特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標:「四季彩美」×引用商標「四季彩味」
1.出願番号 商願平11-92090
2.商 標 「四季彩美」
3.商品区分 第29類:乳製品等
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 「四季彩味」と類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
(1) 拒絶理由通知書(発送番号121312)において、本願商標は、商願平11-055739号の商標と同一又は類似であって、指定商品も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録を受けることができないと認定された。
しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似せず、取引者・需用者に出所の混同を起こさせるおそれのない非類似の商標であると思料するので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べる。
(2) まず、本願商標は、漢字のゴシック体で「四季彩美」と横書きしてなるものであるのに対し、引用商標は、漢字の標準文字で「四季彩味」と横書きしてなるものである。したがって、両者は、語尾音の「美」と「味」の違いがあり、外観上類似するものではないと思料する。
(3) 次に、観念の点についてみると、本願商標の「四季彩美」と引用商標の「四季彩味」とは、共に特定の観念を生じさせる四字熟語として確立されたものではなく、あくまでも4つの漢字を組み合わせて造った造語商標である。したがって、両商標は、ある特定の観念を直接的には生じさせるものではない。そして、その造語商標を構成する文字の意味合いからして、本願商標の「四季彩美」は「春・夏・秋・冬の四季を彩る美しさ」(視覚的なもの)を間接的に暗示させるものであり、一方、引用商標の「四季彩味」は「春・夏・秋・冬の四季を彩る味」(味覚的なもの)を間接的に暗示させるものである。つまり、両商標は、直接的には明確な観念を生ぜず、観念上も類似することはないと共に、間接的には、本願商標は視覚的なもの(beauty、美しさ)をイメージさせ、引用商標は味覚的なもの(taste、flavor、味、におい等)をイメージさせるものであって、全く違った印象を与えるものである。したがって、本願商標と引用商標とは、観念上も類似することのない非類似の商標である。
(4) そこで、以下、称呼の点につき検討するに、本願商標は、上述のように、一連に「四季彩美」と書してなるものであるから、この態様より「シキサイビ」と称呼されるのに対し、引用商標は「四季彩味」の態様より、「シキサイミ」と称呼されるものである。 したがって、両商標の称呼上の差異は、語尾音の「ビ」と「ミ」の1音であって、他の音構成を共通にしている。しかしながら、両商標における「ビ」と「ミ」の違いは、以下の理由により、両者を区別するに十分な差異であると思料する。即ち、
a. 語尾音における「ビ」と「ミ」の1音相違とは言っても、全体の称呼が4音という比較的短い音構成の中における相違であって、称呼全体に占めるこの「ビ」と「ミ」の比重は、決して小さくない。
b. また、「ビ」の音は濁音であって濁って発声される音であるのに対し、「ミ」の音は清音であって濁らずに澄んで発声される音であるので、両者はその音質を異にする。
c. しかも、この「ビ」と「ミ」は、語尾音とはいっても、比較的明瞭に強く発声される音であるので、「ビ」と「ミ」の音質の差異が、比較的短い音構成と相俟って、両者の称呼全体に及ぼす影響は決して小さくない。
以上のことから、これら両商標をそれぞれ一連に称呼した場合、語感語調を異にし、充分に聴別可能なものと考える。
ところで審査官殿は、両商標に共通する「四季彩」の文字部分が特異であって、「美」と「味」の差異を凌駕しているとの認識の下に、両商標は類似すると判断しているのかもしれないが、「四季彩」の文字自体は決して特異なものではない。なぜなら、「四季彩」という文字自体は、引用商標において初めて用いられたものでも、引用商標のみにおいて使用されているものでもなく、他にも幾つか存在している。
例えば、第30類においては、以下の商標が別人により登録されている。即ち、
1. 登録第3318276号 四季彩華 …関尾 憲司
2. 登録第4147600号 四季彩時記 …株式会社さえき
3. 登録第4194744号 四季彩 …株式会社森田あられ
4. 登録第4332065号 四季彩庵翠月 …有限会社吹田象屋
5. 登録第4344035号 …ファンダースコーポレーション㈱
などである(これらを第1号証乃至第5号証として提出する)。
したがって、「四季彩」という文字自体が共通するということを以て、両商標が類似するということは言えない。もし、「四季彩」が特別に顕著な言葉であってこの言葉を共通にするものは全て類似するということにでもなれば、この言葉を含む上記1~5の商標は、並行して登録されることはなかったであろう。したがって、やはり「四季彩」という文字の共通性にのみにとらわれることなく、あくまでも「美」と「味」を含めた全体としての商標の類否を判断するという態度が妥当なはずである。然るに、本願商標「四季彩美」(シキサイビ)と引用商標「四季彩味」(シキサイミ)とは、商標全体の中における視覚的な美しさをイメージさせる「美」(ビ)と、味覚的な“あじ”をイメージさせる「味」(ミ)の差異があり、この差異が両商標の称呼全体に及ぼす影響は大きいものと思料する。それ故、これらは互いに称呼上紛れることのない非類似の商標であると考える。
(5) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も比較的短い音構成におけるアクセントのある濁音「ビ」と清音「ミ」の称呼の差異によって、全体から受けるイメージと共に、称呼全体の語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることのない非類似の商標であると思料する。