特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標「Sanibio/サニバイオ」×引用商標1「サナバイオ」、2「バイオサニー」
1.出願番号 平成10年商標登録願第96517号
2.商 標 「Sanibio/サニバイオ」
3.商品区分 第1類:微生物を用いてなる油脂分解剤,微生物を用いてなる生ごみ分解剤,微生物を用いてなる汚水浄化剤,油脂分解用微生物,生ごみ分解用微生物,汚水浄化用微生物
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 「Sanibio/サニバイオ」は「サナバイオ」と「バイオサニー」に類似する。
出願商標 | |
引例商標1 登録第2605851号 | 引例商標2 登録第3239380号 |
拒絶理由通知 意見書における反論
(1)拒絶理由通知書において、本願商標は、
1.登録第2605851号(商公平05-012736号)の商標(以下、引用商標1という)及び
2. 3.登録第3239380号(商公平08-043147号)の商標(以下、引用商標2という)
と類似し、指定商品も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録を受けることは出来ないと認定された。しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標1,2とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似することのない非類似の商標であると思料するので、斯かる認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。
なお、指定商品の表示については、本書と同時提出の手続補正書において、ご指摘の線に沿って「微生物を用いてなる油脂分解剤,微生物を用いてなる生ごみ分解剤,微生物を用いてなる汚水浄化剤,油脂分解用微生物,生ごみ分解用微生物,汚水浄化用微生物」に訂正した。
(2)まず、本願商標は、欧文字の「Sanibio」と、片仮名文字の「サニバイオ」とを上下二段に横書きし、「Sanibio/サニバイオ」と二段併記した態様からなるものである。これに対し、引用商標1は片仮名文字で「サナバイオ」と横書きしてなり、また、引用商標2は同じく片仮名文字で「バイオサニー」と横書きしてなるものである。したがって、本願商標と引用商標1,2とは、外観上類似しないことは明らかである。
(3)次に、観念の点についてみると、本願商標の「Sanibio/サニバイオ」は、本出願人名称「サニクリーン本部」の前2音をとった「Sani/サニ」の文字と、「生物、生物学」を意味する「bio/バイオ」の文字とを一連に連結した何の観念も生じない造語商標である。
これに対し、引用商標1の「サナバイオ」は、その商標権者の名称である「サナ」の文字と、「生物、生物学」を意味する「bio/バイオ」の文字とを連結して造ったやはり何の観念も生じない造語商標であり、引用商標2の「バイオサニー」は、「生物、生物学」を意味する「バイオ」の文字と、おそらく「日当たりの良い」とか「晴れ渡った」とかを意味する欧文字「SUNNY」の片仮名表記である「サニー」の文字を連結して造った造語商標であって、全体としてはやはり何の観念も生じない商標であると思料する。したがって、本願商標と引用商標1,2とは、観念上も類似することはない。
(4)そこで、以下、称呼の点につき検討する。
本願商標は、「Sanibio/サニバイオ」と書した態様より、唯一「サニバイオ」の称呼を生じるものである。
これに対し、引用商標1は「サナバイオ」と書した態様より「サナバイオ」の称呼を生じ、引用商標2は「バイオサニー」と書した態様より「バイオサニー」の称呼を生じるものである。
(4-1) まず、本願商標の称呼「サニバイオ」と引用商標1の称呼「サナバイオ」を比較するに、両者は第2音部分において、「ニ」と「ナ」の差異を有する。しかして、その差異である「ニ」と「ナ」は同じナ行に属する音で子音「n」を共通にするが、
a.「ニ」は唇を平たく開き舌の先を下方に向け、前舌面を硬口蓋に近づけて声帯を振動させて発する母音「i(イ)」を有し、一方、「ナ」は口を大きく開けてはっきりと発せられる澄んだ開放音である母音「a(ア)」を有する。そして、この母音「i」と「a」は遠い音であるので、両者は明瞭に聴別できる音である。また、
b.本願商標と引用商標1とは、共に5音という比較的短い音構成からなり、各音一つひとつが比較的重要な地位を占めるとともに、両者とも殊にその第1音、第2音が比較的強いアクセントを以て発音される音であるので、その2音目の「ニ」と「ナ」の差異は一層明瞭となる。さらに、
c.本願商標と引用商標1とは、どちらかというと、共に「サニ・バイオ」、「サナ・バイオ」というように二音節に区切って発音される傾向にあり、音節の区切りに位置する第2音の「ニ」と「ナ」とは、聴者が注意を引きやすい部分の音であり、両者の称呼上の差異を一層強調することとなる。
このように、本願商標の第2音「ニ」と引用商標1の第2音「ナ」の差異は、全体の称呼に与える影響が極めて大きく、本願商標「サニバイオ」と引用商標1「サナバイオ」とは明瞭に聴別できるものであって、決して類似するものではないと思料する。
この点に関して、例えば、以下のような商標の登録併存例が存在する。
第 838483号登録商標「SANICREAN」…オルガノ㈱
第1375833号登録商標「サナクリン」…㈱三和化学研学所
第2468184号登録商標「サニクリーン」…オルガノ㈱
第2513899号登録商標「サナゾール/SANAZOLE」…㈱京都健康科学研究所
第2621284号登録商標「SANISOL/サニゾール」……第一工業製薬㈱
これらの商標はいずれも、第2音目の「ニ」と「ナ」の違いにより、非類似の商標と判断されて、登録された例である。 そして、本願商標と引用商標1との関係もこれらと同様の関係であるので、本願商標もこれらの登録例と同様に登録されてしかるべきである。
(4-2) 次に、本願商標の称呼「サニバイオ」と引用商標2の称呼「バイオサニー」を比較するに、両者共に、「サニ・バイオ」、「バイオ・サニー」というように2音節に区切って発音される傾向にあるとともに、その前段と後段を入れ替えた関係にあることから、審査官殿は、両商標は取引者・需用者にとって同一出所を観念させ、称呼的にも紛らわしいとの判断をしたのではないかと推察するが、前述したように、両商標とも造語商標であって、この語順で一つの商標を形成するものであるので、両者は決して類似するものではないと思料する。
このことは、例えば、前段と後段が逆になっている商標が以下の通り、共に登録されていることからも言い得る。
第2384859号登録商標「バイオフレッシュ/BIO FRESH」…千寿製薬㈱
第2452210号登録商標「フレッシュバイオ/FRESHBIO 」…オイレック㈱
第1632945号登録商標「バイオクリン」………クミアイ化学工業㈱
第2000092号登録商標「クリンバイオ」………タイホー工業㈱
第1950219号登録商標「バイオドクター」…エスシージョンソンアンドサンインコポレーテッド
第4142304号登録商標「ドクターバイオ」…バイオケム工業㈱
なお、「バイオ/bio」の部分が品質表示だから、「サニ」とか「サニー」の部分に要部があり、両者類似するとの判断が今回為されたということも考えられなくもないが、「バイオ/bio」の文字も要部を構成し得ることは、以下のような商標が併存していることからも言い得ることであるので、そのような理由は成り立たないであろう。
第2102354号登録商標「サン/SAN」…………………三洋化成工業㈱
第2539325号登録商標「サンバイオ/SUNBIO」…横浜ゴム㈱
第2447495号登録商標「ワールドバイオ/WORLDBIO」…三菱マテリアル㈱
第2696308号登録商標「ワールド/WORLD」………ライオン㈱
第 745713号登録商標「サンライフ」…………日華化学㈱
第4198563号登録商標「サンライフバイオ」…サンライフ科学㈱
第2511991号登録商標「ダブル/DOUBLE」…ライオン㈱
第4144647号登録商標「ダブルバイオ」……………(有)歩商事
第2622367号登録商標「PURE/ピュア」…柳瀬ワイチ㈱
第3238973号登録商標「ピュアバイオ」………佐藤道路㈱
これらの商標は、「バイオ/bio」の文字が要部を構成すると判断されたからこそ、あるいは、「バイオ/bio」の文字も含めた全体として要部を構成すると判断されたからこそ、併存したのである。したがって、本願商標と引用商標2とは、要部が「サニ」と「サニー」のみであるから両者類似するとの主張も成り立つ余地はないであろう。以上の通り、本願商標と引用商標2も外観・称呼及び観念において類似することのない非類似の商標である。
(5)以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も、5音という短い音構成にあって、アクセントのある部分である第2音に母音の遠い音である「ニ」と「ナ」の違いがあったり、前段後段の逆転があってこの場合の登録併存例は数多く存在することから、これらの差異が全体の称呼に及ぼす影響は極めて大きく、これらを一連に称呼するときはその語感語調を著しく異にし、聴者をして明らかに区別し得るものと思料する。
よって、本願商標と、引用商標1,2とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと思料します。