商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#83

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「Jバンク」× 引用商標「BANK、P・BANK、M・BANKほか」

1.出願番号  商願2006-10718
2.商  標   「Jバンク」×「BANK、P.BANKほか」
3.商品区分  第9類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5044077号
出願商標・商標登録第5044077号
引用商標・商標登録第3370486号
引用商標1・商標登録第3370486号
引用商標2・商標登録第4005462号
引用商標2・商標登録第4005462号
引用商標3・商標登録第4374905号
引用商標3・商標登録第4374905号
引用商標4・商標登録第4555615号
引用商標4・商標登録第4555615号
引用商標5・商標登録第4757121号
引用商標5・商標登録第4757121号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、以下の引用商標1~5と同一又は類似するものであって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当すると認定された。
 引用商標1:登録第3370486号(商公平 9-003045)「BANK」
 引用商標2:登録第4005462号(商願平 6-003700)「P・BANK」
 引用商標3:登録第4374905号(商願平11-003588)「M・BANK」
 引用商標4:登録第4555615号(商願2001-019655)「AV BANK」
 引用商標5:登録第4757121号(商願2003-077523)「FX-BANK」
 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、欧文字と片仮名文字で一連に「Jバンク」と横書きした態様からなるものでありますが、引用商標1は欧文字で「BANK」と、引用商標2は欧文字で「P・BANK」と、引用商標3は欧文字で「M・BANK」と、引用商標4は欧文字で「AV BANK」と、また引用商標5は欧文字で「FX-BANK」と、それぞれ横書きしたものであります。
 したがって、本願商標と引用商標1~5は、外観上類似しないこと明らかであります。
(3) また、本願商標の「Jバンク」は、欧文字の「J」と「bank」の表音であるカタカナの「バンク」から成るもので、全体として「ジェイバンク」「ジェイ銀行」の如き固有名詞的な観念を生じさせる商標であります。
 これに対し、引用商標1は「BANK」の文字より単に「バンク」とか、「銀行」の観念を、また、引用商標2~5はそれぞれの態様より「ピー・バンク」「ピー銀行」、「エムバンク」「エム銀行」、「エーブイバンク」「エーブイ銀行」、「エフエックスバンク」「エフエックス銀行」の如き観念を生じさせるものであります。
 したがって、本願商標と引用商標1~5は、観念上も紛れることのない非類似の商標であります。
(4) そこで、次に称呼の点につき検討します。
 本願商標の「Jバンク」は、前述したように、欧文字の「J」とカタカナの「バンク」とからなるものでありますが、全体が同書・同大・同間隔で一連一体に書されており、しかも、全体として、例えば「ジェイバンク」「ジェイ銀行」の如きまとまった一つの意味合いを生じさせるものでありますので、本願商標は全体を一連に称呼するのが自然であり、取引者・需用者は常に「ジェイバンク」と称呼するものと思料します。
 この点に関し、審査官殿は、本願商標の要部は「バンク」の部分にあり、単に「バンク」と称呼される場合もあると判断して、上記の「BANK」の文字を含む引用商標1~5を引いてきたのだと思料しますが、これは誤った見方であると考えます。
成る程、本願商標は、a)アルファベット「J」とカタカナの「バンク」からなり、且つ、b)前半の「J」は、通常は単独で商標の要部とはなり得ない欧文字一文字(記号・符号の類)であることは事実であります。しかし、だからといって、本願商標の要部が後半部の「バンク」のみにあるとみるのは、短絡的にすぎます。
本願商標は、あくまでも、「J」と「バンク」とが組合わさって外観上まとまりよく一体となった商標「Jバンク」であって、単なる「J(ジェイ)」でもなければ、単なる「バンク」でもありません。本願商標において文字の種類を変えたのは、これら「J」と「バンク」を分断するためのものではありません。両者を分断して、一方のみに商標の要部があるかのような把握、例えば、要部は「バンク」のみと把握したのでは、「一体どんなバンク、銀行」なのかを理解することは出来ません。本願商標は、全体を一体に把握してこそ「Jバンク」「ジェイバンク」「ジェイ銀行」というような一つの固有名詞的な意味合いを生じさせるのであって、全体として一つの固有名詞的な意味合いを観念させるところに特徴があります。全体として一つの意味合いを把握できる場合に、わざわざ前後分断してその商標を2つに分けて把握するような仕方は、取引者・需要者が通常行うことはないと考えます。
 本願商標は、全体としてさほど冗長な商標ではありませんので、一気に「ジェイバンク」とよどみなく称呼できますし、全体として語呂がよく、称呼しやすい商標であります。それ故、前後を分断して例えば、後半の「バンク」のみを称呼すると言うことはあり得ないと考えます。本願商標は、一連に称呼してこそ一つのまとまった意味合いを生じさせる商標でありますので、取引者・需要者が、本願商標を捉えて、あえて「バンク」とのみ称呼したり、単に「ジェイ」と称呼するようなことはあり得ないことであります。だいいち分断して称呼するのは不自然であります。それでは本願商標独特の固有名詞的な意味合いは把握できませんし、本願商標としての自他商品識別力を正確に発揮することもできません。
一つの固有名詞的な意味合いを生じさせる本願商標は、全体として一つの自他商品識別機能を発揮するものであり、全体が冗長であり一気に称呼し難いとか、一気に称呼したのでは語呂が悪く称呼し難いとか、一部の文字が特に目を引く態様となっているとかの格別な事情がない限り、前後分断することなく一連に称呼するのが自然であります。
 然るに、本願商標は、全体を一連に称呼して決して冗長な印象を与える商標ではなく、格別に「バンク」の文字が目立つような特殊な態様からなる商標でもありません。むしろ全体として語呂もよく一連に「ジェイバンク」と称呼し易いもので、その様に称呼してこそ、一つの意味合いを持つ識別力ある商標となると考えます。
 よって、本願商標は全体をよどみなく一連に「ジェイバンク」とのみ称呼されるものであり、これに対して引用商標1~5は、それぞれ「バンク」「ピーバンク」「エムバンク」「エーブイバンク」「エフエックスバンク」と称呼されるものでありますので、両者は、「ジェイ」の称呼の有無が大きく異なり、称呼上決して紛れるものではありません。
(5) ところで、引用商標1と引用商標2~5の関係をみて分かるように、これらは「BANK」の文字を共通にする商標同士でありますが、引用商標1の「BANK」の存在にも拘わらず、他の2~5の引用商標「P・BANK」「M・BANK」「AV BANK」「FX-BANK」が登録されております。
 そして、このことから言えることは、これら2~5の引用商標は、「BANK」の部分を商標の要部と把握されたのではなく、全体として分離できない一体の商標と把握されたということであります。なぜなら、引用商標2~5より、「BANK」の部分が要部と把握されていたならば、これら引用商標2~5は、引用商標1「BANK」の存在によって、登録されることはなかったはずだからであります。それが登録されたと言うことは、これら2~5の引用商標は全体として分離することのできない一つの商標と把握されたと考えざるを得ません。
 本願商標とて同様であります。本願商標は「Jバンク」(ジェイバンク)」と一連一体に把握されるべき商標で、「J」と「バンク」を分離すべき商標ではありません。常に「Jバンク」(ジェイバンク)であり、引用商標1の「BANK」(バンク)とは類似することはありません。ましてや、本願商標「Jバンク」(ジェイバンク)は一連に把握される引用商標2以下、即ち、「P・BANK」(ピーバンク)、「M・BANK」(エムバンク)、「AV BANK」(エーブイバンク)、「FX-BANK」(エフエックスバンク)の各商標と称呼上類似することはありません。
(6) 以上述べたように、本願商標は、引用商標1~5と、外観、観念のみならず、称呼上も紛れることのない非類似の商標であります。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

86 / 100
Loading