特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標「DOOM WOOD」×引用商標「DOOM」
1.出願番号 平成9年商標登録願第162804号
2.商 標 「DOOM WOOD」
3.商品区分 第36類:建物の管理,建物の売買
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 「DOOM WOOD」は「FUKUOKA/DOOM」に類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、登録第3055198号(商公平06-078232号)の商標(以下、「引用商標1」という)、及び登録第4210449号の商標(以下、「引用商標2」という)と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品と同一又は類似の役務に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定された。
しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えるので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。
(2) 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、上段に描いた山形横三本の図形と、下段に横書きした「DOME WOOD」の欧文字からなるものである。
これに対し、引用商標1及び2は同一の商標で、共に「DOME」(Dを大きく書している)の欧文字と、その「OME」の上に小さく書した「FUKUOKA」の欧文字とからなるものである。
したがって、本願商標と引用商標1,2とは、外観上類似しないことは明らかである。
(3) また、本願商標の欧文字部分である「DOME WOOD」は、「DOME」の文字と「WOOD」の文字との間にやや間隔を開けてはいるが、左右4文字ずつバランス良く同書・同大に配したもので、その態様より、「ドーム木材」とか、「丸屋根(用の)木材」とか、「丸屋根状の木材」とかの観念を生じさせるものである。つまり、本願商標中の「DOME WOOD」の言葉は、指定役務第36類「建物の管理,建物の売買」との関係にあって、取引対象となる建物の形状や原材料名を暗示する言葉を巧みに組み合わせて一つの観念を生じさせるようにしたものであり、「DOME」の言葉のみが単独で識別され且つ観念されるようなことはない。本願商標の下段部分は、あくまで「DOME WOOD」で1つの商標であり、左右分断されて認識されるものではない(なお、左右の文字間に間隔を開けて配されたものでも一体の商標として把握されている商標は、例示するまでもなく枚挙にいとまが無い)。
これに対し、引用商標は、地名の九州「福岡」を表す「FUKUOKA」の文字と「DOME」の文字とを組み合わせて、「福岡ドーム(球場)」を観念させるようにしたことは明らかで、この商標を見た取引者・需用者は、福岡ドームの関係者であるとの認識を持つものと思われる。つまり、この引用商標1,2から生じる観念は、あくまで「福岡ドーム」であって、単なる「ドーム/DOME」ではない。ところで、引用商標1,2は「DOME」の文字が大きく書されていることから、仮にこれより「DOME」のみを取り出して観念されるようなことがあったとしても、それはあくまで「ドーム」とか「丸屋根」であって、本願商標のような前記観念、即ち「ドーム木材」とか、「丸屋根(用の)木材」とか、「丸屋根状の木材」とかの観念を生じさせるものではない。
よって、本願商標と引用商標1,2とは、観念上も紛れることのない、非類似の商標である。
(4) そこで、次に称呼の点につき検討するに、本願商標の文字部分である「DOME WOOD」は、全体が左右軽重の差なく同書・同大の欧文字でバランス良く配置され、かつ上述の如く全体として一つの意味合いを生じさせるものであるから、常に一連に称呼するのが自然であり、「ドームウッド」とのみ称呼されるものと思料する。
この点、審査官殿は、本願商標中の「DOME WOOD」の部分を分断して、「DOME」のみに着目し、単に「ドーム」の称呼をも生じ得るとみて今般の拒絶理由通知を発したのではないかと推察するが、その認定はおかしい。一つの観念を生じ、且つ左右バランス良く配置され、称呼的にも全体として決して冗長にならず、一連に称呼して称呼しやすい「ドームウッド」を何故に左右分断して称呼しなければならないのか、その理由は見つからない。本願商標を見た取引者・需用者が、「DOME WOOD」の文字を見て、単に「ドーム」と認識し称呼するとは到底考えられない。不自然である。
例えば、「TOKYO DOME」の文字を見て、単に「ドーム」と称呼するだろうか、また、「NAGOYA DOME」の文字を見て、単に「ドーム」と称呼するだろうか。「ドーム」とのみ称呼した場合には、どこのドームだか分からないのであり、識別するために前者は「東京ドーム」、後者は「名古屋ドーム」と称呼するのは当然であろう。
常に一連に称呼されるからこそ、引用商標1,2が存在しながらも、同じ36類の役務を指定した引用商標1,2の後願に係る、
a.「VLANDOME/ぶらんどーむ一番町」(登録第3310246号:第1号証)や、
b.「ナゴヤドーム」(登録第3335920号:第2号証)や、
c.「ND/ナゴヤドーム」(登録第4093818号:第3号証)や、
d.「NAGOYA DOME」(登録第4093819号:第4号証)が、登録されているのである。
引用商標1,2の「FUKUOKA DOME」から「ドーム」の称呼が生じ、これらa~dの商標から、「ドーム」の称呼が生じるなどと言う認定を仮にこれに携わった審査官がしていたならば、これらの商標の併存はあり得ないはずであるが、併存しているのは厳然たる事実であるので、そのような認定はなされなかったこと明らかである。
ところで、仮に引用商標1,2から「DOME」の文字部分をとらえて「ドーム」の称呼が生じたとしよう。しかし、もしそうだとしても、本願商標の文字部分「DOME WOOD」からは「ドームウッド」の称呼のみが生じる故、両者は称呼上類似することはない。
このことは、次の審査事実からも言い得る。
即ち、第36類の指定役務分野において、「○○○ WOOD」ないし「○○○ウッド」という商標が多数登録されているが、これらの商標に対し、前段の「○○○」部分を同じくする商標も多数登録されている。
例えば、
e.第3128134号「SKY」スカイコート㈱
f.第3177742号「SKY WOOD/スカイウッド」 高杉建設㈱
g.第3017149号「OAK」大林不動産㈱
h.第4100852号「OAKWOOD」アール・アンド・ビー・リアルティー・グループ
i.第3124659号「ROYAL WOOD」 ロイヤルハウス㈱
j.第3293353号「ROYAL」 ㈱池田都市開発
k.第3342063号「シェル」 シェル・インターナショナル・ペトロリウム・カムパニー・リミテッド
l.第4143218号「シェルウッド」 ナイス日榮㈱
m.第4024749号「サン」 ㈱あさひ銀行
n.第4037527号「サンウッド」スズキ㈱
o.第3177743号「LAKE WOOD/レイクウッド」 高杉建設㈱
p.第3165394号「LAKE」 ㈱レイク
このうち、eとf、gとh、iとj、kとl、mとn、oとpの登録商標に着目していただければ分かるように、「WOOD」や「ウッド」の文字部分を排除して、類否判断をしているわけではないのである。これらの商標の存在は、「○○○ WOOD」や「○○○ウッド」の商標を全体として観察し、分断できない商標と認識しなかったならば説明がつかない。本願商標も同様である。
そこで、本願商標の称呼である「ドームウッド」と引用商標1,2の称呼である「フクオカドーム」(仮に「ドーム」の称呼が生じるとしても)の称呼とを対比すると、「ウッド」の称呼の有無によって、両者は語感語調が全く異なり明確に識別できることから、両者は称呼上も相紛れることのない非類似の商標であることは明らかである。
(5) 以上のように、本願商標と引用商標1,2とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、紛れることのない非類似の商標である。
よって、本願商標は引用商標1,2の存在如何にかかわらず、充分登録適格性を有するものと思料します。
(拒絶理由通知 意見書)
商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次