商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#67

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「Designer’s DeskTop」

1.出願番号  商願2003-98164(不服2004-15119)
2.商  標  「Designer’s DeskTop」
3.商品区分  第9類:電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品 ほか
4.適用条文 商標法第3条1項6号、第4条第1項第16号
5.拒絶理由 「個性的なデスクトップコンピュータ」「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを理解させるにとどまる。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4856806号
出願商標・商標登録第4856806号

不服審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

【手続の経緯】
 出     願   平成15年11月 6日
 拒絶理由の通知   平成16年 3月23日
  同 発送日   平成16年 3月23日
意  見  書   平成16年 4月 9日
拒 絶 査 定   平成16年 6月24日
 同 謄本送達   平成16年 6月25日 
【拒絶査定の要点】
 原査定の拒絶理由は、“この商標登録出願は、平成16年3月16日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。出願人は、意見書において種々述べていますが、さきの認定を覆すことはできません。”というものであります。
 つまり、この拒絶の理由は、具体的には“本願商標は、ファッションに関して、デザイナーの個性を前面に打ち出した「デザイナーズブランド」の語や、建築に関して、建築デザイナーが個性的な間取りやデザインをした集合住宅の「デザイナーズマンション」の語があることから、「デスクトップコンピュータ」や「ウィンドウズやMacのOSを起動したときの基本の画面」等の意味を有する 「DeskTop」の前に「Designer’s」の文字を配した「Designer’s DeskTop」の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、これを本願指定商品中「電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品」に使用するときは、例えば「個性的なデスクトップコンピュータ」「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを理解させるにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものであり、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。”というものであります。
【本願商標が登録されるべき理由】
然るに、本出願人は先の意見書において、本願商標は、指定商品との関係において、十分に自他商品識別標識として機能し得る商標であることを、過去の多くの商標登録例を示しながら説明したにも拘わらず、かかる拒絶の認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第であります。
(a)本願商標の構成
 本願商標は、願書に表示した商標見本からも明らかなように、英文字で「Designer’s DeskTop」と横書きした態様からなるもので、指定商品を第9類「自動販売機,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」とするものであります。
(b)審査官の認定に対する反論
(b-1)
 審査官殿は、ファッションに関する、デザイナーの個性を前面に打ち出した「デザイナーズブランド」の語や、建築に関する、建築デザイナーが個性的な間取りやデザインをした集合住宅の「デザイナーズマンション」の語を引き合いに出して、本願商標の「Designer’s DeskTop」(デザイナーズデスクトップ)を本願指定商品中「電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品」に使用するときは、例えば「個性的なデスクトップコンピュータ」「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを理解させるにとどまると認定しております。
 しかしながら、本出願人は、そのようなことはないと考えます。
 これら「デザイナーズブランド」や「デザイナーズマンション」は、ヤフーJAPANなどのインターネット検索エンジンで検索してみますと、そのような使用例が多く存在していて、一つの意味合いをあらわす言葉として確立されていることが理解できますが、本願商標の「Designer’s DeskTop(デザイナーズデスクトップ)」については、そのような使用例は全く見当たりません。
 デザイナーのグループ名としてこの言葉を含む例はありましたが、審査官の指摘するような「個性的なデスクトップコンピュータ」や「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを表すための「デザイナーズディスクトップ」の使用例は全く見当たりません。
それ故、ファッション関係や建築関係で用いられている「デザイナーズ」の意味合いが、そのままコンピュータ関係の分野にあてはまるとは到底言い得ないと考えます。
(b-2)
 本願商標は、「Designer’s」と「DeskTop」とを結合して一体とした一種の造語商標でありますが、この「Designer’s DeskTop」が、上記審査官が指摘するような意味合いを有する言葉として普通に使用され、且つ市場において広く普及されているような事実は全くありません。
 それ故、これを品質表示用語やそれに類する記述的用語であって識別力のない言葉だというようなことは安易に言えないのではないかと考えます。
 前段と後段それぞれに意味を持つ言葉同士を組み合わせて本願商標が成り立っていることからすれば、全体として何らかの意味合いを表すことはむしろ当然のことでありますが、そうだからといって、本願商標が品質表示等の記述的表示であって識別機能を持たない、などと決めつけることは出来ないと考えます。
 本願商標は、上述のように、指定商品との関係で具体的にその商品の特定の品質等を表示する言葉として機能している訳ではありませんので、十分に自他商品識別標識として機能し得るものと考えます。それ故、「デザイナーズ」の言葉が、指定商品「電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品」との関係にあって、品質その他の識別力のない表示にすぎないと見るのは、短絡的にすぎると考えます。
(b-3)
 この点に関して、過去の商標登録例をみると、本願と同一の商品分野において、「DESKTOP」「DeskTop」「デスクトップ」を用いた商標が、以下のように多数登録されております。
 例えば、
A.登録第4061057号 「MECHANICAL DESKTOP」
B.登録第4605112号 「SchoolDeskTop」
C.登録第4280618号 「KNOWLEDGEDESKTOP」
D.登録第4612027号 「キッズデスクトップ」
E.登録第4612028号 「こどもデスクトップ」
F.登録第4361416号 「EMPLOYEE DESKTOP」などです。
 もし仮に、審査官のような考え方に従うのであれば、上記Aの「ACTIVE DESKTOP」は「機能的なデスクトップコンピュータ」程度の意味合いを、また、Bの「SchoolDeskTop」は「学校用のデスクトップコンピュータ」程度の意味合いをそれぞれ認識させ、識別力がないと言うことになるのでありましょう。また、Cの「KNOWLEDGEDESKTOP」は「情報量の多いデスクトップコンピュータ」程度の、D,Eの「キッズデスクトップ」及び「子供デスクトップ」は「子供用のデスクトップコンピュータ」程度の、更には、Fの「EMPLOYEE DESKTOP」は「従業員用のデスクトップコンピュータ」程度の、それぞれ意味合いを認識させるということになり、審査官のような考え方を採れば、これも識別力はないと言うことになるのでありましょう。しかし現実には、その様な認定はなされずに、全て登録されております。これは、これらの審査を担当した審査官が、これらA~Fの商標を十分に識別機能を備えた商標であると認定したからに他なりません。本願商標「Designer’s DeskTop」とて同様であると考えます。これら「MECHANICAL DESKTOP」「SchoolDeskTop」「キッズデスクトップ」「EMPLOYEE DESKTOP」等が登録できて、本願商標「Designer’s DeskTop」が登録できないとされる謂われは全くありません。コンピュータ等の分野では、「Designer’s」の言葉が特別の意味を持つと言うことはありません。少なくとも、「School」や「キッズ」や「EMPLOYEE」と同様なはずであります。本願商標「Designer’s DeskTop」は、そのまま素直に理解すれば、「デザイナーのデスクトップパソコン」あるいは「デザイナーのOS起動時のパソコン基本画面」程の意味合いを有するのかも知れません。しかし、指定商品中の「電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品」との関係にあって、その商品の具体的な特定の品質等を表示すると言うことはありません。ましてや、「デザイナーズマンション」の「デザイナーズ」をもじって、「個性的なデスクトップコンピュータ」を表すだとか、「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを表すだとかということは全く考えられません。本願商標は十分に自他商品識別標識として機能するものであり、指定商品「電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品」に本願商標「Designer’s DeskTop」を使用した場合には、素直に、「Designer’s DeskTop」ブランドの「コンピュータプログラム」ないし「コンピュータ」と理解できるものと思います。
  【むすび】
 以上述べたように、本願商標の「Designer’s DeskTop」は、「デザイナーの」程の意味合いを有する「Designer’s」と「デスクトップパソコン」あるいは「OSを起動したときに表示されるパソコンの基本画面」を意味する「DeskTop」の文字とを組み合わせたものでありますので、全体の言葉の意味として「デザイナーのデスクトップパソコン」あるいは「デザイナーのOSを起動したときに表示されるパソコンの基本画面」程の意味合いを持つものと思います。しかし、それは単に言葉の構成から受けるイメージであって、指定商品との関係において、特定の具体的観念を生じさせることはなく、単なる商品の品質等記述的表示にすぎないということはできないと考えます。これは、「DeskTop」「デスクトップ」等の文字を含む過去の上記A~Fの商標登録例からも明らかであります。本願商標もこれら多くの登録例と同様に、十分に自他商品識別力を備えたものであり、登録されて然るべきであります。
よって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号にも、同第4条第1項第16号にも該当しないものと思料しますので、請求の主旨の通り、「原査定を取り消す。この出願の商標は登録をすべきものとする。」との審決を求める次第であります。

(参考)ケース67の「審決」
不服2004-15119
   商願2003- 98164拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結 論
   原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。
理 由
1 本願商標
 本願商標は、「Designer’s DeskTop」の文字を横書きしてなり、第9類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成15年11月6日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、ファッションに関して、デザイナーの個性を前面に打ち出した「デザイナーズブランド」の語や、建築に関して、建築デザイナーが個性的な間取りやデザインをした集合住宅の「デザイナーズマンション」の語があることから、「デスクトップコンピュータ」や「ウィンドウズやMacのOSを起動したときの基本の画面」等の意味を有する「DeskTop」の前に「Designer’s」の文字を配した「Designer’s DeskTop」の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、これを本願指定商品中「電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品」に使用するときは、例えば「個性的なデスクトップコンピュータ」「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを理解させるにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
 本願商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「Designer’s」の文字が、「デザイナーの」の意味を表し、「DeskTop」の文字が「机の上、机上用、パソコンの初期画面」等の意味を有する語であるとしても、これらを組み合わせた本願商標の構成全体から具体的な商品の品質等を認識させるものとは言い得ないものであり、むしろ特定の意味合いを看取し得ない一種の造語よりなるものというのが相当である。また、「Designer’s DeskTop」の文字が、その指定商品の品質等を表示するものとして取引上普通に使用されている事実も見出すこともできない。してみれば、本願商標は、その指定商品のいずれの商品についても、商品の品質等を表示するものでなく、自他商品の識別標識としての機能を果たすものであって、需要者をして何人かの業務に係るものであるかを認識することができない商標ということはできない。また、これをその指定商品中のいずれの商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれもないものである。したがって、本願商標を商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当ではなく、取り消すべきものである。
 その他、政令で定める期間内に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。
平成17年 3月18日
審判長  特許庁審判官 小林 薫
     特許庁審判官 岩崎 良子
     特許庁審判官 池田 光治

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