商標登録insideNews:「シン・ゴジラ」は「立体商標」知財高裁、東宝の主張認める判決 | 毎日新聞

知財高裁 シン・ゴジラは立体商標

知財高裁 シン・ゴジラは立体商標
 

怪獣特撮映画「シン・ゴジラ」に登場するゴジラの形状について、知財高裁(宮坂昌利裁判長)は、「立体商標」と認めなかった特許庁の審決を取り消した。製作・配給元の「東宝」の主張を認めた。

情報源: 「シン・ゴジラ」は「立体商標」 知財高裁、東宝の主張認める判決 | 毎日新聞

指定商品を第28類「縫いぐるみ、アクションフィギュア、人形、その他のおもちゃ」とする分割出願については、獲得した識別性はないとした特許庁原審決に対する審決取消訴訟で、知財高裁は識別性ありと判断しています。

商願2020-120003

出願番号:商願2020-120003
出願日:令和2(2020)年 9月 29日

出願種別:分割 令和3(2021)年 5月 28日
出願人:東宝株式会社

『シン・ゴジラ』予告、1:32 youtube

『シン・ゴジラ』予告
令和6年(行ケ)第10047号 判決要旨 (令和6年10月30)

1 原告は、判決別紙2の構成からなる立体商標について、第9類、第16類、第25類、第28類及び第41類の商品又は役務を指定商品又は役務として、商標登録出願(原出願)をしたところ、本願商標をその指定商品中、第28類「縫いぐるみ、アクションフィギュア、人形、その他のおもちゃ」に使用するときは、商標法3条1項3号に該当するとの拒絶理由通知を受けた。そこで、原告は、原出願につき、第28類の指定商品のうちの「縫いぐるみ、アクションフィギュア、その他のおもちゃ、人形」を削除する手続補正を行うとともに、原出願に基づく分割出願として、原出願と同一の本願商標(立体商標)につき、新たに、前記削除した第28類の商品を指定商品とする商標登録出願(本願)をした。 原告は、本願について拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判を請求した。 特許庁は、本願商標は商標法3条1項3号に該当するとした上で同条2項の適用を否定した。
2 本判決は、以下のとおり、本願商標は商標法3条1項3号に該当するが、本件審決が同条2項の適用を否定した判断は誤りであるとして、同審決を取り消した。
(1)本願の指定商品を取り扱う業界においては、恐竜や怪獣をかたどった立体的形状からなる様々な商品が製造、販売されている実情が存在するが、これらの立体的形状の中には、本件特徴(映画「ゴジラ」シリーズに登場するゴジラ・キャラクターに共通する特徴として原告が主張する特徴)にも劣らない際立った特徴的な造形を備えるものもみられる。本願商標の立体的形状に係る本件特徴も、世上一般的にみられる、恐竜や怪獣をかたどった立体的形状が有する上記特徴と本質的に異なるものではなく、指定商品に係る商品の形状そのものの範囲を出るものとまで認めることはできない。 そうすると、本願商標は、「縫いぐるみ、アクションフィギュア、その他おもちゃ、人形」という本願の指定商品の機能や、美観の発揮の範囲において選択されるものにすぎないというべきであり、商標法3条1項3号に該当する。
(2)本願商標は、映画「シン・ゴジラ」(平成28年)に登場する怪獣「ゴジラ」の第4形態(同映画ではゴジラ・キャラクターは劇中で数段階の形態変化を遂げる。)に対応するものである。商標法3条2項の「使用」の直接の対象はシン・ゴジラの立体的形状に限られるとしても、その結果「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる」に至ったかどうかの判断に際して、「シン・ゴジラ」に連なる映画「ゴジラ」シリーズ全体が需要者の認識に及ぼす影響を考慮することは、何ら妨げられるものではなく、むしろ必要なことというべきである。
 ア 映画「シン・ゴジラ」は、平成28年7月に公開されると、記録的な大ヒットとなり、本願商標に係る使用商品だけでも、売上数量102万個、売上額約26億5000万円を記録するなど、本件審決時までの約8年間に、本願の指定商品に集中的に使用された。
 イ シン・ゴジラの立体的形状は、本件特徴を全て備える点を含め、それ以前のゴジラ・キャラクターの基本的形状をほぼ踏襲しているところ、当該形状は、以下の①~⑤の事情に鑑みると、映画「シン・ゴジラ」の公開以前から、本願の指定商品の需要者である一般消費者において、原告の提供するキャラクターとして広く認識されていたことが優に認められる。①昭和29年に始まった映画「ゴジラ」シリーズが60年以上の長きにわたり全30作にわたる新作を次々と公開し、累計観客動員数約1億2000万人を記録するなど、圧倒的な商業的成功を収めていること、②これらの映画の広告等には、原告の「製作・配給」であること等が明記されていたこと、③映画「ゴジラ」シリーズのビデオグラム及びゴジラのフィギュア商品の売上金額は、それぞれ百億円を大きく超えていること、④上記フィギュア商品については、原告から商品化の許諾を受けた第三者企業によって販売されているものも多いが、原告が商品化の主体であることを示す表示が付されていたこと、⑤原告のシンボル的なモニュメントとなっている巨大なゴジラ像は、繁華な商業施設を含む都内の複数の場所に恒常的に設定されていること。
 ウ 「ゴジラ」の文字商標は、原告に係る映画のタイトル又は当該映画に登場する怪獣の名称として著名となっているところ、「シン・ゴジラ」を含む「ゴジラ」シリーズでは、登場する怪獣のキャラクターに一貫して「ゴジラ」の名称が使用されている。
 エ 令和3年9月実施の全国の15歳~69歳の男女を対象とするアンケート調査において、本願商標の立体的形状の写真を示して「何をモデルにしたフィギュアだと思うか」との質問に対する自由回答で、「ゴジラ」又は「シン・ゴジラ」と回答した者が64.4%とされ、極めて高い認知度が示され、その回答結果は、本願指定商品の需要者(一般消費者)の間でのシン・ゴジラの立体的形状の著名性を示すものといえる。
 オ ア~エを総合すれば、本願商標については、その指定商品に使用された結果、需要者である一般消費者が原告の業務に係る商品であることを認識できるに至ったものと認めることができる。
 カ 被告は、本願商標に係る使用商品の使用期間(販売期間)が「永年」とはいえない旨主張するが、約8年という期間はそれなりの使用期間と評価できるし、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる」に至ったか否かは、使用期間だけでなく、商品の販売数量、広告宣伝の規模、話題性等も総合して判断すべきものであり、本件においては、本願商標の使用以前から、原告を商品化の主体とするゴジラ・キャラクターの商品が需要者に広く深く浸透しており、本願商標の立体的形状はこれとの連続性が認められるという特殊な事情も存在するから、採用できない。
 被告は、使用商品は原告でなくライセンシーにより販売されているにすぎないこと、「東宝」の文字を冠した使用商品でも原告以外のメーカー名が表示されていること等を主張するが、出願人から許諾を受けた者による使用も、第三者による当該商標の使用態様が出願人によって適切に管理されており、需要者が出願人の商品であると認識し得るような場合には、商標法3条2項にいう「使用」に含まれると解すべきところ、原告はライセンシーとの間に使用許諾契約を締結し、使用商品の形態も含めて監修するとともに、フィギュア類の出所が原告であることを示す適切な管理をしているから採用できない。

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