登録要件の判断時期
原則と例外
商標法4条1項各号所定の商標登録を受けることができない商標に当たるかどうかを判断する基準時は,原則として査定若しくは審決時であって、これは査定時判断と呼ばれています。また、3条1項全体についても査定時判断とされています。
商標法4条3項にその例外が規定されており、その内容は、「第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は適用しない。」というものです。即ち、8号、10号、15号、17号、19号は、出願時と査定又は審決時の双方の時点で該当した場合に限り、それらの規定が適用されることになり、これを両時判断といっています。例えば8号では、”他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)”と規定されていて、他人の著名な芸名を含む商標は登録できないとなりますが、その該当する芸名が出願後に著名になった場合、言い換えれば出願前はほぼ無名で出願後に大ブレイクという場合では、商標法4条3項でその著名性が出願時にも判断されるため、他人の著名な芸名を含んでいても商標を登録できることになります。また、国際商標登録出願については、出願時の判断は、原則国際登録の日又は事後指定の日ということになります。
判例 4条3項
審決取消訴訟 第4条第3項にいう出願時に同条第1項第8号に該当しない商標とは、出願時に8号本文に該当しない商標をいうと解すべき、とされた事例(平成16年6月8日 最高裁 平成15年(行ヒ)265号 原審平成 15 年 7 月 15 日 東京高平成 15 年(行ケ)第 183 号)
本願商標は、米国の彫金師であって、銀製アクセサリーのデザイナーであるレナード・カムホートの氏名からなる商標であり、原告は、手続補正書を特許庁に提出し、手続補正書に添付された同意書には、レナード・カムホートは原告が本件出願をしたこと及びその出願に基づき商標登録を取得することに同意する旨記載され、レナード・カムホートの署名がありました(「本件同意書」)。その後、レナード・カムホートは、原告に対し本件同意書の撤回通知書を郵送し同意書を撤回したこと、本願商標は商標法4条1項8号に該当することにより拒絶の査定を求める旨を記載した刊行物等提出書を特許庁に提出しています。判示するところは、出願時に8号本文に該当する商標について商標登録を受けるためには、査定時において8号括弧書の承諾があることを要するのであり、出願時に上記承諾があったとしても、査定時にこれを欠くときは、商標登録を受けることができないと解するのが相当である。としています。
レナード・カムホート事件判例
商標登録insideNews: エアロスミス愛用ブランドも登録不可 デザイナーに聞く| 朝日新聞デジタル
In principle, the standard time for judging whether or not a trademark is a trademark that cannot be registered as prescribed in each item of Article 4, Paragraph 1 of the Trademark Act is at the time of examination or trial decision, which is called judgment at the time of examination but there are some exceptions.