなどを入力して検索することはできず、アルファベットや標準文字(standard character)についての入力をして検索をします。日本のJplatpatの称呼検索や欧州のTMViewではFuzzy Searchなどにより類似の範囲までの検索が可能ですが、TESSでは画面上はそのような検索範囲を切り替えるボタンはなく、文字入力の命令を工夫して類似の範囲を検索する必要があります。検索対象文字の範囲を広げる演算子なしでTESSに問合せしても同一の商標あるいは同一の商標を含む商標しか返してこないので、類似の範囲まで調査したことにはなりません。
検索範囲の設定
検索をする場合には、類似範囲の商標が検索範囲に含まれるように、最初に検索範囲を十分に広げ、次に類似とはならない範囲の商標を除いて全体的に絞ることが行われます。最終的に数件に絞れれば良好ですし、また、数十件に絞って検索を終えることもあります。残りが例えば100件以上であれば調査をまとめるための時間も多くかかるものとなります。ただし、商標の調査には完璧はないと思って間違いないところですので、それも頭に入れて検索する必要もあります。次に説明するように、文字商標で検索範囲を広げるには、ワイルドカードや交換可能な文字を演算子と共に入力します。また、検索範囲を絞るためには、商標の死活(live or dead)をエントリーしたり、区分や商品・役務を指定したりします。また、2ワード以上の商標の場合、それぞれのワードの検索結果に”AND”を付加することでも検索範囲を絞ることが可能です。また、図形と組み合わせた商標については、デザインコード(Design Code)も利用することができます。
文字商標の検索法
識別力のある文字部分を抽出
検索対象の商標が2語以上の商標である場合、複数の語の間では、識別力にばらつきがあることがあります。このような場合に、識別力のあまりない文字に対して検索範囲を広げる必要はなく、識別力のある文字に対して検索範囲を広げる演算子を付加するようにします。例えば、検索しようとする文字は”SAKURA BANK”で銀行業を指定役務とする場合、銀行も多数存在していれば”BANK”の文字には自他役務の識別力はあまりなく、逆に”SAKURA”の文字の方に検索範囲を広げる演算子を付加すれば良いことになります。
検索範囲を広げる演算子を付加
検索オプション
TESSには、トップページに検索レベルが3つあり、1)Basic Word Mark Search (New User) 、2)Word and/or Design Mark Search (Structured) 、3)Word and/or Design Mark Search (Free Form)があります。ここでは3)の Word and/or Design Mark Search (Free Form)の検索オプションを使用します。
検索フィールド
TESSには、数多くの検索フィールドが設定されており、文字の検索に使用されるのは、主に文字商標や疑似商標(pseudo mark)の検索に適したBasic Index [bi]になります。また、英語に訳した内容を記録しているTranslation Index [ti]も同時に使用することができ、この場合には[bi,ti]を指定するフィールドコードとします。TESSは全体的に大文字小文字を区別しません(TESS is not case sensitive)。よって、フィールドを示すブラケット記号([])の中の文字は、大文字でも良く、小文字でも良いとされています。また、[bi,ti]とすることで、Basic IndexとTranslation Indexの両方を検索フィールドに設定したことになります。
切り取り演算子(truncation operator)
アスタリスク(*)はtruncation operatorと呼ばれていて、文字列の頭や末尾に配置することで、検索範囲を広げることができます。例えば、*SAKURAを[bi,ti]フィールドで使用することで、”e-sakura” “blackcherrysakura”などの文字列をpickupすることができます。なお、アスタリスク(*)は[bi,ti]フィールドの文字列中では使用できない演算子とされています。 ドル記号($)はTESS標準置換可能文字(standard TESS multi-character substitution character) と呼ばれていて、文字列中でも使用することができます。例えば、*TE$OLOGY*[bi]はTEKNOLOGY, TECNOLOGY, TELEOLOGY, etc.を返すルールになっています。ドル記号($)の1つは複数の文字であることもあり、“TM$rkey”はTMarkey, TMaaarkeyを返します。一般に、文字列の頭や末尾については、ドル記号($)や疑問符(?)よりもアスタリスク(*)の方がミスも少なく高速な回答となるとされています。
クラス演算子(class operator)
[bi,ti]フィールドでブレース記号({})で次の文字を入力すれば、それは指定する分類の文字例であればどれでも当てはまることになり、類似範囲の商標を見つける場合に有効です。TESSでは次のクラス演算子を使用できます。クラス | 内容 |
A | AからZまでのアルファベット |
C | 子音(B, C, D, F, G, H, J, K, L, M, N, P, Q, R, S, T, V, W, X, Y and Z) |
D | 0から9までの数字 |
E | 偶数(0, 2, 4, 6, or 8) |
M | 英数字AからZまでと0から9 |
O | 奇数( 1, 3, 5, 7, or 9.) |
V | 母音(A, E, I, O, U, or Y.)”Y”が含まれることに注意 |
クラス演算子には、数字を付加して範囲を拡大できます。単純なクラス名に数字を付加すれば、連続的なクラス文字列を指定していることになります。例えば、検索 {d5}[bi]は連続した5桁の数字列を探すことになります。また、コロン(:)を使用した指定も可能で、例えば検索{d:6}[bi]は数字の6つの桁までの文字列を検索することになり、検索{a4:6}[bi]は4つから6つまでのAからZまでのアルファベットを探すという演算子となります。実際のサーチでは、母音のクラスを指定することが多く、例えば検索{v1:3}のような演算子(母音が1乃至3個)が使用されたりします。
交換可能な文字の組
[bi,ti]フィールドでのブレース記号({})の応用として、交換可能な文字を組にして、類似の範囲をカバーする文字列を作り出すようにできます。代表的な交換可能な文字の組には、次のパターンがあります。発音 | 交換可能な文字の組 |
イ | {“iy”},{“iey”},{“ieyu”},{“ieya”} |
ズ、ス | {“sz”},{“szc”},{“tszc”},{“szcx”}, |
キ、ク、ケ | {“ck”},{“ckq”},{“ckqx”},{“gckq”},{“ckqxsz”}, |
エ | {“ea”} |
ア、オ | {“oua”} |
フ | {“fph”},{“jh”} |
ウ | {“uw”},{“uvw”} |
ジ | {“jg”} |
フォー | {“4fourIV”} |
交換可能な文字の組にも数字を付加することができます。例えば{“sz”:3}(sかzで3字以内)などの利用例があります。日本人の感覚であれば、b(ビー)とv(ブイ)の{“bv”}やr(アール)とl(エル)の{“rl”}の演算子を検索に入れてしまいそうですが、そのような検索はXSearchではほぼ見かけません。bとv或いはrとlについてはEnglish Speakerには聞き間違えはないということだろうと思います。
参考 フォニックス(Phonics)の対応表
交換可能な文字の組はフォニックスのルールに従っていることが分かります。
a | b | c | d | e | f | g | h | i |
ェア | ブ | ク | ドゥッ | エ | フ | グ | ハ | イ |
j | k | l | m | n | o | p | q | r |
ジュ | ク | ル | ム | ン | オ | プ | クヮ | ゥル |
s | t | u | v | w | x | y | z | |
ス | トゥ | ア | ヴ | ウヲ | クス | ィヤ | ズ |
XSearch Search Summary 具体例
USPTOのTDSRから実際に行われた検索例を列挙しています。
検索対象 | 演算式 | 解説 |
NINJA | *n{“iey”}n{“gj”}{v}*[bi,ti]not dead[ld] | iを{“iey”}、jを{“gj”}、aに{v}を当てています。 |
SAKURA | *{“sz”}a{“ckqx”1:2}{v1:3}r*[bi,ti] not dead[ld] | sに{“sz”}、kに{“ckqx”1:2}、Uに{v1:3}を当てています。raはr*に切り取り。{v1:3}は母音が1-3個の意味。 |
SHIITAKE | *shi$t{v}{“ckq”}*[bi,ti] not dead[ld] | iiにi$、taにt{v}、keに{“ckq”}*を当てています。 |
KAMINARI | *{“ck”}am{v}n{a}r{v}*[bi,ti] | KAに*{“ck”}a、MIにm{v}、NAにn{a}、RIにr{v}*を当てています。 |
TAIRYO | *t{“ae”}{“iy”}r{“yi”}o*[bi,ti] and “live”[ld] | Aに{“ae”}、Iに{“iy”}、RYOにr{“yi”}o*を当てています。 |
HANABI | *h{v}n{v}b*[bi,ti] | HAに*h{v}、NAにn{v}、BIにb*を当てています。 |
GODZILLA | g{v:2}d{“scz”}{v}{“l”:2}{v}*[bi,ti] | GODはg{v:2}dに、ZIは{“scz”}{v}に、LAは{“l”:2}{v}*と検索されています。 |
TOMODACHI | *t{v}{“m”:2}{v}d{v}{“t”0:1}ch*[bi,ti] not dead[ld] | TOは*t{v}、MOは{“m”:2}{v}に、DAはd{v}に、CHIは{“t”0:1}ch*と検索されています。 |
ARASHI | *ar{v}sh{“iy”}* [bi,ti] not dead [ld] | ARAは*ar{v}に、SHIはsh{“iy”}に当てられています。 |
ECLIPSE | *{“ckq”}l{v}ps*[bi,ti] | CLIPSEの部分を{“ckq”}l{v}psとしています。 |
EARTHQUAKE | *{v:2}rth*[bi,ti] and *{“ckq”}{v:2}{“ckq”}*[bi,ti] | EARTHとQUAKEで分け、EARTHは*{v:2}rth*、QUAKEは *{“ckq”}{v:2}{“ckq”}*で検索したものをANDとしています。 |
NIAGARA | *n{v}agr* or *n{v}ag{v}r*[bi,ti] | NIAの部分は*n{v}aに、GARAはagr*又はag{v}r*を当てています。 |
CHRYSLER | *{“ckq”}{“h”:3}{“r”:3}{v:3}{“sz”:3}{“l”:3}{v0:2}R*[bi,ti] not dead[ld] | CHRYは*{“ckq”}{“h”:3}{“r”:3}{v:3}に、SLERは{“sz”:3}{“l”:3}{v0:2}R*で、全体的に文字がだぶっても探せる検索をかけています。 |
VICTORY | *v{“iey”}{“ckqx”}t{v}r*[bi,ti] and live[ld] | VICの部分は*v{“iey”}{“ckqx”}に、TORYはt{v}r*を当てています。 |
BISTRO | *b{v1:2}{“sz”}tro*[bi,ti] and live[ld] | BISの部分は*b{v1:2}{“sz”}に、TROはtro*を当てています。bの代わりにvでのサーチはありません。 |
検索結果の絞り込み(filtering)
商標の死活(live or dead)
検索対象の商標と競合する商標は、その前提として取消や放棄されていない、存続期間がまだ残っている登録商標ですから、まだ生きている商標だけに絞る場合は、and live[ld]を演算子としてエントリーします。
商品・役務の区分
日本では類似群コードがあるため、類似群コードでの絞り込みが有効ですが、米国では類似コードはなく、国際分類[IC]、US Class[US]又はCoordinated Class [CC]で絞り込みをします。米国でのXSearchでは、Coordinated Class [CC]を使用する例が多い傾向にあります。例えば、貴金属ではUS CLASSで”028″[us]で絞ることができます。この中で、200、A、Bが国際分類(1-45類)にさらに追加された分類になっていて、200はCOLLECTIVE MEMBERSHIP(団体商標)、AはGOODS CERTIFICATION MARK(商品認証商標)、BはSERVICES CERTIFICATION MARK(役務認証商標)になります。
商品・役務での絞り込み
検索対象の商標を使用する商品・役務の範囲が比較的に狭い場合には、[gs]での絞り込みも有効です。
図形検索
商標内の図形要素を検索する場合には、design description[dd]とdesign code[dc]を使用することができます。design description[dd]は各商標データ内のデザインコードに付随するアルファベットの文字を検索します。例えばデザインコードマニュアル(design code manual)を参照すると、 03.01.08 for dogsや26.01.15 for three circlesとなっており、デザインコードとそれに対応する文字が組になっており、[dd]により、その文字側の検索をかけることができます。[dc]はデザインコードでの検索になり、これは初めにデザインコードマニュアル(design code manual)を参照することが求められますが、[dd]のフィールドで検索をかけておおよそのデザインコードの目星をつけることもできます。デザインコードは01.01.10のように2桁の数字が3つ連続するコードになっていますが、検索窓に入力する場合には、ピリオドを除いて010110[dc]のように六桁の数字で入力します。
22.03.01 – Liberty Bell or bells with cracks | 26.01.03 – Circles, incomplete (more than semi-circles) ; Incomplete circles (more than semi-circles) 26.03.03 – Incomplete ovals ; Ovals, incomplete 26.05.03 – Incomplete triangles (must have two angles) ; Triangle, incomplete (two angles) 26.17.12 – Angles (geometric) ; Chevrons | 06.01.04 – Mountains (landscapes); Scenery with mountains |
複数検索
検索の際に、演算子群をセミコロン(;)で区切ると、その前後は別のサーチとなり、1度に複数の検索結果が得られることになります。例えば、pebble[bi,ti]; beach[bi,ti]; S1 and S2;は3つの検索を同時に行います。
検索結果についての判断
最終的に競合すると判断される場合でも、米国では指定されている商品・役務が実際に使用されているものに限定されるため、商品・役務の範囲で”relatedness”がないとの判断や、交渉により同意を得る確率は高いものとなります。しかし、商標としてそれほど類似していなくても、さらに類似する商品や役務はない状態でも、強いブランド力を示す必要がある企業や潜在的な競合他社からは、異議申立を受けたり、督促状(Black letter)をもらったりもします。
[box]有明国際特許事務所では、日本の弁理士資格と、アメリカ合衆国連邦規則§11.1に定義されている米国弁護士資格により、特許庁 (JPO)と米国特許商標庁(USPTO)にそれぞれ直接手続でき、現地代理人(local agent)は不要です。[/box]
アメリカ合衆国(米国)の商標登録を検索(TESS)🔍 米国商標登録 検索 vol.8