商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#71

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「Quick Security Server」

1.出願番号  商願平11-88167(不服2000-16544)
2.商  標  「Quick Security Server」
3.商品区分  第9類:電子応用機械器具ほか
4.適用条文 商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号
5.拒絶理由 「単に、商品の品質、機能を表示したもの」

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4907387号
出願商標・商標登録第4907387号

不服審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

【手続の経緯】
 出     願   平成11年 9月29日
 拒絶理由の通知   平成12年 7月25日
  同 発送日   平成12年 7月28日
意  見  書   平成12年 8月17日
拒 絶 査 定   平成12年 9月27日
 同 謄本送達   平成12年10月 6日
【拒絶査定の要点】
原査定は、「平成12年7月25日付けで通知した理由によって、商標法第15条の規定に基づき拒絶する」というものであり、その具体的理由は、拒絶理由通知書に示されたとおり、『本願商標は、「迅速な、素早い」等の語義を有する「Quick」、「安全、保証」等の意味を有する「Security」及び「電子応用機械装置」をいう際に使われる「Server」の語を連結して「Quick Security Server」と一連に書してなるところ、これよりは「迅速な応答可能かつ安全機能を備えたコンピューター」なる意味合いを想起するものであるが、本願指定商品中の「電子応用機械器具」等との関係においては、前記の如く商品が流通し販売されていることは一般に周知の事であるから、前記本願商標を指定商品中、例えば「電子応用機械器具」に使用するときは、単にその商品の品質・機能を表示したものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。』というものである。そして、拒絶査定書においては、以下のように付言している。『本願指定商品を取り扱う業界においては、とりわけ安全性などを重視する商品を「Security Server」と称しインターネットなどを使って普通に使用している実情があることが認められるものであるところ、本願商標は迅速さの意味を有する「Quick」の文字に連結されたに過ぎないものであるから、さきの認定を覆すことはできない』。
【本願商標が登録されるべき理由】
 しかしながら、本出願人は、本願商標の「Quick Security Server」は全体として一種の造語商標を形成するものであり、これを本願の指定商品に付して使用しても、単に商品の品質・機能を表示するものではないと考えるので、前記認定には承服できず、ここに審判を請求し、再度の御審理をお願いする次第である。
(a)本願商標の構成
 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、欧文字で「Quick Security Server」と一連に横書きした態様からなり、かつ指定商品を第9類の「写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,自動販売機」とするものである。
(b)本願商標が登録されるべき理由
(b-1) しかるに本願商標の「Quick Security Server」は、「迅速な応答可能かつ安全機能を備えたコンピューター」を間接的に表示する文字であることを否定するものではないが、本願商標は、あくまでも「Quick」と「Security」と「Server」の単語を横一列に並べて作った造語商標であり、「Quick Security Server」が品質・機能表示として普通に用いられている事実はない以上、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとした審査官の認定に納得することはできない。この点に関し、審査官は、『安全性などを重視する商品を「Security Server」と称しインターネットなどを使って普通に使用している実情がある』と言うようなことを述べているが(拒絶査定書)、情報処理の辞書類やインターネットの検索エンジン等で調べてみても、そのような事実は見あたらない。
 過去の商標審査例などを見ると、この指定商品分野において、本願商標を構成する「QUICK」や「SECURITY」や「SERVER」個々の単語は、それぞれ品質等を表わす言葉と理解され、自他商品の識別力はないと扱われているようである(例えば、商願平1-80704「QUICK」、商願平4-1439「SECURITY」など)。しかしながら、そのことが、全体としての識別性を否定する根拠にはなり得ない。本願商標の「Quick Security Server」は、一つ一つの単語を採ってみれば品質表示的な意味合いを持つことは認めるにしても、本願商標はこれら3つの単語が一体となって初めて一つの商標を構成するものであり、全体を一連一体にとらえてみれば十分に自他商品識別力を生じるものである。つまり、本願商標は、それぞれの単語を分断して把握すべき性格のものではない。わざわざ分断して把握しなければならない理由はない。むしろ、この商品分野においては、欧文字の比較的長い称呼を有する商標が多数存在していて、取引者・需用者は長い商標の識別には慣れている。しかも、本願商標の「Quick Security Server」は、一つ一つを分断して把握し称呼したのでは識別力を有しないことから、慣れ親しんだ取引者・需用者は一つ一つを取り出して称呼したり、一つを省略して称呼するようなことはするはずもない(*そのようなやり方をしたのでは識別できにくくなってしまう。比較的長い称呼に慣れたこの商品分野の賢明な取引者・需用者であれば、あえて識別しにくいような省略の仕方をして、本願商標を称呼するようなことはないはずである)。
したがって、本願商標を取り扱う取引者・需用者は、あくまでも本願商標を一体のものとしてとらえ、全体を一連に「クイックセキュリティサーバ」とのみ称呼して、取引に当たるものと思料する。「Quick Security Server」を構成する単語は、個々的に見たら品質表示的なものかもしれないが、本願商標は、これら品質表示的な単語を結びつけることによって全体として自他商品識別力を有する商標としたものであり、その意味で、十分に商標としての機能を発揮するものと思料する。なお、判決例を見てみると、例えば、昭和34年7月14日/東京高等裁判所/判決/昭和32年(行ナ)第34号:商標「Mode Robe」などは、普通名称の組合せと識別力の点につき、“流行をあらわすModeと衣服をあらわすRobeの語とは、それぞれ「流行している」「被服」であることを示すもので、商品衣服一般については自他商品識別の機能を有していないかも知れないが、Mode Robeと2語組み合せて使用されている事実はなく、また組み合わせて使用することは稀であろうから、この文字を商標として用いるときは、自他商品識別の機能を有する。”というような判断を下している(行政事件裁判例集10巻7号1361頁)。これは、自他商品識別機能を有しない単語でも、それらの単語を組み合わせることによって自他商品識別機能を有するとされた例である。本願商標も同様であろう。
(b-2)
ところで、過去の御庁商標審査例をみると、本願と同一の指定商品分野において、品質表示的な言葉と「SERVER」の文字が結びついた商標は、以下のように数多く登録されている。例えば、
1)登録第2529830号「COMMUNICATIONSERVER\コミュニケーションサーバー」…(第1号証)、
2)登録第3056166号「MEMORY SERVER」…(第2号証)、
3)登録第3297799号「SOLUTIONSERVER」…(第3号証)、
4)登録第4045860号「オフィスメディアサーバ\OFFICEMEDIASERVER」…(第4号証)、
5)登録第4277731号「POWERSERVER」…(第5号証)、
6)登録第4297299号「Super Technical Server」…(第6号証)、
7)登録第4305707号「FAMILYSERVER」…(第7号証)、
などである。これらの商標の構成単語を一つ一つみると、1)は「伝達、通信、交信」等の意味の「COMMUNICATION」と「電子応用機械装置」を言う際に使われる「SERVER」とが結合したものであり、2)は「記憶、メモリー」等を意味する「MEMORY」と「SERVER」が結合したものである。また、3)は最近よく使われる「問題解決」を意味する「SOLUTION」と「SERVER」が結合したものであり、4)は、「事務所、会社、オフィス」等使用場所を表す「OFFICE」と、「伝達・通信媒体」を表す「MEDIA」及び「SERVER」が結びついたものである。また、5)は「パワーのあること」を意味する「POWER」と「SERVER」を結合したものであり、6)は優れた意味の「Super」と技術的なことを意味する「Technical」と「Server」の結合であって、「優れた技術力を有するサーバー」ほどの意味合いを想起させ、また、7)は、「ファミリ向けのサーバー」の如き意味合いを想起させるものである。したがって、これらの商標から想起される意味合いを考えれば、上記商標は全て、「電子応用機械器具」のような商品分野においては、審査官のような見方をした場合には、品質・機能表示であるとして拒絶されてもおかしくない商標である。ところがその様な商標でも、上記の如くすべて登録されているのである。これは、商標を把握するに当たって、一つ一つの言葉を分断して把握するようなことはせず、あくまでも全体として一つの商標であると把握したからに他ならない。つまり、これらは個々的にみたら品質表示的な言葉であるが、それらを組み合わせることによって自他商品識別力が生じた造語商標の例であると思料する。そして、本願商標もこれらの登録商標と同一の性格を有する商標であり、十分識別力を有するものと思料する。審査官は、先の拒絶査定書で、『安全性などを重視する商品を「Security Server」と称しインターネットなどを使って普通に使用している実情がある』と言う。しかし、前述したように、そのような実情など見あたらない。まして、「Quick Security Server」が普通に品質・機能表示として用いられている事実などない。それ故、取引者・需用者が、例えば、「電子応用機械器具」に商標的使用態様で「Quick Security Server」と書してある文字を見て、これを品質・機能表示であると認識するとは到底思われない。むしろ、一般的には、「Quick Security Server」という商標名の製品であると理解するのが自然である。そうだとすれば、本願商標「Quick Security Server」は充分に識別標識として機能し得る商標である。
(b-3) そして、このことは更に、「QUICK」の付く商標をみても明らかである。即ち、第9類の「電子応用機械器具」等の商品分野においては、「QUICK」の単語と、他の品質・機能表示的な意味合いを想起させる単語とが結びついて一体となった商標として、以下のような商標が存在する。即ち、
8)登録第2116122号「QUICKMAIL」…(第8号証) 
9)登録第2704085号「QuickLettering」…(第9号証)
10)登録第2704213号「QuickSave/クイックセーブ」…(第10号証)
11)登録第3116035号「QUICK SURF」…(第11号証)
12)登録第3138854号「QuickLink」…(第12号証)
13)登録第3217395号「QuickReverse」…(第13号証)
14)登録第3261270号「QUICKVISION」…(第14号証)
15)登録第4074713号「QUICKWORK」…(第15号証)
16)登録第4115051号「Quick System」…(第16号証)
17)登録第4201916号「QUICKMENU」 …(第17号証)
18)登録第4218048号「QUICKMAP」…(第18号証)
19)登録第4254701号「QUICKSTOP/クイックストップ」…(第19号証)
20)登録第4388234号「Quick View」…(第20号証)  etc.
などが登録商標として存在している。そして、8)からは、その商品(メールソフトなど)が「迅速なメール機能を有すること」、9)からは、その商品が「迅速なレタリング機能を有すること」、10)からは、その商品が「迅速な保全機能・節約機能を有するものであること」等を表している。また、11)からは、その商品が「迅速な(ネット)サーフィン機能を有するものであること」、12)からは、その商品が「迅速なリンク機能を有するものであること」、13)からは、その商品が「迅速な巻き戻し機能を有するものであること」、14)からは、その商品が「迅速に映像を映し出す機能を持っていること」、15)からは、その商品が「迅速な作業能力を有するものであること」等を表している。更に、16)からは、その商品が「迅速な機械装置(システム)であること」、17)からは、「コンピュータのメニューが迅速に表示されるものであること(迅速なメニュー表示機能を有するものであること)」、18)からは、その商品が「迅速な地図表示機能を有すること」、19)からは、その商品が「迅速な停止機能を有するものであること」、20)からは、その商品が「迅速な映し出し機能を有するものであること」、といったような意味合いを想起させるものである。しかるに、そのような意味合いを想起させるからといっても、これらの商標が品質・機能表示であると扱われている事実はない。自他商品識別機能を有する商標として、登録されているのである。このように、その言葉の意味合いだけを考えてみた場合には品質・機能表示的な商標であっても、品質・機能表示として普通に用いられている事実がない場合には、全体として自他商品識別力を有する商標であるとして、登録されているのである。したがって、本願商標の「Quick Security Server」も、個々の単語の意味合いからすれば品質・機能表示的なものかもしれないが、そして、全体から受ける意味合いも「迅速な応答可能かつ安全機能を備えたコンピューター」というようなイメージかも知れないが、それはあくまでも間接的な印象やイメージであって、直接的に「Quick Security Server」が品質・機能表示用語として使われているものではない。それ故に、例えば「電子応用機械器具」に商標的使用態様で本願商標を使用した場合でも、その取引者・需用者は、「Quick Security Server」という商標名の製品であると理解するのが自然であろう。そうだとすれば、本願商標「Quick Security Server」は充分に識別標識としての機能を備えた商標であると言い得る。
(b-4) 繰り返し述べるが、本出願人は、「Quick Security Server」が「迅速な応答可能かつ安全機能を備えたコンピューター」を暗示させあるいは間接的に想起させる文字であることを否定するものではない。また、個々の単語「Quick」、「Security」、「Server」が品質・機能を表示するような単語であることを否定するものでもない。しかし、そのことが直ちに、本願商標全体が、品質・機能表示にすぎない、即ち、品質・機能を普通に用いられる方法で表示する標章にすぎない、と言うことにはならない。商標法第3条第1項第3号の商標審査基準には、“指定商品の「品質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする”と明確にうたっている。この審査基準に照らし合わせてみても、今般の審査官殿の認定に承服することはできない。
【むすび】
 以上の次第でありますので、本願商標は商品の品質や機能を普通に用いられる方法で表示する商標ではなく、自他商品識別力を有し、充分登録適格性を備えたものと思料します。よって、原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものであるとの審決を求める次第であります。
【証拠方法】
(1)第1号証…登録第2529830号公報「COMMUNICATIONSERVER\コミュニケーションサーバー」、(2)第2号証…登録第3056166号公報「MEMORY SERVER」、(3)第3号証…登録第3297799号公報「SOLUTIONSERVER」、(4)第4号証…登録第4045860号公報「オフィスメヂアサーバ\OFFICEMEDIASERER」、(5)第5号証…登録第4277731号公報「POWERSERVER」、(6)第6号証…登録第4297299号公報「Super Technical Server」、(7)第7号証…登録第4305707号公報「FAMILYSERVER」、(8)第8号証…登録第2116122号公報「QUICKMAIL」、(9)第9号証…登録第2704085号公報「QuickLettering」、(10)第10号証…登録第2704213号公報「QuickSave\クイックセーブ」、(11)第11号証…登録第3116035号公報「QUICK SURF」、(12)第12号証…登録第3138854号公報「QuickLink」、(13)第13号証…登録第3217395号公報「QuickReverse」、(14)第14号証…登録第3261270号公報「QUICKVISION」、(15)第15号証…登録第4074713号公報「QUICKWORK」、(16)第16号証…登録第4115051号公報「Quick System」、(17)第17号証…登録第4201916号公報「QUICKMENU」、(18)第18号証…登録第4218048号公報「QUICKMAP」、(19)第19号証…登録第4254701号公報「QUICKSTOP\クイックストップ」、(20)第20号証…登録第4388234号公報「Quick View」
【その他】
文書中に示した証拠方法(第1号証乃至第20号証)は、御庁備え付けのもの(データベース)があるので、それを援用し、その提出は省略する。
委任状は、包括委任状番号9812144を援用する。
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(参考)ケース71の「審決」
不服2000-16544
平成11年商標登録願第88167号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結 論
 原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。
理 由
1 本願商標
本願商標は、「Quick Security Server」の欧文字を横書きしてなり、第9類「写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,自動販売機」を指定商品として、平成11年9月29日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『迅速な、早い』等の語義を有する『Quick』、『安全、保証』等の意味を有する『Security』及び『電子応用機械装置』をいう際に使われる『Server』の語を連結して『Quick Security Server』と一連に書してなるところ、これよりは、『迅速な応答が可能かつ安全機能を備えたコンピュータ』なる意味合いを想起させるものであるから、これを指定商品中『電子応用機械器具』に使用するときは、単にその商品の品質、機能を表示したものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
 本願商標は、上記のとおり「Quick Security Server」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中「Quick」の文字は、「迅速な、すばやい」等の意味を有する英語として親しまれている語ということができる。また、「Security Server」の文字は、その構成中「Security」の文字がその指定商品との関係においては、「コンピュータシステムの防災、安全保護」などの意を、また、「Server」の文字が「ネットワーク上で(ファイル、プリント、アプリケーション等の)サービスを提供するコンピュータ又は同コンピュータソフトウエア」等を意味する語であるから、「Security Server」の文字からは、「システムの防災、安全保護等を提供するコンピュータ又は同コンピュータソフトウエア」の如き意味合いを看取させるものということができる。しかしながら、本願商標は、前記のとおり、「Quick Security Server」の文字からなるものであって、原査定説示のように、該文字が、本願指定商品の品質、機能等を具体的に表したものということもできないとみるのが相当である。また、当審において調査するも、該文字が、本願指定商品の品質、機能等  を表す語として、一般に使用されている事実も見い出せない。してみれば、本願商標をその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものと判断するのが相当であり、また、商品の品質について誤認を生じるおそれもないものといわなければならない。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取り消しを免れない。その他、本願について拒絶の理由を発見しない。よって、結論のとおり審決する
平成17年10月20日
審判長  特許庁審判官 山田 清治
特許庁審判官 小林 薫
特許庁審判官 寺光 幸子

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