特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイト から転載しております。
本願商標「カフェパン」
1.出願番号 商願2009-91468
2.商 標 「カフェパン」
3.商品区分 第30類
4.適用条文 商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号
5.拒絶理由
拒絶理由通知 意見書における反論
【意見の内容】
(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、本願商標に関し、以下のように認定しております。
“ 「カフェパン」の文字を標準文字で書してなるところ、構成中の「カフェ」の文字は、指定商品との関係で「コーヒー、喫茶店」を意味する語と認められます。そして、近年、食品を取り扱う業界において、「コーヒー風味のパン」や「喫茶店で製造又は販売されるパン」が、「カフェパン」と称して、一般に製造又は販売されている実情があります(参考情報参照)。そうとすれば、これを本願指定商品に使用しても、全体として、「コーヒー風味のパン、喫茶店で製造又は販売されるパン」程の意味合いが容易に理解、認識されるものですから、単に商品の品質等を表示するにすぎないものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますので、商標法第4条第1項第16号に該当します。
【参考情報】
(1)「カフェ」の解説として、「コーヒーの意。主としてコーヒーその他の飲料を供する店。・・珈琲店。喫茶店。」との記載(広辞苑 第六版 岩波書店発行)。
(2)「琉球サンロイヤルホテル」のウェブサイトにおいて、「マゼランカフェ」の見出しのもと、「商品名: 新登場っ!カフェパン。・・内容:ふんわりパンに中身がぎっしり!!手軽でオシャレな新感覚のパンです。あんの甘さに、ほんのりコーヒーのほろ苦さが香る新しい美味しさ。」との記載(http://www.rsunroyal.co.jp/restaurant_c.php)。
(3)「日比谷アーカイブカフェ」のウェブサイトにおいて、「人気商品のご案内」の見出しのもと、「日比谷の『カフェパン』。『コーヒー』厳選したキリマンジェロのコーヒー豆を使用し、細かく粉砕してパンにもあんにも練りこみました。・・『テキヤリキチキン』甘辛い味付けのジューシーなチキンに、マヨネーズの絶妙なハーモニー。・・『ポテト』ミックスベジタブルと、ベーコンの旨みしっかりのほっくりポテトサラダで、お腹も満足。」との記載(http://archive-cafe.com/menu.html)。 ”
しかしながら、本出願人は、本願商標の「カフェパン」は、品質を表示するような言葉ではなく、十分に自他商品識別標識として機能する商標であると思料しますので、上記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) まず、本願商標の「カフェパン」は、審査官殿のご指摘によれば、広辞苑に「コーヒーの意。主としてコーヒーその他の飲料を供する店。・・珈琲店。喫茶店。」との記載があるとしております。しかし、これは、正確には「カフェ〔cafeフランス〕(コーヒーの意)(1)主としてコーヒーその他の飲料を供する店。日本では幕末の横浜に始まり、東京では1888年(明治21)上野で開店した可否(カツヒー)茶館が最初。珈琲店。喫茶店。(2)明治末~昭和初期頃、女給が接待して主として洋酒類を供した飲食店。カッフェ。カフェー。」(広辞苑)と記載されております。つまり、広辞苑はもともとの意味を括弧書きで「(コーヒーの意)」としているに過ぎません。むしろ、コーヒー等の提供場所である「珈琲店。喫茶店。」を意味するものとして説明しております。したがって、審査官殿の上記引用の仕方は正確ではありません。また、web上のフレッシュアイペディア(フレッシュアイペディアは、ウィキメディア財団が提供する日本語版ウィキペディアに含まれるフリー百科事典の情報及びその関連情報を引用し、提供するサービスです。歴史、人物、企業、先端テクノロジーから動物まで、様々な「ウィキペディア日本語版」の記事を検索できます)によれば、「カフェ (仏cafe/伊caffe)」 は、「本来コーヒーの意味。転じて、コーヒーなどを飲ませる飲食店を意味する。ヨーロッパの都市に見られるある種の飲食店を意味し、特にパリやウィーンのものが知られる。新聞や雑誌がそこで読め、時の話題について談笑し、情報交換のできる場所として親しまれている。」と解説されているように、「カフェ」は、今日では、「コーヒー」そのものというより、ヨーロッパ風の「珈琲店(喫茶店)」を意味するのが一般的であります。なお、同じくWeb上のYahoo!百科事典によれば、「カフェ」について、「日本では客席にホステスをはべらせて洋酒・洋食を供した、今日のキャバレーに類する、昭和初期の飲食店をいう場合が多い。カフェーは本来はコーヒーの意味であるが、転じて17世紀のヨーロッパに広がったコーヒーを飲ませる店(喫茶店)、やがては食事・酒を出す店をもいうようになった。アメリカでは軽食堂、酒場、ナイトクラブなども広くカフェーと称する。」などと解説されています。そうだとすれば、本願商標「カフェパン」は、全体として、「コーヒー風味のパン」程の意味合いを有する品質表示だとする審査官殿の指摘は、当たらないと考えます。仮に審査官殿の指摘する「コーヒー風味のパン」を表す場合には、「カフェパン」ではなく、「コーヒーパン」と称するのが素直であり、一般的であると考えます。「あんパン」、「ジャムパン」、「クリームパン」、「カレーパン」と一般的に称するように、「コーヒー風味のパン」は「コーヒーパン」と称するのが自然であります。google等のweb検索エンジンで検索してみても、コーヒー風味のパンは「コーヒーパン」と称されています。やなせたかし原作の漫画アンパンマンのキャラクターにも「コーヒーパンマン」というのがいますが、「カフェパンマン」というのはいません(1996年制作の「コーヒーパンマンとかいじゅうモカ」という漫画あり。http://www.youtube.com/watch?v=LluX3uI9kcM)。web上では、「コーヒーパン」はかなりの数ヒットしますが、「カフェパン」を探すのは容易ではありません。「カフェパン」は普通に使われている言葉ではありません。それ故、「カフェパン」が「コーヒー風味のパン」を表す品質表示だとは決して言い得ないと思います。
(3) また、審査官殿は、本願商標「カフェパン」を、「喫茶店で製造又は販売されるパン」程の意味合いを有するとも指摘しております。
しかし、「カフェ」が「喫茶店」を表すとしても、「カフェパン」を「喫茶店で製造又は販売されるパン」とストレートに理解できるものではありません。前述のように、web上で「カフェパン」の使用例を探すのは容易でなく、ましてや、「カフェパン」を「喫茶店で製造又は販売されるパン」程の意味合いで使われている例など見たことも聞いたこともありません。本出願人は「カフェパン」を「キーコーヒーの取引先であるレストランや喫茶店で食べてもらうパン」をイメージ(小ぶり、おしゃれ)してネーミングしましたが、その時に浮かんだのが、「喫茶店(カフェ)で食べるパン」ということで、「カフェパン」だったわけです。しかし、だからといって、「カフェパン」が「喫茶店で製造又は販売するパン」を普通に意味する品質表示用語であるなどと、取引者・需用者が思うはずはありません。「カフェパン」と言うネーミングを聞いて、具体的にそこまで想定する顧客などいないはずです。繰り返しますが、「カフェパン」は、「キーコーヒーの取引先である喫茶店(カフェ)で食べるパン」を意識してネーミングしたことは事実であります。しかし、それは単に本出願人のコーヒーを扱ってくれている喫茶店で販売してもらう小ぶりのパンとして何かおしゃれなネーミングはないかと考えた上で、これで行こうと決めたネーミングであって、「カフェパン」の言葉から間接的に喫茶店で扱われるパンのイメージが浮かぶことはあっても、そのことが直ちにこの商品の具体的な品質を表示することにはならないと考える次第です。御庁における商標法第3条第1項第3号の商標審査基準においても、「品質…を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする」としております。この「カフェパン」は、ある意味で、商品の品質を間接的に表示する商標であるかも知れませんが、あくまでも本出願人が識別標識を意識して考えたネーミングであって、特定の具体的意味合いを持たない造語商標であります。
(4) 審査官殿は、“近年、食品を取り扱う業界において、「コーヒー風味のパン」や「喫茶店で製造又は販売されるパン」が、「カフェパン」と称して、一般に製造又は販売されている実情がある”というようなことを述べておられます(参考情報参照:http://www.rsunroyal.co.jp/restaurant_c.php及びhttp://archive-cafe.com/menu.html)。
しかしながら、ここに審査官殿が実情として掲げた2つの例は、いずれも本出願人の取引先「琉球サンロイヤルホテル内のカフェ&バー「マゼランカフェ」」と「日比谷アーカイブカフェ」(日比谷公会堂の1階に設けた喫茶。日比谷公会堂でのイベント開催にあわせた不定期開場)における使用例であり、ここで「カフェパン」と称して顧客に販売しているのは、本出願人が製造し、これらの取引先に納品しているパンそのものであります。即ち、本出願人は、昨年(2009年)より、本出願人の得意先である喫茶店などで、いわばケーキ等と同じくデザート代わりに食べてもらおうと、「カフェで気軽に食べるのに適した小ぶりでおしゃれなパン」の開発に取り組み、その開発のイメージから「カフェパン」と言うネーミングを考えた次第です。そして、得意先の喫茶店等をターゲットとして、2009年の秋頃より営業活動を開始し、2009年11月始め頃に最初の出荷にこぎ着けました。「カフェパン」を採用してくれる喫茶店に対しては、印刷会社の「カフェパン 制作物 印刷」と「カフェパン 制作物 制作・撮影」の請求書(2009年11月付)(第1号証の1と第1号証の2)からも分かるように、A4判のセールスシート(第2号証)や、B3判1/2短冊ポスター(第3号証)や、テーブルスタンドPOP(第4号証)なども用意して、各店舗に配布し、利用していただいております。(「日比谷アーカイブカフェ」のウェブサイトにおける「カフェパン」の紹介には、本出願人が配布した第2号証のA4判のセールスシートがそのまま用いられています。)本出願人が各店舗に納品している「カフェパン」は、セールスシートやポスターなどをみれば分かると思いますが、コーヒーを生地やあんに練り込んだ「カフェパン/コーヒー」と、照り焼きチキン入りの「カフェパン/チキン」と、ポテトサラダ入りの「カフェパン/ポテト」の3種類があり、2009年11月2日より出荷を開始しております。なお、3種類のうち、「カフェパン/コーヒー」には、あんと生地にコーヒーを含んでいますが、他の「カフェパン/チキン」や「カフェパン/ポテト」には具にも生地にもコーヒーを含んでいません。「カフェパン」は、コーヒー風味のパン(コーヒーパン)ではなく、あくまでもカフェで気軽に食べるのに適した小ぶりでおしゃれなパンをイメージしております。そして、これら「カフェパン」の実際の納品は、主に、添付の写真(第5号証の1~5)に示すとおり、今のところ、一袋4個入りで箱詰めする等して各店舗に納品しております。審査官の指摘された琉球サンロイヤルホテルと日比谷アーカイブカフェへの納品状況は、添付のそれぞれの納品実績表(第6号証、第7号証)に示すとおりであります。第6号証に示す琉球産ロイヤルのマゼランカフェ(喫茶店)には、「カフェパン/コーヒー」の納品だけですが、2010年1月より6月9日頃までで20袋ほどの納品実績があります。沖縄の温暖な気候ではあんまり捌けておりませんので、今のところこの1種類です。しかし、一方の第7号証の1と第7号証の2に示す日比谷アーカイブカフェの方は、3種類すべてのカフェパンを納品しており、2009年11月~2010年6月11日までの7ヶ月ほどの間に679袋の納品実績があります。キーコーヒー取引先への「カフェパン」の売り込みが功を奏し、本格的な売り込みから7ヶ月ほどで、既に全国1,600店舗ほどの喫茶店で「カフェパン」が採用されております。このように、「カフェパン」と称して料理メニューとして(電子レンジで温めればOKです)、又はお土産用として販売されている商品は、本出願人が、「カフェパン」のネーミング(商標)でこれらの喫茶店に納めた商品そのものであります。つまり、「カフェパン」は本出願人が、この取引している「パン」に付けたネーミング(商標)であって、決して一般的に普及している「コーヒー風味のパン」等をあらわすネーミング(普通名称ないし品質表示)ではありません。ということで、この審査官殿が例示された2つ喫茶店の他に、「カフェパン」の使用例を見つけたとしら、それは本出願人が扱う「パン」を称して「カフェパン」としているのではないかと思います(僅か7ヶ月ほどで、もともとの取引先ではあっても、全国1,600店舗への「カフェパン」納品の実績は、それを物語るものと思います)。そうでなければ、本出願人の「カフェパン」を見て、その真似をしたのではないかと思います(使用者も悪気はないと思いますが、一般的には「コーヒーパン」でありますので、「カフェパン」を使う以上、本出願人の商品をどこかで見て、そのおしゃれな名前が気に入って使ってしまったということだろうと思います)。
(5) 以上の次第でありますので、本願商標「カフェパン」は指定商品との関係において自他商品識別力を備えた商標であり、また、「カフェパン」と称して一般的に製造又は販売されている実情も本出願人の関係者以外にありませんので、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものでも、同法第4条第1項第16号に該当するものでもないと考えます。
(*指定商品は当初「菓子及びパン」であったが、審査官の指摘もあり「パン」に限定した。)