商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#64

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「ペロイドケアー」

1.出願番号  商願2002-32831(不服2003-10080)
2.商  標  「ペロイドケアー」
3.商品区分  第44類:美容,理容
4.適用条文 商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号
5.拒絶理由 「泥を使用して行う美容」等、単に役務の質を表示するにすぎない。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4842519号
出願商標・商標登録第4842519号

不服審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

  【手続の経緯】
 出     願   平成14年 4月22日
 拒絶理由の通知   平成15年 1月22日
  同 発送日   平成15年 1月29日
意  見  書   平成15年 2月13日
拒 絶 査 定   平成15年 5月21日
 同 謄本送達   平成15年 5月23日
  【拒絶査定の要点】
原査定の拒絶理由は、“この商標登録出願は、平成15年 1月22日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。追って出願人は意見書において種々述べていますが、本願商標は「ペロイドケアー」の文字を書してなり、その構成中の「ケアー」の文字は美容の業界においては「美容ケア商品、ヘアーケアー、ボディケアー」等のように普通に使用されている語と認められます。またエステティックサロンにおいては、「泥エステ」のように泥を使用した「美顔泥パック、全身泥パック」等のエステコース(http://www.seiunkaku.or.jp/esthetique2.html)があることからも、「泥」の意味合いのある「ペロイド」と組み合わせてなる本願商標は役務の質(内容)を表示し、またそれ以外の役務に使用したときは役務の質(内容)の誤認を起こさせるとして拒絶すべきとした先の認定を覆すことは出来ません。なお、登録第4593228号「HERBALCARE/ハーバルケアー」の登録例を出していますが、本願とは事例を異にするため採用することは出来ません。”というものであります。
 つまり、この拒絶理由は、要するに、本願商標「ペロイドケアー」は、エステティックサロン等で「治療に用いられる泥」の意味合いを持つ「ペロイド」の文字と、美容業界において「美容ケア商品、ボディケアー」等のように普通に使用されている「世話、保護」等の意味合いを持つ「ケアー」の文字からなるもので、これを「泥を使用して行う美容」等の役務に使用するときは、単に役務の質(内容)を表示し(商標法第3条第1項第3号に該当)、それ以外の役務に使用したときは役務の質(内容)の誤認を起こさせる(同第4条第1項第16号に該当)というものであります。
  【本願商標が登録されるべき理由】
然るに、本出願人は先の意見書において、本願商標は、あくまでも特定の具体的観念を生じない造語商標であって、美容業界において、この言葉が役務の質(内容)表示として普通に使用されている事実はないということを指摘したにもかかわらず、かかる拒絶の認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第であります。
(a)本願商標の構成
 本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標の欄の記載から明らかなように、片仮名文字で「ペロイドケアー」と横書きした態様からなり、指定役務を第44類「美容,理容」とするものであります。
(b)審査官の認定に対する反論
(b-1)
審査官が指摘するように、本願商標「ペロイドケアー」は、それを前後に分解してそれぞれの言葉の意味を考えれば、成る程、「ペロイド」の文字が「泥」等の意味を有し、「ケアー」の文字が「世話、保護」等の意味を有することは事実であります。しかし、本願商標は、これらの各文字を同書・同大・同間隔で一体に結合した結合商標であり、全体としてみれば、特定の観念を具体的に生じさせることのない造語商標であり、役務の質(内容)を表すものではありません。
 本出願人は、上記した意味合いの言葉が2つ結合されている以上、全体として「泥によるケアー(世話、保護)」等の意味合いを間接的に表示ないし暗示する商標であることを決して否定するものではありません。しかし、そのことをもって、この結合商標が役務の質を普通に表す言葉であるとは言い得ないと思料します。「ペロイドケアー」は、美容,理容の役務の質(内容)表示として、普通に使用され、且つ一般的に確立された言葉とはなっておりません。
 ご指摘のインターネットホームページを見ましても、「ペロイドケアー」なる言葉は一つも使われておりません。「アジアンエステ」として、「泥エステ」が載っているのみであります。そして、この「泥エステ」の効用として、「皮膚呼吸を活発にさせ、汗の出を良くし皮膚病の予防になります。」とか、「お肌の美容だけでなく、仕事の疲れ、ストレス解消にも最適です。」との説明があるのみです。
また、YAHOO!JAPANなどのインターネット検索エンジンで「ペロイドケア(ー)」を検索してみましても、この言葉と一致する情報は一つもありません。
 試しに上記「泥エステ」を同様に検索してみたところ、こちらは629件の使用例が検索されました。
 したがって、審査官のいう「泥を使用して行う美容」を表すために使われる一般的な言葉は「泥エステ」であって、決して「ペロイドケアー」ではないと思料します。「ペロイドケアー」は、本出願人が考えた造語であり、特定の具体的な観念を直接的に生じさることのない商標であります。決して、役務の質(内容)を表示する言葉ではありません。
 「ペロイドケアー」が、ある一つの役務の内容を表す言葉として美容・理容業界において確立され通用していればまだしも、そのような事実が全くない以上、本願商標を以て、単に役務の質(内容)を表すものだと言うことはできないと考えます。
 よって、本願商標「ペロイドケアー」は、商標的使用態様で指定役務に用いた場合、十分に自他役務識別標識として機能するものと考えます。
(b-2)
ところで、本出願人は、先の意見書において、美容・理容を含む役務区分において、(A)登録第4593228号「HERBALCARE/ハーバルケア」(平成14年8月9日登録、長瀬産業株式会社)なる商標が存在している事実を指摘し、本願商標もこれと同様に登録されるべだと主張しましたが、これに対し、審査官は、事例を異にするからその主張は採用できないと認定しました。
 しかしながら、この登録商標の前半部の「HERBAL/ハーバル」の文字は「草の」の意味合いであり、後半の「CARE/ケア」は「世話、保護」の意味合いであります。また、エステティック業界においては、例えば「バリ式薬草エステ」のように、薬草を使用したエステコースを「薬草エステ」と称しております。
一方、前述のとおり、本願商標の前半部の「ペロイド」の文字は「泥」の意味合いであり、後半の「ケアー」は「世話、保護」の意味合いであります。また、エステティック業界において、「泥エステ」のように泥を使用した「美顔泥パック、全身泥パック」等のエステコースが存在しております。
 それ故、この登録商標と本願商標とは、状況的には全く同じであり、この「HERBALCARE/ハーバルケア」が登録できて、本願商標の「ペロイドケアー」が登録できないとされる謂われはありません。「HERBALCARE/ハーバルケア」の登録例を“事例を異にするから採用できない”とした審査官の認定には納得できません。
 「泥を使用して行う美容」を表す言葉として、「泥エステ」は確立された言葉として存在しておりますが、「ペロイドケアー」は確立された言葉として存在しておりませんし、インターネット等で調べても使用例は全く見当たりませんので、これを単なる役務の質(内容)表示として片付けることは出来ないと思います。本願商標「ペロイドケアー」は、あくまでも本出願人が熟慮して選定した造語であって、十分に識別力を備えたものであると考えます。
(b-3)
また、本出願人は、この美容,理容の役務分野において、以下のような商標を既に登録しております。
(B)登録第4078825号「アロマケアー」(H09.11.07登録、株式会社メソテス)
(C)登録第4643550号「ハーブケアー」(H15.02.07登録、株式会社メソテス)
美容業界においては、(B)を構成する「アロマ(aroma)」は、「アロマセラピー(aromatherapy)」(花・香草などの香りをかいでストレスを軽減し、心身の健康をはかる療法。芳香療法。)として、普通に使用されている言葉ですし、(C)を構成する「ハーブ(herb)」は、「薬草、香味料とする草の総称。」であり、「薬草エステ」と関係する言葉です。
このような美容業界における使用状況及びその言葉の意味からして、前記審査官のような考え方を採れば、これら(B)(C)の商標は、これを「花・香草などの香りをかいでストレスを軽減し、心身の健康をはかる美容トリートメント」や「薬草を使用して行う美容トリートメント」の役務にそれぞれ使用するときは、単に役務の質(内容)を表示し、それ以外の役務に使用するときは役務の質(内容)の誤認を起こさせるということで、登録できないということになるのでありましょうが、実際には、これら2つの商標は何の問題もなく登録されております。よって、本願商標の「ペロイドケアー」も同様に登録されて然るべきものと思います。
(b-4)
 ところで又、本出願人は、前記したとおり、「ペロイドケアー」の文字が「泥によるケアー(世話、保護)」等の意味合いを間接的に表示ないし暗示することを決して否定するものではありません。
 しかし、そのことが直ちに、本願商標が、役務の質(内容)を表すにすぎない、即ち、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章にすぎない、と言うことを意味するものではないと思います。
 「泥によるケアー(世話、保護)」を暗示するとは言っても、それでは一体、具体的にはどの様な役務を指すのか、泥をどの様に用いてどこをどの様にケアーするのか等、具体的な役務の中味(質・内容)が特定できません。具体的に中身が特定できてこそ、役務の質(内容)の表示といえるのであって、漠然と物事を暗示したのでは、商標法第3条第1項第3号にいう「質」の表示とは言えないと考えます。
 商標法第3条第1項第3号の商標審査基準によれば、“指定役務の「質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする。”と明確にうたっています。この基準に照らし合わせてみても、今般の審査官の認定には納得できません。同書・同大・同間隔で一連一体にバランス良く横書きした本願商標「ペロイドケアー」は、全体としてみれば、特定の観念を具体的に生じさせることのない造語商標であり、十分に自他商品役務識別標識として機能するものと思います。
  【むすび】
 以上述べたように、本願商標「ペロイドケアー」は、エステティックサロン等で「治療に用いられる泥」の意味合いを持つ「ペロイド」の文字と、美容業界において「美容ケア商品、ボディケアー」等のように普通に使用されている「世話、保護」等の意味合いを持つ「ケアー」の文字からなるものではありますが、全体としてみれば、特定の観念を具体的に生じさせることのない造語商標であり、役務の質(内容)を表すものではないと考えます。
そして、役務の質(内容)の表示として、「薬草を使用して行う美容」を表す「薬草エステ」というエステコースがある中で、商標「HERBALCARE/ハーバルケア」や「ハーブケアー」が登録されていることからすれば、「泥を使用して行う美容」を表す言葉として一般的な「泥エステ」がある中で、「ペロイドケアー」が登録されても、少しも不自然ではないと思います。
 また、「アロマセラピー」と言う芳香療法がある中で「アロマケアー」が登録されていることからすれば、一般的な「泥エステ」がある中で「ペロイドケアー」が登録されても、少しも不自然ではないと思います。
それ故、本願商標「ペロイドケアー」は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものでも、商品の誤認を生じさせるものでもなく、十分に登録適格性を備えたものと思料します。

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(参考)ケース64の「審決」 
不服2003-10080
 商願2002-32831拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

 結 論
   原査定を取り消す。
   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由
  1 本願商標
 本願商標は、「ペロイドケアー」の文字を標準文字で書してなり、第44類「美容,理容」を指定役務として、平成14年4月22日に登録出願されたものである。
  2 原査定の理由
 原査定は、「本願商標は、『ペロイドケアー』の文字を書してなるところ、この『ペロイド』の文字は『天然の地質学的過程によって生じた物質(泥)』の意味合いで『治療に用いられる泥』の意味合いであり、『ケアー』の文字は『世話、保護』の意味合いで、『美容ケア、エステケア商品』等のように普通に使用されている事実が見受けられる。そうとすると、『泥パック』の美用法も存在することから、これを本願指定役務中、例えば前記意味合いに照応する『泥を使用して行う美容』等の役務に使用するときは、単に役務の質(内容)、提供の用に供するものを表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
  3 当審の判断
 本願商標は、前記したとおり、「ペロイドケアー」の文字を書してなるところ、該文字は、「ペロイド」と「ケアー」の文字とを一連に同じ書体、同じ大きさで表してなり、視覚的にまとまりよく一体のものとして把握し得るものである。そして、構成中の「ペロイド」の文字が、「治療に用いられる泥」等の意味を有し、かつ、「ケアー」の文字が「世話」等の意味を有するとしても、かかる構成にあっては、本願の指定役務との関係において、役務の質等を直接的、かつ、具体的に表示するものとも認められないところであるから、本願商標は、構成文字全体をもって一種の造語として認識されるとみるのが相当である。また、当審において調査するも、本願商標を構成する文字が、その指定役務を取り扱う業界において、役務の質等を表示するものとして、取引上普通に使用されている事実も発見することができない。してみれば、本願商標は、これをその指定役務に使用しても、役務の質等を表示したものとは認識し得ず、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものであり、かつ、役務の質の誤認を生じさせるおそれもないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当ではなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。
  平成17年 2月 4日
  審判長 特許庁審判官 柴田 昭夫
      特許庁審判官 鈴木 新五
      特許庁審判官 末武 久佳

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