制度概要
インドネシアは東南アジアの共和制国家であり、世界第4位の人口(2億3000万人を超える人口)を擁する島国です。日本と同じく先願主義を採用しております。また、商標権の存続期間は出願日から10年であり、登録日を起算日とする日本とは異なります。商標調査には、ASEAN TMViewを使用することができ、ASEAN TMClassもあります。出願書類は、インドネシア政府機関であるインドネシア知的財産総局 (dgip)に提出します。またインドネシアはマドリッド制度に加盟(2018年1月2日から)しています。
特異な制度
1)多区分制
インドネシアは日本と同じく多区分制(第6条)を採用しております。区分数が3つまでの制限は撤廃されています。
2)出願手続
従前の実務では、インドネシアは審査期間が長く、およそ登録までにかかる期間は2年~2年半程度となっておりましたが、法改正などによって実体審査は公開期間の終了から30日以内に開始し、150日以内に終了すると規定されています。現在(2019.11.27)では、出願から1年前後で登録の可否が通知されています。また、出願から15日で出願公開が開始され、公開から2か月の期間内で異議申立が可能です。
3)商標書類
インドネシアでは、商標出願に際して必要な書類は、願書(Statement of Entitlement)と委任状(power of Attorney)となります。委任状は公証不要です。願書、商標見本、及び出願費用の支払いがあれば、出願日を確保することができます。
4)拒絶理由通知
審査段階で拒絶理由を受けた場合に、商品や役務の削除によって引例との競合を回避する補正はできないとされており、補正が認められるのは出願人の名称と住所変更だけとなっています(第18条)。このため拒絶理由の解消には、商標審判委員会への審判請求(filing an opposition)を拒絶査定の送達日から3か月以内にすることができ、この審判段階では競合している商品や役務を削除する補正が可能です。また、審査官は登録を部分的に許可することも行うことができます。この審判請求のオフィシャルフィーは、1000000ルピー(7,700円程度)ですが、1000~1500USD程度の現地代理人の費用がかかります。
5)異議申立制度、不使用取消制度
異議申立制度(公開より2か月)に加えて不使用取消制度もあります。不使用取消は、商標が登録の日又は最後に使用した日から継続して3年以上商品の取引に使用されていない場合を対象としますが、不使用の立証責任が原告側とされ、公判前の証拠開示手続がなく、被告は裁判所に対して記録を提出する義務がないため、被告側の使用証拠の捏造リスクも含めて不使用を立証するのは難しいとされています。通常、独立した市場調査(USD2000~)が推奨されています。
6)刑事罰
他者が所有する登録商標とその全体において類似する商標を、競合する(即ち、生産及び/又は取引される同種の)商品及び/又は役務に使用する者は、最長5年の禁錮及び/又は最高額10億ルピアの罰金に処され(第90条)、他者が所有する登録商標とその要部において類似する商標を競合する商品及び/又は役務に使用する者は、最長4年の禁錮及び/又は最高額8億ルピアの罰金に処されます(第91条)。 その要部において類似する商標の規定は、商標権者に広い範囲での保護を与えています。
7)更新手続
インドネシアでは、出願日が登録日になりますので、10年の存続期間の満了日は、出願日から起算されます。商標権の有効期限の6か月前から6か月後まで更新の申請が可能です(第35条)。更新には商品・役務が引き続き生産され若しくは提供されていることの証明が必要となります。
マドプロには加盟していますか?
国際出願の指定開始は、2018年1月2日からですが、インドネシアはマドプロに加盟しています。