商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#72

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「UCM」×引用商標「UCL」

1.出願番号  商願2005-40192
2.商  標   「UCM」
3.商品区分  第42類 電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守ほか
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  登録第4411761号商標「UCL」と類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4914338号
出願商標・商標登録第4914338号
引用商標・商標登録第4411761号
引用商標・商標登録第4411761号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、本願商標は登録第4411761号(商願平11-043469号)の商標(以下、「引用商標」という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定役務と同一又は類似の役務に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録できないと認定された。しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、「UCM」の欧文字を横書きしてなるものでありますが、引用商標は「UCL」の欧文字(標準文字)からなるものであります。したがって、本願商標と引用商標とは、欧文字三文字からなる商標において、その第3文字目に「M」と「L」の違いがあり、外観上十分に識別でき、類似しないこと明らかであります。また、本願商標「UCM」と引用商標「UCL」とは、共に格別の意味を持たない造語商標であり、したがって、両者は観念上比較すべくもなく、観念上も同一又は類似しないこと明かであります。
(3) そこで、次に称呼の点につき検討します。まず、本願商標は、上記態様より、「ユウシイエム」ないし「ユーシーエム」の称呼を生じるものでありますが、引用商標は、その態様より「ユウシイエル」ないし「ユーシーエル」の称呼を生じるものであります。然るに、両者は、語尾の第3文字目に「M」(エム)と「L」(エル)の違いしかなく、そのために審査官殿は、両商標は称呼上紛らわしいと判断したのだと思います。しかしながら、本出願人は、以下の理由により、本願商標と引用商標とは、称呼上紛れることのない非類似の商標であると思料します。すなわち、まず、第一に、本願商標「UCM」と引用商標「UCL」とは、上述の如く一文字の相違でありますが、全体が僅か3文字という短い構成からなる商標同士における「M」と「L」一文字の違い(全体の3分の1を占める)であり、したがって、この「M」(エム)と「L」(エル)の違いが全体の称呼に及ぼす影響は極めて大きいと思われること。第二に、両者は、全体が欧文字3文字から成り且つ一文字ずつ発声する以外に読み方がないため、これら全体を称呼した場合には、「ユウ・シイ・エム」や「ユー・シー・エム」とか、「ユウ・シイ・エル」や「ユー・シー・エル」の如く、一文字一文字音節を区切って明瞭に称呼されるのが自然だと思います。それ故、この「M」と「L」の文字も最後尾にあるとはいえ明瞭に称呼され、この「M」と「L」の称呼上の差異により、両者は十分に聴別できると思われること。第三に、この「M」(エム)と「L」(エル)は、第2音目の弱音(イ)ないし長音(ー)を伴う「C」(シイ)(シー)に続いて発声されるため、比較的強いアクセントをもって明瞭に称呼される文字であり、このアクセントによって称呼上の違いがより強調されると思われること。第四に、本願商標と引用商標の対象役務は、第42類の「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」でありますが、この役務の業界、即ち、コンピュータプログラムの設計等コンピュータ業界やIT業界においては、欧文字で構成される商標が数多く存在し、そのネーミングも欧文字の頭文字を採って並べたような造語や略称が多く、それ故に、その需要者・取引者層も欧文字ネーミングには極く親しんでいて、注意深い観察力を持って商取引にあたると思われること。以上のような理由により、上記「M」(エム)と「L」(エル)の差異は、両商標を称呼上識別するに十分な差異であり、両商標は称呼上明確に識別できるものと思料します。

(4) そして、このことは、第42類のコンピュータプログラムの設計等の役務分野において、以下のような商標が互いに登録され、かつ存続している事実からも伺い知ることが出来ます。例えば、
(A)
・登録第3159681号「PCL」(H8.5.31登録、ソニーピーシーエル株式会社)(第1号証の1)と、
 ・登録第4613129号「PCM」(H14.10.18登録、アートグレミオ株式会社)(第1号証の2)。
(B)
 ・登録第3128936号「YCL」(H8.3.29登録、山梨中銀リース株式会社)(第2号証の1)と、
 ・登録第4540132号「YCM」(H14.2.1登録、株式会社マタハリー)(第2号証の2)。
(C)
 ・登録第4520754号「JCM」(H13.11.9登録、株式会社ジェイ・シー・エム)(第3号証の1)と、
 ・登録第4563887号「JCL」(H14.4.26登録、日本医学臨床検査研究所)(第3号証の2)。
(D)
 ・登録第3119891号「ICM」(H8.1.31登録、株式会社アイシーエム)(第4号証の1)と、
 ・登録第3187324号「ICL」(H8.8.30登録、インターナショナルコンピューターズリミテッド:イギリス国法人)(第4号証の2)。
 これらは、互いに欧文字三文字からなる商標で、第2文字目に「C」を有し、且つその第3文字目に「L」と「M」の違いがあるだけの商標ですが、互いに類似しないものとして併存登録されております。然るに、本願商標「UCM」と引用商標「UCL」とて、第2文字目に「C」を有し、且つその第3文字目に「L」と「M」の違いがあるだけの商標である点で、これら(A)~(D)で対比した商標同士と同様の関係であり、これらが併存できて、本願商標と引用商標とが併存出来ないとされる謂われは全くありません。
(5) このように、本願商標「UCM」と引用商標「UCL」とは、一文字相違とは言っても、僅か三文字という短い文字構成の中における一文字の相違であり、そして、この「M」と「L」の部分は2音目の弱音(イ)ないし長音(ー)の後に位置して比較的強く発声される文字でありますので、両者は、この「M」と「L」の違いにより、別異の印象を与え、明瞭に識別できるものと思います。

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