特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
物件提出命令で指定商品中の「その他の記憶媒体」が不明であるとの指摘に対して物件提出書に代える意見書で反論した例
1.出願番号 平成8年商標登録願第113189号
2.商 標 「MEDIA TECHNICAL+図+Multi File」
3.商品区分 第9類:フロッピーディスク・CD-ROM・磁気ディスク・光磁気ディスク・光ディスクその他の記憶媒体専用の収納ケース
出願商標 |
反論の内容(意見書、審判請求書)
(1)平成10年4月27日付の「物件提出命令書」(発送日:同5月29日)において、指定商品中「その他の記憶媒体」が不明であるから、それらを明らかにするための商品に関するカタログを提出されたい旨の指摘を受けた。
(2)しかしながら、ここでいう「その他の」の言葉は、その前に出てくる「フロッピーディスク・CD-ROM等」を、その後に出てくる「記憶媒体」の例示として示す役割を果たす法令用語であって、「記憶媒体」の例示として、「フロッピーディスク・CD-ROM・ミニディスク等の磁気ディスク・光磁気ディスク・光ディスク」が存在するのであるから、決して不明瞭ではないと思料する。つまり、本願指定商品の記載の中で言っている「その他の」は、言い換えれば「等の」程度の意味であり、その前にたくさんの例示があるので、この程度の記載で十分に商品が認識できると思われる。
林修三著「法令用語の常識」(日本評論社:セミナー叢書)にも解説されているように、例えば、「内閣総理大臣その他の国務大臣」、「俸給その他の給与」、「委員会の委員、非常勤の監査委員その他の委員」というような用例を見ても分かるように、「その他の」が使われている場合は、「その他の」の前に出てくる言葉は、後に出てくる一層意味内容の広い言葉の一部をなすものとして、その例示的な役割を果たす趣旨で使われているのである。即ち、「内閣総理大臣」、「俸給」、「委員会の委員」という言葉は、それぞれの後に続く「国務大臣」、「給与」、「委員」という、より意味内容の広い言葉の例示として使われているのである。
一方これに対し、「勤務期間、勤務能率その他勤務に関する諸条件」とか、「賃金、給料その他これに準ずる収入」というように、「その他」という言葉が用いられている場合は、その「その他」の前にある言葉と後ろにある言葉とは、「その他の」の場合(例示関係)と異なって、並列関係にあるのが原則である。
従って、もし本件が、並列関係にある「その他」で結んであれば、「記憶媒体」の意味内容は何の例示もないことになって不明瞭であるとの指摘もやむを得ないと思われるが、本件の「その他の」の場合は、前述したとおり、あくまで例示関係を示すものであるから、「記憶媒体」の概念に入る商品としては、「フロッピーディスク・CD-ROM・ミニディスク等の磁気ディスク・光磁気ディスク・光ディスク」等(例示してないが、他に「DVD」なども挙げられる)、多数の例示があり、決して不明瞭だとはいえないと思料する。
なお、「その他の記憶媒体」を言い換えるとすれば、「その他これに類する記憶媒体」とか、「等の記憶媒体」とかになるであろう。
(3)ところで、以上主張の通り、本願の指定商品の書き方で不明確だとは思えないが、ここ数年の出願公告例などを調べてみると、以下のような商品名が発見できた。
・商公平4-118514「家庭用のテレビゲームのプログラムを記録した記録担体」
・商公平4-146801「シンセサイザー用の音源を記録したフロッピーディスク等の記録媒体」
そこで、もし「記憶媒体」という言葉そのものが不明瞭であるというのであれば、「記録担体」とか「記録媒体」とかに変更する準備があるので、指摘願いたい。
しかしながら、日本大百科全書によれば、「記憶装置」の項に「コンピュータシステムにおいて、プログラム及びデータを格納、保持し、取り出すことのできる装置。」との説明があり、「磁気テープ」や「フロッピーディスク」などもその例として挙がっている。そして、フロッピーディスクの説明としては、「コンピュータの入出力媒体の一つで、磁気ディスクを手軽にしたもの。」との説明があるので、「記憶媒体」でも不正確ではないと思われる。
なお、本出願人の簡単なプロフィールや取り扱い業務を説明するため、会社紹介のカタログ(第1号証)を添付するので、参照していただきたい。
(4) 以上の通り、本願の指定商品の記載の仕方、とりわけ「その他の記憶媒体」の表現でも決して不明瞭ではないと思料します。
商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次
The expression “other storage media” is by no means ambiguous