特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標「ナビ/NAVI」×引用商標「Liquor Shop/Navi」
1.出願番号 商願2010-84999
2.商 標 「ナビ/NAVI」
3.商品区分 第5類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 「Liquor Shop/Navi」と類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
【意見の内容】
(1) 拒絶理由通知書において、本願商標「ナビ/NAVI」は、第5272265号(商願2007-073585)の登録商標「Liquor Shop/Navi」(引用商標)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当すると認定されました。しかしながら、本出願人は、本願商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、「ナビ」の片仮名文字を上段に、「NAVI」の欧文字を下段にそれぞれ配して、「ナビ/NAVI」と二段並記した態様からなるものでありますが、引用商標は、欧文字の「Liquor Shop Navi」のうち、「Liquor Shop」の文字部分を上段に、また「Navi」の文字部分を下段ほぼ中央に配置して、「Liquor Shop/Navi」と表示した態様からなるものであります。したがって、本願商標の「ナビ/NAVI」は、引用商標の「Liquor Shop/Navi」と、文字の種類や構成の違いにより外観上類似しないことは明かであります。
(3) 次に、本願商標は「ナビ/NAVI」の態様より、「navigation」「ナビゲーション」の略称を想起させるもので、「航海。航空。また、航海術。航空術。」(広辞苑)や「車の誘導」、あるいは「ユーザーが目的へたどり着けるように手助けしたり、誘導したりする等の機能」とかの意味合いを観念させるものであります。これに対し、引用商標は「Liquor Shop Navi」の態様からなるもので、「酒屋」等の観念を想起させる「Liquor Shop」(liquor=アルコール分を含んだ飲料。shop=商店)の文字と、「navigation」「ナビゲーション」を想起させて「航海。航空。また、航海術。航空術。」とか、「車の誘導」とか、「ユーザーが目的へたどり着けるように手助けしたり、誘導したりする等の機能」とかの意味合いを生じさせる「Navi」の文字よりなるもので、全体として、漠然としてではあっても「酒屋ナビゲーション(案内)」とか言うような一つのまとまった意味合いを暗示させるものであります(なお、商標法で言う観念とは、商標自体が客観的に有する意味を言うのではなく、商標を見又は称呼することにより、その商標を付した商品・役務の需用者又は取引者が思い浮かべるその商標の意味と解しますので、引用商標が直接的かつ具体的に特定の観念を生じさせるものではないという意味では、一種の造語商標かも知れませんが、引用商標は抽象的には「酒屋ナビゲーション(案内)」等の一つのまとまった意味合いを暗示させています)。そして、この引用商標「Liquor Shop/Navi」は、指定役務(~小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供)との関係からして、小売ないし卸売のためにある特定の商品についての品揃えを充実させた店舗名と理解することもできます。特定の商品の店舗名だとしたら、上段の「Liquor Shop」を省略して把握(称呼・観念)したのでは、何の商店の「Navi(ナビ)」「navigation(ナビゲーション)(案内)」なのかさっぱり分かりません。
それ故、いずれにしても、これら本願商標と引用商標とは観念上も類似するものではないと考えます。
(4) そこで、次に、称呼の点につき検討します。本願商標は、「ナビ/NAVI」の態様より、単に「ナビ」の称呼を生じるものであります。これに対し、引用商標は、前述のように、一体として把握される「Liquor Shop/Navi」の態様より、常に「リカーショップナビ」と称呼されるものと思料します。したがって、両者は、「リカーショップ」の称呼の有無の違いにより、称呼上明瞭に識別でき、決して称呼上紛れることはないと考えます。この点に関し、審査官殿は、引用商標「Liquor Shop/Navi」のうち、「Liquor Shop」の文字が上段に配置され、「Navi」の文字が下段に配置されていることより、取引者・需要者は単に下段の「Navi」の文字に注目し、この「Navi」の文字のみをもって、「Navi(ナビ)」と称呼・観念して取引をする場合もあると考え、今般の拒絶理由通知を発してきたものと推察しますが、そのような考え方は妥当でないと思います。引用商標から「Navi」の部分のみを抽出してここを商標の要部ととらえ、称呼・観念するようなことは取引者・需用者が通常行うはずはないと考えます。なるほど、引用商標は、「Liquor Shop」の文字と「Navi」の文字とを上下二段に並記した態様からなる商標であります。しかし、上段「Liquor Shop」と下段「Navi」とは、同一書体(ゴシック体)・同一大の文字で統一され、各文字が軽重差無くバランスよく配され、一目見た瞬間に全体が一体のものとして把握できる態様です。しかも、漠然としてはおりますが、「Liquor Shop Navi」全体で「酒屋ナビゲーション(案内)」等の一つのまとまった意味合いを暗示させるものであります。漠然としてではあっても一つのまとまった意味合いを暗示させる商標を称呼するのに、その一部を抽出して称呼するようなことは通常しません。例えば、単に「Navi(ナビ)」だけ称呼したのでは、「何のナビ」だか分かりません。「リカーショップナビ」と一連に称呼してこそ、特定の識別力を発揮します。そして、引用商標は一連に称呼してやや冗長ではありますが、「リカーショップナビ」と一連に称呼して決して称呼しにくい商標ではありません。むしろ一連に称呼して語呂も良く、称呼しやすい商標であります。したがって、この引用商標に接する取引者・需用者は、ごく自然に「リカーショップナビ」と一連にのみ称呼するとみるのが自然であり、本願商標の称呼「ナビ」とは決して類似することはないと考えます。
(5) ところで、過去の商標登録例をみると、下記の登録商標(A)の存在を確認することができます。
記
(A)登録第1529461号「リカー ショップ/LIQUOR SHOP」(16類「新聞,雑誌」(類似群:26A01)/サントリー株式会社/昭和57年7月30日登録、現在存続中)…第1号証
そして、今般、審査官殿が引用した引用商標の登録第5272265号「Liquor Shop/Navi」(株式会社サントリー・ショッピング・クラブ)は、上記(A)とは別法人に係るもので、(A)の指定商品の類似群26A01と類似の関係にある「印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(類似群35K13)の役務を指定役務中に含むものでありますが、この引用商標は、(A)の存続中である平成21年10月9日に登録されております。仮に、この引用商標が審査官殿の認識されているように、「Liquor Shop」と「Navi」の部分が分断されて把握されていたとしたら、上記(A)の「リカー ショップ/LIQUOR SHOP」と、引用商標の上段「Liquor Shop」とは、称呼同一でどう見ても類似しますので、この引用商標は、その先願に係る(A)の「リカー ショップ/LIQUOR SHOP」の存在により、拒絶されていたはずであります。しかし、現実には、この引用商標は登録されております。これは、当時この引用商標を登録した審査官が、引用商標「Liquor Shop/Navi」を上下分離することのできない一体不可分の商標と把握し、常に「Liquor Shop Navi」(リカーショップナビ)と一連に称呼されるものと判断したからに相違ありません。つまり、引用商標を登録した審査官は、この引用商標が「Liquor Shop」と「Navi」とに分断して把握される場合があるなどと認識してはおりません。全体が一体不可分のものとして把握され、称呼・観念されるものと認識しております。このことからも分かるように、引用商標は全体を一体に把握すべきもので、ここから単に「Navi」の部分を抽出し、本願商標「ナビ/NAVI」と比較するような手法は誤りであると考えます。
(6) 以上の次第でありますので、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似することはないとともに、称呼上も単なる「ナビ」と、「リカーショップナビ」との差異があって、両者は語感語調を全く異にし、取引者・需用者をして決して紛れることはないものと思料します。よって、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと考えます。