米国商標 異議申立手続の概要
米国で商標を取得する場合には、公告後登録前に第3者からの異議申立(opposition)の機会があり、その商標登録が何かの損害を及ぼすと考えた者は異議申立をすることができます。日本の場合、商標の異議申立は原則書面を提出して、何か月か後に異議理由あり若しくは異議理由なしの結果を受け取るような、どちらかと言えば審査の延長戦のような手続ですが、米国の場合には、陪審員制度のない少し簡素化された民事訴訟の様相を呈しており、USPTO(United States Patent and Trademark Office)のTTAB(Trademark Trial and Appeal Board)を法廷とする原告と被告の紛争となります。従いまして、米国の異議の申立若しくは被異議の場合は、比較的に早い段階で方針を決めることが重要で、殆どの場合は、和解、デフォルトか取下げなどの答弁書提出前に結論を出して終了します。もし終局までフルに紛争を続けた場合の異議申立手続は、専門家証人を伴わない場合でもその相場は1,100万円~3,300万円程度の費用がかかると言われており、異議申立手続が長期化する場合には5年、6年とかかることもあります。米国異議申立事件で最後の結審に至る事件は概ね全体の2%に過ぎません。米国の商標審査の段階には、TMEPが審査便覧として用いられていますが、異議申立段階ではTBMP(Trademark Trial and Appeal Board Manual of Procedure)が審判便覧として用いられます。TTABはUSPTOの審判機構であり、主な役割は審査官(examining attorney)の拒絶査定に不服の場合の査定系審判手続(ex parte appeal)と、異議申立(opposition)、取消審判(cancellation)、同時継続使用(concurrent use)とインターフェアレンス手続(interference proceeding)の場合の当事者系審判手続(inter partes)があります。TTABは年間ベースで約3,000件の査定系審判、約18,000件の異議申立期間延長、約6,000件の異議申立、約2,000件の取消審判を取り扱っています(TTAB Data Visualization Center)。
異議申立人
米国の商標登録に対する異議申し立ては、その商標が主登録原簿(principal register)に登録されれば損害を受けると思う者が申し立てることができます。即ち、利害関係人であれば原告適格(standing)があり異議申立できます。また、異議申立には、使用権者や譲渡人、譲受人、委託者なども参加可能です。
異議申立期間
異議申立は公告(Publication)から30日以内、また異議申立の提出の延長(extension of time)の期間内に提出します。従って、登録に問題があると考えた相手方は、公告から30日以内の期間に、異議申立通知(Notice of opposition)を提出するか、異議申立期間の延長請求(Request of extension)を提出するかの判断になります。異議申立の提出の延長期間内での異議申立通知(Notices of Opposition)やその延長請求を出せなかった場合には、異議申し立てはできなくなります。この場合には、その商標出願についての登録後に取消を請求することになります。異議申立は公告の日から180日を越えることができません。延長の請求は、公告から30日以内か或いはその直前の延長された期間内にする必要があり、請求により30日の延長か、理由を伴う90日の延長を請求できますが、初めに30日の延長を貰った場合には、理由を伴って60日の延長が請求できます。また、合計90日の延長を得た場合でも、さらに60日の最後の期間延長を請求でき、相手の同意等があれば延長されます。もし各期限の最終日が平日ではない場合やヴァージニア州の休日にあたる場合には、次の平日まで延長されます。最初の異議期間の延長請求は100ドルのオフィシャルフィーがかかり、追加の最後の期間延長には200ドルのオフィシャルフィーがかかります。
催促状(Demand Letter)
公告(Publication)から30日以内の異議申立期間或いはその延長された期間は、異議申立人が公告された商標を有する者に対して催促状を送り付けることのできる期間と考えられています。このような督促状には、異議申立人が問題とする出願に関する事項を知らせ、どのような手順で解決できるかを示すこともでできますが、和解する余地も少ない場合には、一方的な内容の場合もあります。
異議申立開始
異議申立は、異議申立人が所定の異議申立料を払って異議申立通知(Notice of Opposition)をTTABに提出することで開始します。異議申立料は区分ごとに400ドルです。TTABへの書類の提出は原則電子提出用のESTTA(Electronic System for Trademark Trials and Appeals)を介して提出され、特にマドリッド制度の国際登録出願の保護拡張に対してはESTTAでの提出が必要です。異議申立通知は、ESTTAの画面を入力しながら進めることができ、理由(Grounds for opposition)(例えばPriority and likelihood of confusion)や異議申立の根拠となる登録商標についても入力できます。異議申立通知には、訴状(complaint)形式の異議申立書(TBMP 309.02(a) Format for Complaint)が添付されます。このようなTTABへの提出書類はTTABVUE(Trademark Trial and Appeal Board Inquiry System)の事件を特定した後の画面のProsecution Historyのリンクから見ることができ、訴状形式の異議申立書には、当事者の確定事項、被異議の商標についての事実、事件についての主張などが短い文書で番号を付与して記載されます。
異議申立理由(Grounds for Opposition)
異議申立書の訴状には、理由を記載することが求められており、TBMP 309.03(c)には異議理由が1~25まで例示されています。異議申立の理由は1つに限らず、複数の理由を挙げることができます。1)被告の商標は申立人の商標に類似(likelihood of confusion)している、或いはその被告の商標の使用により混乱や欺瞞が生じる。2)被告の商標は単に記述的(merely descriptive) 又は誤解を生じる、地理的表示に過ぎない、人名である、或いは全体として機能的である。3)被告の商標は地理的に欺く、公序良俗に反する、原告の商標と関係があるような偽の関係を示唆する、原産地以外の場所の表示する。4)使用ベースの出願に関して正当な使用がない。5)被告は正当に商標を使用する意図(bona fide intent to use)はない。6)被告の商標は単に識別性のない背景図案である。7)被告は登録商標の正しい所有者ではない。8)被告の商標は装飾的(ornamental)又は音で本質的な識別性がない、トレードドレスで獲得した識別性がない。9)登録に用いられた期間では商標として使用されていない。10)被告の商標は複数の商標を1つの出願としている。11)被告の商標は使用されてなく放棄されている、或いは出所表示していない。12)被告の商標は生きている人の人名からなり、その同意もない。13)被告の商品デザインは一般的である。14)被告の商標は原告の著名商標の識別力のある品質を希釈する。15)被告はその出所を誤るようにその商標を使用している。16)被告は連邦登録されているかように誤認させる意図を以てマルRマークを使用している。17)出願の段階で被告は詐欺行為をした。18)被告の登録商標はパンナム条約における外国人所有者の商標と抵触する。19)被告の出願は争点功(claim or issue preclusion)により妨げられるものである。20)被告の商標は、1つの作品の題名であり、商標とは考えられない。21)米国若しくはその他の市町村の旗その他の象徴である商標の登録は禁止されるものである。22)商標登録の基礎となった外国の登録について、その外国での商業的な存在を示していない。23)使用する意図での出願(intent-to-use application)が譲渡されている。24)商標は一般名称である。25)商標は市場で適法には使用できない。なお、統計によれば、異議申立理由のおよそ半分は類似(likelihood of confusion)を理由としています。
異議申立手続
異議申立書(Notice of Opposition)をTTABに提出した後は、TTABは被告(出願人)側に答弁書(answer)の提出を原則40日以内で求めます。この訴答段階(pleading stage)での流れはserviceの対象が出願人ということ以外は、通常の民事訴訟訴訟の流れとほぼ同じです。TTABの審議や手続は連邦民事訴訟規則(Federal Rules of Civil Procedure)に倣っており、その運用に連邦証拠規則(Federal Rules of Evidence)も採用されています。従いまして、答弁書には異議申立書に記載された事項について認める若しくは否定するとの記載となり、また衡平法上の懈怠(laches)、権利不行使(acquiescence)、禁反言(estoppel)などの積極的抗弁(affirmative defense)なども記載できます。また、答弁書には通知の送達についての証明(proof of service)を記載する必要があります。もし答弁書の提出時に、異議申立書に挙げられた商標登録が無効であるとする反訴にその理由がある場合には、強制的反訴(compulsory counterclaim)として答弁書と共に若しくは一部として提出する必要があります(37 CFR § 2.106(b)(3))。また、異議申立事件の当事者は、事件の係属中に、他のTTABの手続の当事者か、同じ若しくは関連した商標の訴訟の当事者となった場合には、審判部(Board)に直ちに知らせる必要があります(37 CFR § 2.106(b)(3)(i))。この異議申立書についての手続開始通知(institution notice)には、異議手続のスケジュールが記載されおり、典型的には次のようになります(TBMP: APPENDIX E)。答弁書に反訴を含む場合には、TBMPのAPPENDIX Fとなります。
手続項目 | 概ねの予定(1月1日申立と仮定) | 費用相場 |
答弁書期限(time to answer) | 2月10日(+40) | $2K~$5K |
開示手続協議期限(deadline for discovery conference) | 3月10日(+70) | $1K~3K |
開示手続開始(discovery opens) | 3月10日(+70) | $5K~10K per depo. |
最初の開示手続期限(initial disclosure due) | 4月10日(+100) | $0.5K~2K |
専門家開示手続期限(expert disclosure due) | 8月10日(+220) | 約$5K~40K |
開示手続終了(discovery closes) | 9月10日(+250) | ここまでで計25K~150K(280万円~1600万円程度) |
原告側の公判前開示手続期限(plaintiff’s pretrial disclosure due) | 10月20日(+280) | $5K~20K |
原告側の30日の公判期間終了(plaintiff’s 30-day trial period ends) | 12月5日(+325) | $10K~60K |
被告側の公判前開示手続期限(defendant’s pretrial disclosure due) | 12月20日(+340) | $5K~20K |
被告側の30日の公判期間終了(defendant’s 30-day trial period ends) | 翌年2月5日(+400) | $10K~60K |
原告側の反駁開示手続期限(plaintiff’s rebuttal disclosure due) | 翌年2月20日(+415) | |
原告側の15日の反駁期間終了(plaintiff’s 15-day rebuttal period ends) | 翌年3月20日(+445) | |
原告側の冒頭準備書面期限(plaintiff’s opening brief due) | 翌年5月20日(+505) | |
被告側の準備書面期限(defendant’s brief due) | 翌年6月20日(+535) | |
原告側の弁駁書面期限(plaintiff’s reply brief due) | 翌年7月5日(+565) | |
口頭審理(任意)の要求期限(request for oral hearing (optional) due) | 翌年7月15日(+580) | 約$10K~50K |
全体として終局までフル稼働した場合の異議申立手続の代理人の費用相場は$100K~$500K(1,100万円~5,500万円)と思われます。開示段階の後、略式判決の上申書(Motion for Summary Judgment)で正式事実審理(trial)に進まずに終わる事件も多いと思われます。また、答弁書の提出しなければ、デフォルト(欠席裁判)となり、Notice of Defaultを受け取って終了します。このデフォルトの場合、争点効(issue preclusion)があり、出願人は同じマークで同じ指定商品・指定役務の権利取得はできなくなります。統計では、答弁書の提出前に解決する手続が3分の2とされています。専門家証人を伴わない場合の終局までの異議申立手続の相場では、1,100万円~3,300万円とされ、そのうち正式事実審理の部分の費用の相場は50K~150K(550万円~1,650万円)とされています。
挙証責任(Burden of Proof)
異議申立人に挙証責任があり、証拠の優越を基準(preponderance of the evidence standard)としています。証拠の優越とは全体として相手方よりも証拠力があるという基準で、刑事事件のbeyond a reasonable doubt standardや欺瞞行為に対するclear and convincing standardよりは低い証拠レベルとされます。
開示手続(Discovery)
開示手続については、TBMPの第4章に記載があり、その範囲は連邦民事訴訟規則(Fed.R.Civ.P.26)に従います。初めに、開示手続協議(Discovery Conference)が開かれますが、同時に和解についても協議できます。開示手続協議では、通常当事者間で、当事者の請求と抗弁の本質と根拠、早期和解の可能性、開示手続や事実審理での証拠の導入などについて協議します。開示手続協議は、面談することでも良く、多くの場合は電話、その他の例えばテレビ会議などでも可能です。また、TTABのBoardに対しても参加を促すこともでき、これは電話会議になります。開示手続に従わない場合や、例えば書類の意図的な破棄などは、不利な決定を受けることにもなり、欠席裁判の決定や弁護士も懲戒処分となることがあります。
初期開示(Initial Disclosure) 初期開示は、ディスカバリーの開始から30日以内に行うものとされています(37 CFR § 2.120(a)(2)(ii)) 。Fed.R.Civ.P 26(a)(1)に初期開示について規定されており、開示され得る情報を有した個人の名前、住所、電話番号をその情報の主体と共に開示し、全ての書類、電子記録などの複写物を開示します。潜在的な証人の名前と証拠として必要な書類や物を提示する役目があります。申立人や出願人の使用や、広告、販売、営業についての情報を知る者や記録、書類などが該当します。書類についてはカテゴリーの一覧表が必要とされます。書面のディスカバリー(Interrogatories、Request of Production、Request of Admission)は早めに通知するべきで、期限日が開示手続の期限を越えないようにすることが求められています。
証言録取書(Depositions) 法廷以外の場所で、証人になる予定の者などにより、真実を証言することを宣誓した上で行う証言の記録であり、その証言は一般的に書面化されることになります。証言は、質問に答える形式で進められ、後日、正式事実審理でデポジションの証言内容と食い違う証言をしようとする場合にはその証人は弾劾(Impeachment)されることにもなります。質問は、一般的には英語であろうと思いますが、仮に母国語であっても非常にストレスの大きな作業で、通訳が付く場合には、その通訳者の訳した内容にも相手側弁護士から文句が付いたりします。質問については、連邦証拠規則が適用されるので、相手方弁護士は証拠規則のルールを逸脱すれば、異議あり(objection)で割り込みをします。日本はHague Evidence Conventionのメンバー国ではないので、不本意な者は証言録取書が求められることにはなりません(TBMP 404.03(c)(2))。これの例外が日本の米国大使館や領事館ということになります。証言録取書については双方の代理人弁護士は前もって書類に目を通す必要性があります。各証言録取書の相場は1デポシション当り5,000~10,000ドル(55万円~110万円)となりますが、日本で行う場合はその3倍から数倍はかかるものと思います。
書面質問書(Interrogatories) 書面質問書はディスカバリーの手法の1つですが、TTABの手続では、原則として書面質問書の質問数は75までとされています。当事者はそれより少ない数に合意することもできますが、更に多くの書面質問を求めることもできます。例えば、出願人の商標の最初の使用についての状況を含めた広い範囲の質問が1としてカウントされ、そのある特定の商品の最初の使用日についての質問(付随する質問である)はまたそれはそれでカウントされることになります。
自白の要求(Request for Admission) 自白の要求は、証拠が開示される範囲を狭める目的で、相手との間で問題とされていない事実の認識、事実への法の適用、それらへの意見をadmissionとして争点化せずに進めるための要求で、質問をすることで、肯定若しくは否定の形式で認定されることになります。TTABの手続では、原則として自白の要求の数は75までとされています。
文書等の提出要求(Request for Production) 開示できる書類としては、番号を与えられて要求された書類を弁護士特権で秘匿できるものを除いて提出する義務が生じます。要求される文書は事件ごとに異なりますが、TTABの手続では、開示できる書類の数は75を限度としています。
Eディスカバリー(eDiscovery) 異議申立手続では、通常の商標権侵害訴訟のような広範囲の文書などを収集する必要がないケースが多く、電子記録(ESI)からのデータについても負担が大きい或いは費用が高すぎるとの理由で合理的には入手できないと当事者が認識した出所からの電子記録の証拠開示は必要ないとされています。(Fed.R.Civ.P. 26(b)(2)(B) Specific Limitations on Electronically Stored Information)例えば、Princeton Vanguard, LLC v. Frito-Lay North America, Inc.では、eDiscovery手続の中で、出願人が弁護士が85、000の数の電子ファイルをそれぞれ検証し、約200,000ドルの弁護士費用としていたところで、申立人側が弁護士が監督する調査を行い、資料を収集する費用が約100,000ドルがかかるのは費用が高すぎると判断されています。また、2017年12月には、ESIのauthenticationの改正も行われています。一般の民事訴訟や特許侵害訴訟と比べて、商標異議申立のEディスカバリーはその範囲は狭いものとなりますが、litigation holdという記録の廃棄が証拠隠滅になる状態も念頭におく必要はあります。
専門家証人(Expert Witness) 先に挙げた証人は自分が目撃したことや感じたことについて証言をする素人証人(Lay Witness)の開示手続で、それとは別枠で専門家証人(Expert Witness)の期間も設けられます。専門家証人は自分の専門分野での意見を述べる証人とされています。TTABの手続で専門家証人が用いられることは稀ですが、商標の場合は専門家の調査証拠(Survey evidence)も利用されることがあります。Expert Surveyは、主な質問例としてLikelihood of Confusion(類似)、Secondary Meaning (使用による顕著性)、Genericness (普通名称化)について、一般の人に聞くことを内容とします。調査の費用は、例として$15K~$55kの間で典型的には$35k(380万円)と言われています。
略式判決(Summary Judgment)
開示段階で得られた証拠などにより事実審によらずに紛争を決定する手続であり、原告若しくは被告からのMOTION(上申書)によりTTABに結審を促すことになります。略式判決は、開示手続などを介して知り得た情報によれば本質的な事実についての紛争が存在しないという基準(Fed.R.Civ.P. 56)を採用します。略式判決を申立てる側(Moving Party)が本質的な紛争のないことを示す必要があります。略式判決の申立は、原則として最初の開示手続(initial disclosures)までは提出できないとされており、また公判前開示手続の期限(before the deadline for pretrial disclosures)よりも前に提出するとされています。当事者系の手続において略式判決で使える証拠(TBMP 528.05)としては、訴状及び答弁書、出願や登録のファイル資料、原告の訴状内に示される登録やその記録、書類の開示要求で開示された書類、政府等の記録、一般公衆が入手できる印刷された本、定期刊行物などに及びます。他の訴訟その他の手続で得られた証言(TBMP 528.05(f) Testimonyies taken in other proceedings)も使用することができます。略式判決の上申書(Motion for Summary Judgment)の提出の相場は、$25K~50K(220万円~550万円)と言われています。
証言期間(Testimony Period)
証言期間は、30日の原告の公判証拠提出期間、30日の被告の公判証拠提出期間、15日の証拠弁駁期間で構成され、それぞれの証人のデポジションを取り、真正に成立させた証拠物と共にTTABに提出します。証言は、相手方の反対尋問をする権利を与えることを条件として宣誓書(affidavit or declaration)の形式でも可能です。また、Notice of Relianceという形式で、書類を証拠としてTTABに提出することができ、相手方証人の証言録取書、相手方の書面質問書に対する回答、自白の要求、各種の定期刊行物、裁判記録、第3者の商標登録なども提出可能です。インターネット上の証拠については、証言する者の成立と証言が必要となります。
準備書面期間(Briefing Period)
証言期間の後は準備書面の提出期間に入り、準備書面(Brief)についても原告側、被告側、そして最後に原告側の弁駁と機会が設けられています。主準備書面は全体として55ページを越えないもの(37 CFR § 2.128(b))と定められています。書面だけでなく、口頭審理を請求して、TTABでの公判を行うことも可能で、この場合、原告、被告共に30分の主張時間があり、視覚的に補助するグラフやビデオ、音声などを使用することもできます。TTABは証言期間で得られた証言証拠、Notice of Relianceで提出された証拠、そして準備書面をもとに事件について、少なくとも3名の商標行政裁判官により決定をします。
ACRとADR
ACR(Accelerated Case Resolution)手続により、より簡素で短期間の紛争解決を図ることができ、このACR手続を進めるためには、両当事者の合意が必要です。ACRでは、例えばデポジションの数を10までに制限することができ、決定までの期間も短く設定することができます。ACRによるTTABの決定は最終的な決定であり、不服の場合には司法での控訴となります。統計によればACRで決定された件数は、2015年度は10 cases、2016年度は23 cases、2017年は17 casesとされており、それぞれ平均の係属期間は、2015年度は138.6 weeks、2016年度は98.4 weeks、2017年度は119.4 weeksとなっています。また、ADR(Alternative Dispute Resolution)を活用することも推奨されています。
控訴(Appeal)
TTABの決定に不服の場合は、2カ月以内に、CAFCに控訴(appeal)するか、civil actionとして米国連邦地方裁判所(US Dist. Ct)に訴えることもできます。また、TTABの決定に不服の当事者は、決定から1か月以内にTTABに再審理、再審、変更(rehearing, reconsideration, modification)の請求をすることができ、相手方は15日以内にその請求に応答することができますが、これらの請求が認められることは稀です。
TTAB関連のDatabase/Website
TTABVUE Trademark Trial and Appeal Board Inquiry System
e-FOIA Final Decisions of the Trademark Trial and Appeal Board
TBMP Trademark Trial and Appeal Board Manual of Procedure
ESTTA Electronic System for Trademark Trials and Appeals
USPTO United States Patent and Trademark Office
TTAB動画
Navigating the TTAB appeals process、1:38:23