連合商標とは
連合商標とは同一人が所有する類似商標を関連付けて登録して、分離移転を防止して、出所の混同を未然に防止させる制度です。連合商標制度は平成8年の改正(平成9年4月1日施行)により廃止となっており、現在(平成28年)では連合商標は一部の外国で用いられているに過ぎない制度となっています。なお、欧州連合商標は、欧州連合(European Union)の商標ですので、廃止された連合商標制度とは無関係です。
連合商標制度(旧法)の特徴
1. 分離移転の禁止 同一人の類似関係にある2つの商標は、相互に連合商標として登録すべきものとされ、その登録商標の間のつながりを分離することはできないものとされておりました(但し、非類似商品間での分割移転は可能)。例えば企業がハウスマークなどの重要な商標について類似範囲も含めて種々の態様で商標権を保有する場合には、連合商標としてつながり合った複数の登録がされていました。
2.使用概念の連合商標への拡張 連合商標として登録されていれば、1つの登録商標についての使用がない場合でも、その登録商標に連合する登録商標の使用があれば、存続期間の更新時の使用証明や不使用取消審判の被請求時の使用証明についても、連合する商標の使用があれば、更新可能とされ、また取消を免れるとされておりました。
連合商標の廃止の理由
1.存続期間の更新時や不使用取消審判の被請求時に連合商標を利用できるとした制度が、出所の混同を未然に防止させるという趣旨に反して、ストック商標の増大を招き、識別力の弱い商標を登録させる場合に利用されるという問題があり、審査の負担の増大という弊害も生じていました。
2.かつて連合商標制度を有していた国々も法改正で廃止してきており、国際登録(マドプロ)制度を導入した場合に事務処理の負担が増えるということも懸念されていました。
連合商標の廃止に伴う新制度
1. 更新時の使用証明
従前は更新時には使用証明書を提出すべきものとされていましたが、平成8年の改正の際に、商標法条約の批准の準備として、更新時での使用証明の提出は廃止とされています。商標法条約では、登録更新の際にその商標を使用しているかなどの実体的な審査を行うことを明確に禁じているためです(商標法条約13条(6))
2.社会通念上同一の範囲
連合商標による使用の代わりに登場したのが、社会通念上同一の範囲という概念です。具体的には、“書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。”という規定が第50条(商標の不使用取消審判)に設けられ、商標自体が全く画像やフォントととして全く同じでなくとも同一と考えられるようになっています。
3.分離移転の許容 混同防止表示請求
連合商標制度の廃止に伴い、分離移転が許容されることになりました。他人に類似する商標を移転した結果、混同を生じさせるような商標の使用に対しては、混同防止表示(第24条の4)を請求することができ、また取り消し審判(第52条の2)を請求できることが定められています。
4.コンセント(同意書)は非導入
類似商標の分割移転を許容するに際し、コンセント(同意書)制度の導入も検討されましたが、譲渡交渉には通常2~3か月かかり、その結果、審査も遅延することが懸念されたため、導入は見送られております(特許庁、「第2章 不使用商標対策 補説2」より)。