飲食店・レストランの商標
飲食店名・レストラン名
飲食店やレストランを経営する上で、もっとも重要なところは味、接客、雰囲気、値段設定などと思いますが、商標権として必要な役務(サービス)は、第43類「飲食物の提供」となります。小さなお店から出発して繁盛店に成長し、フランチャイズ展開や他人にも暖簾分けという段階では、商標権を取ることが必須です。そのような段階では、暖簾やレストラン名に業務上の信用が存在する状態ですので、万一商標権を他人に取得されてしまえば、今までの努力が水の泡と消え初めからの再出発になりかねません。小さなお店でも、サインや看板の設置費用は商標権取得費用より高いはずですので、先願主義の日本では早めの権利取得が望まれます。
商号との関係
飲食店としてのラーメン屋の店の名前は一般に「商標」に該当するのですが、いわゆる「商号」と混同されている方が多いように思われます。商号とは、例えば「~株式会社」や「~合同会社」のような商号登記上の正式な名称を差し、「~屋」「~家」「博多ラーメン~店」のような「屋号」は商号には該当しません。「商号」の場合には、商標権の効力が及ばない場合がありますが、店の名前は一般には「商号」ではなく、そのような制限規定はありません。そのため、「屋号」についてきちんと商標登録を行うことで、紛争解決のために有効な方法となる場合あります。
地域が違えば問題無い?
商標権は日本全国に及ぶ権利ですので、九州で誰かが先に商標権を取得した場合には、その効力は北海道にも及びます。従って、偶然に同じ屋号やレストラン名が採択された場合に、地域の違う商標権者から差止請求等をされることが想定されますので、早めの商標登録出願が肝要となります。
暖簾
また、暖簾を継ぐという観点からも商標権という形式が有効な場合があります。親から子に承継する場合、兄弟の仲が悪くなることもあり、暖簾という無形の財産を商標権という形に顕在化することで、所有者を明らかにすることができます。
国際登録との関係
最近では、和食のグローバル化も手伝って、国内だけでなく、海外での店舗展開もというお客様が増えてきております。管理のし易さからマドプロ(国際登録出願)による方法がおすすめですが、国内登録が必要なこともあり、またマドプロが適用できない国もありますので、早めの相談が望まれます。
飲食店で提供される料理
お店で提供される料理は、提供者の提供した場所で他人の料理との選択に供することなく、その流通性を欠くために商標法上の「商品」ではないとするのが通説ですが、飲食物を提供するお店では、その材料、例えば焼き肉屋の焼く前の肉には流通性もあることから、肉をカットしたものには商標の登録が可能です。但し、下記の立体商標は、43類の肉料理を主とする飲食物の提供を指定役務として登録されています。
テイクアウト商品
持ち帰り商品(テイクアウト)の場合、消費者は店内で食事をするわけではないため、店内で消費をする場合の第43類「飲食物の提供」だけではなく、テイクアウト可能な各「商品」を指定して登録を受けることが必要です。例えば回転寿司屋にテイクアウトコーナーがある場合には、第43類「飲食物の提供」の他に、第30類「すし」の商標登録が必要となる場合があります。
人気メニューの小売
例えば韓国料理店における「キムチ」や「キムチ鍋のもと」は、店内での人気メニューがそのままの味で食することが出来るように、袋詰めの状態で店頭で小売がなされる場合があります。この場合には、第43類「飲食物の提供」の他に、例えば第29類「キムチ」や「キムチ鍋のもと」として商標登録を受けたり、他ブランドも合わせて販売するのであれば、第35類「キムチの小売等役務(正式な表記ではありません。)」も商標登録が必要となる場合があります。