特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標「AV GUARD」×引用商標「GUARD」等
1.出願番号 商願2002-67389
2.商 標 「AV GUARD」
3.商品区分 第9類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 引例1~7「GUARD」「ガード」等と類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、以下の引用商標1~7と同一又は類似するものであって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当すると認定された。
引用商標1:登録第2184550号(商公昭64-020190)「GUARD7」
引用商標2:登録第3278924号(商公平 8-083104)「ザ・ガード」
引用商標3:登録第4078768号(商願平 6-041750)「TheGUARD」
引用商標4:登録第4367590号(商願平10-092683)「ガード」
引用商標5:商願平11-039690号「GUARD」
引用商標6:商願2002-038918号「U-GUARD」
引用商標7:商願2002-049840号「theGuard!」
しかしながら、本出願人は、本願商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
なお、本出願人は、本日付けで手続補正書を提出し、指定商品を類似群09G04の「盗難警報器」に限定する補正を行いましたので、この類似群を指定商品に含まない引用商標2,3,4,6,7との関係においては、商標の類否を論じるまでもなく、指定商品が同一又は類似せず、商標法第4条第1項第11号の規定に該当することはなくなったものと思料します。
そこで、以下、引用商標1及び5との関係で、意見を述べます。
(2) 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、英文字で、「AV GUARD」と横書きしたものでありますが、引用商標1は英文字と算用数字で「GUARD7」と、また、引用商標5は英文字で単に「GUARD」とそれぞれ横書きしたものであります(なお、この出願中の引用商標5「GUARD」は、引用商標1「GUARD7」の存在により、抵触する指定商品を削除しない限り拒絶されるものと思料します。したがって、仮にこれが登録された場合には、類似群09G04の商品は削除した状態になっていると思われますので、そのときには、この引用商標5は本願の引例にはなり得ないことになります)。
以上の構成態様より、本願商標と引用商標1,5とは、外観上類似することはないと考えます。
(3) また、本願商標の「AV GUARD」は、「視聴覚の」の意味を有する英語「audio-visual」の略語「AV」と、「番人,監視」の意味を有する英語「GUARD」との組合せ商標で、「AV」と「 GUARD」との間にやや間隔を開けた態様ではありますが、各構成文字は同一書体の同一大でバランス良く書されておりますので、外観上まとまりよく一体的に看取できるものであります。そして、その態様より、「視聴覚の番人」「視聴覚の監視」の如き意味合いを生じるものであります(それが具体的にどの様な意味内容を表すかは別として)。
これに対して、引用商標1及び5は、その共通する「GUARD」の文字より、単に「番人」とか、「監視」の意味合いを有するにとどまるものであります。
したがって、本願商標と引用商標1,5とは、観念上も紛れることのない非類似の商標であります。
(4) そこで、次に称呼の点につき検討します。
本願商標の「AV GUARD」は、前述したように、「AV」と「GUARD」との間にやや間隔を開けた態様ではありますが、全体が同書・同大の英文字でバランス良く一体的に書されており、しかも、全体として、例えば「視聴覚の番人」「視聴覚の監視」の如きまとまった一つの意味合いを生じさせるものでありますので、本願商標は全体を一連に称呼するのが自然であり、取引者・需用者は常に「エイブイガード」と称呼するものと思料します。
この点に関し、審査官殿は、本願商標の要部は「GUARD」の部分にあり、単に「ガード」と称呼される場合もあると判断して、上記の引用商標1,5を引用したのだと思料しますが、これは誤った見方であると考えます。
成る程、本願商標は、a)「AV」と「GUARD」との間にやや間隔を開けた態様であり、且つ、b)前半の「AV」は、通常は単独で商標の要部とはなり得ない英文字二文字(記号・符号の類)であることは事実であります。しかし、だからといって、本願商標の要部は、後半部の「GUARD」のみであるとみるのは、短絡的にすぎます。
本願商標は、あくまでも、「AV」と「GUARD」とが組合わさって外観上まとまりよく一体となった、商標「AV GUARD」であります。そして、本願商標において設けたこの半角程度の間隔は、単にブレスポイントを示したものであって、両者を分断するためのものではありません。両者を分断して、一方のみに商標の要部があるかのような把握をして、例えば、要部は「GUARD」のみにあるというような見方をしたのでは、「一体どんなガード(監視)」の意味合いがあるのかを理解することは出来ません。本願商標は、全体を一体に把握してこそ「視聴覚の番人」というような一つの意味合いを生じるのであって、全体として一つの意味合いを観念させるところに特徴があります。全体として一つの意味合いを把握できる場合に、わざわざ分断してその商標を2つに分けて把握するような仕方は通常行わないと考えます。
本願商標は、前後にやや間隔が有るとはいっても、全体としてさほど冗長な商標ではありませんので、一気に「エイブイガード」とよどみなく称呼できます。そして、このブレスポイントに倣って「エイブイ・ガード」と称呼したとしても、全体として語呂がよく、称呼しやすい商標でありますので、前後を分断して例えば、後半の「GUARD」のみを称呼すると言うことはあり得ないと考えます。本願商標は、一連に称呼してこそ一つのまとまった特定の意味合いを生じさせる商標でありますので、取引者・需要者が、本願商標を捉えて、あえて「エイブイ」とのみ称呼したり、単に「ガード」とのみ称呼するようなことはあり得ないことであります。だいいち分断して称呼するのは不自然であります。それでは本願商標のまとまった観念は把握できませんし、本願商標としての自他商品識別力を正確に発揮することもできません。
一つの意味合いを生じる商標は、全体として一つの自他商品識別力を有するものであり、全体が冗長であり一気に称呼し難いとか、一気に称呼したのでは語呂が悪く称呼し難いとか、一部の文字が特に目を引く態様となっているとか、の格別な事情がない限り、前後分断することなく一連に称呼するのが自然であります。
然るに、本願商標は、全体を一連に称呼して決して冗長な印象を与える商標ではなく、格別に「GUARD」の文字が目立つような態様の商標でもありません。むしろ全体として語呂もよく一連に「エイブイガード」と称呼し易いもので、その様に称呼してこそ、一つの意味合いを持つ識別力ある商標となります。
よって、本願商標は全体をよどみなく一連に「エイブイガード」とのみ称呼されるもので、単に「ガードセブン」ないし「ガード」と称呼される引用商標1,5とは、その音構成及び語感・語調が異なり、称呼上も類似するものではないと考えます。
(5) ところで、過去の商標登録例をみると、例えば、指定商品第9類11C01を共通にする以下のような商標(A)~(D)が共存しております。
(A)登録第4359261号「AD Guard」(H12.02.04登録)
(株式会社電通テック、H10.10.23出願)、
(B)登録第4367590号「ガード」(H12.03.10登録)
(キャノン株式会社、H10.10.28出願)、
(C)登録第4384416号「eGuard」(H12.05.19登録)
(株式会社メガチップス、H11.05.20出願)、
(D)登録第4562556号「id Guard」(H14.04.19登録)
(株式会社アイティ総研、H13.03.29出願)。
指定商品を同じくするこれらの商標が共存していると言うことは、これらの商標は、常に全体を一つの商標、即ち、前後で分断することのできない一体不可分の商標と把握されたからに他なりません。
例えば、仮に(A)の「AD Guard」の要部は後半の「Guard」にあると担当審査官が把握していたならば、それよりも後願に係る(B)の「ガード」や(D)の「id Guard」などは登録されることはなかったでありましょう。また、例えば、仮に(D)の「id Guard」の要部は後半の「Guard」にあると担当審査官が把握していたならば、それよりも先願に当たる(B)の「ガード」の存在によって、この(D)「id Guard」は登録されることはなかったでありましょう。
然るに、これら(A)~(D)の商標が、互いに指定商品を同じくしながらも、別法人により並行して登録されたということは、外観・観念は勿論のこと、称呼上もこれら(A)~(D)は類似することはないと判断されたからであります。これは、これらが互いに前後分断できない一体不可分の商標であると把握されたからに他なりません(しかも、これらの商標登録例は、ずっと以前のものではなく、ここ2,3年のものです)。
本願商標「AV GUARD」も、これらの登録例と同様であると考えます。即ち、上記(A)「AD Guard」のように全体として一体不可分の商標と把握すべきもので、引用商標1,5の「GUARD7」や「GUARD」の商標とは類似しないものと判断されるべきであります。
なお、補正した本願商標の指定商品と同じ第9類の類似群09G04を指定商品に含む商標同士において、本願商標と同じように、前半と後半の文字間にやや間隔を開け、且つ後半に「GUARD」ないし「ガード」の文字を含む商標は、以下のように、多数並行して登録されております。参考までに、幾つか挙げておきますが、これらは全て前後分断できない一体の商標と把握されている例です。
(a)登録第 914631号「HOME GUARD」(ニッタン株式会社)
(b)登録第1027671号「AIR GUARD」(エアガード~、米国法人)
(c)登録第1357041号「マルチ ガード」(綜合警備保障株式会社)
(d)登録第2203353号「SUMI GUARD」(住友ゴム工業株式会社)
(e)登録第2471188号「GRIT GUARD」(ステムコ~、米国法人)
(f)登録第3297603号「VISUAL GUARD」(アツミ電氣株式会社)
また、同じく第9類の類似群09G04を指定商品に含む商標において、例えば、以下のように、英文字二文字「EM」と片仮名「ガード」の組合せ商標(g)や、指定商品との関係で単に商品名を表すような片仮名「ドア」と同じく片仮名「ガード」の組合せ商標(h)も、登録されております。これらも、全体を一体の商標と把握しない限り、登録され得なかった商標であります。
(g)登録第4466048号「EMガード」(エヌオーケー株式会社)
(h)登録第4631654号「ドアガード」(株式会社ダスキン)
これらの登録例と同様に、本願商標は、常に「エイブイガード」と称呼されるものであり、従って、単なる「ガードセブン」ないし「ガード」の称呼しか生じない引用商標1や5とは称呼上も類似することはないと考えます。
(6) 以上述べたように、本願商標は、引用商標1,5と、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であります。
よって、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではないと考えます.