電子出願を必須とし、紙やFAXでの提出は受け付けなくなるとする米国特許商標庁(USPTO)のルール改正が2020年2月15日(10月5日に施行予定であったものが12月21日に変更され、さらに2020年2月15日に施行)に施行されますが、このルール改正と共に、受理される使用見本の要件(requirements for acceptable specimens)に関するルールも改正されます。
当事者の電子メールアドレスが必要
出願人、商標権者、審判請求の当事者は、2020年2月15日以降は有効な電子メールアドレスを米国特許商標庁に知らせ且つ維持することが求められます。このルールは一部の外国人には当てはまらず、バーレイン、ボズニア・ヘルツェゴビナ、チリ、コロンビア、コスタリカ、キプロス、チャコ共和国、ドミニカ共和国、エジプト、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、インドネシア、モナコ、モンテネグロ、モロッコ、ニカラグア、オマーン、パナマ、スロベニア、スリランカ、トルコ、ウズベキスタンの国籍の当事者は例外となります。日本は例外とならず、出願人や商標権者として電子メールアドレスの届け出が必要です。この出願人等の電子メールアドレスは、代理人を指名している場合でも必要とされ、このような当事者の電子メールアドレスを情報として知らせておくことで、代理人の受任行為が終了した場合でも米国特許商標庁からのアクセスができるようにします。弁護士による代理がなされている出願の出願人は、TEAS様式の所有者電子メールアドレス欄に必要なアドレスデータを入力します。その所有者電子メールアドレスは代理人弁護士の電子メールアドレスとは異なるものとなります。この所有者電子メールアドレスは米国特許商標庁との連絡のために特別に生成したアドレスとすることができます。社内弁護士の代理による場合は、所有者の電子メールアドレスと社内弁護士の電子メールアドレスの異なる2つの電子メールアドレスが必要となります。マドプロ経由の米国出願の場合、出願時には出願人の電子メールアドレスは必要ないのですが、もし米国で暫定拒絶の通知がなされる場合や5-6年目の使用宣誓書の提出時には、所有者の電子メールアドレスが必要となります。もし米国特許商標庁が所有者へのメール送信を行って連絡が失敗した時には、米国特許商標庁はさらなる連絡をすることはなく、連絡できないことで何等かの不利益が生じても米国特許商標庁の責任とはなりません。
非伝統的商標の使用見本
非伝統的商標の中で匂いや味の商標については、原則電子出願を必須とするために、匂いや味の見本を送信できないという問題が生じます。そこで、これらの匂いや味の商標については最初にTEASを用いて匂いや味の商標の見本の情報を提供し、それから物理的な見本を郵送します。非伝統的商標の中でも音、動き、色の各商標についてはこの例外規定は当てはまりません。
出願形式の変更
2020年2月15日以前では、TEAS PlusとTEAS RFの2種類の出願形式がありましたが、今回のルール改正でTEAS PlusとTEAS Standardの2種類となり、TEAS plusの方がID Manualからの指定商品及び指定役務の選択となってより安い政府機関費用となります。TEAS Plusでは出願人の法人格などの情報を出願時に含める必要があり、もし情報が欠落している場合には、TEAS Plusの適格を失って追加料金を払う必要があります。
使用見本
商品についての使用見本については、商品若しくはその包装上の標章、あるいはその商品に付与されたラベル若しくはタグの上の標章、或いはその商品に関連したディスプレイ上の標章の実際の使用を示す必要があります。例えば、1)標章を付した実際の商品の写真や印刷、2)標章を付した実際の商品の包装、容器、ラベル、タグの写真や印刷、3)商品が直接的関連する標章を示した販売の場となるディスプレイの写真や印刷のどれかとなる。役務についての使用見本については、見本は役務の販売における使用を通じて標章と役務の間の直接的な関連を示す必要があり、その使用は使用の実演や役務の提供、或いは役務の広告を含むものとなります。
商品若しくは役務についてのウエブサイト(website)による使用見本(例えば、商標を使用している製品の紹介ページのスクリーンショット)では、URLとアクセス若しくは印刷の日を記載することが必須となります。アーティストの描写、コンピューターのイラスト、デジタル画像、または商標の表示の仕方についての類似の模造、または§2.51で必要な標章のコピーは、適切な使用見本とはなりません。使用を証明しようとする商標が表示されたラベルやタグは、商品と共に示されることが必要となり、商品と切り離されたタグやラベルの拡大写真は受理できない使用見本となります。包装に商標が表示されている場合には、写真では包装の外観だけはなく、包装の中身がその商品であることを示すこと(中身が何か包装に記載若しくは印刷されている場合や、中身を見せた状態で撮影した画像など)が求められます。使用見本は、恒常的な実際の取引における使用での態様が必要とされ、権利の維持のために準備されたものは受理できないものとなります。例えば、商品に単にシールを貼ったような場合で、通常そのようなシールの貼付では商標が付されていない商品では、使用見本は受理されないおそれがあります。商品についての使用では、売り場での特質によるものを要します。