最高裁判決 小僧寿し事件
[国名]日本
[事件名]小僧寿し事件
[審判決日] 平成9年3月11日
[裁判所・決定機関]最高裁判所
[キーワード]損害不発生の抗弁
[争点]1.フランチャイズ契約により結合した企業グループの名称は、商標法26条1項1号にいう自己の名称に該当する否か。
2.商標権者は、商標法38条3項に基づく損害賠償請求に際して、侵害者は、損害の発生があり得ないことを抗弁として主張立証して、損害賠償の責めを免れることができるか否か。
[判示事項]
フランチャイズ契約により結合した企業グループはは共通の目的の下に一体として経済活動を行うものであるから、右のような企業グループに属することの表示は、主体の同一性を認識させる機能を有するものというべきである。したがって、右企業グループの名称もまた、商標法26条1項1号にいう自己の名称に該当するものと解するのが相当である。フランチャイズ契約により結合した企業グループ本件において、「小僧寿し」は、フランチャイズ契約により結合した企業グループの名称である小僧寿しチェーンの著名な略称であり、「小僧寿し」の四文字を横書き又は縦書きした標章やローマ字で「KOZO SUSHI」「KOZOSUSI」「KOZO ZUSHI」と、いずれも横書きした標章は、その書体、表示方法、表示場所等に照らし、右略称を普通に用いられる方法で表示するものということができるから、右各標章の使用には、本件商標権の禁止的効力が及ばないというべきである。
商標権は、商標の出所識別機能を通じて商標権者の業務上の信用を保護するとともに、商品の流通秩序を維持することにより一般需要者の保護を図ることにその本質があり、特許権や実用新案権等のようにそれ自体が財産的価値を有するものではない。したがって、登録商標に類似する標章を第三者がその製造販売する商品につき商標として使用した場合であっても、当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず、登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは、得べかりし利益としての実施料相当額の損害も生じていないというべきである。
[要旨]
商標法26条1項の立法趣旨は3つある(青本参照)とされていて、1つは過誤登録に対する第3者の救済、2つ目は禁止権の効力を及ぼすことが妥当でない場合に制限する場合、3つ目は後発的に本条に該当することになった場合、一般人がその使用を制限されないためである。効力が制限されるのは「普通に用いられる方法で表示する商標」であり、識別標識としての表示でない場合に商標法26条1項の適用の可能性があります。逆に、識別標識としての使用態様では、自己の名称や略称でも、商標権の効力が及ぶものとなり得ます。
商標法38条3項に基づく損害賠償請求については、不侵害の抗弁が成り立ち得ることを示した判決となっていますが、抗弁が成立する条件としては、侵害者の侵害行為が侵害者の売り上げに全く寄与していないことが明らかという場合であることが判示されています。
最高裁 平成9年3月11日判決 平成6(オ)1102(小僧寿し事件)[判決全文]
大阪地裁 平成13年3月13日判決 平成10年(ワ)第4292号 商標使用差止等請求事件 [26条]
商標法38条3項の相当な対価額での損害賠償請求
小僧寿しグランドメニュー 商品紹介/株式会社小僧寿し様、1:16