商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#7

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「MAGIC STUDIO×引用商標「スタジオマジック」

1.出願番号  平成11年商標登録願第64777号
2.商  標 「MAGIC STUDIO」
3.商品区分  第9類:電子応用機械器具及びその部品等
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 「MAGIC STUDIO」は「スタジオマジック」に類似する。

出願商標 引例商標 登録第4371616号 標準文字
拒絶理由通知 tm7-1 拒絶理由通知 意見書

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書(発送番号097123)において、本願商標は、登録第4371616号の商標(以下、引用商標という)と類似し、その商標に係る指定商品も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録を受けることができないと認定された。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似せず、取引者・需用者に出所の混同を起こさせるおそれのない非類似の商標であると思料するので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べる。

(2) まず、外観の点について比較すると、本願商標は、欧文字で「MAGIC STUDIO」と横書きして成るものであるのに対し、引用商標は、片仮名の標準文字で、「スタジオマジック」と一連に書して成るものである。

 したがって、本願商標と引用商標とは、文字の種類が異なり(欧文字と片仮名)、かつ前段と後段の単語が入れ替わった態様であって、明らかに外観を異にし、外観上類似することはない。

(3) 次に、観念の点についてみると、本願商標の「MAGIC STUDIO」は、「魔法の」「不思議な」「(不思議な)魅力のある」等の意味合いを有する英語の「MAGIC」と、「(美術家の)仕事場」「(写真屋や映画の)撮影所」「録音室」「放送室」「スタジオ」等の意味合いを有する英語の「STUDIO」とを組み合わせて、「MAGIC STUDIO」と書したもので、全体として、「魔法のスタジオ」「不思議なスタジオ」「(不思議な)魅力のあるスタジオ・仕事場」等の意味合いを生じさせるものである。

 これに対し、引用商標は、英語の「studio」を想起させる片仮名の「スタジオ」と、英語の「magic」を想起させる片仮名の「マジック」とを一体に結合して、一連に「スタジオマジック」と書したもので、全体として「スタジオにおけるマジック・魔術」とか、「スタジオにおける手品」とかを想起させるものである。

したがって、本願商標の「魔法のスタジオ」「不思議なスタジオ」と、引用商標が想起させる「スタジオにおけるマジック・魔術」とは、その意味合いが全く異なり、両者は観念上も類似するものではない。即ち、前後の言葉を入れ替えたことによって、本願商標は、あくまでも「○○スタジオ」を思い浮かべるのに対し、引用商標は、あくまでも「○○マジック・魔術」を思い浮かべるのであって、両者は全く観念の異なる商標である。

(4) そこで、以下、称呼の点につき検討する。

(4-a) 本願商標は、上述のように、欧文字で「MAGIC STUDIO」と書したものであるから、これより「マジックスタジオ」の称呼が生じるものである。一方、引用商標は、その態様より、「スタジオマジック」の称呼が生じるものである。

 然るに、審査官は、両商標の称呼である「マジックスタジオ」と「スタジオマジック」とは、前段と後段の文字が入れ替わったものに過ぎないから、両商標は取引者・需用者にとって同一出所を観念させ、称呼的にも紛らわしいとの判断をしたのではないかと推察する。

 しかしながら、その様な見方は短絡的に過ぎる。本願商標と引用商標とは、前段と後段の文字が入れ替わったことによって、単に言い回しが逆になったと言うだけにとどまらず、両商標はその称呼から受ける印象・観念も全く異なったもの(即ち、概念の違う商標)になっているのである。

 したがって、これを称呼し、聴取する取引者・需用者は、両商標を明確に識別できるものであって、決して称呼上紛れるものではないと思料する。

即ち、両商標は、この語順で一つの商標を形成し、この語順で特定の観念を生じさせるものであるから、両者は決して類似するものではないと思料する。明確に観念が異なる以上、本願商標の「MAGIC STUDIO」と引用商標の「スタジオマジック」を間違えることはないであろう。

(4-b) そして、このことは、例えば「MAGIC」や「STUDIO」の文字を有する商標で、前段と後段が逆になっている商標が以下の通り、別主体によって共に登録されていることからも言い得る(これらの商標を第1号証乃至第6号証として提出する)。

(1)第2595841号登録商標「VISION STUDIO」…NTTと、
(2)第4045918号登録商標「STUDIO VISION/スタジオビジョン」…㈱カメオインタラクティブ。
(3)第3218172号登録商標「MAGICMEDIA」……㈱富士通ゼネラルと、
(4)第3245271号登録商標「MEDIAMAGIC」……㈱ピーエフユー。
(5)第4172324号登録商標「MAGICWAVE」 ……ネオマジック・コーポレーションと、
(6)第4276367号登録商標「WAVE MAGIC」……㈱シグマ。

 つまり、これらの商標のうち、(1)の「VISION STUDIO」と(2)の「STUDIO VISION」、(3)の「MAGICMEDIA」と(4)の「MEDIAMAGIC」、(5)の「MAGICWAVE」と(6)の「WAVE MAGIC」は、それぞれ前段と後段が入れ替わったにすぎない商標ではあるが、その入れ替わりによって、まるで概念の違った一つの商標を形成するものであるから、このような場合には、両者混同を生じることはないとされているのである。

 そして、本願商標と引用商標との関係も、まさにこれら(1)と(2)、(3)と(4)、(5)と(6)の商標の関係と軌を一にするものであり、この意味からしても、本願商標と引用商標とは、称呼上紛れることのない非類似の商標であると言える。

(5) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も前後入れ替わったことによって別異の観念・称呼をそれぞれ生ずるものであり、過去の登録例に照らしてみても、取引者・需要者をして決して紛れることはない非類似の商標であると思料する。

 よって、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではなく十分登録適格性を有するものと思料する。

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