商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#48

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「IT QuickSupply」

1.出願番号  商願2002-91499
2.商  標  「IT QuickSupply」
3.商品区分  第9類:電子計算機用プログラム等電子応用機械器具 ほか
4.適用条文 商標法第3条第1項第6号
5.拒絶理由  本願商標は全体として「不足などをすばやく補充するIT型の商品」程度の意味合いを容易に理解、認識させるにとどまる。

拒絶理由通知 商標登録第4684237号
出願商標・商標登録第4684237号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 平成15年5月6日付け拒絶理由通知書における拒絶の理由は、“本願商標は、「IT QuickSupply」の欧文字を横書きしてなるところ、「IT」の文字部分は、商品の品番・等級等を表示する符号・記号として、一般に使用されているアルファベットの2文字を、「Quick」の文字部分は、「すばやく」の意味合いのある英語を、「Supply」の文字部分は、「(不足などを)補充する」の意味合いのある英語を連綴したものと認められ、これよりは、「不足などをすばやく補充するIT型の商品」程度の意味合いを容易に理解、認識させるものでありますから、これを本願の指定商品に使用しても、需要者が何人の業務に係る商品であるかを認識することができないものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第6号に該当します。”というものであります。
 しかしながら、本出願人は、本願商標の「IT QuickSupply」は十分に自他商品識別標識として機能する商標であると思料しますので、上記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2) 本願商標「IT QuickSupply」は、英文字の「IT」と「Quick」と「Supply」とを横書きして構成したもので、これを各構成文字毎に分解してそれぞれの言葉の意味を考えれば、
 a)「IT」は、「Information Technology」(情報技術)の略であり、
 b)「Quick」は、「すばやく、迅速に」等の意味合いの英語であり、
 c)「Supply」は、「(足りない物)を供給する、(不足などを)補充する」等の意味合いの英語であります(なお、本願商標の先頭にある「IT」の文字部分は、審査官殿の認定によれば、「商品の品番・等級等を表示する符号・記号として一般に使用されているアルファベットの2文字」であるとのことでありますが、この文字は、語頭部分に配置され、商品の品番、等級など商品の記号、符号として用いられるアルファベット2文字の類型とは言えない構成態様よりなるものでありますので、それ自体自他商品の識別標識としての機能を果たし得るもので、少なくとも他の文字と一体となって商標の要部を構成し得る文字であると思料します)。
 しかし、本願商標は、これらの各文字を同書・同大・略同間隔で一体に結合した造語商標であり、全体としてみれば、特定の観念を具体的に生じさせることはなく、商品の品質等記述的事項を表すものではないと考えますので、十分に自他商品識別力を備えたものと思料します。
(3) 本出願人は、上記した意味合いの言葉が3つ結合されている以上、本願商標は全体として「不足などをすばやく補充するIT型の商品」程度の意味合いを暗示させる商標であることを決して否定するものではありません。
 しかし、そのことをもって、この造語商標が商品の品質等記述的事項を表すに過ぎないとは決して言えないと思料します。
 「IT QuickSupply」は、例えば、「電気通信機械器具」や「電子計算機用プログラム等電子応用機械器具」などの本願指定商品分野において、その品質内容表示として、普通に使用されている言葉ではありません。また、この言葉の意味を考えてみても、「不足などをすばやく補充するIT型の商品」という漠然とした概念であることは理解できるとしても、本願指定商品との関係にあって、具体的に何をあらわそうとしているのか、定かではありません。
 つまり、本願商標は、全体として、ただ単に、構成文字が持つそれ自体の言葉の意味として「不足などをすばやく補充するIT型の商品」の如き意味合いを暗示させるに過ぎず、商標法でいうところの特定の観念を生じさせることはありません(商標法で言う観念とは、商標自体が客観的に有する意味を言うのではなく、商標を見又は称呼することにより、その商標を付した商品の需用者又は取引者が思い浮かべるその商標の意味と解します)。それ故、本願商標が商品の品質等記述的事項をあらわしたものということはできず、十分に識別力を備えた商標であると思料します。

(4) このことは、本出願人が既に以下のような商標を登録している事実からも言い得ることと思います。即ち、本出願人は、「IT」の文字を語頭部分に含む商標として以下のような商標を出願しておりましたが、これらの商標A~Dは昨年から今年に掛けて、全て登録されております。
 A.「IT Expense」(登録第4561657号、H14.04.19登録)、
 B.「IT Worklog」(登録第4602686号、H14.09.06登録)、
 C.「IT Laborcost」(登録第4638172号、H15.01.17登録)、
 D.「IT SkillProfile」(登録第4638174号、H15.01.17登録)。
これらの商標は、「IT」の文字と他の文字とを一連に書した態様である点で本願商標と軌を一にするものであると思います。
 そして、仮に審査官殿のような考え方をとれば、これらの登録商標も、例えば、Aは「費用、経費を計算するIT型の商品」、Bは「労働記録を計算するIT型の商品」、Cは「労働コストを計算するIT型の商品」、Dは「熟練した輪郭を描くIT型の商品」の如き意味合いが生じますので、識別力は生じないと言うことにでもなるのでありましょう。
 しかし、実際にはA~Dの商標全てに識別力が認められて、何の問題もなく登録されております。
 本願商標「IT QuickSupply」とて、これらと同様であると思料しますので、これらの商標と同様に登録されてしかるべきです。これらA~Dの商標が登録できて、本願商標のみが拒絶されるいわれはありません。

(5) 以上のように、本願商標は、「IT」の文字と、「Quick」及び「Supply」の文字を横一列に結合して「IT QuickSupply」とあらわすことによって、特定の具体的観念を生じない造語商標としたものであって、本出願人が過去に取得した上記A~Dの登録商標である「IT…」シリーズの一貫として出願した商標であります。
 そして、本願商標の構成文字が持つそれ自体の言葉の意味として、本願商標は「不足などをすばやく補充するIT型の商品」というような意味合いを暗示させるものでありますが、上述のように商標法でいうところの特定の観念を生じさせるものではありませんので、全体として自他商品識別力を発揮する商標であると考えます。

 よって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものではなく、上記A~Dの商標と同様に登録されてしかるべきだと考えます。

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