特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標「E-ARTH」×引用商標「EARTH」ほか
1.出願番号 商願2010-82395
2.商 標 「E-ARTH」
3.商品区分 第9類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 「EARTH」「アース」と類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
【意見の内容】
(1) 拒絶理由通知書において、本願商標「E-ARTH」は、下記の登録商標と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。また、下記の引用商標6の登録商標について、商標法第20条第3項又は第21条第1項の規定に基づく商標権の存続期間の更新申請がない場合は、この商標登録出願に係る商標は、商標権が消滅した日から1年を経過していない下記の他人の商標と同一又は類似であって、その商標権に係る指定商品・指定役務と同一又は類似の商品・役務に使用するものであるから、商標法第4条第1項第13号に該当することとなる。
記
引用商標1…登録第1749441号(商公昭59-043662)「EARTH/アース」
引用商標2…登録第2218857号(商公平 1-057760)「§Earth」
引用商標3…登録第2381149号-2(商公平 3-013431)「エアース/AIRTH」
引用商標4…登録第2488153号(商公平 3-076040)「図形+EARTH」
引用商標5…登録第2488154号(商公平 2-085330)「EARTH」
引用商標6…登録第4429693号-1(商願平11-090015)「EARTH」
引用商標7…登録第4590330号(商願2001-093028)「エアース/AIRTH」
引用商標8…登録第5297134号(商願2008-027261)「図形+アース」
引用商標9…登録第5367825号(商願2007-068049)「アース」
(2) この拒絶理由通知に対して、本出願人は、まず、本願商標の指定商品中より、「エアース」の称呼を生じる上記引用商標3及び7の指定商品と同一又は類似する「携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル」(24A01、24E01)を、本願の指定商品中より削除する補正を本書の提出と同時に行いました。これによって、本願商標「E-ARTH」は、引用商標3及び7との関係においては、もはや商標の類否を論じるまでもなく、指定商品が同一又は類似せず、商標法第4条第1項第11号には該当しなくなったものと思料します。そして、本願商標「E-ARTH」は、引用商標3及び7以外の商標、即ち、引用商標1,2,4,5,6,8,9との関係においても、商標自体が類似せず、商標法第4条第1項第11号の規定には該当しないものと思料しますので、以下、この点に関して、意見を申し述べます。
(3) 本願商標は、前述したように、「E-ARTH」の態様からなるものでありますが、引用商標1は「EARTH/アース」、引用商標2は「§Earth」、引用商標4は「図形+EARTH」、引用商標5は「EARTH」、引用商標6は「EARTH」、引用商標8は「図形+アース」、引用商標9は「アース」の態様からそれぞれなるものであります。したがって、本願商標とこれらの各引用商標とは、語頭における「E-」の文字の有無により、また、後半の「ARTH」と引例の「EARTH」や「アース」の違いにより、外観上も全く異なり、類似するものではありません。特に本願商標の「E」と「A」の間に介したハイフン「-」の存在により、引用各商標とは外観上全く異なった印象を受けます。
(4) また、本願商標は、アルファベットの「E」の文字とアルファベットの特定の意味を持たない「ARTH」の文字とを、ハイフン「-」を介して連結し、一体に「E-ARTH」と書してなるもので、全体として、具体的に特定の観念を生じない造語商標であります。これに対して、引用商標3及び7以外の各引用商標は、「EARTH」や「アース」の文字からなるもので、これより、具体的に「接地」とか、「地球」とか、「大地」とかの特定の意味合いを生じさせるものであります。したがって、両者は観念上も同一又は類似することはなく、非類似の商標であります。
(5) そこで、次に、称呼について検討します。
(5-1)
本願商標は、前述したように、「E-ARTH」と書してなるものでありますので、このハイフン「-」の存在により、全体として一連に「イーアース」の称呼が生じ、単に「アース」とは称呼されないものと考えます。即ち、ハイフン「-」を介さず単に「EARTH」と記載した場合には、「アース」の称呼が生じることとなりますが、ハイフン「-」を介して「E-ARTH」と記載した本願商標の態様からは、唯一「イーアース」の称呼が生じるのであって、決して、単なる「アース」の称呼は生じないものと思料します。これに対し、引用商標1,2,4,5,6,8,9の各商標は、「EARTH」や「アース」の文字部分から、いずれも「アース」の称呼を生じるものであります。したがって、 本願商標の称呼「イーアース」とこれらの各引用商標の称呼「アース」とは、語頭における「イー」の音の存在の有無により、全く異なった印象を受けるもので、両者は称呼上も混同することはなく、決して類似するものではありません。この点に関して、審査官殿は、「E-ARTH」の「E-」を「電子の」「インターネットの」の如き意味合いに理解し、本願商標の要部を「ARTH」の部分にもあると判断し、ここから単に「アース」の称呼が生じるとして、「アース」の称呼を生じる上記引用商標1,2,4,5,6,8,9を引用してきたのではないかと推察しますが、これは本願商標の称呼認定を誤った誤認に基づくもので、妥当なものではないと考えます。なぜなら、「E-」の文字を「電子の」の如く理解する場合には、そのあとに続く文字は、通常何らかのまとまった意味をなす単語でなければならないと考えますが、本願商標の場合は、「ARTH」という何ら意味をなさない造語であります。何ら意味を持たない「ARTH」の電子化と言っても何のことだか分かりません。例えば、「Tax」とか、「money」とか、「book」とか、それ自体意味のある単語であって、それを電子化したものである場合、あるいはインターネットで扱える状態にしたような場合等に、「e-Tax」とか、「e-money」とか、「e-book」とか表記することで、初めて特定の意味が出てきます。「e-Tax」であれば電子納税であるとか、「e-money」であれば電子マネーであるとか、「e-book」であれば電子書籍であるとかの意味が出てきます。しかしながら、本願商標のように、「E-」のあとに続く単語が何ら意味をなさない造語「ARTH」である場合には、ある特定のものを「電子化したり」「インターネットで扱える」ようにしたという意味が全く出てきません。「E-ARTH」と言っても何のことだか分かりません。したがって、本願商標の「E-」は、あるものを電子化したり、インターネットで扱えるようにしたことを意味する「E-」ではありません。本願商標は、「E-」も含めた全体が商標の要部であって、あくまでも「E-ARTH」という態様で一体の商標であり、「イーアース」とのみ称呼されるものと考えます。なお、仮に、本願商標の「E-」が「電子の」とか、「インターネットの」とかの意味合いをあらわすと理解されたとしても、本願商標の構成態様「E-ARTH」からは、あくまでも「イーアース」の称呼しか生じないものと思料します。それ故、「アース」と称呼される引用各商標とは称呼上も類似しないものと考えます。
(5-2)
過去の商標登録例を見ると、同一又は類似の商品や役務を指定してなる別主体に係る商標同士において、例えば、以下のような商標が並存登録されています。
(A)登録5354642「e-REMON」9類ほか(日本ユニシス株式会社)(第1号証)と登録537033「REMON」9類(ティーオーエー株式会社)(第2号証)。
(B)登録4417724「WALK/ウォーク」9類(キャノン株式会社)(第3号証)と登録5245558「e-WALK」9類ほか(株式会社京都メディックス)(第4号証)。
(C)登録4712961「Helios」9類(ドイツ法人)(第5号証)と登録5248709「イーヘリオス/E-HELIOS」9類(株式会社コンピュータシステム研究所)(第6号証)。
(D)登録5154080「イ-トレンド/e-TREND」35類小売等(株式会社シスキー)(第7号証)と登録5044732「TREND」9類(トレンドマイクロ株式会社)(第8号証)。
(E)登録4759482「Fleet」9類ほか(イギリス法人)(第9号証)と登録5371280「e-Fleet」9類(本田技研工業株式会社)(第10号証)。
(F)登録2545776「SHUTTLE」9類ほか(株式会社東芝)(第11号証)と登録5147854「e-shuttle」9類(富士通株式会社)(第12号証)。
これら(A)~(F)の並存登録例は、「e-」「E-」に続く文字がすべて特定の意味を有する単語であり、且つ「e-」「E-」以外の部分は文字構成を共通にしている商標同士であります。しかし、それにもかかわらず、両者は並存登録されております。これは「e-」「E-」の存在の有無によって、これら(A)~(F)に示す両商標同士は非類似の商標であるとの扱いがなされたからに他なりません。「e-」「E-」以外の文字部分を共通にしている商標同士でさえ非類似の扱いです。まして本願商標と引用各商標は、「E-」に続く文字同士の構成が「ARTH」と「EARTH」ないし「アース」というように異なるものでありますので、これら本願商標と引用各商標が類似するとされる謂われは全くありません。(A)~(F)のように、「e-」「E-」以下の文字が同じもの同士でさえ並存登録されているのですから、「E-」以降の文字構成の異なる本願商標と引用各商標とが類似するはずはありません。本願商標は、これら(A)~(F)の商標が並存登録できたのと同様に、引用各商標の存在如何にかかわらず、分断できない一体不可分の商標として登録されて然るべきであります。
(6) 以上のように、本願商標は、あくまでも「イーアース」とのみ一連に称呼されるべきもので、引用商標の称呼である単なる「アース」とは、類似することはないと考えます。本願商標と引用各商標とは、外観及び観念上類似しないことは勿論、称呼上も語頭の「イー」の称呼の有無によって語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料します。よって、本願商標は引用各商標の存在如何にかかわらず、充分登録適格性を有するものと思料します。