特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標「ピュアエステ・ブリアント」× 引用商標「BRILLANT」
1.出願番号 商願2009-91547
2.商 標 「ピュアエステ・ブリアント」
3.商品区分 第10類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 国際登録第0789631号商標「BRILLANT」と類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
【意見の内容】
(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は国際登録番号0789631(事後指定日2006.12.21)の商標(以下、「引用商標」という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し登録できないと認定されました。
しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書に表示した商標見本から明らかなように、片仮名文字で一連に「ピュアエステ・ブリアント」(標準文字)と書した態様からなるものであります。
これに対し、引用商標は、欧文字で「BRILLANT」と書した態様からなるものであります。
したがって、両者は外観上類似しないことは明らかであります。
(3) また、本願商標の「ピュアエステ・ブリアント」は格別の意味を有しない造語でありますが、引用商標の「BRILLANT」(brillant)は、「光り輝く、輝かしい、みごとな、すばらしい」等の意味合いを有するドイツ語であります(権利主体は「ドイツ法人」)(英語の「brilliant」(ブリリアント)に通じる言葉でもあります)。
また、引用商標の「BRILLANT」(brillant)は、フランスのシンガー「dany brillant」(ダニー・ブリヤン)のファミリーネームと同一スペルからなるもので、このシンガーは、1960年生まれ、ジャズ、ラテンを中心に歌うシンガーであり、1991年にデビュー、2001年にはアルバム「甘い生活(Dolce Vita)」がフランスで38万枚を売り上げ、日本でもWebサイト上でCDを購入することができます。そして、古くは、1931年12月16日設立-1938年改称の日本の軽演劇の劇団「ピエル・ブリヤント(Pierre Brillant=仏語で「輝く石」の意)(ピエル・ブリアントは誤り)」というのがあって、「Brillant」の文字を使っており、「ブリヤント」と読ませていたようであります。このように、「BRILLANT」は、英語の「brilliant」(ブリリアント)に通じ、ドイツなどでは「輝き」の意味を有する単語として理解され、ファミリーネームにも用いられています。然るに、特定の観念を有しない本願商標「ピュアエステ・ブリアント」と「輝かしい、すばらしい」等を意味する引用商標「BRILLANT」とは、観念上も類似することはありません。
(4) そこで、次に称呼の点につき検討します。
(4-1) 本願商標は、「ピュアエステ・ブリアント」と前後に軽重の差なく一連に書した態様からなり、且つ全体として特定の観念を生じない造語でありますので、本願商標は、常に一連に「ピュアエステ・ブリアント」と称呼され、単に「ピュアエステ」や「ブリアント」と称呼されることはないと思料します。この点に関し、審査官殿は、全体がやや冗長であること、また、「ピュアエステ」と「ブリアント」の間に中黒「・」が介在していることから、本願商標は「ブリアント」の部分をとらえて単に「ブリアント」と称呼されることもあると考え、前記のような認定をされたのではないかと推察しますが、本出願人は、そのようなことはないと考えます。即ち、成る程、本願商標は、全体がやや冗長であることは事実であります。また、前段「ピュアエステ」と後段「ブリアント」の二つの要素から構成されていることも事実であります。
しかしながら、本願商標は、
(a)全体が同書同大同間隔で一連に書された「ピュアエステ・ブリアント」という態様であること、また、
(b)前段と後段二つの要素から構成された商標ではあるものの、両者は中黒「・」を介して連結された商標であり、一体のものとして把握できる商標であること、また、
(c)「ピュアエステ」も「ブリアント」も品質を表示するような言葉ではなく、指定商品との関係において共に自他商品識別力を備えていること、
(d)前段「ピュアエステ」と後段「ブリアント」に軽重の差がなくバランスよく配置されているため、前段又は後段の一方を選択して称呼するようなことは通常考えられないこと、
(e)全体がやや冗長ではあるが全体として一連に称呼して語呂がよく称呼しやすい商標であること、そのため、一連に称呼されるのが自然であると思われること、
等の理由により、本願商標は、常に一連一体に「ピュアエステ・ブリアント」と把握され、且つ称呼されるものと思料します。
なお、審査官殿は、中黒「・」によって、前段と後段が分断され、一方のみ単独で称呼される場合もあると判断されたのだと思いますが、この中黒は前後を分断するためのものではなく、前後を一体のものとして連結するために用いたものであります。つまり、これによって2つの要素からなる本願商標を分断できない一連一体の商標としたものであります。
(4-2) さらにまた、審査官殿は、「ピュアエステ」を「純粋エステ」の如き意味合いに理解し、この言葉を品質の表示用語に過ぎないと解釈して「ブリアント」を商標の要部とみているのかも知れませんが、もしそうだとしたら、それは誤解であります。本出願人は「ピュアエステ」の商標を登録第3281303号商標として第10類「医療用機械器具,家庭用電気マッサージ器」について保有しておりますので、「ピュアエステ」が品質表示ではなく自他商品識別力を備えた識別標識であることは明かであります。また、本出願人は、「ピュアエステ」の商標を登録第3310604号商標として国際分類版表示第6版第42類「美容,理容」について保有しておりますので、「ピュアエステ」を第10類の医療用機械器具などに用いても、「純粋エステ用の医療用機械器具」というように理解されるようなことはないはずで(だいいち「純粋エステ」の概念すらはっきりしていません)、この点からも、「ピュアエステ」の文字に自他商品識別力が備わっていることは明かであります。
以上の次第でありますので、本願商標の態様からは、単に「ピュアエステ・ブリアント」の称呼のみ生じるものと思料します。
(4-3) これに対し、引用商標は、「BRILLANT」の態様より、第3音目にアクセントのある「ブリヤン」とか、「ブリヤント」(この場合、「ト」は有るか無いかぐらいの小さな音)の称呼を生じるものと思料します。また、英語読みをする癖のある一般的な日本人には、2つの連続した「L」が存在し、かつその2つ目の「L」の後に「A」が続いている「BRILLANT」の態様より、「ブリ・ラント」というような二音節からなる読み方をする人がいるのではないかと思料します。
(4-4) そこで、本願商標の称呼である「ピュアエステ・ブリアント」と、引用商標の称呼である(あるいは称呼の可能性のある)「ブリヤン」「ブリヤント」「ブリラント」とを比較しますと、「ピュアエステ」の称呼の有無によって、両者は音数及び語感語調を異にし、称呼上も相紛れることのない非類似の商標であると考えます。
(5) 過去の商標登録例を見ますと、2つの言葉を中黒「・」を介して構成した商標と、そのうちの一方の言葉を共通にした商標とが共存している例が、以下AとB、CとD、EとFなどのように存在します。いずれも、類似群10D01を指定商品に含んでおります。
A.登録2439669 「ライフテック/LIFE-TECH」 株式会社ノーリツ……第1号証と、
B.登録4221217 「マルピー・ライフテック」 大日本住友製薬株式会社……第2号証。
C.登録2527871 「LEADER/リーダー」 中外製薬株式会社……第3号証と、
D.登録4339101 「ハイカウント・リーダー」 富士レビオ株式会社……第4号証。
E.登録4352381 「ベース・ソリューション」 ロート製薬株式会社……第5号証と、
F.登録4809086 「ソリューション/SOLUTION」テルモ株式会社……第6号証。
これらの関係を見て分かることは、やや冗長な中黒「・」を介して構成された商標であっても、一連一体の商標と把握でき、全体が無理なく一気に称呼できるものは、分断できない一つの商標と把握されていると言うことであります。本願商標とてこれらの商標と同様で、全体が中黒を介して左右バランス良く配され、一気に称呼して称呼しやすい商標ですので、前後に分断できない一つの商標と把握されるべきものであります。つまり、あくまでも「ピュアエステ・ブリアント」で一つの商標であり、「ピュアエステ・ブリアント」とのみ称呼されるべきものであります。それ故、本願商標は、単に「ブリヤン」「ブリヤント」あるいは「ブリ・ラント」と称呼されるに過ぎない引用商標とは、称呼上も紛れることのない非類似の商標であります。
(6) 以上のように、本願商標「ピュアエステ・ブリアント」と引用商標「BRILLANT」とは、「ピュアエステ」の有無等によって、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えます。